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幽韻之志
54/羅漢の宴
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青空から陽射しが降り注ぐ、初夏が近づく端午の節句。
動画撮影と店で料理を作り続ける慌ただしい日々の中で、初めてのお誕生日を迎える本家の姫君ことあおちゃんの本名が公表された。
科戸 青凰
5月21日生まれのふたご座
あおちゃんの母親は歌舞伎青嵐の娘・明神麗子であること意外の出生は不明な無戸籍児。麗子は出産後に死亡、それは必然的な運命。夜巫女の生まれ変わりとして虹色の瞳を授かったあおちゃんは親権を巡り鑑定に出された先で誘拐。海外に連れ出される寸前、豪華客船の客船ではなく乗務員の一室で発見されたのは生後20日という波状を生まれ持つ、純潔の君。
だが、西暦が一昨年の年号で…2歳。
実際は今日で11か月と14日目、サバを読んでる理由は?
「お嬢、今日もいい食いっぷりで」
「無駄口はいいから、ジャンジャン!肉焼いて!!」
鼻歌は軍艦マーチ
歯も生え揃わないのにラムショルダーに豪快に噛みついて肉を食いちぎる。
本家は関東随一のヤクザ屋さん…で、極端に知能指数が高くて体の成長が追い付かず、見た目は赤ちゃん頭脳は大人。
身内からは"嵐のお嬢様"と一目置かれる天才児。
誰がどう見ても1歳児には、見えません。
来月からプレ幼稚園の短期入学が始まるため、2歳でなければ世間的に通らない意向を示す科戸さんも正直、定年には見えない悪の因子。
一方でリゾの動画再生数と支持率はプラチナスター階級に昇格。
ご褒美に青輝丸の邸宅で、超豪華グランピングの焼肉パーティーを決める。
「姫専用の焼肉だれ、いかがですか?」
「おいしーよ!砂肝とホルモンおかわり」
可愛い顔して、肉の好みがオッサンで申し訳ない。
賑わうコンロの周りで青輝丸が遠くを見つめる、ああ…北都が気になる?
「ほっちゃんは火が恐いの」
「火が…肉は食べれるのか?」
「食べるけど猫舌」
北都の生態は科学者が生み出した新しい人種
推定生後6か月の獣仔
Hr-202型・通称ヘラはネコ科の獣人で顔は瓜二つだが、クローン技術は複雑でヘラの記憶を継承しながら肉体の基となる部分ではオオカミの遺伝子が混血しており、成長と共にその傾向が随所に見られる。
警戒心が強く群れで暮らす。
玲音を父親として、家族に対する愛情が深い環境下で育つ北都はまだ子供の身でありながら、家族を守る英才教育を受けているため、離れていても俺とあおちゃんから決して目を離さない。
「お前言ったよなぁ…ほっちゃんが焼肉食べたいって」
震えながら振り返る青輝丸が、バーベキュー用の長い串を俺の首元に突き立てる。
「猫舌だなんて聞いてねぇ」
「今、鶏チャーシュー煮てるから」
「そんなもの家でやれ!」
火よりも青輝丸を警戒して一定の距離を保っていたが、胸ぐらを掴まれる俺を目掛けて走り出す。
地面を蹴り上げる、怒った時の唸り声と共に飛躍した先に待ち構えるのはパン切り包丁を差し向ける丑若松の一打。獣仔だろうがご主人様に牙を向けるのは容赦しない、執行部最高顧問の怜悧な眼差しに興奮する北都は臨戦態勢で吠える。
闘志を宿す者は、相手から決して目を反らさない。
相手の行動を予測し、時として見切り、間合いに飛び込む機を狙う。
生きるために、私怨深ければなおのこと諦めない瞳がオオカミの性質上、北都にも備わっておりこちらが目を離した途端に急所を噛む。
しかし野性の本能を剥き出しで襲い掛かっても、丑若松はお戯れに過ぎない。
やたらと吠えているので見るとイカ耳で半泣きになって震えている。
うわぁ…やんちゃな北都がビビり散かしてる。
(オムツが濡れて交換サイン出てます)
「玲音、ほら…見てやってよ」
「うちの子が、何か?」
何かじゃなくて自分の子供なんだからちゃんと見てろ!
お前の大丈夫だと思う判断基準とこっちの感覚は天と地ほどの差がある。気圧の差で目玉飛び出る深海魚の気分だ。
「はい、北都のごはんできたよ」
テーブルに手を付いて尻尾ブンブン振り回す北都に、玲音が合図を送る。
おずおず、と両手を合わせて玲音の動きに合わせて頭を下げる「いただきます」の姿はいつ見ても愛らしく鶏チャーシューを盛大に犬食いする北都に一同、唖然とする。ただ一人を除いて…
――――……ガシャーンッ!!
衝突音が青空に吸い込まれ、鳥の群れが羽ばたく。
「ダディ!ジャヨ、キャウォーーーッン!!」
興奮して吠える北都の視線の先には、柄の長い大刀を軽快に振り回す若が責める。玲音は日本刀を両手で持ったまま攻撃を交わす。あれは…八卦掌の套路か。
武器には使い方に特徴があり、大刀は断つ、撃つ、などの威力的な打撃に特化しているが日本刀は本来、生活における道具のひとつで、時代劇に見るような激しく刃に刃を向けて振り回す殺陣はアクションに過ぎない。
玲音の刀は重さが1.5㎏
落とせば人の首を斬れる。そのためには重心を決めて計算しなければ決まりがつかないのに対して大刀は7㎏暴力的な破壊力で日本刀は折れてしまう。
本家に乗り込んだ、あの時…
二刀流で刀を振り回していたのは相手が、人間だから。
脆い血袋を破り、串撃ち、押し斬る。
刀は脆く毀れて斬れなくなると刺すより他ない。
危機的状況でも一糸乱れぬ打撃が可能な理由は……" 俺が居たから "……声は心に届く、力が沸いて運動量が向上することは科学的に証明されている。
今この瞬間も双方、主に見つめられ、玲音は北都の声を受けているせいか鮮やかな攻防にどこか目が離せないものを感じさせる。
「そんな余裕があるのか?」笑止、丑若松が穿つ。
応援している北都も体の動きがいつもより軽やかで、動きを見真似て普段はできない宙返りからの構えに気合のキュン鳴き。玲音が応えると瞳を輝かせ、気分が乗ってきたようだ。
「まぁ…6割ってところか」
「隠密ならあの程度で充分です」
「遊びで人を食い殺すガキのいい玩具だな…来るぞ、あと3打で勝負だ」
不意に玲音の目付きが変わり、踏み出した先で切先を変えて腕を引き、美しい流尖状を宙に描きながらまっすぐに腕を伸ばして貫く光の刃に頬を照らされる、若の打法が衝突して近くで見ていた北都が吹き飛ばされた。
「……キャ…ン……ッ!!」
小さな鳴き声が弾けて宙に浮く。
北都を見上げる玲音の視線の先に走り出す青輝丸は、両手を伸ばして地面を蹴って飛ぶ。一方で折れた大刀を投げて飛び乗り、青輝丸の着地点へ先立つ丑若松が2人を受け止めると隷属の全員が追い駆けていく。
(隷属は全員ご主人様・命) ←青輝丸に対して重症な過保護
無事に抱き留められた北都は鍛衡の衝撃波により打撲して痛がり、小さな体を丸めてキュン鳴き。そこから先は猫っ可愛がりで北都を離さない青輝丸に困惑…お前その優しさはどこから来るんだ?
動画撮影と店で料理を作り続ける慌ただしい日々の中で、初めてのお誕生日を迎える本家の姫君ことあおちゃんの本名が公表された。
科戸 青凰
5月21日生まれのふたご座
あおちゃんの母親は歌舞伎青嵐の娘・明神麗子であること意外の出生は不明な無戸籍児。麗子は出産後に死亡、それは必然的な運命。夜巫女の生まれ変わりとして虹色の瞳を授かったあおちゃんは親権を巡り鑑定に出された先で誘拐。海外に連れ出される寸前、豪華客船の客船ではなく乗務員の一室で発見されたのは生後20日という波状を生まれ持つ、純潔の君。
だが、西暦が一昨年の年号で…2歳。
実際は今日で11か月と14日目、サバを読んでる理由は?
「お嬢、今日もいい食いっぷりで」
「無駄口はいいから、ジャンジャン!肉焼いて!!」
鼻歌は軍艦マーチ
歯も生え揃わないのにラムショルダーに豪快に噛みついて肉を食いちぎる。
本家は関東随一のヤクザ屋さん…で、極端に知能指数が高くて体の成長が追い付かず、見た目は赤ちゃん頭脳は大人。
身内からは"嵐のお嬢様"と一目置かれる天才児。
誰がどう見ても1歳児には、見えません。
来月からプレ幼稚園の短期入学が始まるため、2歳でなければ世間的に通らない意向を示す科戸さんも正直、定年には見えない悪の因子。
一方でリゾの動画再生数と支持率はプラチナスター階級に昇格。
ご褒美に青輝丸の邸宅で、超豪華グランピングの焼肉パーティーを決める。
「姫専用の焼肉だれ、いかがですか?」
「おいしーよ!砂肝とホルモンおかわり」
可愛い顔して、肉の好みがオッサンで申し訳ない。
賑わうコンロの周りで青輝丸が遠くを見つめる、ああ…北都が気になる?
「ほっちゃんは火が恐いの」
「火が…肉は食べれるのか?」
「食べるけど猫舌」
北都の生態は科学者が生み出した新しい人種
推定生後6か月の獣仔
Hr-202型・通称ヘラはネコ科の獣人で顔は瓜二つだが、クローン技術は複雑でヘラの記憶を継承しながら肉体の基となる部分ではオオカミの遺伝子が混血しており、成長と共にその傾向が随所に見られる。
警戒心が強く群れで暮らす。
玲音を父親として、家族に対する愛情が深い環境下で育つ北都はまだ子供の身でありながら、家族を守る英才教育を受けているため、離れていても俺とあおちゃんから決して目を離さない。
「お前言ったよなぁ…ほっちゃんが焼肉食べたいって」
震えながら振り返る青輝丸が、バーベキュー用の長い串を俺の首元に突き立てる。
「猫舌だなんて聞いてねぇ」
「今、鶏チャーシュー煮てるから」
「そんなもの家でやれ!」
火よりも青輝丸を警戒して一定の距離を保っていたが、胸ぐらを掴まれる俺を目掛けて走り出す。
地面を蹴り上げる、怒った時の唸り声と共に飛躍した先に待ち構えるのはパン切り包丁を差し向ける丑若松の一打。獣仔だろうがご主人様に牙を向けるのは容赦しない、執行部最高顧問の怜悧な眼差しに興奮する北都は臨戦態勢で吠える。
闘志を宿す者は、相手から決して目を反らさない。
相手の行動を予測し、時として見切り、間合いに飛び込む機を狙う。
生きるために、私怨深ければなおのこと諦めない瞳がオオカミの性質上、北都にも備わっておりこちらが目を離した途端に急所を噛む。
しかし野性の本能を剥き出しで襲い掛かっても、丑若松はお戯れに過ぎない。
やたらと吠えているので見るとイカ耳で半泣きになって震えている。
うわぁ…やんちゃな北都がビビり散かしてる。
(オムツが濡れて交換サイン出てます)
「玲音、ほら…見てやってよ」
「うちの子が、何か?」
何かじゃなくて自分の子供なんだからちゃんと見てろ!
お前の大丈夫だと思う判断基準とこっちの感覚は天と地ほどの差がある。気圧の差で目玉飛び出る深海魚の気分だ。
「はい、北都のごはんできたよ」
テーブルに手を付いて尻尾ブンブン振り回す北都に、玲音が合図を送る。
おずおず、と両手を合わせて玲音の動きに合わせて頭を下げる「いただきます」の姿はいつ見ても愛らしく鶏チャーシューを盛大に犬食いする北都に一同、唖然とする。ただ一人を除いて…
――――……ガシャーンッ!!
衝突音が青空に吸い込まれ、鳥の群れが羽ばたく。
「ダディ!ジャヨ、キャウォーーーッン!!」
興奮して吠える北都の視線の先には、柄の長い大刀を軽快に振り回す若が責める。玲音は日本刀を両手で持ったまま攻撃を交わす。あれは…八卦掌の套路か。
武器には使い方に特徴があり、大刀は断つ、撃つ、などの威力的な打撃に特化しているが日本刀は本来、生活における道具のひとつで、時代劇に見るような激しく刃に刃を向けて振り回す殺陣はアクションに過ぎない。
玲音の刀は重さが1.5㎏
落とせば人の首を斬れる。そのためには重心を決めて計算しなければ決まりがつかないのに対して大刀は7㎏暴力的な破壊力で日本刀は折れてしまう。
本家に乗り込んだ、あの時…
二刀流で刀を振り回していたのは相手が、人間だから。
脆い血袋を破り、串撃ち、押し斬る。
刀は脆く毀れて斬れなくなると刺すより他ない。
危機的状況でも一糸乱れぬ打撃が可能な理由は……" 俺が居たから "……声は心に届く、力が沸いて運動量が向上することは科学的に証明されている。
今この瞬間も双方、主に見つめられ、玲音は北都の声を受けているせいか鮮やかな攻防にどこか目が離せないものを感じさせる。
「そんな余裕があるのか?」笑止、丑若松が穿つ。
応援している北都も体の動きがいつもより軽やかで、動きを見真似て普段はできない宙返りからの構えに気合のキュン鳴き。玲音が応えると瞳を輝かせ、気分が乗ってきたようだ。
「まぁ…6割ってところか」
「隠密ならあの程度で充分です」
「遊びで人を食い殺すガキのいい玩具だな…来るぞ、あと3打で勝負だ」
不意に玲音の目付きが変わり、踏み出した先で切先を変えて腕を引き、美しい流尖状を宙に描きながらまっすぐに腕を伸ばして貫く光の刃に頬を照らされる、若の打法が衝突して近くで見ていた北都が吹き飛ばされた。
「……キャ…ン……ッ!!」
小さな鳴き声が弾けて宙に浮く。
北都を見上げる玲音の視線の先に走り出す青輝丸は、両手を伸ばして地面を蹴って飛ぶ。一方で折れた大刀を投げて飛び乗り、青輝丸の着地点へ先立つ丑若松が2人を受け止めると隷属の全員が追い駆けていく。
(隷属は全員ご主人様・命) ←青輝丸に対して重症な過保護
無事に抱き留められた北都は鍛衡の衝撃波により打撲して痛がり、小さな体を丸めてキュン鳴き。そこから先は猫っ可愛がりで北都を離さない青輝丸に困惑…お前その優しさはどこから来るんだ?
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