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初めてには疑問と驚きが付き物なので~1~
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「足が短くてごめんんん、あと体力無いくせに意地張って手借りようとしないのホントごめぇぇん!」
「私は構わないが。自らの力だけで解決しようとする精神は高潔と言える、後にも活かされることだろう」
「つよつよフォロー助かる……」
元気に叫びつつシエマーの後をついていくノマルは、その実二日歩き続けたことによる疲労でへとへとだった。シエマーの長い足で二日かかるということは、ノマルの足だと更にかかるということ。気づいてはいたが、仮にも若者がこの程度で根をあげるわけにはいかないという変なプライドにより──途中シエマーが背負っていくかと提案したのを拒否して──こうして、出立から二日後の今日、昼前になってようやく街の付近まで来ていたのであった。
キッパに聞かせるのは土産話というよりか苦労話になりそうなほど、それはもう色々あった。ノマルは遠い目をしながら記憶を振り返っていく。微かに狼っぽい星喰が逃げていく姿が見えたとか、干し肉の固さに四苦八苦しながら食べたとかはまだ些事に過ぎない。
一番戸惑ったのは風呂問題である。村ではシャワーを浴びてごく普通に身を清めていたのだが、当然ながら野宿の際に風呂は入れない。なので、どういう原理か水が出る星の欠片で濡らしたタオルを使い、体を拭くことになった。仮にもうら若き乙女がこんな外で体を拭くのか、と暫し考えて、結局汗の不快感に負けたのである。とはいえシエマーが、
「私は背を向けているゆえ、事が済めば声をかけてほしい。あぁ、気配を厭うのであれば距離を……しかし、この辺りは獣もいる。君の安全が脅かされるのは……」
と非常に悩ましい様子で唸っていたのも大きな理由と言える。色々考えるのも面倒になって別にシエマーだしいっかとなり、早い段階で腹を括ったのだった。
そして、問題は就寝時にも起こった。見張りとその交代についてである。焚き火を見ながら先に寝るよう促すシエマーに、途中で起こす約束をして寝たのだが……ノマルが気づいた時にはすっかり朝日が輝いていたのである。
コイツ徹夜しやがったという怒りと、自分だけすやすや寝てしまったという罪悪感で「起こしてって言うたやん!!」と朝っぱらから一悶着。徹夜明けに響くかもと気づいてすぐにトーンダウンしつつ『徹夜、ダメ、絶対』を分からせることに成功。隙あらば自己犠牲に走るシエマーにノマルは頭を抱えていた。
そろそろ事前に釘を刺すようにしなければならない。そう反省するノマルの目に飛び込んできたのは、豊かな街並みであった。森を抜けて少し、小高い丘の上からは建物の並びまでよく見える。なだらかな坂を下っていけば街はもうすぐそこだ。
「おお、あれが異世界の街……」
「リバフォトという街だ。古き言葉で、大河のほとりを意味する」
「ほぇー、なんかお洒落だなぁ」
目的地が見えて途端に元気になったノマルは「よしッ」と気合を入れて足取りも軽やかに進んでいく。並んで歩くシエマーにあたたかい目で見られているとは知らずに、まっすぐ街を見据えながら。
せっせと足を動かせばじきに辿り着いた街の入口。村よりずっと大きな門は中々の迫力である。そういうテーマパークにでも来たみたいだな、と思いつつ門に近づいていく。そして門といえば忘れてはいけないのが門番の存在だ。
「…ブラグレオの者か。そちらは?」
「南より訪れし虎の子だ。己の目で見定めるべく各地を渡り歩いている」
「この街では何を?」
「レクイエの石碑を拝見する為、マエクスを借りていく」
「そうか。大橋は修繕されたとはいえ、いつ何が起こるか分からん。気を引き締めて行きなされ」
シエマーがうむ、と返して歩き出す。その後を、門番に軽く頭を下げてから追いかけるノマル。人の往来の邪魔にならないようなところまで来たところで。
「いつも通り何の話かさっっっぱり分からん」
今の短い会話で分からないことが多すぎる。知らない固有名詞とよく分からない比喩と初耳の情報を一度に出さないで欲しい。どこがと言いたげなシエマーに、ノマルは全部だが?と言いかけてやめた。順番に説明を求めないとたまに意味不明な説明をするので。
「まずブラなんとかって何?」
「ブラグレオ、私達がいた村だ」
「名前あったんかい」
「で、私虎の子だったの?人の子ではなく?」
「勝手ながら君の筋書きを作らせてもらった。題名を付けるなら、箱入り娘の周遊見聞記だろうか」
「あ、そういう比喩?ふーんなるほど……って誰が箱入り娘や!」
「えー、あとほら、橋?が直ったとかなんとかっていうのは?」
「星海大戦の折に破壊された、王国と公国を繋ぐアンネモニ大橋のことだ」
「社会の授業か?」
情報を噛み砕かせると分かりやすくなったので、何となく状況は把握したノマル。固有名詞のカタカナはちょっと怪しいが、正直名前を覚えなくても村とか橋とか街とかで十分だろう。都度教えてくれる辞書がついているので。
疑問が解けてすっきりしたことで、周りの様子が目に入り始めた。全体的に石造りの建物が多く、グレージュからオレンジがかったものまで様々な色味の外壁が混在している。海外旅行に行ったことがないノマルにとって、その目新しい景色はきらきらと輝いて見えた。
そして、何の気なしにシエマーの外套の端をくいっと引っ張る。
「ねぇねぇ、あのいっこだけ木造のやつは何?」
「冒険者の組合だ。どこの街でも同じ外観をしている」
「あれ、あれは?何かいっぱい広げてる」
「出店だ。この出入口付近では、主に旅人や冒険者向けの道具、または軽食などを売っていることが多い」
「じゃあ、あの可愛いクリーム色の建物は?」
「食堂だ。確か米の料理もあったと記憶している……行ってみるか?」
「行く!」と力強く答えてから、ノマルはハッと外套から手を離した。徐々に頬を赤く染めて、ちらりとシエマーの様子を伺う。どうかしたかと見返す穏やかな雰囲気はどう考えても保護者のそれである。逆にいたたまれなくてノマルはあえて口を開いた。
「一旦冷静になると20歳にもなってこんなはしゃいでるのちょっと恥ずいなって。気になるものいっぱいあるからって服引っ張って質問攻めとか幼女じゃん……」
「私は無邪気でいいと思うが」
「イケメン回答ありがとう。マジでシエマーのそういうマインド助かる」
そういえばシエマーっていくつなんだろうと思って聞いてみると「この世に生を受けてから34年目になる」とのこと。見た目的には逆サバだが、中身を思えば分からないでもない。こんなに落ち着いているのも頷ける。てっきり20後半くらいと思っていたノマルだが、同様にシエマーもノマルが若く見えていたらしい。
「蛹から美しい蝶への過渡期……成人前の少女かと」
「まぁどっちとも取れるから分からないってよく言われるけど、流石にそんな若くないカナー!」
ちなみにこの世界の成人は16歳なので相当である。子供じゃないと突っかかるには大人になりすぎていて、若く見られて嬉しいと感じるには若すぎるという、微妙な立ち位置のノマルはちょっと複雑な気持ちになった。
恐らくノマルの顔立ちや身長、人種による印象だろうが、だからといってお子様扱いはごめんだ。まぁ34歳からしたら20も16もさして変わらんか、とノマルは自分をなだめておいた。
そんなこんなで日も高く登り、眩しい光が降り注いでいるお昼頃。シエマーの懐中時計によれば十二時の少し前を指している。昼食をとるのに丁度いい頃合だ。道すがら出店でいくらか必要なものを買い足しながら、件の食堂へと向かう。
食堂は賑やかな大通りを進んでいってすぐの、短い階段の先にたっていた。高さがあるおかげで入口からもよく見えたらしい。明るい色味の外壁と観葉植物、木製のメニュー看板は、食堂というよりカフェっぽいと思うノマル。
「いらっしゃいませー!二名様ですね、あちらのお席にどうぞ」
明るく出迎えてくれた女性のゼロ円ハッピースマイルが眩しい。あれはプロの看板娘だなとおののきつつ、案内された席へ。
さらっとメニュー表に目を通したところ、大半は食べたことのあるものか聞いたことのある物ばかり。何故異世界に同じものがあるのか疑問だが、分かりやすいのは有難い。いくつか分からない料理が気になって、また幼女よろしく説明を受けるノマル。恥はその辺に捨てて。
魚まるごと一匹とマッシュポテトを包んだパイとか、魚といろんな野菜を煮込んだ郷土料理とか、聞いたこともない植物を使った魚の香草焼きとか。大河が近いからか、知らない名前のものは全体的に魚料理のようだ。どれも美味しそうだが、ノマルが食べたいのは米である。今この瞬間において、米に勝るものは何も無いのだ。
と、言うわけで。
「めっちゃ悩んだけどやっぱオムライス食べたーーーい!」
「くく、そうか。では、私はデンスパイにしよう。君も味を見るといい」
「やったー、ありがと!」
うーんこれはお子ちゃま、と内なる自分が言っているが、そんなこと腹ぺこの前ではどうでもいい。にっこにこで注文し、メニュー表を横に避ける際に、ふと気づく。当たり前だが、金銭の発生する労働をしていないノマルは無一文である。ここでやっと支払いに意識がいって、たらりと冷や汗がつたう。完全に親と外食へ来た子供の思考だったという現実に、思いの外ダメージを受けていた。タダ飯を純粋に喜べるような楽観さは持ち合わせていないので。
「アノ、エット、お金は働いて返すので、ナニトゾ、ナニトゾ……」
「ふむ、異なことを言う。私が同行を依頼したのだ、旅費を持つのは至極当然だろう」
「それはそうかもだけどぉ……私にできることがあったら何でも言ってよ、受けた恩くらいは返したいし」
その内なと返してくるあたり何も言う気がなさそうだが、ノマルは静かに精進する覚悟を決めたしついでに拝んでおいた。そしてなんならもう一回メニュー表をとって値段を見始めた。少しでも金銭感覚を身につけるためだ。確認したところ、オムライスは千二百ユラだった。高いのか安いのかいまいち分からないが、他と比べると若干高い気もする。
ノマルはうーんと首を捻った。収入が分からないと感覚が掴めないのだ。とはいえ、流石に面と向かって収入いくら?とは聞きづらすぎる上にご飯時にしたい話ではない。とりあえずまた別の時にしようと決めて、念の為日程の確認をすることに。
「えーと、確か目的地までは二、三日で着くんだっけ?」
「ああ。マエクスの調子に左右されるが、予定以上にかかることは無いだろう」
「うんうん。門番さんが言ってた大橋を通っていくの?」
「うむ。かつて貿易の要であった大橋には、今も変わらず兵士が在中している。北部の谷や山を越えて行くよりよほど安全な道だろう……あれほど頑強なアンネモニ大橋が、何故あの時崩落したのか不可解でならないがな」
星海大戦の時に破壊されたと言っていた大橋。あまりにもタイミングが悪すぎる。ノマルは逃げる人達や物資を運ぶ人なども通れなかったんだろうかと考えながら「悪いことってなんで重なるんだろうね」と言った。酷い災難である。
「じゃあ、その後は?」
「大橋を渡ればレクイエの土地となるのだが、そこから暫し北上することになる。慰霊碑は帝国側と公国側の境目辺りにあると聞いたのでな……そこならば、城の面影も目に映せよう」
相槌を打ってから、ノマルはん?と引っかかった。聞いた、ということは実際に行って知っているということではなく、まだ真偽が定かでないわけで。そして思い出したのはキッパが言っていた、シエマーは一度も遠出したことがないということ。
あれ、もしかしなくてもこの人、まだ一度も墓参り行けてなかったのか。
「……ちなみに大橋直ったのって、いつ?」
「二年前だ」
ノマルは静かに顔を覆った。これで行かなかった理由が道の問題ではないと判明してしまった。ただ単純に心の問題かと思うとひたすらに辛い。そして自分の場違い感が凄い。今回の旅は一大決心した結果だと分かるので偉いなぁと思いはするけども、それ連れてく人ホントに私で合ってるかと混乱した。そもそもそういう時は一人で行ってきなさいと言いたいところだが、独りだと心細いのかもなんて思うとまた辛い。
そうして一人手のひらの裏で顔をしわくちゃにした後、すーっと深呼吸して元通りの顔を作った。今は本人が平気な顔をしているので、無駄に気持ちをかき乱したくはない。ハテナを浮かべているシエマーに「なんでもない、ちょっと記憶振り返ってただけ」と言って誤魔化した。
結局ご飯時にする話ではなかったと思っていたら、運ばれてきたオムライスに意識が持っていかれた。
そう、全てはお腹が空いているせいだ。腹ぺこだから無駄に気分が落ち込むんだ、今は何もかも全部忘れて、話はお腹いっぱいになってから!
ガバガバな思考でお預けされた犬みたいに待っていたら「冷めないうちに食べるといい」と有り難い許可が下りたので、いざ実食。
「わぁ、ちゃんとオムライスだぁ……!色々ちょっとずつ違うけどおいしい……やっぱりお米っておいしいんよなぁ」
久々のお米になんだか泣きそうになりながら、はぐはぐと食べ進めるノマル。ご飯がチキンライスではなくバターライスで、海外産と日本産の間みたいな米だったが、米は米である。自分がこれほど米好きだったとは思っていなかったが、まぁ日本人だしなぁとすぐさま納得した。
「うめぇ」だの「おいひい」だの、合間で呟きながら半分ほど食べたあたりで、シエマーの料理が運ばれてきた。可愛らしい魚のような模様が入ったパイから、リアルお魚の尾びれが出ている。ノマルは写真撮らせてもらおうかなと言いかけて、そういえばスマホ無いんだったと気づく。残念ながら元の世界に落としてきたままである。
シエマーが容赦なく魚パイの腹辺りにナイフを入れて、ある程度の大きさに切り分けた。ちょっぴり勿体ない気がして、あぁ切られちゃったなと眺めていたら、切り身がひょいとノマルの皿へ乗せられて瞠目する。確かに味見の話はしていたので自然なことではあるのだが。
「おぉう、そんな初手からお腹切り分けなくても、こう、後で端っこ貰うくらいでよかったのに」
「焼きたてに勝るものはない。それに、具材の詰まった腹が最も美味だ。遠慮なく食べるといい」
「余計遠慮するが???」
と言いつつも、皿に渡ってしまった以上戻せもしないので素直に頂いておく。やや大きめのそれを半分にして、ぱくりとひと口。
サクサクのパイ生地と味が濃いめのマッシュポテトに、臭みのないあっさりとした魚がよく合っている。フィッシュパイというものを初めて食べたノマルは意外な美味しさに目を輝かせた。
「わっ、おいしい。魚のパイってこんなにおいしいんだ」
ふた口目を大事に味わって食べていると、何やら視線を感じてノマルは顔を上げた。すごく、ものすごーく、微笑ましそうに見られている。段々と保護者が板についてきてるなと思いながら「何、どうかした?」と聞いてみる。
「いや……君の顔が晴れやかで何よりだ」
「…?うん、おいしいからね……ん?あ、もしかしてさっき、なんか変な顔してた……?」
「私を慮った末、哀憐を内に押し殺したような顔をしていた」
「もろバレやないか」
自分のポーカーフェイスはまだまだ下手くそらしい。ノマルは喉奥で唸った。それを見たシエマーは目を伏せて、またパイにナイフを入れながらなんてことはないように口を開く。
「常人からすれば他人の墓参は些事に過ぎない。年頃の娘なら尚更、義務感だけで付き合えるようなものでは無い」
少し下がった眉に合わせて、瞼がほんの少し落ちる。緩やかな曲線を描く眦は、もう何度も見てきたもので。何が言いたいのか、何となく分かる気がした。
「君はよく、私がこういう人柄でよかったと言うが。私こそ君が斯様な人柄でよかったと、そう思っている」
ノマルはピタリと固まった。暫し読み込みに時間をかけてから再起動したものの、この眩しさを正面から受け止めるとオーバーヒートするのは経験済みなので。
「っはー、すぐそういうこと言う~!まだ私達出会ってそんな経ってないからね?絶対そんな風に言えるほど分かってないんだからね??言うて私ってそこまで良いやつじゃないことだけは分かっててよ、マジほんと、やたら株上げないでもらって」
ノマルが照れ隠しの為べらべらと話している間に、いそいそとシエマーが切り分けたパイを移動させている。行き先は勿論ノマルの皿の上だ。
「おいコラそこ、なんで移してんの」
「食べたいのだろう?君の顔は、君が思っている以上に雄弁だ」
「ッだァもう!ありがとうやけどはよ食えや!」
一体自分の何がいいのやら。本気でそう思いながらノマルはパイをもそもそと食べる。実際のところキッパが似た者同士と言ったように、本質が近いからというのが大きいのだろうが──お互い定期的にブーメランを投げ続けている二人は、気づく由もないのだった。
「私は構わないが。自らの力だけで解決しようとする精神は高潔と言える、後にも活かされることだろう」
「つよつよフォロー助かる……」
元気に叫びつつシエマーの後をついていくノマルは、その実二日歩き続けたことによる疲労でへとへとだった。シエマーの長い足で二日かかるということは、ノマルの足だと更にかかるということ。気づいてはいたが、仮にも若者がこの程度で根をあげるわけにはいかないという変なプライドにより──途中シエマーが背負っていくかと提案したのを拒否して──こうして、出立から二日後の今日、昼前になってようやく街の付近まで来ていたのであった。
キッパに聞かせるのは土産話というよりか苦労話になりそうなほど、それはもう色々あった。ノマルは遠い目をしながら記憶を振り返っていく。微かに狼っぽい星喰が逃げていく姿が見えたとか、干し肉の固さに四苦八苦しながら食べたとかはまだ些事に過ぎない。
一番戸惑ったのは風呂問題である。村ではシャワーを浴びてごく普通に身を清めていたのだが、当然ながら野宿の際に風呂は入れない。なので、どういう原理か水が出る星の欠片で濡らしたタオルを使い、体を拭くことになった。仮にもうら若き乙女がこんな外で体を拭くのか、と暫し考えて、結局汗の不快感に負けたのである。とはいえシエマーが、
「私は背を向けているゆえ、事が済めば声をかけてほしい。あぁ、気配を厭うのであれば距離を……しかし、この辺りは獣もいる。君の安全が脅かされるのは……」
と非常に悩ましい様子で唸っていたのも大きな理由と言える。色々考えるのも面倒になって別にシエマーだしいっかとなり、早い段階で腹を括ったのだった。
そして、問題は就寝時にも起こった。見張りとその交代についてである。焚き火を見ながら先に寝るよう促すシエマーに、途中で起こす約束をして寝たのだが……ノマルが気づいた時にはすっかり朝日が輝いていたのである。
コイツ徹夜しやがったという怒りと、自分だけすやすや寝てしまったという罪悪感で「起こしてって言うたやん!!」と朝っぱらから一悶着。徹夜明けに響くかもと気づいてすぐにトーンダウンしつつ『徹夜、ダメ、絶対』を分からせることに成功。隙あらば自己犠牲に走るシエマーにノマルは頭を抱えていた。
そろそろ事前に釘を刺すようにしなければならない。そう反省するノマルの目に飛び込んできたのは、豊かな街並みであった。森を抜けて少し、小高い丘の上からは建物の並びまでよく見える。なだらかな坂を下っていけば街はもうすぐそこだ。
「おお、あれが異世界の街……」
「リバフォトという街だ。古き言葉で、大河のほとりを意味する」
「ほぇー、なんかお洒落だなぁ」
目的地が見えて途端に元気になったノマルは「よしッ」と気合を入れて足取りも軽やかに進んでいく。並んで歩くシエマーにあたたかい目で見られているとは知らずに、まっすぐ街を見据えながら。
せっせと足を動かせばじきに辿り着いた街の入口。村よりずっと大きな門は中々の迫力である。そういうテーマパークにでも来たみたいだな、と思いつつ門に近づいていく。そして門といえば忘れてはいけないのが門番の存在だ。
「…ブラグレオの者か。そちらは?」
「南より訪れし虎の子だ。己の目で見定めるべく各地を渡り歩いている」
「この街では何を?」
「レクイエの石碑を拝見する為、マエクスを借りていく」
「そうか。大橋は修繕されたとはいえ、いつ何が起こるか分からん。気を引き締めて行きなされ」
シエマーがうむ、と返して歩き出す。その後を、門番に軽く頭を下げてから追いかけるノマル。人の往来の邪魔にならないようなところまで来たところで。
「いつも通り何の話かさっっっぱり分からん」
今の短い会話で分からないことが多すぎる。知らない固有名詞とよく分からない比喩と初耳の情報を一度に出さないで欲しい。どこがと言いたげなシエマーに、ノマルは全部だが?と言いかけてやめた。順番に説明を求めないとたまに意味不明な説明をするので。
「まずブラなんとかって何?」
「ブラグレオ、私達がいた村だ」
「名前あったんかい」
「で、私虎の子だったの?人の子ではなく?」
「勝手ながら君の筋書きを作らせてもらった。題名を付けるなら、箱入り娘の周遊見聞記だろうか」
「あ、そういう比喩?ふーんなるほど……って誰が箱入り娘や!」
「えー、あとほら、橋?が直ったとかなんとかっていうのは?」
「星海大戦の折に破壊された、王国と公国を繋ぐアンネモニ大橋のことだ」
「社会の授業か?」
情報を噛み砕かせると分かりやすくなったので、何となく状況は把握したノマル。固有名詞のカタカナはちょっと怪しいが、正直名前を覚えなくても村とか橋とか街とかで十分だろう。都度教えてくれる辞書がついているので。
疑問が解けてすっきりしたことで、周りの様子が目に入り始めた。全体的に石造りの建物が多く、グレージュからオレンジがかったものまで様々な色味の外壁が混在している。海外旅行に行ったことがないノマルにとって、その目新しい景色はきらきらと輝いて見えた。
そして、何の気なしにシエマーの外套の端をくいっと引っ張る。
「ねぇねぇ、あのいっこだけ木造のやつは何?」
「冒険者の組合だ。どこの街でも同じ外観をしている」
「あれ、あれは?何かいっぱい広げてる」
「出店だ。この出入口付近では、主に旅人や冒険者向けの道具、または軽食などを売っていることが多い」
「じゃあ、あの可愛いクリーム色の建物は?」
「食堂だ。確か米の料理もあったと記憶している……行ってみるか?」
「行く!」と力強く答えてから、ノマルはハッと外套から手を離した。徐々に頬を赤く染めて、ちらりとシエマーの様子を伺う。どうかしたかと見返す穏やかな雰囲気はどう考えても保護者のそれである。逆にいたたまれなくてノマルはあえて口を開いた。
「一旦冷静になると20歳にもなってこんなはしゃいでるのちょっと恥ずいなって。気になるものいっぱいあるからって服引っ張って質問攻めとか幼女じゃん……」
「私は無邪気でいいと思うが」
「イケメン回答ありがとう。マジでシエマーのそういうマインド助かる」
そういえばシエマーっていくつなんだろうと思って聞いてみると「この世に生を受けてから34年目になる」とのこと。見た目的には逆サバだが、中身を思えば分からないでもない。こんなに落ち着いているのも頷ける。てっきり20後半くらいと思っていたノマルだが、同様にシエマーもノマルが若く見えていたらしい。
「蛹から美しい蝶への過渡期……成人前の少女かと」
「まぁどっちとも取れるから分からないってよく言われるけど、流石にそんな若くないカナー!」
ちなみにこの世界の成人は16歳なので相当である。子供じゃないと突っかかるには大人になりすぎていて、若く見られて嬉しいと感じるには若すぎるという、微妙な立ち位置のノマルはちょっと複雑な気持ちになった。
恐らくノマルの顔立ちや身長、人種による印象だろうが、だからといってお子様扱いはごめんだ。まぁ34歳からしたら20も16もさして変わらんか、とノマルは自分をなだめておいた。
そんなこんなで日も高く登り、眩しい光が降り注いでいるお昼頃。シエマーの懐中時計によれば十二時の少し前を指している。昼食をとるのに丁度いい頃合だ。道すがら出店でいくらか必要なものを買い足しながら、件の食堂へと向かう。
食堂は賑やかな大通りを進んでいってすぐの、短い階段の先にたっていた。高さがあるおかげで入口からもよく見えたらしい。明るい色味の外壁と観葉植物、木製のメニュー看板は、食堂というよりカフェっぽいと思うノマル。
「いらっしゃいませー!二名様ですね、あちらのお席にどうぞ」
明るく出迎えてくれた女性のゼロ円ハッピースマイルが眩しい。あれはプロの看板娘だなとおののきつつ、案内された席へ。
さらっとメニュー表に目を通したところ、大半は食べたことのあるものか聞いたことのある物ばかり。何故異世界に同じものがあるのか疑問だが、分かりやすいのは有難い。いくつか分からない料理が気になって、また幼女よろしく説明を受けるノマル。恥はその辺に捨てて。
魚まるごと一匹とマッシュポテトを包んだパイとか、魚といろんな野菜を煮込んだ郷土料理とか、聞いたこともない植物を使った魚の香草焼きとか。大河が近いからか、知らない名前のものは全体的に魚料理のようだ。どれも美味しそうだが、ノマルが食べたいのは米である。今この瞬間において、米に勝るものは何も無いのだ。
と、言うわけで。
「めっちゃ悩んだけどやっぱオムライス食べたーーーい!」
「くく、そうか。では、私はデンスパイにしよう。君も味を見るといい」
「やったー、ありがと!」
うーんこれはお子ちゃま、と内なる自分が言っているが、そんなこと腹ぺこの前ではどうでもいい。にっこにこで注文し、メニュー表を横に避ける際に、ふと気づく。当たり前だが、金銭の発生する労働をしていないノマルは無一文である。ここでやっと支払いに意識がいって、たらりと冷や汗がつたう。完全に親と外食へ来た子供の思考だったという現実に、思いの外ダメージを受けていた。タダ飯を純粋に喜べるような楽観さは持ち合わせていないので。
「アノ、エット、お金は働いて返すので、ナニトゾ、ナニトゾ……」
「ふむ、異なことを言う。私が同行を依頼したのだ、旅費を持つのは至極当然だろう」
「それはそうかもだけどぉ……私にできることがあったら何でも言ってよ、受けた恩くらいは返したいし」
その内なと返してくるあたり何も言う気がなさそうだが、ノマルは静かに精進する覚悟を決めたしついでに拝んでおいた。そしてなんならもう一回メニュー表をとって値段を見始めた。少しでも金銭感覚を身につけるためだ。確認したところ、オムライスは千二百ユラだった。高いのか安いのかいまいち分からないが、他と比べると若干高い気もする。
ノマルはうーんと首を捻った。収入が分からないと感覚が掴めないのだ。とはいえ、流石に面と向かって収入いくら?とは聞きづらすぎる上にご飯時にしたい話ではない。とりあえずまた別の時にしようと決めて、念の為日程の確認をすることに。
「えーと、確か目的地までは二、三日で着くんだっけ?」
「ああ。マエクスの調子に左右されるが、予定以上にかかることは無いだろう」
「うんうん。門番さんが言ってた大橋を通っていくの?」
「うむ。かつて貿易の要であった大橋には、今も変わらず兵士が在中している。北部の谷や山を越えて行くよりよほど安全な道だろう……あれほど頑強なアンネモニ大橋が、何故あの時崩落したのか不可解でならないがな」
星海大戦の時に破壊されたと言っていた大橋。あまりにもタイミングが悪すぎる。ノマルは逃げる人達や物資を運ぶ人なども通れなかったんだろうかと考えながら「悪いことってなんで重なるんだろうね」と言った。酷い災難である。
「じゃあ、その後は?」
「大橋を渡ればレクイエの土地となるのだが、そこから暫し北上することになる。慰霊碑は帝国側と公国側の境目辺りにあると聞いたのでな……そこならば、城の面影も目に映せよう」
相槌を打ってから、ノマルはん?と引っかかった。聞いた、ということは実際に行って知っているということではなく、まだ真偽が定かでないわけで。そして思い出したのはキッパが言っていた、シエマーは一度も遠出したことがないということ。
あれ、もしかしなくてもこの人、まだ一度も墓参り行けてなかったのか。
「……ちなみに大橋直ったのって、いつ?」
「二年前だ」
ノマルは静かに顔を覆った。これで行かなかった理由が道の問題ではないと判明してしまった。ただ単純に心の問題かと思うとひたすらに辛い。そして自分の場違い感が凄い。今回の旅は一大決心した結果だと分かるので偉いなぁと思いはするけども、それ連れてく人ホントに私で合ってるかと混乱した。そもそもそういう時は一人で行ってきなさいと言いたいところだが、独りだと心細いのかもなんて思うとまた辛い。
そうして一人手のひらの裏で顔をしわくちゃにした後、すーっと深呼吸して元通りの顔を作った。今は本人が平気な顔をしているので、無駄に気持ちをかき乱したくはない。ハテナを浮かべているシエマーに「なんでもない、ちょっと記憶振り返ってただけ」と言って誤魔化した。
結局ご飯時にする話ではなかったと思っていたら、運ばれてきたオムライスに意識が持っていかれた。
そう、全てはお腹が空いているせいだ。腹ぺこだから無駄に気分が落ち込むんだ、今は何もかも全部忘れて、話はお腹いっぱいになってから!
ガバガバな思考でお預けされた犬みたいに待っていたら「冷めないうちに食べるといい」と有り難い許可が下りたので、いざ実食。
「わぁ、ちゃんとオムライスだぁ……!色々ちょっとずつ違うけどおいしい……やっぱりお米っておいしいんよなぁ」
久々のお米になんだか泣きそうになりながら、はぐはぐと食べ進めるノマル。ご飯がチキンライスではなくバターライスで、海外産と日本産の間みたいな米だったが、米は米である。自分がこれほど米好きだったとは思っていなかったが、まぁ日本人だしなぁとすぐさま納得した。
「うめぇ」だの「おいひい」だの、合間で呟きながら半分ほど食べたあたりで、シエマーの料理が運ばれてきた。可愛らしい魚のような模様が入ったパイから、リアルお魚の尾びれが出ている。ノマルは写真撮らせてもらおうかなと言いかけて、そういえばスマホ無いんだったと気づく。残念ながら元の世界に落としてきたままである。
シエマーが容赦なく魚パイの腹辺りにナイフを入れて、ある程度の大きさに切り分けた。ちょっぴり勿体ない気がして、あぁ切られちゃったなと眺めていたら、切り身がひょいとノマルの皿へ乗せられて瞠目する。確かに味見の話はしていたので自然なことではあるのだが。
「おぉう、そんな初手からお腹切り分けなくても、こう、後で端っこ貰うくらいでよかったのに」
「焼きたてに勝るものはない。それに、具材の詰まった腹が最も美味だ。遠慮なく食べるといい」
「余計遠慮するが???」
と言いつつも、皿に渡ってしまった以上戻せもしないので素直に頂いておく。やや大きめのそれを半分にして、ぱくりとひと口。
サクサクのパイ生地と味が濃いめのマッシュポテトに、臭みのないあっさりとした魚がよく合っている。フィッシュパイというものを初めて食べたノマルは意外な美味しさに目を輝かせた。
「わっ、おいしい。魚のパイってこんなにおいしいんだ」
ふた口目を大事に味わって食べていると、何やら視線を感じてノマルは顔を上げた。すごく、ものすごーく、微笑ましそうに見られている。段々と保護者が板についてきてるなと思いながら「何、どうかした?」と聞いてみる。
「いや……君の顔が晴れやかで何よりだ」
「…?うん、おいしいからね……ん?あ、もしかしてさっき、なんか変な顔してた……?」
「私を慮った末、哀憐を内に押し殺したような顔をしていた」
「もろバレやないか」
自分のポーカーフェイスはまだまだ下手くそらしい。ノマルは喉奥で唸った。それを見たシエマーは目を伏せて、またパイにナイフを入れながらなんてことはないように口を開く。
「常人からすれば他人の墓参は些事に過ぎない。年頃の娘なら尚更、義務感だけで付き合えるようなものでは無い」
少し下がった眉に合わせて、瞼がほんの少し落ちる。緩やかな曲線を描く眦は、もう何度も見てきたもので。何が言いたいのか、何となく分かる気がした。
「君はよく、私がこういう人柄でよかったと言うが。私こそ君が斯様な人柄でよかったと、そう思っている」
ノマルはピタリと固まった。暫し読み込みに時間をかけてから再起動したものの、この眩しさを正面から受け止めるとオーバーヒートするのは経験済みなので。
「っはー、すぐそういうこと言う~!まだ私達出会ってそんな経ってないからね?絶対そんな風に言えるほど分かってないんだからね??言うて私ってそこまで良いやつじゃないことだけは分かっててよ、マジほんと、やたら株上げないでもらって」
ノマルが照れ隠しの為べらべらと話している間に、いそいそとシエマーが切り分けたパイを移動させている。行き先は勿論ノマルの皿の上だ。
「おいコラそこ、なんで移してんの」
「食べたいのだろう?君の顔は、君が思っている以上に雄弁だ」
「ッだァもう!ありがとうやけどはよ食えや!」
一体自分の何がいいのやら。本気でそう思いながらノマルはパイをもそもそと食べる。実際のところキッパが似た者同士と言ったように、本質が近いからというのが大きいのだろうが──お互い定期的にブーメランを投げ続けている二人は、気づく由もないのだった。
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