即時一杯の飯に如かず

及川まゆら

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台湾料理

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 俺が抜けたことをフォローしてくれた和真に礼をして、一足早く帰宅。
 酔いは冷めた。食べたりなかった腹を満たすべく所業とするか。

 台湾料理のルーツは中国にあり。代表的な五香粉ウーシャンフェンは5つのスパイスがブレンドされた香辛料、桂皮(シナモン)丁香(グローブ)花椒(カホクサンショウ)小茴(フェンネル)大茴(八角、スターアニス)陳皮(チンピ)が主な内容。日本でいうところ七味だ。

 エキゾチックな風味を漂わせる…麺、そうだ麺にしよう。

 冷蔵庫から挽肉、野菜はニラとキャベツを細切りにして下拵えを済ませたらフライパンにごま油を大さじ一杯回して鷹の爪を割り入れ、香りが立つまで強火で炒める。挽肉の色が変わるまで炒めたら春キャベツ、ニラの順に入れて軽く混ぜニラの色が鮮やかになったら塩ひとつまみ五香粉と黒コショウで味を整えて火から上げる。
 「寿がきや」の台湾ラーメンを鍋に作り、器に盛り付けたら具材をのせて即席めんの完成。

 名古屋を代表するご当地メーカーから販売されている台湾ラーメン。

 辛いは辛い、けど豆板醤の旨味に箸が止まらない。
 昭和の遺産ともいえる油揚げ麺を引き上げ吸い込み、具ごとスープを飲み込む爽快さは例えようもないドラマだ。
 一気に食べてしまったが、追い酢をかけてもこれ旨いんだよな。
 
 腹心地も良く、もう一杯というところでスマホが振動する。
 路嘉だと思い込んで電話に出ると宗一郎の声に拍子抜け、再会に気を悪くして帰ったのではないこと告げて切り捨てるつもりが甘い誘惑に押されて、指先でスケジュールを確認しながら二つ返事をした。


 佐伯宗一郎の通り名は「スイーツ王子」


 数年前から始めた食べ歩きの活動域がワールドワイド、多くの著名人と関係して蓄えたフォロワー100万人を日々魅了するスィートな文章からは想像もできない男らしさを兼ね備える、宗一郎の舌に惚れている。

 「じゃあ、今度の日曜に。仕事入りそうなら早めに連絡する」
 「俺より仕事の方が大事なの?」
 「悪かったな、甲斐性なしで」
 「半年も独り身でそろそろ寂しい頃だろ。俺が慰めてやるよ」
 「じゃあ今度の日曜、おやつの時間に…」

 笑いながら別れる間柄には次がある。
 宗一郎はいつだって心を結ぶリボンを解く楽しみを与えてくれる、一度でもその甘さを知ってしまったら逃れられない。
 恋は終わっても繋がれる甘い予感に期待する俺は、寂しい男なんだろうか。
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