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第2節

いざ、浅草へ

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ある時世界は人間に能力を目覚めさせた。
そして同時に化け物を生み出した。
覚悟がなければすぐ倒れてしまう。
強さがなければ何も出来ずに倒れてしまう。
私はそれが悔しかった。
何も出来ないで大切な人を失ったのがとても辛かった。
だから私は今度こそ大切な人を守るのだと決意したのだ。



どうやら世界各国で東京と同じことが怒り始めたらしい。
その報告が来るのは遅くはなかった。
早すぎるくらいだ。
だが全体的に化け物の質が落ちてるらしく一般人でも対処ができるレベルのものまでいるそうだ。だからといって命の危険がないわけではない。
毎日たくさんの人が死んでいるとの報告があった。
「化け物は普通の重火器では傷を与えられないとの報告があった。ただ爆発するものなら割と効果的だとの報告もある」
重火器『拳銃』『サブマシンガン』などが例に挙げられるがこれらの武器がまず届かない現状はとても痛いと言える。
まぁ人間を殺すのに特化した武器が効かないのはお約束なのかもしれない。
そして抵抗するには能力が必須。
だが私には他に対抗する手段があった。
「その武器を作った博士と連絡は取れないのかね」と無罪に総理大臣のはるのぶが聞くが「今はどこにいるかわかりませんね」などあっけからんと言われたら何も言えなくなってしまった。
「でも武器の素材がどこにあるかはわかるにゃよ」
リ・ニャース。九谷麗が持つ化け物を軽々と切り裂ける剣に変身できるとある謎鉱物から生まれた存在。この武器が量産されれば確かに道は切り開けると思う。
ただ私の能力によるものもあるとは思うが身体能力向上などのメリットがある。
だからこそこの言葉には重みがあるのだ。
彼が言うには7月7日に地中深くで研究していた博士が偶然見つけたものらしい。
その場所は東京都浅草。
化け物により大半壊されたとされるので住んでいる人はひと握りだと思われる。
その浅草に研究室がある。
とても面倒なことだが何もしないよりはいいだろう。
「しかし行動するなら役職があった方がいいだろ。九谷麗。君は現時点をもって『軍曹』の任を命ずる」
「はっ?」
何故私なんでしょうか。
もっと適任がいるでしょう。
ほれそこにいるロリコン紳士とかさ。
目で訴えるが総理大臣様はなぜか私を軍曹として取り立てた。
バッジが用意され方につけられる。
何故こうなったっ!
「うむ、似合っているぞ」
とても嬉しくない。
「そのバッチさえあれば身元は保証されるだろう。なぁに子供だろうと実力さえ見せつければその若さで軍曹というのも納得されるだろう」
「超ポジティブですね」
このバッジが何を意味するのか私にはまだ分からなかった。
にしても似合うかな。
「似合っておりますよ」と小此木が背後から言う。
もしかして顔に出てた恥ずかしい。
こほん。気を取り直して話を戻そう。
何故私にこんなものを授与…もとい権力を与えたのか。
その思惑はわからないがこれで日本の自衛隊と知名度を得たこととなる。
つまるところ軍の関係者には顔パスできるってこと。
どこでも行きほうだ…こんな世の中じゃそんなことじゃないか。
「とりあえず私たちが隊員ってことでよろしくぅ」
「いっ、どどどどどういうこと」
きなこが無邪気に言うがあんた総理大臣の娘でしょうが。
あとわしたちも隊員になるとか神様達も乗り気だし。
常識人はどこに…小此木がっ!
「私も隊員になります」っていなかったぁ!!
まともな人間なんていなかったァ!
とのことで神様2名、人間3名が仲間に加わった。
テレテレッテッテー。
ちゃうわ。
なんで私もこんなテンションなんでしょうか。
と悶々としてると総理大臣に娘を頼んだぞと背中を叩かれる。
痛い、でもこれも信頼の証なのかもしれない。
「浅草…お土産はあるでしょうか」
「期待しない方がいいと思うけどね」
…なんで大人達は観光気分なんでしょう。
うーん蹴り飛ばしたい。
浅草までここからどれくらいかかるんだっけ。
携帯使えないから頭の中で計算しなくてはならないとかたるすぎる。
多分歩いて1時間半くらい…だとは思う。
街が壊れてるから1時間で着くかもだけどね。
「じゃ、これから準備して浅草に向かいます。各自今の時点で忘れ物はないですか」
「そもそもみんな荷物がありませんよ」
確かにその通りでしたわ。
きなこ以外ここに荷物ある人なんていませんでしたわ。
「あっ、枕持ってこ」
「泊まるつもりっ!」
まさに予想外。
なんで枕持ってくつもりなのこの子。
「えっ、泊りがけで行くんじゃないの?」
素ですか…きなこ…恐ろしい子。
とのことできなこの荷物は置いといて1時間後に国会議事堂から浅草まで行くこととなった。



1時間後。
国会議事堂から準備を終えて外で待っていた。
あの光線が焼き払ったのか直線上にえぐれているのがわかる。
あの夜がそれだけ激しかったことを物語っているようだ。
「すっかり変わってしまいましたね」
空を見てみれば赤い空と黒い太陽が浮かんでいてそのせいなのか朝の時間のはずなのに辺りは少し薄暗い。
変わったところといえばそれだけではない。
「あれだけの事があったのに怪物がいませんね」
きれいさっぱり怪物達が目に飛び込んでこない。
ここに来るまであれだけ怪物などと戦ってきたというのに。
別にいるいないはいいのだが逆に不安が出てくる。
いつ襲われるかわからないという不安が。
「準備出来ましたであります」
「きなこ…唐突に現れて敬礼しないで欲しいんだけど」
いったいいつどうやって私の背後に立った。
扉が開く気配すらしなかったんだけど。
「驚かせる作戦は大成功ってね。にしし」
全くきなこはおちゃめなんですから。
そうこうしてるうちに全員が揃う。
何故だろう…無罪迅先生の武装が激しいことになっている。
具体的に言うと背中に対戦車ライフルが装備されてる。
武器はほとんど効かないが対戦車ライフルまで行くと話は別だ。
奥深くまで行かずともダメージを与えることは出来る。
油断は禁物だが固い相手じゃない限りはそれなりの強さを発揮するだろう。
だが気づいて欲しい。
この男は素手で戦った方が強い。
「鈍器にでもするつもりそれ」
「おや、よくわかったな」
鈍器で使うつもりだったこの男。
なんというか期待を裏切らない。
だが本題はここからだ。
「小此木…その荷物は?」
「お弁当です」
だからピクニックですか?
敵地に向かうんですよ。
生きてる人間がいるかわからないんですよ。
なんでそんな量のお弁当が必要なのですかね。
「ピクニックには弁当が必須です」
「ピクニック言ってるよこの人」
やだこのチーム。自由人しかいない。
「いやぁ、ツッコミを入れる人がいると楽ですね」
「誰がどこでツッコミをされたか言うてみい」
「ツッコミ所の塊なロリジジイが何言ってるんですか」
「何をっ!今は完全無欠の美少女じゃぞ」
また同じ会話してるしボケてるのかこの2人。
本当に大丈夫かな…このチーム。

歩き始めるまでの時間が過ぎていく。
「行きますよ皆さん」
「はいはーい」
返事したのはきなこだけでしたが全員が歩き出す。
私は障害物から化け物がでないかなどの警戒を小此木と無罪に頼んでいた。
この2人なら少しの反応も捉え逃がさないと考えたからだ。
むしろこの2人入れば私たち要らない説まである。
少し進むと廃墟とかした東京都の一部が目に映った。
見るも無残な街の姿。
幾度もあった戦争でもこのような風景があったに違いない。
生存者を探しつつ足場に気をつけながら先へと進んでいく。
慣れていない道なのか足の負担も大きいのが気になる。
私は戦闘で足場の悪さには少し慣れているがきなこが心配だったが…。
「よっほっ、アスレチックみたいだねっ!」
心配ご無用だった。
それにしても地図が役に立ちそうにないし方向感覚も狂ってしまいそう。
真っ直ぐ進むだけだけどそのようなことまで考えてしまう。

…数時間後。

こうして緊張感がないまま私たちはなんの問題もなく浅草に着いたのだった。




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