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黎明叙情録
4/蛇責
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洞穴に潜む
俺は角灯で照らし出される"囚人"だ。
あれから、どれくらい時間が経ったのか。
廊下に飛び出した後ある部屋に入って…青嵐の足音が遠ざかるのを聞きながら辺りを見回す。
そこには家族の思い出が残されていた。
離れは昔からあって、青嵐はここで幼少の砌を過ごしていたことを随所に知る。
夢に見た少女は小夜子
科戸さん、そして…
一番小さな青嵐が指を咥えて並んだ写真は次第に大きくなり、黒い紋付袴と白無垢で小夜子と並ぶ姿に小さな頃の面影はなく座敷に布団を敷いて生まれたばかりの劉青を抱く夫婦睦まじい筈の写真は、まるで心霊写真の様に黒い靄掛かって青嵐の顔が消えていた。燃えた跡…重なっている子供の写真も足しか映ってない。
これは九頭竜が蚕を殺された怒りから、本家に火を放った証拠。
犠牲になった宇賀神しづ子と科戸さんの祝言は写真に残されておらず、折畳まれた戸籍謄本は達筆過ぎて読めない昔の文字で婚姻が記されていた。昭和はそう遠くない時代だが、黒鬼家は大正から続く大きな商家であり戦後の時代を経て外商と称して闇商売に転じた模様。
青の一門には俺の知らない秘密があって、過去と現在が密に繋がっているとしても、外から来た俺がそれを知るのは容易ではない。思い出は当時を知る人が胸にしまっておけばいい話で、あ…この小説…大学の卒論で手にした事がある。確か地学的でさっぱり分からなかった内容だ。
引き抜いた箇所に戻そうと目を向けた先の空洞に気が付く。
―――なんだ、これ?
書斎の隠し扉に気が付いた俺は興味から鍵を探し始めた。
家探しは得意な方で、人の心理に行動は伴う。それを推測しながら追いかける謎解きに夢中になっていると引き出しから見慣れたウォード錠がみつかった。
これは科戸さんから預かった、参ツ目の鍵。
先の形状が二股の違い。まずは引き出しのウォード錠を差し込んでも回らず、だとすれば俺が持っている鍵が本物。
すぐに廊下を渡り、自分が唯一持ってくることを許された風呂敷包みを解いて輪に通された店の鍵弐ツ「決して開けてはいけない」と云われる代物を袖に隠す。
平常心を装いながら警戒心を怠らず部屋に忍び込み、ニヤついて扉を調べる俺の探求心は止まらない。後悔する事ほどやってる時は熱中するのが、性。
古い鍵が折れないようゆっくり回すと錠が下りた。
床のレールに車輪が滑り込むと木を軋ませ…ゴト…ッ…本棚が横に動いて小さな部屋が現れたが、妙に寒い。
湿気を帯びた匂いに気が付く…ここ、か?
隅に置かれたロールトップデスクの下を覗き込むと板の継ぎ目が違うことに気が付く。板の継ぎ目を指でなぞり溝を押すと裏返り取手の金具が現れた。蓋を開けると大人がひとり通れる程の四角い真っ暗な穴から湿気を帯びた風の流れを微かに感じる。
恐怖より、秘密の通路を見つけた高揚感から下に降りて目を凝らす。
…バタン…立てかけていた蓋が閉まると頭上から光のあても無く暗闇に俺ひとり、壁から手が離れないよう歩幅を狭く歩いて進むと目が慣れてきて、錆びた棒が等間隔で並ぶ鉄格子の前に辿り着いた。
人の声が聞こえる。
素早くその場に座り込むと声は高い所から聞こえて遠ざかって行った。
真っ暗な壁に視線を伝う、先に白い光が漏れている。
あそこ、何かで塞がれているのか?
昼間の気温は30度近くあるのに冷え切った暗がりを察するに、あそこが地面でここが地下である事がわかった。
隠し扉に地下牢
なるほど、凄惨な詰問はこういう所で行われるのだろう。
奥を見つめると風音は怒号にも似て死霊か、或は道が続いているのかさえ知れぬ闇に身を置く。
ここで誰の助けも無ければ飢死。
偶に餌を求めて彷徨う闇の住人が居たとすれば食われる運命だ。
声を堪えずに笑う。だって…外で油断する若衆の能書に聞き耳を立てながら、どんなに悪い心で在ろうと今の俺は「自由」其の者。牢獄の闇に暮れ逝く俺は、丑寅の刻に鬼門の鎖龕が開くまで哂いが止まらなかった。
闇夜に音も無く忍び寄る
ショールは死臭を醸し…ああ、一貫の終わりだと俺は観念した。
角灯に寄る
虫は本能で火を求め、その身を焼かれ地を這おうとも、本能の儘に逝く。
ぼぅ…っ…とみつめながら黙っていると科戸さんが切り出す。
「逃亡、余技為らず。私は地の底まで追いかけます」
後手を取られお縄に掛かる。
縄の扱いは手早いが荒々しく容赦ない。等間隔で縛り上げられる度に筋肉を痛めつけ、血流が途絶える症状を握った拳に感じる。SМとは全く異なる科戸さんの縄は仕置きの手立て。縛るだけで人を殺す、苦しみを容易に与えるプロだと実感。
こんな組手、初めてだ。
縄筋に従い頭を降ろすと髪を掴まれ、上に引き上げられた状態から縄を下に勢いよく引くやり方は骨身に染みる激痛。噛み合わせた歯が折れる歯痛も相まって、随所に痛みを与えられる俺は胡坐縛りで壁に肩を付けて尻を向ける格好にされた。
身動ぎもできない異常な痛みに、息も耐々。
離れておかれた角灯に照らされる先で何が起きているのか
音だけでは判断がつかない。けど…
胡坐縛りにする理由は、ただひとつ。
俺は、強姦される。
相手が人ならまだいい。
想像を超える物質に臓物を破られるならいざ知らず、古典的な火責めで生きたまま焼かれ死に至らしめる事も厭わない科戸さんに畏怖する、俺の血眼が闇に浮かぶ。
「青嵐と慇懃を通ずる事を、誓いますか」
言葉の後に、顔の上に何か落ちて来る。
それはゆっくりと蠢きながら、独特な音を立てて肌に絡まる様子から生物であること。着物を脱がされず縛り上げた理由は、肌と布の隙間に頭を潜り込ませる習性を恐怖に塗り替える為…パシ…ッ…鞭の真空派の刺激から肌に噛み付き、締め上げる『蛇責』に声を殺して震える。
冷たい鱗に撫でられながら何時ともわからぬ無数の刃を受け、声に痛みを滲ませる。途方もない重圧的な苦痛に意識が途切れないよう施され断続的な恐怖と苦痛に精神が硬直した頃、胸を這い上がる蛇の頭が俺の目を狙って威嚇音を放つと、物音と共に姿を消した。
震える瞼を開けると、目覚ましく赤々と燃え上がる炎の中で蛇の尾が地面を叩く。
続け様、射放たれる鏑矢の羽音に目を凝らしながら叫ぶ。
――――……玲音ッ!!
地面から続く直径5センチにも満たない板張りを貫く射手は、初段である火箭の一矢で俺を測位。
風を読み、遥か遠く本家の屋根から猛禽類の嘶きにも似た鏑矢を放つ。
「雛の分際で粋な殊を…」最後まで言い切らないうちに暗闇から飛び掛かる小さな獣の呻吟を受け止める。
「にゃーん…親方様に捕まっちゃったのだ」
ぺろっと舌を出す、北都に好戦の意思は無く向こう側から青嵐の呼び声が続く。
「ほっちゃーん?」
「クンクン…これは山楝蛇のニオイッ!!」
科戸さんに睨まれる北斗は耳をぴょこんと下げて口を研がせる。
こうして無事に縄を解かれて牢屋から引き揚げられた俺の体は、土埃と血に塗れて重症。
山楝蛇は噛んだ傷口に猛毒を染み込ませる特性があり、加えて背中の頚腺に食べた生物の毒を含むことから絡みついた肌も膿んで腫れ上がり変色している。外傷より数時間後に脳や内臓が出血する恐れがある猛毒だと専門家の劉青は語る。
救護に出向いた北都が自慢気に腰に手を当てて鼻息をフンッと荒げ、ドヤ顔。
「ほっちゃんお手柄です」
「山楝蛇はマヨ一味で食べるとピリッとしておいしぃーのだ」
「これ毒蛇だよ?」
「僕は特別な訓練を受けてる、お利口さんな猫チャンなーのーだッ」
玲音の鍛錬をマナーとして受ける北都は青嵐の餌付けにやられて懐くようになり現在に至る。と説明する青嵐の顔面に登ってふわふわの尻尾を巻き付ける北都の笑顔を見るのが久しぶりで和む。
「ダディめ…っ…ちゃンこ!怒ってたよ」
「悪さをすれば仕置きが順建て。おや、まだ息があるようですね」
「とめきをいじめたら親方様とて許さないよッ」
「静かに、手を止めてくれただけでも良しとしよう。とめき、ゆっくり呼吸を…」
毒のせいか
耳が遠くて、声枯れる。
「お、親方…さま…どうか、れ…には…俺から言って聞かせます」
「次は風を読みここを狙う様に」
頭撃ち。親を殺して一人前になる世界線に頭が追い付かない。
依代雛の立ち入りが許されない離宮に監禁される俺に万が一の事があっても、本家で警備が許される範囲から仕掛ける分には攻撃と見做されず、近衛が主をどう護り切るのか良い判断材料になったと回答する快さは伺えるが…
「玲音は仕置きが前提で規則を破ります」
「刺激的な折檻で興奮するタイプには、羨ましくて嫉妬したのかも?」
「私ああいうタイプは苦手なので、須らくお断りします」
俺も無理なんでそこを何とか、笑いながら意識が遠のく際「う…っ!」腫れ上がる腕の内部を注射針が貫通して抗毒素が送り込まれる痛みに心拍数が上がる。
深呼吸して落ち着かせるが、次第に頭痛が酷くなり、神経系統の損傷から血圧が急低下。目を閉じても眼振に痙攣を引き起こし、劉青が処置を急ぐ。
「青嵐は輸血の準備を、最悪の自体は避けられない…ああ、落ちたか」
「不死の妙薬で途絶えた命は無かろう」
「どうかな?僕よりずっと親に似て、死にたがりだ」
「さて、吉凶を占うとしよう」
宵ヰ 夢 ヲ……
科戸さんの手が瞼に触れて閉じる。
小夜子の姿が見えないのは、なぜ―――ああ…呼吸が詰まって、また落ちていく。
俺は角灯で照らし出される"囚人"だ。
あれから、どれくらい時間が経ったのか。
廊下に飛び出した後ある部屋に入って…青嵐の足音が遠ざかるのを聞きながら辺りを見回す。
そこには家族の思い出が残されていた。
離れは昔からあって、青嵐はここで幼少の砌を過ごしていたことを随所に知る。
夢に見た少女は小夜子
科戸さん、そして…
一番小さな青嵐が指を咥えて並んだ写真は次第に大きくなり、黒い紋付袴と白無垢で小夜子と並ぶ姿に小さな頃の面影はなく座敷に布団を敷いて生まれたばかりの劉青を抱く夫婦睦まじい筈の写真は、まるで心霊写真の様に黒い靄掛かって青嵐の顔が消えていた。燃えた跡…重なっている子供の写真も足しか映ってない。
これは九頭竜が蚕を殺された怒りから、本家に火を放った証拠。
犠牲になった宇賀神しづ子と科戸さんの祝言は写真に残されておらず、折畳まれた戸籍謄本は達筆過ぎて読めない昔の文字で婚姻が記されていた。昭和はそう遠くない時代だが、黒鬼家は大正から続く大きな商家であり戦後の時代を経て外商と称して闇商売に転じた模様。
青の一門には俺の知らない秘密があって、過去と現在が密に繋がっているとしても、外から来た俺がそれを知るのは容易ではない。思い出は当時を知る人が胸にしまっておけばいい話で、あ…この小説…大学の卒論で手にした事がある。確か地学的でさっぱり分からなかった内容だ。
引き抜いた箇所に戻そうと目を向けた先の空洞に気が付く。
―――なんだ、これ?
書斎の隠し扉に気が付いた俺は興味から鍵を探し始めた。
家探しは得意な方で、人の心理に行動は伴う。それを推測しながら追いかける謎解きに夢中になっていると引き出しから見慣れたウォード錠がみつかった。
これは科戸さんから預かった、参ツ目の鍵。
先の形状が二股の違い。まずは引き出しのウォード錠を差し込んでも回らず、だとすれば俺が持っている鍵が本物。
すぐに廊下を渡り、自分が唯一持ってくることを許された風呂敷包みを解いて輪に通された店の鍵弐ツ「決して開けてはいけない」と云われる代物を袖に隠す。
平常心を装いながら警戒心を怠らず部屋に忍び込み、ニヤついて扉を調べる俺の探求心は止まらない。後悔する事ほどやってる時は熱中するのが、性。
古い鍵が折れないようゆっくり回すと錠が下りた。
床のレールに車輪が滑り込むと木を軋ませ…ゴト…ッ…本棚が横に動いて小さな部屋が現れたが、妙に寒い。
湿気を帯びた匂いに気が付く…ここ、か?
隅に置かれたロールトップデスクの下を覗き込むと板の継ぎ目が違うことに気が付く。板の継ぎ目を指でなぞり溝を押すと裏返り取手の金具が現れた。蓋を開けると大人がひとり通れる程の四角い真っ暗な穴から湿気を帯びた風の流れを微かに感じる。
恐怖より、秘密の通路を見つけた高揚感から下に降りて目を凝らす。
…バタン…立てかけていた蓋が閉まると頭上から光のあても無く暗闇に俺ひとり、壁から手が離れないよう歩幅を狭く歩いて進むと目が慣れてきて、錆びた棒が等間隔で並ぶ鉄格子の前に辿り着いた。
人の声が聞こえる。
素早くその場に座り込むと声は高い所から聞こえて遠ざかって行った。
真っ暗な壁に視線を伝う、先に白い光が漏れている。
あそこ、何かで塞がれているのか?
昼間の気温は30度近くあるのに冷え切った暗がりを察するに、あそこが地面でここが地下である事がわかった。
隠し扉に地下牢
なるほど、凄惨な詰問はこういう所で行われるのだろう。
奥を見つめると風音は怒号にも似て死霊か、或は道が続いているのかさえ知れぬ闇に身を置く。
ここで誰の助けも無ければ飢死。
偶に餌を求めて彷徨う闇の住人が居たとすれば食われる運命だ。
声を堪えずに笑う。だって…外で油断する若衆の能書に聞き耳を立てながら、どんなに悪い心で在ろうと今の俺は「自由」其の者。牢獄の闇に暮れ逝く俺は、丑寅の刻に鬼門の鎖龕が開くまで哂いが止まらなかった。
闇夜に音も無く忍び寄る
ショールは死臭を醸し…ああ、一貫の終わりだと俺は観念した。
角灯に寄る
虫は本能で火を求め、その身を焼かれ地を這おうとも、本能の儘に逝く。
ぼぅ…っ…とみつめながら黙っていると科戸さんが切り出す。
「逃亡、余技為らず。私は地の底まで追いかけます」
後手を取られお縄に掛かる。
縄の扱いは手早いが荒々しく容赦ない。等間隔で縛り上げられる度に筋肉を痛めつけ、血流が途絶える症状を握った拳に感じる。SМとは全く異なる科戸さんの縄は仕置きの手立て。縛るだけで人を殺す、苦しみを容易に与えるプロだと実感。
こんな組手、初めてだ。
縄筋に従い頭を降ろすと髪を掴まれ、上に引き上げられた状態から縄を下に勢いよく引くやり方は骨身に染みる激痛。噛み合わせた歯が折れる歯痛も相まって、随所に痛みを与えられる俺は胡坐縛りで壁に肩を付けて尻を向ける格好にされた。
身動ぎもできない異常な痛みに、息も耐々。
離れておかれた角灯に照らされる先で何が起きているのか
音だけでは判断がつかない。けど…
胡坐縛りにする理由は、ただひとつ。
俺は、強姦される。
相手が人ならまだいい。
想像を超える物質に臓物を破られるならいざ知らず、古典的な火責めで生きたまま焼かれ死に至らしめる事も厭わない科戸さんに畏怖する、俺の血眼が闇に浮かぶ。
「青嵐と慇懃を通ずる事を、誓いますか」
言葉の後に、顔の上に何か落ちて来る。
それはゆっくりと蠢きながら、独特な音を立てて肌に絡まる様子から生物であること。着物を脱がされず縛り上げた理由は、肌と布の隙間に頭を潜り込ませる習性を恐怖に塗り替える為…パシ…ッ…鞭の真空派の刺激から肌に噛み付き、締め上げる『蛇責』に声を殺して震える。
冷たい鱗に撫でられながら何時ともわからぬ無数の刃を受け、声に痛みを滲ませる。途方もない重圧的な苦痛に意識が途切れないよう施され断続的な恐怖と苦痛に精神が硬直した頃、胸を這い上がる蛇の頭が俺の目を狙って威嚇音を放つと、物音と共に姿を消した。
震える瞼を開けると、目覚ましく赤々と燃え上がる炎の中で蛇の尾が地面を叩く。
続け様、射放たれる鏑矢の羽音に目を凝らしながら叫ぶ。
――――……玲音ッ!!
地面から続く直径5センチにも満たない板張りを貫く射手は、初段である火箭の一矢で俺を測位。
風を読み、遥か遠く本家の屋根から猛禽類の嘶きにも似た鏑矢を放つ。
「雛の分際で粋な殊を…」最後まで言い切らないうちに暗闇から飛び掛かる小さな獣の呻吟を受け止める。
「にゃーん…親方様に捕まっちゃったのだ」
ぺろっと舌を出す、北都に好戦の意思は無く向こう側から青嵐の呼び声が続く。
「ほっちゃーん?」
「クンクン…これは山楝蛇のニオイッ!!」
科戸さんに睨まれる北斗は耳をぴょこんと下げて口を研がせる。
こうして無事に縄を解かれて牢屋から引き揚げられた俺の体は、土埃と血に塗れて重症。
山楝蛇は噛んだ傷口に猛毒を染み込ませる特性があり、加えて背中の頚腺に食べた生物の毒を含むことから絡みついた肌も膿んで腫れ上がり変色している。外傷より数時間後に脳や内臓が出血する恐れがある猛毒だと専門家の劉青は語る。
救護に出向いた北都が自慢気に腰に手を当てて鼻息をフンッと荒げ、ドヤ顔。
「ほっちゃんお手柄です」
「山楝蛇はマヨ一味で食べるとピリッとしておいしぃーのだ」
「これ毒蛇だよ?」
「僕は特別な訓練を受けてる、お利口さんな猫チャンなーのーだッ」
玲音の鍛錬をマナーとして受ける北都は青嵐の餌付けにやられて懐くようになり現在に至る。と説明する青嵐の顔面に登ってふわふわの尻尾を巻き付ける北都の笑顔を見るのが久しぶりで和む。
「ダディめ…っ…ちゃンこ!怒ってたよ」
「悪さをすれば仕置きが順建て。おや、まだ息があるようですね」
「とめきをいじめたら親方様とて許さないよッ」
「静かに、手を止めてくれただけでも良しとしよう。とめき、ゆっくり呼吸を…」
毒のせいか
耳が遠くて、声枯れる。
「お、親方…さま…どうか、れ…には…俺から言って聞かせます」
「次は風を読みここを狙う様に」
頭撃ち。親を殺して一人前になる世界線に頭が追い付かない。
依代雛の立ち入りが許されない離宮に監禁される俺に万が一の事があっても、本家で警備が許される範囲から仕掛ける分には攻撃と見做されず、近衛が主をどう護り切るのか良い判断材料になったと回答する快さは伺えるが…
「玲音は仕置きが前提で規則を破ります」
「刺激的な折檻で興奮するタイプには、羨ましくて嫉妬したのかも?」
「私ああいうタイプは苦手なので、須らくお断りします」
俺も無理なんでそこを何とか、笑いながら意識が遠のく際「う…っ!」腫れ上がる腕の内部を注射針が貫通して抗毒素が送り込まれる痛みに心拍数が上がる。
深呼吸して落ち着かせるが、次第に頭痛が酷くなり、神経系統の損傷から血圧が急低下。目を閉じても眼振に痙攣を引き起こし、劉青が処置を急ぐ。
「青嵐は輸血の準備を、最悪の自体は避けられない…ああ、落ちたか」
「不死の妙薬で途絶えた命は無かろう」
「どうかな?僕よりずっと親に似て、死にたがりだ」
「さて、吉凶を占うとしよう」
宵ヰ 夢 ヲ……
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