上 下
9 / 30

第九話 ブタっぽい俺のポテチ・邂逅

しおりを挟む
「かい~な~」

 一晩たち、腹に妙なむず痒さを覚えた俺は、ボリボリと腹をかきながら目を覚ました。

「ふぁ~あ、いったいなんだってんだよ? 朝からよ~」

 俺は大きなあくびを噛み殺しながら、未だにかゆみが治まらない腹に視線を向けながら文句を言った。

 まぁ普通こういった場合。蚊かなにか血を吸うタイプの虫が腹にたかっていると思うだろう。

 俺もそう思った。

 が、違っていた。

 そう違っていたのだ。

 なぜなら俺の腹に噛みつき血を貪ろうとしていたのは、蚊や虫の類いではなかったからだ。

 そう、朝起きた俺の腹に噛みついていたのは、昨日から俺のあとを執念深く執拗に追いかけ回し、オークを手に入れた俺がすっかりその存在ごと忘れていた灰色狼だったからだ。

 しかも一頭や二頭ではない。よく見ると、五、六頭の灰色狼が、俺の腹や首筋や手足に束になって噛みついていたのだ!

「ざけんなっまずいスジ肉のぶんざいで!」

 俺は俺に噛みついてきていた灰色狼を、その場で立ち上がりながら力任せに振り回し、弾き飛ばした。

 俺に弾き飛ばされた灰色狼たちは、「キャインキャイン」と、情けない悲鳴を上げながら、地面や木。岩などに叩きつけられて、その場で蹲るが、いかに温厚な俺とて我慢の限界というものがあった。

 それに、朝飯がまだだったために、少し苛立っていたのもあった。

「覚悟しやがれ! てめえらがいくらまずかろうと食い尽してやるからな!」

 俺は、昨夜最後のポテチが底をつき、悲しみにくれて眠った俺の眠りを中途半端に妨げ、今は俺に弾き飛ばされて情けない悲鳴を上げている灰色狼たちに近づいていくと、一体一体に情け容赦なく時に落ちていた岩を頭から落とし、時に足の裏に全体重をかけて踏み潰していった。

 時間にして一分もかからないうちに、俺は俺の体に噛みついていた灰色狼たちの息の根を止めたのだった。

「あ~かゆかった」

 俺は灰色狼たちに噛まれた首筋や腹。手足などをかきながら文句を口にした。

「けどまあいいか、労せずして朝飯もGETしたことだし」

 俺は今しがた倒した灰色狼の死体を集めると、昨日からやっているように森に入り焚き木となる枯れ枝と、灰色狼を串刺しにできる適当な大きさの森の木の枝を拾ってから、すでに俺専用の草原ベースキャンプと化している場所で、焚き火を起こして、川魚のように灰色狼を串刺しにして焚き火の回りに並べて焼いたのだった。

 灰色狼が、焼けるまで手持ちぶさただった俺は、ついついないとわかっていながらも、後生大事にリュックの中にしまっていた空のポテチ袋へと手を伸ばしていた。

 しかしポテチ袋の中に入れた俺の指先には、ガサリと、俺すらまったく予想していなかった感触があった。

 そう、ポテチ袋に入れた俺の指先に、あの懐かしい油もの独特の油っぽい感触があったからだ。

「へ?」

 俺は、指先に感じたポテチ特有の感触を感じつつも、そんなことあるわけない。
と思いながらも、恐る恐る指先に触れたポテチを摘まんで、ポテチ袋から引っ張り出した。

「これは……夢か、幻か?」

 俺はプルプルと型枠から出した煮こごりのように自分の震える指先にあるポテチを見つめながら涙を流していた。

 それはもう何年も、いや何十年も会っていなかった生き別れになった恋人に出会った時のようにである。

「ポテーチッ!」

 俺はえもいわれぬ感動を感じて、心の底から喜びの声をあげたのだった。
 そうして俺とポテチは、感動の再会を果たしたのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

生贄にされた先は、エロエロ神世界

雑煮
恋愛
村の習慣で50年に一度の生贄にされた少女。だが、少女を待っていたのはしではなくどエロい使命だった。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

好きだった幼馴染に出会ったらイケメンドクターだった!?

すず。
恋愛
体調を崩してしまった私 社会人 26歳 佐藤鈴音(すずね) 診察室にいた医師は2つ年上の 幼馴染だった!? 診察室に居た医師(鈴音と幼馴染) 内科医 28歳 桐生慶太(けいた) ※お話に出てくるものは全て空想です 現実世界とは何も関係ないです ※治療法、病気知識ほぼなく書かせて頂きます

父が死んだのでようやく邪魔な女とその息子を処分できる

兎屋亀吉
恋愛
伯爵家の当主だった父が亡くなりました。これでようやく、父の愛妾として我が物顔で屋敷内をうろつくばい菌のような女とその息子を処分することができます。父が死ねば息子が当主になれるとでも思ったのかもしれませんが、父がいなくなった今となっては思う通りになることなど何一つありませんよ。今まで父の威を借りてさんざんいびってくれた仕返しといきましょうか。根に持つタイプの陰険女主人公。

冤罪だと誰も信じてくれず追い詰められた僕、濡れ衣が明るみになったけど今更仲直りなんてできない

一本橋
恋愛
女子の体操着を盗んだという身に覚えのない罪を着せられ、僕は皆の信頼を失った。 クラスメイトからは日常的に罵倒を浴びせられ、向けられるのは蔑みの目。 さらに、信じていた初恋だった女友達でさえ僕を見限った。 両親からは拒絶され、姉からもいないものと扱われる日々。 ……だが、転機は訪れる。冤罪だった事が明かになったのだ。 それを機に、今まで僕を蔑ろに扱った人達から次々と謝罪の声が。 皆は僕と関係を戻したいみたいだけど、今更仲直りなんてできない。 ※小説家になろう、カクヨムと同時に投稿しています。

お兄ちゃんはお医者さん!?

すず。
恋愛
持病持ちの高校1年生の女の子。 如月 陽菜(きさらぎ ひな) 病院が苦手。 如月 陽菜の主治医。25歳。 高橋 翔平(たかはし しょうへい) 内科医の医師。 ※このお話に出てくるものは 現実とは何の関係もございません。 ※治療法、病名など ほぼ知識なしで書かせて頂きました。 お楽しみください♪♪

好きすぎて、壊れるまで抱きたい。

すずなり。
恋愛
ある日、俺の前に現れた女の子。 「はぁ・・はぁ・・・」 「ちょっと待ってろよ?」 息苦しそうにしてるから診ようと思い、聴診器を取りに行った。戻ってくるとその女の子は姿を消していた。 「どこいった?」 また別の日、その女の子を見かけたのに、声をかける前にその子は姿を消す。 「幽霊だったりして・・・。」 そんな不安が頭をよぎったけど、その女の子は同期の彼女だったことが判明。可愛くて眩しく笑う女の子に惹かれていく自分。無駄なことは諦めて他の女を抱くけれども、イくことができない。 だめだと思っていても・・・想いは加速していく。 俺は彼女を好きになってもいいんだろうか・・・。 ※お話の世界は全て想像の世界です。現実世界とは何の関係もありません。 ※いつもは1日1~3ページ公開なのですが、このお話は週一公開にしようと思います。 ※お気に入りに登録してもらえたら嬉しいです。すずなり。 いつも読んでくださってありがとうございます。体調がすぐれない為、一旦お休みさせていただきます。

処理中です...