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奴隷島
あんたがたどこさ
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秘密の隠れ家を手に入れた。
俺は生き生きと働き「あの夜」食べた鯨の大和煮をスーパーの缶詰コーナーにみつけて、食べた…けど…生の肉と缶詰だと随分、えぐみと肉質に違いがある事を知り、寂しさを募らせていた。
早く木曜になればいいのに…
水曜深夜の番組をベッドの中で晃汰と観ていた。寝てる?本当に可愛い顔だな。
この寝顔をあと何回見れるだろう。
愛しさが込み上げ抱きしめたくなるけど、多くを望めば恨みとなって返る。
居候先から荷物を少しづつ持ち出して、晃汰の部屋は半同棲の状態。貴重品と現金は駅前のロッカーに突っ込んで、独立に向けて始動。
どこにも行けない俺を匿ってくれている晃汰には、もう迷惑かけられない。
どんなに好きでも…
俺は一番になれないし、お遊びの延長でこんな気持ちになるくらいなら精算するべきかな。
渚はロケで大阪、同伴する隼翔が西のゲイタウン堂山にて豪遊。
億万長者の道楽を冷ややかな目で見ながら消灯。
おやすみのキス
温かい肌の触れ合いに目を閉じる。
◇
翌朝、大きなキャリーケースを引っ張って旅立つ。
「おはようございます」
朝の挨拶、不機嫌に答える青輝丸は直球勝負で仕掛ける。
「最近、男の家を泊まり歩いてるらしいな」
「人聞きの悪いこと言うな。友達だって…」
「何かあったのか?」
「別に、帰って寝るだけ。同棲してるから気は使う」
「…けど?」
追撃の一手を止めない青輝丸は何か察している様子。
犯罪心理捜査官より目利きの洞察力。
嘘をついているわけではない、真実を言わないだけ。
仕事が終わればコインランドリーに寄って泪町二十四軒の借り住まいに駆け込み、まずは掃除。食事は店の厨房を借りて自炊。それから…「今日やること」を指折り数えて、折り菓子をひっ下げ、いざ開かずの線路に立つ。
「こんばんは」声に目を凝らすと科戸さんが待っていてくれた。
何やら横のボタンを押して遮断器を上げる、そんな裏技あるんだ。
キャリーを転がして渡る。
そこが宵闇だろうが
黄泉だろうが、やっとみつけた居場所。
静かで淡麗なこの人に…なぜだろう、惹かれる。
「向こう側にはボタン無いのに…」
「住人が往来する為、こちら側にだけ付けて貰いました」
だけ…ちょっと違和感?
まぁ自治体の事情があるんだろう。
軒下の赤提灯が破れてどこかでみた妖怪のようになっているけど、ご愛敬。薄暗いカウンターに座って折り菓子を差し出す。
見えないと思って手を繋いだら、冷たくて死んでいるのかと思った。
「ありがとうございます。お供えに、頂きますね」
「仏壇ありました?」
「妻の位牌だけ…奥に、在ります」
悲しみを持て余す、未亡人。
どうしていい男は皆結婚しているんだ(青嵐は除く)科戸さんはミステリアスだけど何でも聞いてくれるから、気兼ねなく居られる。
こうやって油断しているといつも痛い目に遭う、けど…
野良猫に挨拶する人だよ?
カウンターに飛び乗って煮物を狙うと本マグロのお刺身が出てきて、猫ちゃんご機嫌でした。
非常識が常識に反転してる
人間ばかりの生活で
……ヒト……なのか?
それすらも霞む、薄ぼんやりとした築40年の家屋に匿われた俺は人の欲望から解き放たれ自由でいられることに安堵を覚えて、談笑を愉しむ。
俺は生き生きと働き「あの夜」食べた鯨の大和煮をスーパーの缶詰コーナーにみつけて、食べた…けど…生の肉と缶詰だと随分、えぐみと肉質に違いがある事を知り、寂しさを募らせていた。
早く木曜になればいいのに…
水曜深夜の番組をベッドの中で晃汰と観ていた。寝てる?本当に可愛い顔だな。
この寝顔をあと何回見れるだろう。
愛しさが込み上げ抱きしめたくなるけど、多くを望めば恨みとなって返る。
居候先から荷物を少しづつ持ち出して、晃汰の部屋は半同棲の状態。貴重品と現金は駅前のロッカーに突っ込んで、独立に向けて始動。
どこにも行けない俺を匿ってくれている晃汰には、もう迷惑かけられない。
どんなに好きでも…
俺は一番になれないし、お遊びの延長でこんな気持ちになるくらいなら精算するべきかな。
渚はロケで大阪、同伴する隼翔が西のゲイタウン堂山にて豪遊。
億万長者の道楽を冷ややかな目で見ながら消灯。
おやすみのキス
温かい肌の触れ合いに目を閉じる。
◇
翌朝、大きなキャリーケースを引っ張って旅立つ。
「おはようございます」
朝の挨拶、不機嫌に答える青輝丸は直球勝負で仕掛ける。
「最近、男の家を泊まり歩いてるらしいな」
「人聞きの悪いこと言うな。友達だって…」
「何かあったのか?」
「別に、帰って寝るだけ。同棲してるから気は使う」
「…けど?」
追撃の一手を止めない青輝丸は何か察している様子。
犯罪心理捜査官より目利きの洞察力。
嘘をついているわけではない、真実を言わないだけ。
仕事が終わればコインランドリーに寄って泪町二十四軒の借り住まいに駆け込み、まずは掃除。食事は店の厨房を借りて自炊。それから…「今日やること」を指折り数えて、折り菓子をひっ下げ、いざ開かずの線路に立つ。
「こんばんは」声に目を凝らすと科戸さんが待っていてくれた。
何やら横のボタンを押して遮断器を上げる、そんな裏技あるんだ。
キャリーを転がして渡る。
そこが宵闇だろうが
黄泉だろうが、やっとみつけた居場所。
静かで淡麗なこの人に…なぜだろう、惹かれる。
「向こう側にはボタン無いのに…」
「住人が往来する為、こちら側にだけ付けて貰いました」
だけ…ちょっと違和感?
まぁ自治体の事情があるんだろう。
軒下の赤提灯が破れてどこかでみた妖怪のようになっているけど、ご愛敬。薄暗いカウンターに座って折り菓子を差し出す。
見えないと思って手を繋いだら、冷たくて死んでいるのかと思った。
「ありがとうございます。お供えに、頂きますね」
「仏壇ありました?」
「妻の位牌だけ…奥に、在ります」
悲しみを持て余す、未亡人。
どうしていい男は皆結婚しているんだ(青嵐は除く)科戸さんはミステリアスだけど何でも聞いてくれるから、気兼ねなく居られる。
こうやって油断しているといつも痛い目に遭う、けど…
野良猫に挨拶する人だよ?
カウンターに飛び乗って煮物を狙うと本マグロのお刺身が出てきて、猫ちゃんご機嫌でした。
非常識が常識に反転してる
人間ばかりの生活で
……ヒト……なのか?
それすらも霞む、薄ぼんやりとした築40年の家屋に匿われた俺は人の欲望から解き放たれ自由でいられることに安堵を覚えて、談笑を愉しむ。
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