宇宙(そら)の魔王

鳴門蒼空

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惑星イシュラ戦域 魔王VSレヴァティーン艦隊① 赤い閃光

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「艦長。地上部隊、敵軍の拠点の制圧に成功しました」

「そうか、ご苦労」

 宇宙空間にある巨大戦艦レヴァティーンの艦長席の前で、腰ほどまである金色のストレートヘアを背中に流し、黙っていれば優美な貴族の令嬢を彷彿とさせる陶磁器のような色白な白い肌を、重厚な白銀の鎧で覆い隠し、両手で剣を足元に突き立てながら、切れ長の青い瞳で惑星イシュラを見下ろしていた巨大戦艦レヴァティーンの艦長レイラが、艦の通信担当オペレーターから地上部隊の報告を聞いて答える。


 ここは、地球から遠く離れた別の銀河系。

 その端に位置するマーブル色をした辺境の惑星イシュラ。

 そこでは今まさに、構成員。その全てが女性で構成されている『星の護り手』と呼ばれる戦乙女であるヴァルキリーたちが、中世の鎧のような見た目をした強化服を戦闘服として身に付けて、まるでお伽噺のように、魔王と呼ばれるものが生み出した数多の機械兵たちと交戦していた。

 ただお伽噺と違うのは、彼女たちは魔法や剣を操り魔王と戦うのではなく、最新鋭の未知なる科学技術をもって、魔王に討ち勝とうとしている点だった。

 魔王の狙いはただ一つ。惑星イシュラに眠る星の神器と呼ばれる高エネルギーの塊だった。

 神器とは、神々の扱っていた武器という意味合いも含まれているのだが、その実星の力の結晶体なのである。

 つまり簡単に言えば、魔王が狙う神器とは、星の命そのものなのである。

 そのため神器を奪われた星は、遠からず灰星となり、やがていくらもしないうちに崩壊して、宇宙の塵と化してしまう。

 魔王がなぜ星の神器を狙うのかはわからないが、今少なくともわかっているのは、魔王に神器を奪われた場合。

 神器を喰らった魔王が、その力を増すという事実だけ、そのためこの大宇宙を護り、星を護ることを是とする者たちと、敵対関係となり、遥か昔に戦端が開かれ、今にいたっているのである。

 そのため惑星イシュラに眠る神器を狙って現れた。魔王の手先である尖兵たちを退けるために、この辺境の星イシュラに、『星の護り手』に所属している旗艦レヴァティーンを筆頭とした。若い女性だけで編成されたレヴァティーン艦隊、ヴァルキリー一個師団が送り込まれたのであった。

 そして、今まさに惑星イシュラに送り込まれたヴァルキリーたちは、惑星イシュラとイシュラに眠る神器を魔王の魔の手から護るために、皆命がけで戦っているのである。

「地上制圧ははぼ完了か、順調だな」

 通信担当のオペレーターから、地上部隊の状況を聞いたレイラが満足げに頷く。

「はい。予定より一月は早く、惑星イシュラに魔王が送り込んできた尖兵たちから、地上を奪還できそうです」

 レイラと通信担当オペレーターの会話を耳にしていたレイラの副官が答えた。

「そうか、万事順調というわけだな?」

「はい艦長。全て予定通りに進んでおります」

「そうか」

 レイラと副官が、言葉を交わしあっていると、突如として旗艦レヴァティーンのブリッジに、緊迫した声と緊急を知らせる警報が流れた。

「艦長っ惑星イシュラに突如高エネルギー反応出現っ!」

 エネルギー管制担当オペレーターが、声を上げる。

「なんだと!?」

「来ます!」

「ちぃっ全艦エネルギーシールド展開っ! 」

 エネルギー管制担当のオペレーターの声を聞いたレイラが、反射的に剣術の試合で、対戦相手の剣先を振り払うかのように、右腕を外側へと振り抜き声を荒げながら、全艦に指示を飛ばした。

「駄目ですっ間に合いませんっ!」

 エネルギー管制担当オペレーターが叫ぶと、彼女の声を引き継いだように、別のオペレーターも声を上げた。

「艦長っ来ます!」

「くっ総員っ対ショック防御っ!」

 予想だにしていなかった急激な展開に、赤い閃光が視界を覆う中、レイラの怒号が、旗艦レヴァティーンの指令室であるブリッジに響き渡った。
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