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序節
序説③ 神の世界の終焉
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もう何年続いただろう。
なんど同じことをしているのだろう。
きっと気づけない間にたくさんの何かを失っていたのだろう。
人間は無駄が多い。
生命の時間は有限ではないのにどうして無駄が多いのか。
「理解に苦しむ」
僕、守護の神ラバルタスは切に思っていた。
こんな退屈なのを幾千年も見続けた先代達は尊敬する。
「またそんなこと言って・・・大事なお役目ですよ」
「姉は黙っていてくれないか」
「もう、自分が優秀だからって」
不出来の姉。
名はリィン。
双子として生まれた僕らは守護の神の任に尽かされた。
言葉も最初は分からなかったが人間見続けて百年も経てば勝手に全カ国後ぐらい覚えてしまう。
もう覚えることが亡くなってしまえばあとは暇だ。
暇すぎる。
試しに作ってみた未来予測のシナリオも今はなんの変化もない。
つまらない。
「いっそ、この世界壊してやろうか」
「なんか言った?」
「何も言ってないよ・・・さてと、図書館行ってくる」
「また私に押し付けて・・・何をするつもりです」
内緒と指を口にあてて僕は離れていく。
別に話すことは何も無いけど追求されるのも面倒だ。
どうすれば運命は変わるのか。
楽しくなるのか。
僕はその方法を考えるために天界図書館に向かった。
まぁ、あれだ。
今までの歴史がそこに保存されてる感じかな。
それ以上のことではない。
「図書館の閲覧ご希望ですか?」
機械的音声が流れた。
もちろん「はい」と答える。
天界では場所事に音声が流れ施設の名前がわかる。
もし間違えていたとしたら案内までしてくれる。
耄碌した爺さんしか使わないと思う機能だけどね。
「おっ、ラバルタスの坊主また懲りずにやってきたか」
「知恵の総帥『ラプラス』僕に力を貸せ」
「礼儀を知らぬ小僧よなまったく」
白く長い髭をたずさえる爺さん。齢5000年生きているらしいが神にとってそんなのは普通だ。
ただ、百年すぎると姿を固定することが出来るのと変異させることが出来る。
ラプラスは好き好んで爺さんの格好をしてるのだ。
「それに何故お前なぞに継承しなくてはならないのだ」
「そういうと思った。だから今回はこういう手段をとることにした」
取り出したるは昨日撮った一枚の写真。それを見た瞬間ラプラスは青ざめる。
人間は本当に素晴らしい物を作ったものだ。
1発で状況を伝えることが出来た。
見せたのは彼の娘の緊縛してある姿。
言いたいことは分かりますよね?
知恵の総帥とまで言われるあなたなら・・・。
「卑怯だぞ」
「褒め言葉として、受け取っておくよ」
僕はこのつまらない世界を早く終わらせるために。
それに継承は一人の神につき一人まで。
一度継承したらもう二度と継承ができない。
それにラプラスの力は僕にとって有用であり他に渡れば邪魔な力だ。
「返答は?」
「・・・娘を解放すると誓うか?」
「それくらいならお安い御用さ」
「なら力をくれてやるだから娘は解放しろ」
手はかざされて力が送られる。
すごい、なんでも分かる。
神のシナリオは完璧なものとなりつつある。
「これで満足か?」
「そうだね、娘さんは解放しよう・・・でもね」
ザクリ
「誰もあんたを殺さないとは言ってないんだ」
「き、きさま・・・」
僕は透明な包丁を突き刺していた。水で作られた包丁。僕自身は触れられないが自由に動かせる包丁。
「小僧・・・お前は何がしたい」
「まだ生きてたんだ。色を薄くしすぎたせいで威力が落ちてたのか」
「聞いているのはこっちだ小僧、何がしたいのかと聞いておる!!」
「何がしたいって? そんなの決まってる」
僕が望むのは一つだ。
「このくだらない天界も現世も全てを一度壊すためだ」
「がはっ、神でありながら異端の道を進むつもりか」
「うるさいよ」
無数に今度は色濃く殺意に満ちた研ぎ澄まされた水の包丁がラプラスを囲む。
「せめて相打ちにしてや・・・」
「だからうるさい、用済みは消えろ」
反撃をさせる間もなく串刺しにする。
もうラプラスは沈黙。図書館は血の匂いが充満した。
返り血は浴びたものの水の力で掃除。
神でも血は流れるのか。
少し勉強になったよ。
「さて、あと僕がやることは一つだ」
僕は門の前まで戻ってきた。姉は律儀に門を警備している。他に誰もいない。
好都合だ。邪魔はいないと言っていい。
「リィン、帰ってきたよ」
「随分早いお帰りですね。なにかしてきたのですか?」
「何でもないよ・・・ところで今度は僕が見張るよ」
「急にやる気出してどうしたのよ」
「なに、気分が乗っただけさ。リィンは一服してきなよ」
「あんたがそこまで言うなら行ってくるわ」
「・・・気をつけて行ってくるといいよ」
さぁ、これで準備は整った。
「世界の変革の始まりだ!!」
リインsaid
暇な時間が過ぎていた。
優秀で自由気ままな弟がいるせいでここから長時間離れられない。
なんか食べたいなーと思っていたらいい匂いが向かってくる。
「天界ダコを使ったたこ焼きはいかがですかー」
「ひ、一つください」
欲望に負けて買ってしまいました。
私たち神は食事を必要としません。
これは一種の娯楽ということなのです。
それと天界ダコとはまるで本来のタコと別物で足が100本ある天界だけに住む生物だ。
なぜこんな生物がいるか。
単にこの門が原因である。
「これが昔ら開いていたなんて・・・ハフハフ」
たこ焼きをたべながら門を見上げる。
この門は内側から開けることは出来ない。
でもそれは内側から開けられないだけであって外側からは開けられる。
というか最初は門というかゲートが存在していてそれに蓋をするようにこの門が設置されたんですけど。
「それにしてもヒマだなー」
たこ焼きも食べ終わってしまったし本当に暇だ。
というかたこ焼き売りはなぜここに来たのだろう。
とても不思議である。
「ふわぁ、買い物行きたい」
少しくらい離れてても平気だよね?
十五分以上離れてはいけないし・・・。
「リィン、帰ってきたよ」
「随分お早いお帰りですね」
まさかたこ焼き食べてたの見られたかな?
「なにかしてきたのですか?」
「何でもないよ・・・ところで今度は僕が見張るよ」
「急にやる気出してどうしたのよ」
まさか風邪でも引いた?
仮にも神様だから風邪にはならないけどどういう風の吹き回しだろ。
「なに、気分が乗っただけさ。リィンは一服してきなよ」
飛んだ気まぐれもあったものだ。
・・・1時間くらいなら離れてても平気かな?
「あんたがそこまで言うなら行ってくるわ」
「・・・気をつけて行ってくるといいよ」
今は弟の好意に甘えておくとしよう。
まずは買い物して好きなもの食べて・・・ああ自由って素晴らしい。
神の世界では賃金こそあるものの使う機会などないから持て余していました。
「おっ、門のお嬢ではないですか」
「その嫌味はスクナビコナ・・・何のようです」
「どうってことはないよ・・・学校以来だね」
天界にも学校はある。
神には知識が必要だということで年間通して50年くらい授業がありましたけど。
「ところで・・・弟くんが今門の守護かい?」
「うん、優秀な弟が門番」
スクナビコナが考え込む・・・一体何を考えてるんだろ。
「少し・・・いや、まだ確証は持てないけど・・・そんなまさか」
「ん、何かあったの?」
「さっき図書館の方で音がしたんだ。僕がそれを確認しに戻ってきたところで君に出会った」
スクナビコナから聞くと五分前の出来事で何が起きてはまずいと準備して向かっていたところらしい。
私と話していて良かったのでしょうか。
「ついでだし君も来るかい?」
「気になるし一緒に行きます」
興味本位ではありません。
そう興味本位では・・・。
図書館の方へ向かうとなにか変な匂いがしてきた。
何の匂いですかこれは・・・。
図書館も何故かほとんど真っ暗で見えないのですが。
「この匂いは・・・まずい!!」
「ど、どうしたの!」
急に走り出したスクナビコナに声をかけるものの置いてかれる。
必死な形相で先へ先へ進むスクナビコナにこちらも急いで追いつこうとする。
そして急に立ち止まった。
「やはりか・・・」
「本当にどうしたのよ・・・えっ?」
ピチョン。
床に流れてる何かを踏んだ。まるで水を踏んだような感じ。でもこの附近はかなりの悪臭が漂っている。
床に座って手で水を触ってみる。
ヌチャリ。
完全に水ではない。
水ならもっとサラッとしてるはずだ。
あかりがないと見えずらいな。
「ライト」
「バカっ、光をつけるな」
「何を言って・・・きゃぁ!」
光をつけて先を見た。
見てしまった。
図書館の主ラプラスがうつ伏せで血を流し倒れている所を。
神は年齢では死なない。
だとしたらこの死は誰かによってもたらされたもの。
神が神を殺すなど大罪だ。
それが分からない神はいない。
「見てしまったんだ・・・そのまま光をつけておいてくれ」
そういうとスクナビコナはラプラスの遺体を調べ始めた。
よくあんなもの調べられるものです。
でも神とはいえこうなれば人間と同じ。
万能であるようで生もしっかりとある。
もっと言えば精神体というもので精神を攻撃されてしに至った。そう考えることもできる。
「なるほど・・・これは犯人が絞れてきたね」
「どうして?」
「傷は鋭利な刃物と見せかけて多分神が使った超常の力。本来持つ能力が行使された可能性がある。だとすれば該当するのは『スサノオ』『オロチ』そして『ラバルタス』」
なぜ弟の名前が・・・。
あのこの気まぐれになにか関係があるのだろうか。
そう考えていたら急に異変が起きた。
ゴォン
鈍い鉄の扉が開く音がした。そして鉄の扉など一つしかない。
私たちが守ってるはずの異界の門だ。
「これは確定したということでいいんだろうな・・・それに」
突如暴風が吹き荒れる。
風には熱い。多分これは、冷えきったところに相当の熱量を加えられたために起きた現象だ。
「完全に壊されたかもしれない」
開いてない状態では神の力は効かない。だけども開いたら力で破壊出来る。
これは前任者から私だけが聞いてたもので普通は知らないことだ。
しかも弟には話さないように念を押されていた。
「くっ、お前の弟がここまでアグレッシブだとは思わなかったぞ」
「変な感じはしてたけどこんなことするなんて思わなかったのですよ」
「理屈をこねるのはあとだ。一刻も早くこの事態を収めなければ大変なことになる」
そう、大変なことになる。
神の世界だけですめばいい。だけどそうはいかない。
異界の門は中に変なものが住んでいるわけでもない。あるのはただの瘴気。対応した生物を化物にするガスだ。
「私はまず家を探ります。そっちはラバルタスをお願いします」
「了解した、少してひどくやるぞ」
私は自分の家へと向かった。 だけどそこには今の今まで住んでた面影はなく。ただ単に壊れた家が存在していた。
「ん、んんんんんんん!!」
・・・あれ?
なんかうめき声が聞こえる。この家の下からだ。
瓦礫が邪魔して確認することは今できない。
私の力はほとんどが補助。
瓦礫を退けることは難しい。
そう難しいだけでできないことは無い。
ああ、もう、こういうの書きたくないんだけど!!
人間が作り出した発明。銃などに使われて戦場で活躍したもの。火薬。爆発物の代表だ。
書くものはないので地面に設計図を書く。
筒状の入れ物。着火するための紐。中には火薬の合成素材の名前を。
C7H5N3O6。これがなんの記号かわかる人もいるでしょう。
TNT(トリニトロトルエン)と呼ばれる火薬の化学式である。
(完成)
図面に力を込める。
この程度なら多分この場でも再現できるはずだ。
ボウン
目論見通り再現された爆弾が地面からはじき出された。形もサイズも設計通り。
後はこれを点火するだけ。
「『赤龍の爪』」
人差し指で縄の先を軽くかすめる。
火がつきどんどん短くなっていく。
いくよ。
せーの!
「とりゃー」
私は急いで隠れた。
火薬量が多くてはこちらの方にも被害が出るし他にも被害が出る可能性もある。
「耳を塞いでいてください」
私はそう言って離れた。
吹き飛ばすには100gあればそれなりに行けるはずだと考えてそれを書いたけど・・・私死なないよね?
考えているうちに爆破の時間は近づいてる。
「うわぁ」
とっさに隠れる。
そのあと耳に響くような爆発と突風と瓦礫。しまった、破壊力が強すぎてしまいましたか。
トリニトロトルエンは1g4キロジュール(1ジュール=1m)とのことです。で100となると1万超える重さのものを4mは飛ばせる計算でした。
(下は大丈夫でしょうか)
これだけの威力。
地面が抉れれても不思議はない。そーと確認してみましたがどうやら無事のようです。
どかした先に扉が見えます。ラバルタスは何を考えていたのか。それを知る手がかりになるか。
分からないですけど・・・開けますか。
『炎龍の鉤爪』
効果は特定の範囲内のみで炎龍の火の力を解放できる私の力の一つ。攻撃型なのはこの能力だけで他の能力は補助の役割が多い。
鉤爪を発動させると赤いオーラが指先を包む。
そのまま鉤爪で扉を切りつけた。
特に問題なく扉は切り刻むことに成功。
扉自体は重くもなく軽いものだったらしくどかすのも苦労しなかった。
「・・・女の子?」
いたのは、裸で腕と足を縄で縛られさるぐつわを口にしている白目になっていた少女であった。
・・・あれ?
もしかして気絶って私のせい?
片方の耳から血が出てるけどもしかして爆破のせい?
「とりあえず・・・生きてますかー」
「生きとるわー!!」
さるぐつわを外して声をかけたら元気な声。
おお、生きてました。
良かったです。
殺神になる所でした。
「・・・ところであのキチガイはどこっ!?」
「弟ならもうここにはいませんよ。私はあなたを助けに来ました」
「あんた、あいつの姉かよ。教育はどした教育は」
あ、頭が痛いですね。
たはは。
「縄も切りますね」
「ありがと、んで服とかない?」
「ちょっと待って・・・」
確かにこの姿のままでは刺激が強い。
何より少女であるし肌は見せたくはないだろう。
お腹減るんだけど仕方ない。
「『クリエイション』」
そこら辺にある木材を手にして唱える。
ほわぁという光が木を隠す。消えると同時に一枚の布が現れた。
これでいい?
布を渡して様子を見ながらうかがった。
何も無いよりはマシと女の子は羽織ってくれた。
「そう言えばどうして私の声が聞こえるの?」
「・・・そうか。鼓膜破れてるはずと思ってるのか」
それはそうでしょう。
なんせあの爆発の音を至近距離から聞けば鼓膜敗れてしかり。
ついでに耳から血が出てれば誰だって破れてると思う。
「あたしの力は『超再生』と『身体硬化』、それと『5感強化』」
飛んだ肉体派の能力をお持ちで・・・。
それにしても超再生ですか。
なるほどそれで神にしては能力が少ないんですね。
納得です。
神の生まれ持つ能力は、平均7つ。
私でさえ七つ持っている。
これは神本来の力とは別の能力の話しで神本来の力はもっと別なところに本質を持つ。
「神の力の方は?」
「継承はされてない。だけどなんか力が遠のいた感じがする」
遠のいた?
「それになんかジジイの気配が無くなってるんだよな」
「ちょっと待って、もしかしてあなたのお父さんって」
「ん、ラプラスだよ」
なんでラプラスの娘子がこんな場所に監禁されてる。
ラバルタスが監禁してラプラスを殺した。
一体なんのために。
門を開ける手段を見つけるため?
「門を開けた理由もわからない。でもそれよりも門を閉じる方が先決・・・なのでしょうか」
「あたしが知ってるわけじゃないけど相当な異常事態みたいだし手を貸すよ」
「ありがたいです。門へ向かいますよ」
私たち2人は門へと向かった。
そこには門が開いているだけではなく私の弟と無数の先神達の屍があった。
なんでこんなことになっている。
なんでこんなふざけたことになっている。
「ラバルタス!!」
「あっ、リィン。やっと来たんだ。それに招かざる客人も来てるとはね」
「あたしを監禁しといてよく言うわこのクズ」
「クズ呼ばわりとは・・・誰に意見してると思ってるんだい。僕は誰よりも強い。この惨状が何よりの証拠さ」
そう言葉通り彼は最強の神。そう言っているのだ。彼は1人だけでこれだけの人数を屠っている。
もう誰も止められないと思ってしまうほどに圧倒的な力であった。
「いったい何を考えてこんなことしたの」
「答えをいちいち言うと思うかい。そんなの自分で考えなよ。それよりも僕は待ってたんだ・・・リィン・・・君を、ね」
ラバルタスは私に嫌な笑みを浮かべていた。
私を待っていた?
優秀な弟であって目的のためなら何でもできるような残忍な男がいったい何のために。
「いやー、まさかその子まで連れてきたのは予想外だったけどね 」
「その声は間違いない。よくも閉じ込めてくれたな」
「効率良くことを進めるためだったんだよ。さて、少々面倒になってきたみたいだね」
弟はあまり見たことのないため息をつく。
この子は暇だとはいうけどため息はあまり出さない子だった。だからこそ本当に面倒に感じてると考えて良い。
「僕は君を殺せない。リィンじゃないよ。そこのラプラスの娘さ」
「そうかそういうことか。なら殺れるチャンスはあるって事だな」
「そうだけど無力化が面倒な相手ってだけで僕に負けるという結果はない」
そう、ラバルタスは身体能力強化では勝てない。
その理由は以下の能力にある。
火、水、木、金、土。
この五つを作り出し操る能力。
そして空中に浮く能力。
さらにもう一つ驚異的力がある。
一時間の間に30秒時を止められる『時間超越』という神じめた力。いや、神様だけどね。
発動中は他の能力は使えない。それを引いてもあまりある力だ。
「ほら、もう捕まってる」
「ぐっ」
ラプラスは樹木で腕を拘束されていた。
時間を何秒止めたかは定かではない。だけども間違いなく数秒は使った。
「離せ!!」
「足も邪魔だね」
「足まで」
完全に弄ばれている。
どうしたらいいんだ。
全然考えつかない。
「さて、リィン。僕が君を待っていた理由だけど僕の成果を君に送ろうと思ってね」
「いったい何を・・・はっ」
この一瞬の間に背後に回られた。まだ時間を残していたのか。
そしてラバルタスは私の頭に手をかざす。
死んだ。私はそう思ったんだけどもそれは訪れなかった。
代わりになにか埋め込まれるような気持ち悪い感覚が生まれる。
「これでよし」
「何をしたの」
「僕の作ったものを植え込んだだけさ。1人じゃ今は扱えないものでね」
そう言ってかざした手をラバルタスは遠ざける。
ラバルタスは共有と呟くと頭に気持ち悪さは消えて頭の中に未来の出来事が雪崩のように入ってくる。
「うがぁ!!」
「あんた大丈夫か」
「ラプラスの娘、平気だよ。単なる初期段階のダウンロードさ」
ダウンロード・・・幾万と先のことが記されているこの変な力のこと?
それにこれが本当に起こるというのなら!!
「あんた・・・狂ってる」
「狂ってなくちゃこんなことは出来ないさ。それじゃ僕はお先に行かせてもらうよ。現世にね」
「待てっ」
静止の言葉を聞く耳持たず6m級の穴を作り飛び降りる。
この場所に穴が作られた。
それの意味するところは・・・地上への瘴気の湧出。
「くっ、人間は平気でも他の生物が耐えられるかどうか」
瘴気は知能が小さいものに変化をもたらすことが多い。
変化が多いのは爬虫類などが主で生存本能とかで動いているものが進化してしまう。
塞ぐ手段は・・・あるにはあるけど上手くいくかどうか。
やるしかないけど。
天界の地面にまた設計図を書く。
半径3m、材質はコンクリート。設置目標は大穴。
これでどう!!
設計図通りに穴の上にコンクリートで作られた蓋が出現して置かれる。
これで一安心。そう思っていたのだがミシミシといって蓋が壊れた。
「やっぱり塞ぐのは無理ですか」
「そうでしょうね。こうなると私たちが生き残る手段は限られてくるし何より覚悟がいる」
「生き残る手段ってまさか」
それは最後の手段。私が口に出さなかった一番現実的なプラン。
「現世に落ちるんですよ。肉をつけて」
「たしかに生き残るならそれしか方法はないけど」
「そのためにはさっさと事情を説明しに・・・その前に解いて」
「ご、ごめんなさい」
縄は強くしめられているので普通に解くことは難しい。
これはちょっと我慢してもらうしかないかな。
「『炎龍の鉤爪』」
「えっ、ちょっ、まっ」
「ていっ」
「いぎゃー!」
そこまで騒ぎ立てるようなことでしょうか?
早く解くなら手っ取り早いと思うのですが。
「焼き切るとかはじめに言えよ」
「言ったらもっと暴れていましたよね?」
「それは私が燃やされかねないからだよ!!」
「まぁまぁ、とりあえず行きますよ」
「あんたいい性格してるよ。あいつの姉だけある」
あんなのと一緒にしないで下さい。激おこですよ。
さて、広場に着くと死に絶えた神以外の神が全員揃っている。
「ようやっときおったな」
「ツクヨミのおじさん」
「まだ1000年も生きておらんわい。まだ999歳じゃ」
いや、普通に生きまくってるからそれ。
人間の寿命は今は90が平均で、それに比べたら生きすぎなくらいだ。
「状況を教えてくれるのじゃろうな」
「はい、今から私の知る全てをお伝え致します」
私は起きたことを事細かに伝えたのだった。
偉い方、同じ年に生まれた若い同胞が真剣になにか考え込んでいる。
ことの重大さ、もうこの世界を捨てるしかないということもすぐ理解しているのに他のことが気がかりなのだろう。
皆、今までの生活を失いたくないのだ。
人間の世界に降りればお金が絶対不可欠。しかし私たち神はお金を持っていない。つまり降りれば絶望的状況になるという事だ。
(それでも・・・降りなければ私たちとて死ぬだけです。残るもよし、潔く死ぬのもよし。でもここで死ぬことを選べば命は潰える。選ぶべきは一つだけのはずですが)
なのにいまだに前代の人たちは悩んでいる。
この時間がもったいない。
まだやるべき事があるのに。
仕方ないのでその用事を先にすませるとしましょう。
「守護神の礎となる力よ。今ここに示せ」
「・・・その能力は!!」
前代たちも気づきましたか。
そうです。これは守護神が継承される能力で継承されてから1回しか使えない能力。
神から人間に落ちる以上神としての本来継承される能力は使えなくなる。
なら今ここで使ってしまわないともったいない。
「今更人間界を改変して何になる。我らを住みやすくさせるのか?」
「違いますよ・・・人間には抵抗するすべを持ってもらいます」
このまま地上に瘴気が蔓延すれば近い将来滅びる。
そうすると必然的に私たちも生きられない。
まず人間を生かすことが最重要であるということ。
「改変・・・そうですね。人間にも能力を持ってもらいましょう」
人間の脳のリミッターが多少外れると予想されるけど仕方がない。
それでも人間の容量ではせいぜい一つ程度だと思うけど。
後は脳のリミッター・・・100だと人間の体は壊れてしまう。
ここは70くらいにしときましょう。
「人間に能力を与える。バカな、そんなことすれば世が荒れるぞ」
「もう既に荒れきってます。だからこそ必要なこと・・・よしできた」
頭の中で反復する。
人間の脳のリミッターを外し能力を発現させる。
変えるのはこれだけ。
これ以上は能力が許さないでしょう。
そして発動したからにはもう効果が現れているはず。
「すぐ準備を始めますよラプ」
「えっ、それ私のこと!!」
「ラプラスの娘とか長ったらしいのは好きじゃないので」
「せめてラプラスって言ってくれないかなー。まぁやりますけど」
文句を言いながらもラプは現世に転生する術を唱え始めた。
神が誰でも使える肉付という儀式。
現世に行くには神様の位を人間にまで落とさなくてはならない。
そして肉付した場合2度と純粋な神には戻れない。
それでも私たちは肉付を施した。
ちなみに肉付は肉体が変化する人もいる。
「OK、いつでも行けるよ」
「こっちも準備できた。地上に降りましょうか」
「まて、お主ら待つのじゃ」
「あと3分以内にどうぞ」
瘴気が人間界に届くまで時間はない。
目算としては8分程度。
それ以降はもう肉付しても間に合わないほど瘴気に侵されてしまうだろう。
いくら善神とて瘴気によって悪神になる。自分が自分でなくなるのは本当に辛いことです。
「わかった我らも下界に落ちる。用事を済ませてからな」
「・・・3分です。では生き残りたくなければどうぞその場を動かないでください。私たちは行きましょう」
地上に私たちは降りるため穴に落ちる。
これで神の世界にはもう戻れない。
いや、戻っても混沌に満ちてるだろうけど。
もし神が残っていたとしても人に崇められるようなものにはならないでしょう。
「後悔はないの?」
「あるわけがないじゃないですか。この穴の終着点でワープしますよ」
ヒュオン。
「いたぁ!!」
不思議な音とともに体が何かにぶつかる。
天界では考えられない痛み。
ハッと周りを見渡した。
「誰も・・・いない」
先程まで一緒にいたラプの姿が見えない。
別の場所に飛ばされたの?
それは予想外。
・・・それよりも本当にここどこ?
人間界は光を電気で生み出す技術を使い周りを明るくしてるってきいたんだけど・・・。
ドスン。
「あいたぁ!!」
なんか振袖をきた身長140の女の子が落ちてきました。
そんな神様いましたっけ?
基本神様は男ばかり何ですけど。
「くそう、地上なんて大嫌いじゃ」
「どなた様で?」
「お、お主はリィンではないか。さつきぶりやのー。って儂を忘れたのか」
「忘れたというか見た目のせいでわからないというか」
「見た目じゃと・・・」
少女は体全体をまさぐって最後に顎に手を当てる。
確認を終えた少女は真剣な顔でこう言う。
「髭が無くなっとる」
「注目してたのそこですか!!」
まさに普通は驚かない場所で驚いた。
髭・・・髭?
まさかあのツクヨミのおじいさん。
「っ、服が汚れるがちと地下に潜るぞ」
瞬間地面がえぐり取られその穴に飛び込むことになった。
なんど同じことをしているのだろう。
きっと気づけない間にたくさんの何かを失っていたのだろう。
人間は無駄が多い。
生命の時間は有限ではないのにどうして無駄が多いのか。
「理解に苦しむ」
僕、守護の神ラバルタスは切に思っていた。
こんな退屈なのを幾千年も見続けた先代達は尊敬する。
「またそんなこと言って・・・大事なお役目ですよ」
「姉は黙っていてくれないか」
「もう、自分が優秀だからって」
不出来の姉。
名はリィン。
双子として生まれた僕らは守護の神の任に尽かされた。
言葉も最初は分からなかったが人間見続けて百年も経てば勝手に全カ国後ぐらい覚えてしまう。
もう覚えることが亡くなってしまえばあとは暇だ。
暇すぎる。
試しに作ってみた未来予測のシナリオも今はなんの変化もない。
つまらない。
「いっそ、この世界壊してやろうか」
「なんか言った?」
「何も言ってないよ・・・さてと、図書館行ってくる」
「また私に押し付けて・・・何をするつもりです」
内緒と指を口にあてて僕は離れていく。
別に話すことは何も無いけど追求されるのも面倒だ。
どうすれば運命は変わるのか。
楽しくなるのか。
僕はその方法を考えるために天界図書館に向かった。
まぁ、あれだ。
今までの歴史がそこに保存されてる感じかな。
それ以上のことではない。
「図書館の閲覧ご希望ですか?」
機械的音声が流れた。
もちろん「はい」と答える。
天界では場所事に音声が流れ施設の名前がわかる。
もし間違えていたとしたら案内までしてくれる。
耄碌した爺さんしか使わないと思う機能だけどね。
「おっ、ラバルタスの坊主また懲りずにやってきたか」
「知恵の総帥『ラプラス』僕に力を貸せ」
「礼儀を知らぬ小僧よなまったく」
白く長い髭をたずさえる爺さん。齢5000年生きているらしいが神にとってそんなのは普通だ。
ただ、百年すぎると姿を固定することが出来るのと変異させることが出来る。
ラプラスは好き好んで爺さんの格好をしてるのだ。
「それに何故お前なぞに継承しなくてはならないのだ」
「そういうと思った。だから今回はこういう手段をとることにした」
取り出したるは昨日撮った一枚の写真。それを見た瞬間ラプラスは青ざめる。
人間は本当に素晴らしい物を作ったものだ。
1発で状況を伝えることが出来た。
見せたのは彼の娘の緊縛してある姿。
言いたいことは分かりますよね?
知恵の総帥とまで言われるあなたなら・・・。
「卑怯だぞ」
「褒め言葉として、受け取っておくよ」
僕はこのつまらない世界を早く終わらせるために。
それに継承は一人の神につき一人まで。
一度継承したらもう二度と継承ができない。
それにラプラスの力は僕にとって有用であり他に渡れば邪魔な力だ。
「返答は?」
「・・・娘を解放すると誓うか?」
「それくらいならお安い御用さ」
「なら力をくれてやるだから娘は解放しろ」
手はかざされて力が送られる。
すごい、なんでも分かる。
神のシナリオは完璧なものとなりつつある。
「これで満足か?」
「そうだね、娘さんは解放しよう・・・でもね」
ザクリ
「誰もあんたを殺さないとは言ってないんだ」
「き、きさま・・・」
僕は透明な包丁を突き刺していた。水で作られた包丁。僕自身は触れられないが自由に動かせる包丁。
「小僧・・・お前は何がしたい」
「まだ生きてたんだ。色を薄くしすぎたせいで威力が落ちてたのか」
「聞いているのはこっちだ小僧、何がしたいのかと聞いておる!!」
「何がしたいって? そんなの決まってる」
僕が望むのは一つだ。
「このくだらない天界も現世も全てを一度壊すためだ」
「がはっ、神でありながら異端の道を進むつもりか」
「うるさいよ」
無数に今度は色濃く殺意に満ちた研ぎ澄まされた水の包丁がラプラスを囲む。
「せめて相打ちにしてや・・・」
「だからうるさい、用済みは消えろ」
反撃をさせる間もなく串刺しにする。
もうラプラスは沈黙。図書館は血の匂いが充満した。
返り血は浴びたものの水の力で掃除。
神でも血は流れるのか。
少し勉強になったよ。
「さて、あと僕がやることは一つだ」
僕は門の前まで戻ってきた。姉は律儀に門を警備している。他に誰もいない。
好都合だ。邪魔はいないと言っていい。
「リィン、帰ってきたよ」
「随分早いお帰りですね。なにかしてきたのですか?」
「何でもないよ・・・ところで今度は僕が見張るよ」
「急にやる気出してどうしたのよ」
「なに、気分が乗っただけさ。リィンは一服してきなよ」
「あんたがそこまで言うなら行ってくるわ」
「・・・気をつけて行ってくるといいよ」
さぁ、これで準備は整った。
「世界の変革の始まりだ!!」
リインsaid
暇な時間が過ぎていた。
優秀で自由気ままな弟がいるせいでここから長時間離れられない。
なんか食べたいなーと思っていたらいい匂いが向かってくる。
「天界ダコを使ったたこ焼きはいかがですかー」
「ひ、一つください」
欲望に負けて買ってしまいました。
私たち神は食事を必要としません。
これは一種の娯楽ということなのです。
それと天界ダコとはまるで本来のタコと別物で足が100本ある天界だけに住む生物だ。
なぜこんな生物がいるか。
単にこの門が原因である。
「これが昔ら開いていたなんて・・・ハフハフ」
たこ焼きをたべながら門を見上げる。
この門は内側から開けることは出来ない。
でもそれは内側から開けられないだけであって外側からは開けられる。
というか最初は門というかゲートが存在していてそれに蓋をするようにこの門が設置されたんですけど。
「それにしてもヒマだなー」
たこ焼きも食べ終わってしまったし本当に暇だ。
というかたこ焼き売りはなぜここに来たのだろう。
とても不思議である。
「ふわぁ、買い物行きたい」
少しくらい離れてても平気だよね?
十五分以上離れてはいけないし・・・。
「リィン、帰ってきたよ」
「随分お早いお帰りですね」
まさかたこ焼き食べてたの見られたかな?
「なにかしてきたのですか?」
「何でもないよ・・・ところで今度は僕が見張るよ」
「急にやる気出してどうしたのよ」
まさか風邪でも引いた?
仮にも神様だから風邪にはならないけどどういう風の吹き回しだろ。
「なに、気分が乗っただけさ。リィンは一服してきなよ」
飛んだ気まぐれもあったものだ。
・・・1時間くらいなら離れてても平気かな?
「あんたがそこまで言うなら行ってくるわ」
「・・・気をつけて行ってくるといいよ」
今は弟の好意に甘えておくとしよう。
まずは買い物して好きなもの食べて・・・ああ自由って素晴らしい。
神の世界では賃金こそあるものの使う機会などないから持て余していました。
「おっ、門のお嬢ではないですか」
「その嫌味はスクナビコナ・・・何のようです」
「どうってことはないよ・・・学校以来だね」
天界にも学校はある。
神には知識が必要だということで年間通して50年くらい授業がありましたけど。
「ところで・・・弟くんが今門の守護かい?」
「うん、優秀な弟が門番」
スクナビコナが考え込む・・・一体何を考えてるんだろ。
「少し・・・いや、まだ確証は持てないけど・・・そんなまさか」
「ん、何かあったの?」
「さっき図書館の方で音がしたんだ。僕がそれを確認しに戻ってきたところで君に出会った」
スクナビコナから聞くと五分前の出来事で何が起きてはまずいと準備して向かっていたところらしい。
私と話していて良かったのでしょうか。
「ついでだし君も来るかい?」
「気になるし一緒に行きます」
興味本位ではありません。
そう興味本位では・・・。
図書館の方へ向かうとなにか変な匂いがしてきた。
何の匂いですかこれは・・・。
図書館も何故かほとんど真っ暗で見えないのですが。
「この匂いは・・・まずい!!」
「ど、どうしたの!」
急に走り出したスクナビコナに声をかけるものの置いてかれる。
必死な形相で先へ先へ進むスクナビコナにこちらも急いで追いつこうとする。
そして急に立ち止まった。
「やはりか・・・」
「本当にどうしたのよ・・・えっ?」
ピチョン。
床に流れてる何かを踏んだ。まるで水を踏んだような感じ。でもこの附近はかなりの悪臭が漂っている。
床に座って手で水を触ってみる。
ヌチャリ。
完全に水ではない。
水ならもっとサラッとしてるはずだ。
あかりがないと見えずらいな。
「ライト」
「バカっ、光をつけるな」
「何を言って・・・きゃぁ!」
光をつけて先を見た。
見てしまった。
図書館の主ラプラスがうつ伏せで血を流し倒れている所を。
神は年齢では死なない。
だとしたらこの死は誰かによってもたらされたもの。
神が神を殺すなど大罪だ。
それが分からない神はいない。
「見てしまったんだ・・・そのまま光をつけておいてくれ」
そういうとスクナビコナはラプラスの遺体を調べ始めた。
よくあんなもの調べられるものです。
でも神とはいえこうなれば人間と同じ。
万能であるようで生もしっかりとある。
もっと言えば精神体というもので精神を攻撃されてしに至った。そう考えることもできる。
「なるほど・・・これは犯人が絞れてきたね」
「どうして?」
「傷は鋭利な刃物と見せかけて多分神が使った超常の力。本来持つ能力が行使された可能性がある。だとすれば該当するのは『スサノオ』『オロチ』そして『ラバルタス』」
なぜ弟の名前が・・・。
あのこの気まぐれになにか関係があるのだろうか。
そう考えていたら急に異変が起きた。
ゴォン
鈍い鉄の扉が開く音がした。そして鉄の扉など一つしかない。
私たちが守ってるはずの異界の門だ。
「これは確定したということでいいんだろうな・・・それに」
突如暴風が吹き荒れる。
風には熱い。多分これは、冷えきったところに相当の熱量を加えられたために起きた現象だ。
「完全に壊されたかもしれない」
開いてない状態では神の力は効かない。だけども開いたら力で破壊出来る。
これは前任者から私だけが聞いてたもので普通は知らないことだ。
しかも弟には話さないように念を押されていた。
「くっ、お前の弟がここまでアグレッシブだとは思わなかったぞ」
「変な感じはしてたけどこんなことするなんて思わなかったのですよ」
「理屈をこねるのはあとだ。一刻も早くこの事態を収めなければ大変なことになる」
そう、大変なことになる。
神の世界だけですめばいい。だけどそうはいかない。
異界の門は中に変なものが住んでいるわけでもない。あるのはただの瘴気。対応した生物を化物にするガスだ。
「私はまず家を探ります。そっちはラバルタスをお願いします」
「了解した、少してひどくやるぞ」
私は自分の家へと向かった。 だけどそこには今の今まで住んでた面影はなく。ただ単に壊れた家が存在していた。
「ん、んんんんんんん!!」
・・・あれ?
なんかうめき声が聞こえる。この家の下からだ。
瓦礫が邪魔して確認することは今できない。
私の力はほとんどが補助。
瓦礫を退けることは難しい。
そう難しいだけでできないことは無い。
ああ、もう、こういうの書きたくないんだけど!!
人間が作り出した発明。銃などに使われて戦場で活躍したもの。火薬。爆発物の代表だ。
書くものはないので地面に設計図を書く。
筒状の入れ物。着火するための紐。中には火薬の合成素材の名前を。
C7H5N3O6。これがなんの記号かわかる人もいるでしょう。
TNT(トリニトロトルエン)と呼ばれる火薬の化学式である。
(完成)
図面に力を込める。
この程度なら多分この場でも再現できるはずだ。
ボウン
目論見通り再現された爆弾が地面からはじき出された。形もサイズも設計通り。
後はこれを点火するだけ。
「『赤龍の爪』」
人差し指で縄の先を軽くかすめる。
火がつきどんどん短くなっていく。
いくよ。
せーの!
「とりゃー」
私は急いで隠れた。
火薬量が多くてはこちらの方にも被害が出るし他にも被害が出る可能性もある。
「耳を塞いでいてください」
私はそう言って離れた。
吹き飛ばすには100gあればそれなりに行けるはずだと考えてそれを書いたけど・・・私死なないよね?
考えているうちに爆破の時間は近づいてる。
「うわぁ」
とっさに隠れる。
そのあと耳に響くような爆発と突風と瓦礫。しまった、破壊力が強すぎてしまいましたか。
トリニトロトルエンは1g4キロジュール(1ジュール=1m)とのことです。で100となると1万超える重さのものを4mは飛ばせる計算でした。
(下は大丈夫でしょうか)
これだけの威力。
地面が抉れれても不思議はない。そーと確認してみましたがどうやら無事のようです。
どかした先に扉が見えます。ラバルタスは何を考えていたのか。それを知る手がかりになるか。
分からないですけど・・・開けますか。
『炎龍の鉤爪』
効果は特定の範囲内のみで炎龍の火の力を解放できる私の力の一つ。攻撃型なのはこの能力だけで他の能力は補助の役割が多い。
鉤爪を発動させると赤いオーラが指先を包む。
そのまま鉤爪で扉を切りつけた。
特に問題なく扉は切り刻むことに成功。
扉自体は重くもなく軽いものだったらしくどかすのも苦労しなかった。
「・・・女の子?」
いたのは、裸で腕と足を縄で縛られさるぐつわを口にしている白目になっていた少女であった。
・・・あれ?
もしかして気絶って私のせい?
片方の耳から血が出てるけどもしかして爆破のせい?
「とりあえず・・・生きてますかー」
「生きとるわー!!」
さるぐつわを外して声をかけたら元気な声。
おお、生きてました。
良かったです。
殺神になる所でした。
「・・・ところであのキチガイはどこっ!?」
「弟ならもうここにはいませんよ。私はあなたを助けに来ました」
「あんた、あいつの姉かよ。教育はどした教育は」
あ、頭が痛いですね。
たはは。
「縄も切りますね」
「ありがと、んで服とかない?」
「ちょっと待って・・・」
確かにこの姿のままでは刺激が強い。
何より少女であるし肌は見せたくはないだろう。
お腹減るんだけど仕方ない。
「『クリエイション』」
そこら辺にある木材を手にして唱える。
ほわぁという光が木を隠す。消えると同時に一枚の布が現れた。
これでいい?
布を渡して様子を見ながらうかがった。
何も無いよりはマシと女の子は羽織ってくれた。
「そう言えばどうして私の声が聞こえるの?」
「・・・そうか。鼓膜破れてるはずと思ってるのか」
それはそうでしょう。
なんせあの爆発の音を至近距離から聞けば鼓膜敗れてしかり。
ついでに耳から血が出てれば誰だって破れてると思う。
「あたしの力は『超再生』と『身体硬化』、それと『5感強化』」
飛んだ肉体派の能力をお持ちで・・・。
それにしても超再生ですか。
なるほどそれで神にしては能力が少ないんですね。
納得です。
神の生まれ持つ能力は、平均7つ。
私でさえ七つ持っている。
これは神本来の力とは別の能力の話しで神本来の力はもっと別なところに本質を持つ。
「神の力の方は?」
「継承はされてない。だけどなんか力が遠のいた感じがする」
遠のいた?
「それになんかジジイの気配が無くなってるんだよな」
「ちょっと待って、もしかしてあなたのお父さんって」
「ん、ラプラスだよ」
なんでラプラスの娘子がこんな場所に監禁されてる。
ラバルタスが監禁してラプラスを殺した。
一体なんのために。
門を開ける手段を見つけるため?
「門を開けた理由もわからない。でもそれよりも門を閉じる方が先決・・・なのでしょうか」
「あたしが知ってるわけじゃないけど相当な異常事態みたいだし手を貸すよ」
「ありがたいです。門へ向かいますよ」
私たち2人は門へと向かった。
そこには門が開いているだけではなく私の弟と無数の先神達の屍があった。
なんでこんなことになっている。
なんでこんなふざけたことになっている。
「ラバルタス!!」
「あっ、リィン。やっと来たんだ。それに招かざる客人も来てるとはね」
「あたしを監禁しといてよく言うわこのクズ」
「クズ呼ばわりとは・・・誰に意見してると思ってるんだい。僕は誰よりも強い。この惨状が何よりの証拠さ」
そう言葉通り彼は最強の神。そう言っているのだ。彼は1人だけでこれだけの人数を屠っている。
もう誰も止められないと思ってしまうほどに圧倒的な力であった。
「いったい何を考えてこんなことしたの」
「答えをいちいち言うと思うかい。そんなの自分で考えなよ。それよりも僕は待ってたんだ・・・リィン・・・君を、ね」
ラバルタスは私に嫌な笑みを浮かべていた。
私を待っていた?
優秀な弟であって目的のためなら何でもできるような残忍な男がいったい何のために。
「いやー、まさかその子まで連れてきたのは予想外だったけどね 」
「その声は間違いない。よくも閉じ込めてくれたな」
「効率良くことを進めるためだったんだよ。さて、少々面倒になってきたみたいだね」
弟はあまり見たことのないため息をつく。
この子は暇だとはいうけどため息はあまり出さない子だった。だからこそ本当に面倒に感じてると考えて良い。
「僕は君を殺せない。リィンじゃないよ。そこのラプラスの娘さ」
「そうかそういうことか。なら殺れるチャンスはあるって事だな」
「そうだけど無力化が面倒な相手ってだけで僕に負けるという結果はない」
そう、ラバルタスは身体能力強化では勝てない。
その理由は以下の能力にある。
火、水、木、金、土。
この五つを作り出し操る能力。
そして空中に浮く能力。
さらにもう一つ驚異的力がある。
一時間の間に30秒時を止められる『時間超越』という神じめた力。いや、神様だけどね。
発動中は他の能力は使えない。それを引いてもあまりある力だ。
「ほら、もう捕まってる」
「ぐっ」
ラプラスは樹木で腕を拘束されていた。
時間を何秒止めたかは定かではない。だけども間違いなく数秒は使った。
「離せ!!」
「足も邪魔だね」
「足まで」
完全に弄ばれている。
どうしたらいいんだ。
全然考えつかない。
「さて、リィン。僕が君を待っていた理由だけど僕の成果を君に送ろうと思ってね」
「いったい何を・・・はっ」
この一瞬の間に背後に回られた。まだ時間を残していたのか。
そしてラバルタスは私の頭に手をかざす。
死んだ。私はそう思ったんだけどもそれは訪れなかった。
代わりになにか埋め込まれるような気持ち悪い感覚が生まれる。
「これでよし」
「何をしたの」
「僕の作ったものを植え込んだだけさ。1人じゃ今は扱えないものでね」
そう言ってかざした手をラバルタスは遠ざける。
ラバルタスは共有と呟くと頭に気持ち悪さは消えて頭の中に未来の出来事が雪崩のように入ってくる。
「うがぁ!!」
「あんた大丈夫か」
「ラプラスの娘、平気だよ。単なる初期段階のダウンロードさ」
ダウンロード・・・幾万と先のことが記されているこの変な力のこと?
それにこれが本当に起こるというのなら!!
「あんた・・・狂ってる」
「狂ってなくちゃこんなことは出来ないさ。それじゃ僕はお先に行かせてもらうよ。現世にね」
「待てっ」
静止の言葉を聞く耳持たず6m級の穴を作り飛び降りる。
この場所に穴が作られた。
それの意味するところは・・・地上への瘴気の湧出。
「くっ、人間は平気でも他の生物が耐えられるかどうか」
瘴気は知能が小さいものに変化をもたらすことが多い。
変化が多いのは爬虫類などが主で生存本能とかで動いているものが進化してしまう。
塞ぐ手段は・・・あるにはあるけど上手くいくかどうか。
やるしかないけど。
天界の地面にまた設計図を書く。
半径3m、材質はコンクリート。設置目標は大穴。
これでどう!!
設計図通りに穴の上にコンクリートで作られた蓋が出現して置かれる。
これで一安心。そう思っていたのだがミシミシといって蓋が壊れた。
「やっぱり塞ぐのは無理ですか」
「そうでしょうね。こうなると私たちが生き残る手段は限られてくるし何より覚悟がいる」
「生き残る手段ってまさか」
それは最後の手段。私が口に出さなかった一番現実的なプラン。
「現世に落ちるんですよ。肉をつけて」
「たしかに生き残るならそれしか方法はないけど」
「そのためにはさっさと事情を説明しに・・・その前に解いて」
「ご、ごめんなさい」
縄は強くしめられているので普通に解くことは難しい。
これはちょっと我慢してもらうしかないかな。
「『炎龍の鉤爪』」
「えっ、ちょっ、まっ」
「ていっ」
「いぎゃー!」
そこまで騒ぎ立てるようなことでしょうか?
早く解くなら手っ取り早いと思うのですが。
「焼き切るとかはじめに言えよ」
「言ったらもっと暴れていましたよね?」
「それは私が燃やされかねないからだよ!!」
「まぁまぁ、とりあえず行きますよ」
「あんたいい性格してるよ。あいつの姉だけある」
あんなのと一緒にしないで下さい。激おこですよ。
さて、広場に着くと死に絶えた神以外の神が全員揃っている。
「ようやっときおったな」
「ツクヨミのおじさん」
「まだ1000年も生きておらんわい。まだ999歳じゃ」
いや、普通に生きまくってるからそれ。
人間の寿命は今は90が平均で、それに比べたら生きすぎなくらいだ。
「状況を教えてくれるのじゃろうな」
「はい、今から私の知る全てをお伝え致します」
私は起きたことを事細かに伝えたのだった。
偉い方、同じ年に生まれた若い同胞が真剣になにか考え込んでいる。
ことの重大さ、もうこの世界を捨てるしかないということもすぐ理解しているのに他のことが気がかりなのだろう。
皆、今までの生活を失いたくないのだ。
人間の世界に降りればお金が絶対不可欠。しかし私たち神はお金を持っていない。つまり降りれば絶望的状況になるという事だ。
(それでも・・・降りなければ私たちとて死ぬだけです。残るもよし、潔く死ぬのもよし。でもここで死ぬことを選べば命は潰える。選ぶべきは一つだけのはずですが)
なのにいまだに前代の人たちは悩んでいる。
この時間がもったいない。
まだやるべき事があるのに。
仕方ないのでその用事を先にすませるとしましょう。
「守護神の礎となる力よ。今ここに示せ」
「・・・その能力は!!」
前代たちも気づきましたか。
そうです。これは守護神が継承される能力で継承されてから1回しか使えない能力。
神から人間に落ちる以上神としての本来継承される能力は使えなくなる。
なら今ここで使ってしまわないともったいない。
「今更人間界を改変して何になる。我らを住みやすくさせるのか?」
「違いますよ・・・人間には抵抗するすべを持ってもらいます」
このまま地上に瘴気が蔓延すれば近い将来滅びる。
そうすると必然的に私たちも生きられない。
まず人間を生かすことが最重要であるということ。
「改変・・・そうですね。人間にも能力を持ってもらいましょう」
人間の脳のリミッターが多少外れると予想されるけど仕方がない。
それでも人間の容量ではせいぜい一つ程度だと思うけど。
後は脳のリミッター・・・100だと人間の体は壊れてしまう。
ここは70くらいにしときましょう。
「人間に能力を与える。バカな、そんなことすれば世が荒れるぞ」
「もう既に荒れきってます。だからこそ必要なこと・・・よしできた」
頭の中で反復する。
人間の脳のリミッターを外し能力を発現させる。
変えるのはこれだけ。
これ以上は能力が許さないでしょう。
そして発動したからにはもう効果が現れているはず。
「すぐ準備を始めますよラプ」
「えっ、それ私のこと!!」
「ラプラスの娘とか長ったらしいのは好きじゃないので」
「せめてラプラスって言ってくれないかなー。まぁやりますけど」
文句を言いながらもラプは現世に転生する術を唱え始めた。
神が誰でも使える肉付という儀式。
現世に行くには神様の位を人間にまで落とさなくてはならない。
そして肉付した場合2度と純粋な神には戻れない。
それでも私たちは肉付を施した。
ちなみに肉付は肉体が変化する人もいる。
「OK、いつでも行けるよ」
「こっちも準備できた。地上に降りましょうか」
「まて、お主ら待つのじゃ」
「あと3分以内にどうぞ」
瘴気が人間界に届くまで時間はない。
目算としては8分程度。
それ以降はもう肉付しても間に合わないほど瘴気に侵されてしまうだろう。
いくら善神とて瘴気によって悪神になる。自分が自分でなくなるのは本当に辛いことです。
「わかった我らも下界に落ちる。用事を済ませてからな」
「・・・3分です。では生き残りたくなければどうぞその場を動かないでください。私たちは行きましょう」
地上に私たちは降りるため穴に落ちる。
これで神の世界にはもう戻れない。
いや、戻っても混沌に満ちてるだろうけど。
もし神が残っていたとしても人に崇められるようなものにはならないでしょう。
「後悔はないの?」
「あるわけがないじゃないですか。この穴の終着点でワープしますよ」
ヒュオン。
「いたぁ!!」
不思議な音とともに体が何かにぶつかる。
天界では考えられない痛み。
ハッと周りを見渡した。
「誰も・・・いない」
先程まで一緒にいたラプの姿が見えない。
別の場所に飛ばされたの?
それは予想外。
・・・それよりも本当にここどこ?
人間界は光を電気で生み出す技術を使い周りを明るくしてるってきいたんだけど・・・。
ドスン。
「あいたぁ!!」
なんか振袖をきた身長140の女の子が落ちてきました。
そんな神様いましたっけ?
基本神様は男ばかり何ですけど。
「くそう、地上なんて大嫌いじゃ」
「どなた様で?」
「お、お主はリィンではないか。さつきぶりやのー。って儂を忘れたのか」
「忘れたというか見た目のせいでわからないというか」
「見た目じゃと・・・」
少女は体全体をまさぐって最後に顎に手を当てる。
確認を終えた少女は真剣な顔でこう言う。
「髭が無くなっとる」
「注目してたのそこですか!!」
まさに普通は驚かない場所で驚いた。
髭・・・髭?
まさかあのツクヨミのおじいさん。
「っ、服が汚れるがちと地下に潜るぞ」
瞬間地面がえぐり取られその穴に飛び込むことになった。
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