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第二十六話
禁断の接触
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廉斗の瞳には、無機質な青白い鈍光が映る。彼は市立病院の玄関ポーチの庇の下で、手元のスマートフォンを見つめていた。
『阿部悦子』
彼のスマートフォンのアドレス帳に新しく追加された名前だ。この冬休みに、美香から教えてもらった悦子の電話番号。通話履歴はまだない。
もう自分の家族と関わらないでほしい。廉斗は春になっても、その一言を叔母に伝えられずにいた。というのも、彼の身の回りで再び不幸が起こってしまったからだ。それは、日本国内の大混乱が招いた、散々な結果に起因するものだった。
《二〇二一年・一月七日》
日本政府は二度目の緊急事態宣言を発出。
「第三波」では、第二波とは異なり、家庭内感染の割合が大幅に増加。より幅広い地域・年代層に感染が広がる。一回目の宣言と異なり、感染リスクが高いとされる飲食店などへの時短営業を要請。これにより、飲食店は午後八時までの時短営業(酒類提供は午後七時まで)を余儀なくされる。
《二〇二一年・二月十四日》
海外製の新型ウイルスワクチンが、日本国内で製造販売を初承認される。このワクチンは、アメリカの大手製薬会社であるA社と、ドイツのバイオ企業との共同開発によるもの。
《二〇二一年・二月十七日》
医療従事者などを対象に、予防接種法に基づく臨時接種が日本で開始。
(同年・七月二十三日に完了)
《二〇二一年・四月十二日》
高齢者などを対象に、第一回目の優先接種が開始。
二〇二一年の四月下旬。廉斗の姿は、市立病院の一階にある総合受付にあった。いつぞや佐奈もいた、市立病院の感染症病棟の一室には、今度は美香がいる。廉斗は濃厚接触者となり自宅待機を余儀なくされた伯父夫婦と、妊娠中の成海に代わり、美香の面会に訪れていたのだ。
「えっ? 面会が完全に禁止なんですか?」
「はい。申し訳ございません。本日より、病院の方針がそのように決まったものですから」
医療事務員らしきグレーの制服を着た女性は、梳いた前髪の奥にある眉尻を下げて、困ったような表情を見せた。だが、廉斗にはそれが機械的に作られたもののように見えた。
佐奈が入院していた当時は、病院から渡された専用タブレット端末を使って、オンライン面会ができた。しかし、現在は入院生活で必要な荷物の受渡ししかできないと言う。
美香は激しい咳がなかなか収まらないらしい。妹は今、どうしているのだろう。心細くはないだろうか。兄妹の壁が取っ払われ、こんなに近くにいるのに、顔も見られなければ、声も聞けない。自分は一体、何のためにここに来たのか。美香は勇気を出して、叔母の連絡先を渡してくれたというのに。
すぐさま廉斗の心を襲ったのは、二重の無力感と、病院の患者への対応に関する怒りだった。けれど、彼は「病院だって仕方なくやっている。これも全て新型ウイルスのせいだ」と、余計な考えとして、頭から自分の素直な感情を振り払った。
廉斗は美香の着替えなどが入った荷物を総合案内のスタッフに預けた後、暗い表情のまま病院の玄関をくぐった。
「廉斗くん?」
甘ったるいが重くなく、余所行きの大人の女性の声音だ。下を向いていた廉斗は、自分を呼び止める場違いな軽い声を聞き、左方向に顔を上げた。
「えっ……。悦子叔母さん?」
バス停の近くからやって来た悦子は、病院を受診するにしてはだいぶ華美な格好をしていた。首にぶら下げたロングチェーンの先端にある大ぶりなシルバーリングは、光沢と存在感があり、シャツブラウスのシンプルなコーデを上品に引き立てていた。
彼女はただでさえ人目を引く美貌とスタイルをしている。悦子は腰を曲げてヨボヨボ歩く高齢の女性を追い抜き、膝上のタイトスカートから伸びた長い脚で廉斗との距離を縮めた。
「そうよ。久しぶりね。廉斗くんは相変わらず元気そうで羨ましいわ」
わざとらしい。どの口が言うのか。成海に呪いの言葉を吐き、挙げ句の果てに美香をコントロールしようとしたくせに。それに、もしかすると自分から佐奈への愛の言葉を奪ったのは、叔母かもしれないのだ。
廉斗は憎しみの感情を抑え、喉元に触れそうになった手をゆっくりと下げる。今だけは、マスクをしていて良かったと思えた。前髪で眉を、口元をマスクで覆えば、表情をうまく隠せるからだ。
「叔母さん、ここに通っていたんですね」
「ええ。もうずっと前からお世話になってるわ。ねえ、それより、私と外で少しお話しない? 診察時間より早めに来てしまって、退屈しそうなの」
「いや、僕は──」
「その様子じゃ、廉斗くんは診察でここに来たわけじゃないでしょう? 誰のお見舞い? ご家族?」
悦子は遠慮がなく、廉斗に喋る隙を与えない。瞳孔が開いた笑顔は不気味な迫力があった。
たじろぐ廉斗に悦子が愉快そうな声で詰め寄る。
「それか、もしかして、ここにいるのはあなたの恋人?」
廉斗は頭が真っ白になった。目を丸くさせ、唇を薄く開く。ひゅっと細く吸い込んだ空気は、春の陽気に似つかわしくない、凍えるような冷たさがあった。
「あの子、素直で可愛い子だったわね」
「どうして、それを……?」
悦子の瞳から冷気を浴びる。それは目の前にいる自分を責めるような鋭い光を帯びていた。
怯えて戸惑う廉斗を見た悦子は気分良くマスクを外し、肺いっぱいに温かい空気を吸い込んだ。吐き出した息を麗らかな春のそよ風に乗せ、悦子は歪んだ口元の皺をさらに深める。彼女はまだ一音も口から発しようとはしなかった。
「あなたは彼女を知っているんですか? まるで、会ったことがあるような口ぶりだ」
廉斗は頭の中で埋もれた記憶を必死に漁る。
一方、目と口であべこべな表情を作る悦子は、待ってましたと言わんばかりに声を張り上げた。
「あの子に会うのも苦労したのよ? 全部、あなたへの復讐のために私が調べたの」
悦子はあっさりと犯行を自白した。
「一昨年の夏に会った時は、あなたに声をかけなくてごめんなさいね。だって、あなたが彼女と楽しそうにお喋りしていたから、気が引けちゃったのよ」
「二年前の夏……?」
「私たち、セリオンリスタで擦れ違ったじゃない。気付いてなかったの? それとも、もう覚えていないかしら?」
悦に入った悦子は廉斗を嘲笑った。記憶を失い、焦る彼を心の底から無様だと思っていたのだ。
「廉斗くん。私はね、あんたたちを許すつもりは一切ないわ」
──絶対に許さないから。
かつての叔母の声が脳裏に過る。今よりももっと冷酷で、鋭利で、恨みがましい声だった。
「何度だって言ってやる。あんたは幸せになるべきじゃないのよ」
悦子は静かな言葉の刃で、廉斗の心の傷を再び抉る。廉斗は母親の通夜の日も、叔母に強く責め立てられたことを思い出す。
「知ってた? 人の恨みは連鎖するのよ。例えこの身が憎しみと共に朽ち果てようとも、私はこの感情を言葉に乗せるわ。そして、あんたを必ず地獄に叩き落としてやるの。私ならできる。だって、私は言葉一つで人の行く末を決められる、呪い師だもの」
──たしか、タロットカード占い師だった気がする。
成海の証言を思い出した廉斗の身体に電気が走る。爪の先まで震え、無音の衝撃波が身体中に轟く感覚は初めてだった。
今、全てが繋がったのだ。
「やっぱりそうか! あなたがあそこで僕に呪いを……!?」
呪いの始まり。それは、廉斗が大学一年生だった、二〇一九年の七月のことだった。セリオンリスタとは、佐奈と訪れた港町の屋内緑地公園の建物の名称だ。
室内に漂う潮風と、湿っぽい熱気は鮮明に覚えている。だが、当時のことを何度思い返してみても、あの場には自分と佐奈と、子連れの母親しかいなかった。悦子が佐奈と会っていたとしたら、それは自分の目が届かない場所しかない。
「そういえば……」
あの日、佐奈はトイレで占い師を名乗る、綺麗な女性に話しかけられたと言っていた気がする。あれは叔母のことだったのだ。
まただ。些細な会話とはいえ、占い師と話したなんて、そんな珍しい体験を聞かされたことは覚えていても不思議ではないのに。どうして、自分は叔母に関する記憶が消えているのだろうか。
廉斗はずっと付き纏ってきた謎に思考を奪われる。そんな彼の目を覚まさせたのは、高笑いする悦子だった。
「呪いですって? あははっ!」
悦子は狂ったように笑い出す。廉斗はこの期に及んで自分が何かとんでもない間違いを犯したままでいるような気がした。
「あんた本気で言っているの? たかが占い師の端くれの私が、そんな芸当できるわけないでしょう。笑わせないでよ」
悦子の笑いがいつ終わるのか予想がつかない。けれども、それは通り雨のように突然止む。
「あんたも馬鹿ね。私があんたを呪ったですって? 何もかも見当違いなのよ」
廉斗は悦子の射抜くような視線の先で、叔母から何を告げられるのかと身を強張らせた。
最も愛する者を奪われた恨みを募らせた魔女は、無知な罪人に最後の審判を下す。その言葉は邪悪な魔力が込められていたのか、廉斗の心に重くのしかかるものだった。
「教えてあげる。あんたを呪った犯人は、もっと身近にいるわよ」
廉斗は悦子から真相を聞かされるまで、愛とは、最も強く尊い絆から生み出されるものだと思っていた。そして、呪いとは、最も愚かで自分勝手な心が作りだすものだと信じて疑わなかった。
『阿部悦子』
彼のスマートフォンのアドレス帳に新しく追加された名前だ。この冬休みに、美香から教えてもらった悦子の電話番号。通話履歴はまだない。
もう自分の家族と関わらないでほしい。廉斗は春になっても、その一言を叔母に伝えられずにいた。というのも、彼の身の回りで再び不幸が起こってしまったからだ。それは、日本国内の大混乱が招いた、散々な結果に起因するものだった。
《二〇二一年・一月七日》
日本政府は二度目の緊急事態宣言を発出。
「第三波」では、第二波とは異なり、家庭内感染の割合が大幅に増加。より幅広い地域・年代層に感染が広がる。一回目の宣言と異なり、感染リスクが高いとされる飲食店などへの時短営業を要請。これにより、飲食店は午後八時までの時短営業(酒類提供は午後七時まで)を余儀なくされる。
《二〇二一年・二月十四日》
海外製の新型ウイルスワクチンが、日本国内で製造販売を初承認される。このワクチンは、アメリカの大手製薬会社であるA社と、ドイツのバイオ企業との共同開発によるもの。
《二〇二一年・二月十七日》
医療従事者などを対象に、予防接種法に基づく臨時接種が日本で開始。
(同年・七月二十三日に完了)
《二〇二一年・四月十二日》
高齢者などを対象に、第一回目の優先接種が開始。
二〇二一年の四月下旬。廉斗の姿は、市立病院の一階にある総合受付にあった。いつぞや佐奈もいた、市立病院の感染症病棟の一室には、今度は美香がいる。廉斗は濃厚接触者となり自宅待機を余儀なくされた伯父夫婦と、妊娠中の成海に代わり、美香の面会に訪れていたのだ。
「えっ? 面会が完全に禁止なんですか?」
「はい。申し訳ございません。本日より、病院の方針がそのように決まったものですから」
医療事務員らしきグレーの制服を着た女性は、梳いた前髪の奥にある眉尻を下げて、困ったような表情を見せた。だが、廉斗にはそれが機械的に作られたもののように見えた。
佐奈が入院していた当時は、病院から渡された専用タブレット端末を使って、オンライン面会ができた。しかし、現在は入院生活で必要な荷物の受渡ししかできないと言う。
美香は激しい咳がなかなか収まらないらしい。妹は今、どうしているのだろう。心細くはないだろうか。兄妹の壁が取っ払われ、こんなに近くにいるのに、顔も見られなければ、声も聞けない。自分は一体、何のためにここに来たのか。美香は勇気を出して、叔母の連絡先を渡してくれたというのに。
すぐさま廉斗の心を襲ったのは、二重の無力感と、病院の患者への対応に関する怒りだった。けれど、彼は「病院だって仕方なくやっている。これも全て新型ウイルスのせいだ」と、余計な考えとして、頭から自分の素直な感情を振り払った。
廉斗は美香の着替えなどが入った荷物を総合案内のスタッフに預けた後、暗い表情のまま病院の玄関をくぐった。
「廉斗くん?」
甘ったるいが重くなく、余所行きの大人の女性の声音だ。下を向いていた廉斗は、自分を呼び止める場違いな軽い声を聞き、左方向に顔を上げた。
「えっ……。悦子叔母さん?」
バス停の近くからやって来た悦子は、病院を受診するにしてはだいぶ華美な格好をしていた。首にぶら下げたロングチェーンの先端にある大ぶりなシルバーリングは、光沢と存在感があり、シャツブラウスのシンプルなコーデを上品に引き立てていた。
彼女はただでさえ人目を引く美貌とスタイルをしている。悦子は腰を曲げてヨボヨボ歩く高齢の女性を追い抜き、膝上のタイトスカートから伸びた長い脚で廉斗との距離を縮めた。
「そうよ。久しぶりね。廉斗くんは相変わらず元気そうで羨ましいわ」
わざとらしい。どの口が言うのか。成海に呪いの言葉を吐き、挙げ句の果てに美香をコントロールしようとしたくせに。それに、もしかすると自分から佐奈への愛の言葉を奪ったのは、叔母かもしれないのだ。
廉斗は憎しみの感情を抑え、喉元に触れそうになった手をゆっくりと下げる。今だけは、マスクをしていて良かったと思えた。前髪で眉を、口元をマスクで覆えば、表情をうまく隠せるからだ。
「叔母さん、ここに通っていたんですね」
「ええ。もうずっと前からお世話になってるわ。ねえ、それより、私と外で少しお話しない? 診察時間より早めに来てしまって、退屈しそうなの」
「いや、僕は──」
「その様子じゃ、廉斗くんは診察でここに来たわけじゃないでしょう? 誰のお見舞い? ご家族?」
悦子は遠慮がなく、廉斗に喋る隙を与えない。瞳孔が開いた笑顔は不気味な迫力があった。
たじろぐ廉斗に悦子が愉快そうな声で詰め寄る。
「それか、もしかして、ここにいるのはあなたの恋人?」
廉斗は頭が真っ白になった。目を丸くさせ、唇を薄く開く。ひゅっと細く吸い込んだ空気は、春の陽気に似つかわしくない、凍えるような冷たさがあった。
「あの子、素直で可愛い子だったわね」
「どうして、それを……?」
悦子の瞳から冷気を浴びる。それは目の前にいる自分を責めるような鋭い光を帯びていた。
怯えて戸惑う廉斗を見た悦子は気分良くマスクを外し、肺いっぱいに温かい空気を吸い込んだ。吐き出した息を麗らかな春のそよ風に乗せ、悦子は歪んだ口元の皺をさらに深める。彼女はまだ一音も口から発しようとはしなかった。
「あなたは彼女を知っているんですか? まるで、会ったことがあるような口ぶりだ」
廉斗は頭の中で埋もれた記憶を必死に漁る。
一方、目と口であべこべな表情を作る悦子は、待ってましたと言わんばかりに声を張り上げた。
「あの子に会うのも苦労したのよ? 全部、あなたへの復讐のために私が調べたの」
悦子はあっさりと犯行を自白した。
「一昨年の夏に会った時は、あなたに声をかけなくてごめんなさいね。だって、あなたが彼女と楽しそうにお喋りしていたから、気が引けちゃったのよ」
「二年前の夏……?」
「私たち、セリオンリスタで擦れ違ったじゃない。気付いてなかったの? それとも、もう覚えていないかしら?」
悦に入った悦子は廉斗を嘲笑った。記憶を失い、焦る彼を心の底から無様だと思っていたのだ。
「廉斗くん。私はね、あんたたちを許すつもりは一切ないわ」
──絶対に許さないから。
かつての叔母の声が脳裏に過る。今よりももっと冷酷で、鋭利で、恨みがましい声だった。
「何度だって言ってやる。あんたは幸せになるべきじゃないのよ」
悦子は静かな言葉の刃で、廉斗の心の傷を再び抉る。廉斗は母親の通夜の日も、叔母に強く責め立てられたことを思い出す。
「知ってた? 人の恨みは連鎖するのよ。例えこの身が憎しみと共に朽ち果てようとも、私はこの感情を言葉に乗せるわ。そして、あんたを必ず地獄に叩き落としてやるの。私ならできる。だって、私は言葉一つで人の行く末を決められる、呪い師だもの」
──たしか、タロットカード占い師だった気がする。
成海の証言を思い出した廉斗の身体に電気が走る。爪の先まで震え、無音の衝撃波が身体中に轟く感覚は初めてだった。
今、全てが繋がったのだ。
「やっぱりそうか! あなたがあそこで僕に呪いを……!?」
呪いの始まり。それは、廉斗が大学一年生だった、二〇一九年の七月のことだった。セリオンリスタとは、佐奈と訪れた港町の屋内緑地公園の建物の名称だ。
室内に漂う潮風と、湿っぽい熱気は鮮明に覚えている。だが、当時のことを何度思い返してみても、あの場には自分と佐奈と、子連れの母親しかいなかった。悦子が佐奈と会っていたとしたら、それは自分の目が届かない場所しかない。
「そういえば……」
あの日、佐奈はトイレで占い師を名乗る、綺麗な女性に話しかけられたと言っていた気がする。あれは叔母のことだったのだ。
まただ。些細な会話とはいえ、占い師と話したなんて、そんな珍しい体験を聞かされたことは覚えていても不思議ではないのに。どうして、自分は叔母に関する記憶が消えているのだろうか。
廉斗はずっと付き纏ってきた謎に思考を奪われる。そんな彼の目を覚まさせたのは、高笑いする悦子だった。
「呪いですって? あははっ!」
悦子は狂ったように笑い出す。廉斗はこの期に及んで自分が何かとんでもない間違いを犯したままでいるような気がした。
「あんた本気で言っているの? たかが占い師の端くれの私が、そんな芸当できるわけないでしょう。笑わせないでよ」
悦子の笑いがいつ終わるのか予想がつかない。けれども、それは通り雨のように突然止む。
「あんたも馬鹿ね。私があんたを呪ったですって? 何もかも見当違いなのよ」
廉斗は悦子の射抜くような視線の先で、叔母から何を告げられるのかと身を強張らせた。
最も愛する者を奪われた恨みを募らせた魔女は、無知な罪人に最後の審判を下す。その言葉は邪悪な魔力が込められていたのか、廉斗の心に重くのしかかるものだった。
「教えてあげる。あんたを呪った犯人は、もっと身近にいるわよ」
廉斗は悦子から真相を聞かされるまで、愛とは、最も強く尊い絆から生み出されるものだと思っていた。そして、呪いとは、最も愚かで自分勝手な心が作りだすものだと信じて疑わなかった。
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