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世界線α・被験者「藤城廣之」の受難
第十七話 この世の構造《前編》
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店内にトランペットのイントロが響き渡る。そのあとに流れてきた中性的な美しい歌声と優しくスイングする音楽を背景に、山近は神妙な顔で僕に語りかける。
「藤城くん。気を悪くしないでほしいんだけど、この平行世界では、本当に君のお婆さんは亡くなったんだと思う。だけど、きっと君が元いた世界ではお婆さんはご存命のはずだよ」
山近の慰めの言葉が痛かった。
誰もそんなのわかるはずがないのだ。僕らはこの現実世界で身動が取れないのだから、外にある違う景色を誰も見る事ができない。それだけは確信を持って言える。
「山近、君がそんな風に言ってくれるのは嬉しいよ。でもさ、僕は今、婆ちゃんに会いたいんだ。この目で婆ちゃんの姿を見て、僕と同じ場所に存在しているって実感したい。ここには、僕が知っている家族はもういないんだよ」
ふと思う。この世界で祖母の最期はどんな感じだったのか。僕は怖くて家族の誰にも聞けなかった。僕が知っている世界の祖母は今、この瞬間も元気だろうか。それを確かめる術はどこにもない。
どんどん家族の思い出が遠ざかる。僕らが元いた世界から最初に祖父が切り離され、今度は僕がパラレルワールドに飛ばされた。過去の祖父がしてきたように、僕がこの世界で家族に祖母との思い出を語っても、記憶のズレが生じては気味悪がれてしまうだろう。
そもそもここにいる僕の家族は僕と違う記憶を持っている。つまり、僕とは違う世界の住人だ。ひょっとすると実はみんな僕と同じ世界の住人で、それぞれに記憶エラーが起きて今ここにいるのかもしれない。だけど、本人が記憶エラーを自覚しなければ、もはやこの世界にいるのは僕が知っている家族と別人ではないだろうか。
僕だけが、はるか遠い場所に来てしまった。まるでロケットや壊れた衛生の欠片のようだ。僕だけが、ゾッとするほど広くて暗い宇宙にあてもなく彷徨っている。きっと僕の姿は地球にいるみんなから見えないだろう。いつの日か僕は離れたみんなと同じ場所に帰れるのだろうか。
「なあ、山近。僕はいつになったら、こんなふざけた現象から解放されるんだ?」
ここで話し合っていても問題の解決策が一向に浮かばない現状に焦りが募り、僕はたちまちとてつもない不安に襲われた。山近に言ったところでどうしようもない。だけど、言わずにはいられなかった。
終わりが見えない。いくら仲間がいても、もしかしたらいつか、それぞれが違う世界に飛ばされて離れ離れになるかもしれないのだ。
「それは……この現象を引き起こした相手が、目的を達成するまで続くんじゃないかな」
山近は気まずそうに僕から目を逸らした。そんな山近を庇うように皆川さんが僕の肩に手を置く。
「藤城くん、山近くんだって被害者なんだ。彼に非はないよ。俺たちはこの騒動で集団心理を悪用されたんだ」
「集団心理……」
「そうさ。民主主義の罠とも言えるかな。どこかで大多数の人間に『この光景や事実が正しい』と思い込ませれば、いつの間にかフィクションは現実になる。そういう思考の癖を作るのに最も適しているのは、全員が同じ情報を共有して、何度も繰り返しその情報に触れさせる事ができる場所だ」
「それって、テレビとかですか?」
僕は家族で囲んだ食卓を思い出し、皆川さんに尋ねた。
「正解。メディアの他に例を挙げるとすれば、学校とか教育機関もその可能性があるね。洗脳手段も様々で、音楽や文芸から特定のイメージだけを植え付ける事だってできる。藤城くんももう十分わかっただろうけど、勘違いした多数派によって事実は簡単に捻じ曲げられてしまうんだ。それこそ太平洋戦争中は多くの国民が、戦況を伝えるラジオ放送や新聞に何の疑いも抱かなかった。彼らはずっと日本が優位だと思い込んでいたが、待っていたのは玉音放送で知る自国の敗戦だ」
「皮肉ですね。印象操作をしたメディアが最後に真実を伝えたなんて」
「そうだね。当時の人々の衝撃の大きさは計り知れないよ。それにもしかしたら、印象操作をした側は『日本は他国と戦わなければいけない』という世論を自国民以外の誰かの利益のために作っていたかもね」
ありえない話ではないと思う。皆川さんの話で、僕の頭には第二次世界大戦の絵面が浮かんだ。巨大広告による政治的な宣伝をドイツのナチスが実行した事は有名であり、その結果も周知の事実だ。
もしかすると、僕らは今も戦争中なのかもしれない。敵は武力で人を制圧するのではなく、人心掌握術で人々の正義や価値観を変えている。一度成功した作戦だ。違う誰かによってまた同じように仕掛けられてもおかしくはない。僕らは誰かが作り出したこのバーチャル世界の舞台で、何かの目的のために踊らされているんだ。
音楽が止まり、次の曲が流れても皆川さんの話は続く。
「人間は危険な場面にいる時ほど、正常性バイアスという心の安定機能が働く。地震が起きても『大した揺れじゃないから、家にいても安全だ』と家屋倒壊から逃げ遅れる人がいたのが良い例だ。だけど、その一方で危機察知能力が高い人は自ら避難したり、周囲に危険を知らせてくれたりするだろう? その人数が少なければ少ないほど、正常性バイアスがかかった人々は最後まで何も知らないまま終わりを迎えるんだ。悲しいけど、人間は脳の機能的に容易く騙されてしまうんだよ」
皆川さんは地に落ちた小鳥を見つめるような目を向けて僕に寂しそうに笑った。
僕には人間の脳の構造はよくわからない。その代わりに僕は相手の心を知る努力がしたいと思った。目の前の相手が何を思ってその発言したのか。相手の心情を思いやれない人間は実際に起きた現象ばかりを意識してしまい、コントロールできたはずの感情に支配されるのではないだろうか。その感情が恐怖や怒りなら、僕たちが直面しているこの事態は悪化するに違いない。
「藤城くん」
自分の頭の中だけで考察を繰り広げていた僕を引き戻すように山近が僕の名前を呼ぶ。
「群れの中でも冷静な判断ができる人は貴重なんだ。そういう人に集団を動かす力があるのなら、その集団は道が逸れても軌道修正できる。逆に集団にいる全員が同じ方向を向いている時こそ一番注意が必要だ。だから今回も過去と同じく、『平行世界への移動が狙われた人間に対して行われた』という真実が埋もれたんだ」
なるほど。だから僕は集団行動が好きじゃなかったのかもしれない。なんとなく兵隊扱いされているような気がしたのは間違いではなかったらしい。危険を察知した自分に拍手を送りたい気分だ。よくやった、僕の本能。
「歴史が大きく動く時、そこには必ず世論がある。その世論の背後には誰がいたのか……。彼らの常套手段は、人間の脳内の認知領域を制御して操作する事だ。歴史が時の権力者によって都合よく塗り替えられたように、これは認知戦なんだ。僕たちはこの情報社会で世論がどこを向いているのか、常に中立的な立場で見るべきなんだよ」
──多数派がいつも正しいとは限りません。
僕は山近の言葉で中学校のスクールカウンセラーの講演を思い出す。それは居眠りできない環境で僕がぼうっと聞いていた中でも、なんとなく心に残った言葉だった。続けて僕は山近のいじめの事を考えた。恐らく山近のクラスメイトの中には加害者からの報復を恐れて、いじめに見て見ぬフリをした人もいたのだろう。けれど、声も上げず何も行動しないのは肯定しているのと同じで、いじめを助長させてしまう。そういった場合、スクールカウンセラー曰く、第三者がいじめの加害者に罪の意識を持たせるように「君は悪い事をしている」と指摘すれば、加害者の「自分は正しい」という間違った認識をずらせるらしい。
ひょっとすると今回のマンデラエフェクトに関する一連の騒動は、多数派が必ず正しい選択をしていると思い込んでいる世の中だからこそ、成立しているのかもしれない。歴史を見ても、僕らは誰かが唱えたひとつの概念に縛られすぎている。今の世で人々は「考えない方が楽だから」という心理で誰かが作ったルールに依存し、思考する事から自分を放り出した責任を取らない。そして僕たちは概念を作り出した人の意図を知らぬまま生きているように思えた。
耳が痛い話ばかりだ。思考を集約化された人間が地獄にゆっくり落とされていく中で、皆川さんの説教は続く。
「奴らにとって、地球上で都合のいい味方は誰だと思う? それはね、無関心な人々さ。何の疑問も抱かない、思考が停止した人間は扱いやすいからね。例えばだけど、その国の『常識』に検証したい実験の条件を法律として組み込めば、簡単に国と言う名の巨大な実験場ができる。一度でも特定の思考をルール化して人々に定着させれば、何も疑問に思わない人々はそれを順守するしかないんだ」
「しかも、そのルールから外れた人に対して偏見の目を向けたり、『お前だけ同調する空気感から逃げるなんてズルい』と断罪する事で人々は互いを監視し合う。これで首謀者は自分たちで直接手を下さずとも、芽吹く前に気付きの種を摘む事ができるわけですね。事実、この世では権力者の邪魔者たちが間引かれている」
皆川さんの体験と山近の体験には共通点があるのか、お互いの説明を補足するように話が進む。
「残念だけど、これが地球の現状だ。このままだと奴らの思うツボだな」
皆川さんは手元のグラスをじっと見つめて、ため息混じりで愚痴をこぼした。
僕は何と言えばいいのかわからなかった。僕の場合、山近と皆川さんに出会ってふたりの発想に触れなければ、国すらも巻き込んだこんな陰謀じみた考えには到底辿り着けない。
壮大な仮説がパズルのように完成されていく様子に、僕はいつかと同じように聞き役に徹していた。前と違うのは、僕の認知能力だ。皆川さんと山近の境遇を思うと、僕は今になってようやく「マンデラエフェクトは宇宙人の実験による過程の一部」という説に現実味を感じ始めていた。
「藤城くん。気を悪くしないでほしいんだけど、この平行世界では、本当に君のお婆さんは亡くなったんだと思う。だけど、きっと君が元いた世界ではお婆さんはご存命のはずだよ」
山近の慰めの言葉が痛かった。
誰もそんなのわかるはずがないのだ。僕らはこの現実世界で身動が取れないのだから、外にある違う景色を誰も見る事ができない。それだけは確信を持って言える。
「山近、君がそんな風に言ってくれるのは嬉しいよ。でもさ、僕は今、婆ちゃんに会いたいんだ。この目で婆ちゃんの姿を見て、僕と同じ場所に存在しているって実感したい。ここには、僕が知っている家族はもういないんだよ」
ふと思う。この世界で祖母の最期はどんな感じだったのか。僕は怖くて家族の誰にも聞けなかった。僕が知っている世界の祖母は今、この瞬間も元気だろうか。それを確かめる術はどこにもない。
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そもそもここにいる僕の家族は僕と違う記憶を持っている。つまり、僕とは違う世界の住人だ。ひょっとすると実はみんな僕と同じ世界の住人で、それぞれに記憶エラーが起きて今ここにいるのかもしれない。だけど、本人が記憶エラーを自覚しなければ、もはやこの世界にいるのは僕が知っている家族と別人ではないだろうか。
僕だけが、はるか遠い場所に来てしまった。まるでロケットや壊れた衛生の欠片のようだ。僕だけが、ゾッとするほど広くて暗い宇宙にあてもなく彷徨っている。きっと僕の姿は地球にいるみんなから見えないだろう。いつの日か僕は離れたみんなと同じ場所に帰れるのだろうか。
「なあ、山近。僕はいつになったら、こんなふざけた現象から解放されるんだ?」
ここで話し合っていても問題の解決策が一向に浮かばない現状に焦りが募り、僕はたちまちとてつもない不安に襲われた。山近に言ったところでどうしようもない。だけど、言わずにはいられなかった。
終わりが見えない。いくら仲間がいても、もしかしたらいつか、それぞれが違う世界に飛ばされて離れ離れになるかもしれないのだ。
「それは……この現象を引き起こした相手が、目的を達成するまで続くんじゃないかな」
山近は気まずそうに僕から目を逸らした。そんな山近を庇うように皆川さんが僕の肩に手を置く。
「藤城くん、山近くんだって被害者なんだ。彼に非はないよ。俺たちはこの騒動で集団心理を悪用されたんだ」
「集団心理……」
「そうさ。民主主義の罠とも言えるかな。どこかで大多数の人間に『この光景や事実が正しい』と思い込ませれば、いつの間にかフィクションは現実になる。そういう思考の癖を作るのに最も適しているのは、全員が同じ情報を共有して、何度も繰り返しその情報に触れさせる事ができる場所だ」
「それって、テレビとかですか?」
僕は家族で囲んだ食卓を思い出し、皆川さんに尋ねた。
「正解。メディアの他に例を挙げるとすれば、学校とか教育機関もその可能性があるね。洗脳手段も様々で、音楽や文芸から特定のイメージだけを植え付ける事だってできる。藤城くんももう十分わかっただろうけど、勘違いした多数派によって事実は簡単に捻じ曲げられてしまうんだ。それこそ太平洋戦争中は多くの国民が、戦況を伝えるラジオ放送や新聞に何の疑いも抱かなかった。彼らはずっと日本が優位だと思い込んでいたが、待っていたのは玉音放送で知る自国の敗戦だ」
「皮肉ですね。印象操作をしたメディアが最後に真実を伝えたなんて」
「そうだね。当時の人々の衝撃の大きさは計り知れないよ。それにもしかしたら、印象操作をした側は『日本は他国と戦わなければいけない』という世論を自国民以外の誰かの利益のために作っていたかもね」
ありえない話ではないと思う。皆川さんの話で、僕の頭には第二次世界大戦の絵面が浮かんだ。巨大広告による政治的な宣伝をドイツのナチスが実行した事は有名であり、その結果も周知の事実だ。
もしかすると、僕らは今も戦争中なのかもしれない。敵は武力で人を制圧するのではなく、人心掌握術で人々の正義や価値観を変えている。一度成功した作戦だ。違う誰かによってまた同じように仕掛けられてもおかしくはない。僕らは誰かが作り出したこのバーチャル世界の舞台で、何かの目的のために踊らされているんだ。
音楽が止まり、次の曲が流れても皆川さんの話は続く。
「人間は危険な場面にいる時ほど、正常性バイアスという心の安定機能が働く。地震が起きても『大した揺れじゃないから、家にいても安全だ』と家屋倒壊から逃げ遅れる人がいたのが良い例だ。だけど、その一方で危機察知能力が高い人は自ら避難したり、周囲に危険を知らせてくれたりするだろう? その人数が少なければ少ないほど、正常性バイアスがかかった人々は最後まで何も知らないまま終わりを迎えるんだ。悲しいけど、人間は脳の機能的に容易く騙されてしまうんだよ」
皆川さんは地に落ちた小鳥を見つめるような目を向けて僕に寂しそうに笑った。
僕には人間の脳の構造はよくわからない。その代わりに僕は相手の心を知る努力がしたいと思った。目の前の相手が何を思ってその発言したのか。相手の心情を思いやれない人間は実際に起きた現象ばかりを意識してしまい、コントロールできたはずの感情に支配されるのではないだろうか。その感情が恐怖や怒りなら、僕たちが直面しているこの事態は悪化するに違いない。
「藤城くん」
自分の頭の中だけで考察を繰り広げていた僕を引き戻すように山近が僕の名前を呼ぶ。
「群れの中でも冷静な判断ができる人は貴重なんだ。そういう人に集団を動かす力があるのなら、その集団は道が逸れても軌道修正できる。逆に集団にいる全員が同じ方向を向いている時こそ一番注意が必要だ。だから今回も過去と同じく、『平行世界への移動が狙われた人間に対して行われた』という真実が埋もれたんだ」
なるほど。だから僕は集団行動が好きじゃなかったのかもしれない。なんとなく兵隊扱いされているような気がしたのは間違いではなかったらしい。危険を察知した自分に拍手を送りたい気分だ。よくやった、僕の本能。
「歴史が大きく動く時、そこには必ず世論がある。その世論の背後には誰がいたのか……。彼らの常套手段は、人間の脳内の認知領域を制御して操作する事だ。歴史が時の権力者によって都合よく塗り替えられたように、これは認知戦なんだ。僕たちはこの情報社会で世論がどこを向いているのか、常に中立的な立場で見るべきなんだよ」
──多数派がいつも正しいとは限りません。
僕は山近の言葉で中学校のスクールカウンセラーの講演を思い出す。それは居眠りできない環境で僕がぼうっと聞いていた中でも、なんとなく心に残った言葉だった。続けて僕は山近のいじめの事を考えた。恐らく山近のクラスメイトの中には加害者からの報復を恐れて、いじめに見て見ぬフリをした人もいたのだろう。けれど、声も上げず何も行動しないのは肯定しているのと同じで、いじめを助長させてしまう。そういった場合、スクールカウンセラー曰く、第三者がいじめの加害者に罪の意識を持たせるように「君は悪い事をしている」と指摘すれば、加害者の「自分は正しい」という間違った認識をずらせるらしい。
ひょっとすると今回のマンデラエフェクトに関する一連の騒動は、多数派が必ず正しい選択をしていると思い込んでいる世の中だからこそ、成立しているのかもしれない。歴史を見ても、僕らは誰かが唱えたひとつの概念に縛られすぎている。今の世で人々は「考えない方が楽だから」という心理で誰かが作ったルールに依存し、思考する事から自分を放り出した責任を取らない。そして僕たちは概念を作り出した人の意図を知らぬまま生きているように思えた。
耳が痛い話ばかりだ。思考を集約化された人間が地獄にゆっくり落とされていく中で、皆川さんの説教は続く。
「奴らにとって、地球上で都合のいい味方は誰だと思う? それはね、無関心な人々さ。何の疑問も抱かない、思考が停止した人間は扱いやすいからね。例えばだけど、その国の『常識』に検証したい実験の条件を法律として組み込めば、簡単に国と言う名の巨大な実験場ができる。一度でも特定の思考をルール化して人々に定着させれば、何も疑問に思わない人々はそれを順守するしかないんだ」
「しかも、そのルールから外れた人に対して偏見の目を向けたり、『お前だけ同調する空気感から逃げるなんてズルい』と断罪する事で人々は互いを監視し合う。これで首謀者は自分たちで直接手を下さずとも、芽吹く前に気付きの種を摘む事ができるわけですね。事実、この世では権力者の邪魔者たちが間引かれている」
皆川さんの体験と山近の体験には共通点があるのか、お互いの説明を補足するように話が進む。
「残念だけど、これが地球の現状だ。このままだと奴らの思うツボだな」
皆川さんは手元のグラスをじっと見つめて、ため息混じりで愚痴をこぼした。
僕は何と言えばいいのかわからなかった。僕の場合、山近と皆川さんに出会ってふたりの発想に触れなければ、国すらも巻き込んだこんな陰謀じみた考えには到底辿り着けない。
壮大な仮説がパズルのように完成されていく様子に、僕はいつかと同じように聞き役に徹していた。前と違うのは、僕の認知能力だ。皆川さんと山近の境遇を思うと、僕は今になってようやく「マンデラエフェクトは宇宙人の実験による過程の一部」という説に現実味を感じ始めていた。
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