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青の星 エリスティア小隊の到着と隕石群① 青の星と隕石群
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「美しいな。ここが太陽系第三惑星、通称青の星。地球か」
小型戦艦ナノグリフのブリッヂの中央に位置するホワイトカラーの艦長席に腰を下ろし、ガラス張りのようなブリッヂの前面に、何十倍にも拡大して映し出されている地球を目にしながら、何物をも凍てつかせるような青い瞳をした一人の美女が呟いた。
『星の護り手』の戦闘服である銀色の鎧に身を包んだエリスだ。
この艦の艦長的役割を果たすエリスがそう呟くと、それに相槌をうつようにして、彼女から見て左斜め前の座席に腰を掛けながら、エリスと同じ映像を目にしていたジーンが呟いた。
「その名の通りに青々としてやがるな」
そして最後にジーンの言葉を聞いていた三人の中で一番若いニーナが返事を返す。
「ああ、確かに。これほど美しい星は銀河中探してもそうはないな」
彼女たちがいるのは地球から、5000キロほど離れた宇宙空間だ。
魔王の追跡任務で惑星イシュラより、この星まで時空間に残った魔王の痕跡を辿って来た彼女たちは、地球から五千キロほど離れたこの場所にたどり着いたのだった。
そして他の文明に発見されぬよう地球の何百何千年先の科学技術を用いた高精度のステルス機能によって、地球の望遠鏡や多目的レーダー、また衛星の索敵システムなどから姿を完全に隠しながら、肉眼で見るのと大差ないほどに高精細な映像で映し出されている小型戦艦のモニターで、通称青の星。地球を見下ろしていた。
「だけどようエリス。見た限りここいらの宙域の惑星がとても魔王に狙われているようには見えねぇけどな」
「ジーン。見た目で判断するものではない。それに間違いなく奴が時空間ワープを利用し、緊急退避した痕跡を追跡したところ座標軸はここを示している」
「ってことはエリス。間違いなく奴はここら辺の周辺宙域にいるのか?」
「ああ、だが本体を呼ぶ前に、確実に周辺宙域に魔王がいるかどうか確かめなければな」
エリスはそれだけ言うと、ジーンとニーナに指示を飛ばす。
「ジーン。ニーナ。さっそく奴の索敵に取り掛かる」
「おう」
「了解した」
ジーンとニーナの二人がエリスに返事を返して、三人で早速魔王索敵任務に移ろうとした時だった。
警報音を伴った機械化された人の音声のようなものが艦内に響き渡ったのは。
『南南東より、隕石群襲来。第二種戦闘態勢、自動迎撃システムスタンバイに入ります』
「隕石群だと?」
中央の座席に鎮座しているエリスは、呟きながらブリッヂ前面に立ち上がっている球形の巨大な3Ⅾモニターに映し出されているレーダーに視線を向け、AI。船の名と同じ名を冠した人工知能であるナノグリフに話しかける。
「ナノグリフ。落下地点はわかるか?」
『計算中計算中。この軌道から計算。対象物の落下地点は、太陽系第三惑星通称青の星。地球と思われます』
3Ⅾレーダー上に隕石の軌道を予測した点線がひかれる。
「マジかよ」
ジーンがついて早々起こった出来事に対して、信じられないように呟いた。
ジーンの呟きに答えるかのようにして、ナノグリフが隕石群が地球に落下する確率を弾き出した。
『隕石群が青の星に到達する確率、99,99999%』
「今は悪態をついている暇はないぞっジーン。ニーナ。今すぐ持ち場につけっ」
ナノグリフの弾き出した答えを聞いたエリスが、二人に指示を飛ばす。
「おうっ」
「ああ」
二人を持ち場につかせたエリスは、状況を正確に把握するために、再度船のAIであるナノグリフに質問する。
「隕石群の数と距離、それにちきぃゆうに到達する予想時刻は?」
『索敵中索敵中……隕石群の数役300。距離、地球から、役10000キロ。毎時5ロム(マッハ5)の速度で移動中。隕石群の最短の地球到達時刻は、約2時間後と思われます』
ナノグリフの解析を聞いていたニーナが声を出す。
「300か、その程度なら、この艦の自動迎撃システムのスペックでも問題ないな」
「ああ、隕石群の中にある隕石の大きさにもよるけどな。まぁあと2時間もあるんだからよ。たった300程度なら、このナノグリフの自動迎撃システムだけで問題なく迎撃できるはずだぜ。エリス」
ニーナの言葉を聞いていたジーンが、返答を返してこの部隊の小隊長であり、艦長的役割を果たしているエリスの名を呼ぶ。
だが、エリスはジーンに名を呼ばれたにもかかわらず、迎撃命令を出すどころか、何の行動もとろうとはしなかった。
そのため彼女の行動を不審に思ったジーンが、再度エリスに声をかける。
「エリス?」
「迎撃はしない」
淡々とした口調で、あっさりと予想外の返答を返してくるエリスに、ジーンが怒りの声を上げる。
「なっどういうことだエリスッ青の星の奴らをっ地球人を見捨てるってのかよ!」
「ジーン。エリスが手を出さないのは……」
ジーンの怒声を聞いたニーナが、エリスの意図を汲み取って、ジーンに声をかけるが、ニーナの言葉はジーンの怒りの前に一蹴される。
「ニーナッお前は黙ってろ!」
ジーンはニーナの方を振り向き叱責すると共に、今度はエリスに近づいていくと、エリスの胸ぐらをつかみあげながら怒りの怒声を張り上げる。
「てめえエリスッお前ならわかってるはずだよな? 俺たちが手を貸して隕石群を迎撃してやらねぇとっ間違いなく青の星の奴ら程度の科学レベルだと滅んじまうってのがよ! それをわかってててめえはっ迎撃をしないって言ってんのか!? どうなんだっ分けを言ってみやがれっエリスッ!」
「我々は宇宙の星々を護るヴァルキリーだ」
「だからなんだってんだっヴァルキリーならなおさら……」
エリスの言い分に全く納得がいかないジーンが、感情のままにさらに力を込めてエリスの胸ぐらをつかみあげる。
他のヴァルキリーたちよりも体格があり、力もあるジーンがそうすると、エリスの身体がほんのわずかだが宙に浮く。だがエリスは自分に向かって獣のような怒りと力をぶつけてきているジーンに一切臆することなく、ただ冷静に、眉根一つ動かすことなく答える。
「我々の文明は、青の星の文明より遥かに進んでいる。その場合。他の異星人などの攻撃によって反撃する術を持たない場合ならともかく。自然現象などの場合によって、滅ぶ可能性があったとしても、決して手を下してはならない。我々が手を下すということは、それだけで彼らの歴史や成長を歪める結果になりかねないからだ。それに、これは宇宙条約でも取り決められていることだ。ジーン。それはお前もわかっているはずだ」
先ほどと変わらず、何の感情も垣間見えない淡々とした口調で、ジーンの問いに答えるエリス。
「なら、エリスは青の星の連中を見捨てるっていうのかよ」
「…………」
「エリス!」
何の返答も返さないエリスに、業を煮やしたジーンが胸ぐらをつかむ腕に力を込めながら、再度怒声を張り上げる。
「そうは言っていない。ただ宇宙の治安を預かるヴァルキリーである私たちが、率先して文明が未だ発展途上の未開の地に手を出すわけにはいかないと言っているだけだ」
「だからそれが見捨てるって言ってるんだろが!」
自分の星のことでもないのに、ジーンが怒声を張り上げる。
「待てジーン。エリスの言い分も間違ってはいない」
今まで達観して、エリスやジーンの意見を聞いていたニーナが自らの意見を口にすると、ジーンが自分の言い分を否定されたのが気に食わなかったのか、意見を言ってきたニーナをにらみつけると共に怒声をぶつけてくる。
「ニーナッてめえも青の星の連中を見捨てようってのかよ!」
ジーンがエリスの胸ぐらをつかみあげながら、顔だけをニーナに向けて凄んでくるが、ニーナもエリス同様。ジーンの迫力に全く気圧されることなく自らの意見を淡々と口にする。
「ジーン。聞いていなかったのか? エリスは『自然現象』であったのなら、迎撃はしない。と言っていたのを」
「あん?」
ニーナがエリスの意図を汲み取って、『自然現象』という単語をことさら強く強調して言う。
だがすでに頭に血が上っているジーンは、エリスやニーナの意図を全く理解していないのか、ただ眉根を寄せるのみだ。
「あれほど粒ぞろいの隕石群。ジーン。お前は本当に自然に起きたものだと思うか? そして、そのことをレーダーを見ていたエリスが、本当に気付かなかった。と思っているのか?」
「あっ」
ようやくニーナの言っている言葉の意味を理解できたジーンは、エリスの胸ぐらを離した。
「つまりはそういうことだ」
エリスはジーンに掴まれていた胸ぐらを正し、襟元などを整えながら口を開いた。
その後再度ナノグリフに質問を飛ばす。
「ナノグリフ。あの隕石群は、自然に起きたものか?」
『いえ、あれは人工的に起こされたものです。隕石の中に多数の高エネルギー反応確認。何者かが隕石群の中に潜み、隕石群に隠れて青の星に上陸しようとしていると思われます」
やはりそう言うことか、ナノグリフの説明を聞いて、自らの思惑の裏付けが取れたエリスが、やはりなといった感じにつぶやく。
「やはり、あの隕石群は魔王の先兵か」
エリスの発した言葉を聞いたジーンとニーナの二人の間に緊張が走る。
「ジーン。ニーナ。各持ち場につ着け、これより青の星を目指し突き進んでいる魔王の先兵の乗った隕石群迎撃に向かう」
「さっすが俺の相棒だぜっそうこなくっちゃなっ」
「了解した」
今までの一触即発の空気はどこへやら、ジーンとニーナの二人は、エリスの指示に従い中央にあるエリスの座席の前左右にあるコックピットのような座席に腰を下ろす。
二人が席に着いたのを確認したエリスが指示を飛ばす。
「ナノグリフ。宇宙ゴミなどの遮蔽物の存在しない。もっとも隕石群迎撃に効率の良いポイントを洗い出せ」
『かしこまりました。計算中計算中……計算が終了しました。もっとも効率よい隕石群迎撃ポイントは、ここより南南東約1ロムの宙域。宇宙ゴミなどの遮蔽物もなく最も迎撃に適したポイントです』
「わかった。これより我々は短距離ワープで攻撃用エネルギーをチャージしつつ、南南東約1ロムの魔王の先兵が隠れていると思われる隕石群迎撃ポイントに向かう。それまでに私は艦のメインシステムのチェックを行う。ジーン、ニーナ。お前たちはそれまでに自動迎撃システム及び手動迎撃システムの最終チェックをしておいてくれ」
「おう」
「了解した」
「ではこれより、隕石群迎撃ポイントに向けて短距離ワープを開始する。ワープ」
エリスの声に反応して、小型戦艦ナノグリフは短距離ワープを開始したのだった。
小型戦艦ナノグリフのブリッヂの中央に位置するホワイトカラーの艦長席に腰を下ろし、ガラス張りのようなブリッヂの前面に、何十倍にも拡大して映し出されている地球を目にしながら、何物をも凍てつかせるような青い瞳をした一人の美女が呟いた。
『星の護り手』の戦闘服である銀色の鎧に身を包んだエリスだ。
この艦の艦長的役割を果たすエリスがそう呟くと、それに相槌をうつようにして、彼女から見て左斜め前の座席に腰を掛けながら、エリスと同じ映像を目にしていたジーンが呟いた。
「その名の通りに青々としてやがるな」
そして最後にジーンの言葉を聞いていた三人の中で一番若いニーナが返事を返す。
「ああ、確かに。これほど美しい星は銀河中探してもそうはないな」
彼女たちがいるのは地球から、5000キロほど離れた宇宙空間だ。
魔王の追跡任務で惑星イシュラより、この星まで時空間に残った魔王の痕跡を辿って来た彼女たちは、地球から五千キロほど離れたこの場所にたどり着いたのだった。
そして他の文明に発見されぬよう地球の何百何千年先の科学技術を用いた高精度のステルス機能によって、地球の望遠鏡や多目的レーダー、また衛星の索敵システムなどから姿を完全に隠しながら、肉眼で見るのと大差ないほどに高精細な映像で映し出されている小型戦艦のモニターで、通称青の星。地球を見下ろしていた。
「だけどようエリス。見た限りここいらの宙域の惑星がとても魔王に狙われているようには見えねぇけどな」
「ジーン。見た目で判断するものではない。それに間違いなく奴が時空間ワープを利用し、緊急退避した痕跡を追跡したところ座標軸はここを示している」
「ってことはエリス。間違いなく奴はここら辺の周辺宙域にいるのか?」
「ああ、だが本体を呼ぶ前に、確実に周辺宙域に魔王がいるかどうか確かめなければな」
エリスはそれだけ言うと、ジーンとニーナに指示を飛ばす。
「ジーン。ニーナ。さっそく奴の索敵に取り掛かる」
「おう」
「了解した」
ジーンとニーナの二人がエリスに返事を返して、三人で早速魔王索敵任務に移ろうとした時だった。
警報音を伴った機械化された人の音声のようなものが艦内に響き渡ったのは。
『南南東より、隕石群襲来。第二種戦闘態勢、自動迎撃システムスタンバイに入ります』
「隕石群だと?」
中央の座席に鎮座しているエリスは、呟きながらブリッヂ前面に立ち上がっている球形の巨大な3Ⅾモニターに映し出されているレーダーに視線を向け、AI。船の名と同じ名を冠した人工知能であるナノグリフに話しかける。
「ナノグリフ。落下地点はわかるか?」
『計算中計算中。この軌道から計算。対象物の落下地点は、太陽系第三惑星通称青の星。地球と思われます』
3Ⅾレーダー上に隕石の軌道を予測した点線がひかれる。
「マジかよ」
ジーンがついて早々起こった出来事に対して、信じられないように呟いた。
ジーンの呟きに答えるかのようにして、ナノグリフが隕石群が地球に落下する確率を弾き出した。
『隕石群が青の星に到達する確率、99,99999%』
「今は悪態をついている暇はないぞっジーン。ニーナ。今すぐ持ち場につけっ」
ナノグリフの弾き出した答えを聞いたエリスが、二人に指示を飛ばす。
「おうっ」
「ああ」
二人を持ち場につかせたエリスは、状況を正確に把握するために、再度船のAIであるナノグリフに質問する。
「隕石群の数と距離、それにちきぃゆうに到達する予想時刻は?」
『索敵中索敵中……隕石群の数役300。距離、地球から、役10000キロ。毎時5ロム(マッハ5)の速度で移動中。隕石群の最短の地球到達時刻は、約2時間後と思われます』
ナノグリフの解析を聞いていたニーナが声を出す。
「300か、その程度なら、この艦の自動迎撃システムのスペックでも問題ないな」
「ああ、隕石群の中にある隕石の大きさにもよるけどな。まぁあと2時間もあるんだからよ。たった300程度なら、このナノグリフの自動迎撃システムだけで問題なく迎撃できるはずだぜ。エリス」
ニーナの言葉を聞いていたジーンが、返答を返してこの部隊の小隊長であり、艦長的役割を果たしているエリスの名を呼ぶ。
だが、エリスはジーンに名を呼ばれたにもかかわらず、迎撃命令を出すどころか、何の行動もとろうとはしなかった。
そのため彼女の行動を不審に思ったジーンが、再度エリスに声をかける。
「エリス?」
「迎撃はしない」
淡々とした口調で、あっさりと予想外の返答を返してくるエリスに、ジーンが怒りの声を上げる。
「なっどういうことだエリスッ青の星の奴らをっ地球人を見捨てるってのかよ!」
「ジーン。エリスが手を出さないのは……」
ジーンの怒声を聞いたニーナが、エリスの意図を汲み取って、ジーンに声をかけるが、ニーナの言葉はジーンの怒りの前に一蹴される。
「ニーナッお前は黙ってろ!」
ジーンはニーナの方を振り向き叱責すると共に、今度はエリスに近づいていくと、エリスの胸ぐらをつかみあげながら怒りの怒声を張り上げる。
「てめえエリスッお前ならわかってるはずだよな? 俺たちが手を貸して隕石群を迎撃してやらねぇとっ間違いなく青の星の奴ら程度の科学レベルだと滅んじまうってのがよ! それをわかってててめえはっ迎撃をしないって言ってんのか!? どうなんだっ分けを言ってみやがれっエリスッ!」
「我々は宇宙の星々を護るヴァルキリーだ」
「だからなんだってんだっヴァルキリーならなおさら……」
エリスの言い分に全く納得がいかないジーンが、感情のままにさらに力を込めてエリスの胸ぐらをつかみあげる。
他のヴァルキリーたちよりも体格があり、力もあるジーンがそうすると、エリスの身体がほんのわずかだが宙に浮く。だがエリスは自分に向かって獣のような怒りと力をぶつけてきているジーンに一切臆することなく、ただ冷静に、眉根一つ動かすことなく答える。
「我々の文明は、青の星の文明より遥かに進んでいる。その場合。他の異星人などの攻撃によって反撃する術を持たない場合ならともかく。自然現象などの場合によって、滅ぶ可能性があったとしても、決して手を下してはならない。我々が手を下すということは、それだけで彼らの歴史や成長を歪める結果になりかねないからだ。それに、これは宇宙条約でも取り決められていることだ。ジーン。それはお前もわかっているはずだ」
先ほどと変わらず、何の感情も垣間見えない淡々とした口調で、ジーンの問いに答えるエリス。
「なら、エリスは青の星の連中を見捨てるっていうのかよ」
「…………」
「エリス!」
何の返答も返さないエリスに、業を煮やしたジーンが胸ぐらをつかむ腕に力を込めながら、再度怒声を張り上げる。
「そうは言っていない。ただ宇宙の治安を預かるヴァルキリーである私たちが、率先して文明が未だ発展途上の未開の地に手を出すわけにはいかないと言っているだけだ」
「だからそれが見捨てるって言ってるんだろが!」
自分の星のことでもないのに、ジーンが怒声を張り上げる。
「待てジーン。エリスの言い分も間違ってはいない」
今まで達観して、エリスやジーンの意見を聞いていたニーナが自らの意見を口にすると、ジーンが自分の言い分を否定されたのが気に食わなかったのか、意見を言ってきたニーナをにらみつけると共に怒声をぶつけてくる。
「ニーナッてめえも青の星の連中を見捨てようってのかよ!」
ジーンがエリスの胸ぐらをつかみあげながら、顔だけをニーナに向けて凄んでくるが、ニーナもエリス同様。ジーンの迫力に全く気圧されることなく自らの意見を淡々と口にする。
「ジーン。聞いていなかったのか? エリスは『自然現象』であったのなら、迎撃はしない。と言っていたのを」
「あん?」
ニーナがエリスの意図を汲み取って、『自然現象』という単語をことさら強く強調して言う。
だがすでに頭に血が上っているジーンは、エリスやニーナの意図を全く理解していないのか、ただ眉根を寄せるのみだ。
「あれほど粒ぞろいの隕石群。ジーン。お前は本当に自然に起きたものだと思うか? そして、そのことをレーダーを見ていたエリスが、本当に気付かなかった。と思っているのか?」
「あっ」
ようやくニーナの言っている言葉の意味を理解できたジーンは、エリスの胸ぐらを離した。
「つまりはそういうことだ」
エリスはジーンに掴まれていた胸ぐらを正し、襟元などを整えながら口を開いた。
その後再度ナノグリフに質問を飛ばす。
「ナノグリフ。あの隕石群は、自然に起きたものか?」
『いえ、あれは人工的に起こされたものです。隕石の中に多数の高エネルギー反応確認。何者かが隕石群の中に潜み、隕石群に隠れて青の星に上陸しようとしていると思われます」
やはりそう言うことか、ナノグリフの説明を聞いて、自らの思惑の裏付けが取れたエリスが、やはりなといった感じにつぶやく。
「やはり、あの隕石群は魔王の先兵か」
エリスの発した言葉を聞いたジーンとニーナの二人の間に緊張が走る。
「ジーン。ニーナ。各持ち場につ着け、これより青の星を目指し突き進んでいる魔王の先兵の乗った隕石群迎撃に向かう」
「さっすが俺の相棒だぜっそうこなくっちゃなっ」
「了解した」
今までの一触即発の空気はどこへやら、ジーンとニーナの二人は、エリスの指示に従い中央にあるエリスの座席の前左右にあるコックピットのような座席に腰を下ろす。
二人が席に着いたのを確認したエリスが指示を飛ばす。
「ナノグリフ。宇宙ゴミなどの遮蔽物の存在しない。もっとも隕石群迎撃に効率の良いポイントを洗い出せ」
『かしこまりました。計算中計算中……計算が終了しました。もっとも効率よい隕石群迎撃ポイントは、ここより南南東約1ロムの宙域。宇宙ゴミなどの遮蔽物もなく最も迎撃に適したポイントです』
「わかった。これより我々は短距離ワープで攻撃用エネルギーをチャージしつつ、南南東約1ロムの魔王の先兵が隠れていると思われる隕石群迎撃ポイントに向かう。それまでに私は艦のメインシステムのチェックを行う。ジーン、ニーナ。お前たちはそれまでに自動迎撃システム及び手動迎撃システムの最終チェックをしておいてくれ」
「おう」
「了解した」
「ではこれより、隕石群迎撃ポイントに向けて短距離ワープを開始する。ワープ」
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