俺のご主人様がこんなに優しいわけがない

及川まゆら

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淫内感染

ザ・交渉~肉食系スゴテク男子~

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 裸で目覚める、午前9時。

 「んん……」深く息を吐く隣人は、首の下に腕を差し込み隆起する大胸筋を寄せて端麗ボディを余すところなく見せつけてくる。
 延長コードで縛りあげたい衝動に咳払いをひとつ、さて…

 買い物に出ると家を出たきり、戻らず…この時間だ。
 言い換えれば預かった初日に家出。
 電話の一本も入れないと本当に帰る場所を失くしてしまう。とりあえず現状報告だけでも。

 「晃汰。ちょっと電話借りていい?」
 「誰にかけるの」
 「友達に。シャワー浴びたら迎えに来て貰う」
 「送るよ」
 「ううん、いい。ごめんね」

 スマホを受け取り、ベッドの中で梶さんに教え貰った番号を思い出す。
 数字だけは一度みたら頭に入る…繋がった。

 あれ?名前が登録してある、なんで??

 「おはまーす。宇賀っちどないしたーん」

 うがっち…
 これ完全に知り合いじゃね?

 「昌ちゃん?どないしたん」 
 「今、晃汰っていう人と一緒にいるんだけど…」
 「ちょ…ヤバいねん、あんな?」
 「誰か家に誰か来てない?ヤクザとか薬剤師とか」
 「親方さん見えてるで。ああ!」
 「貸せ…俺だ。足抜けしやがって、今どこに…」


 あ、やっぱり(通話終了)


 即、追撃。番号通知は090-6696…これ、青輝丸の番号だな。

 「晃汰。お願い出ないで」
 「お前が出ろって」

 鳴りやまない着信音にしかめっ面してスマホを受け取り、裸のまま受話器マークの突破口を押す。

 「おかけになった番号は、俺様の都合により通話が出来なくなっております」
 「青嵐の留守に足抜けとはいい度胸だな」
 「逃げたわけじゃない。ただ…」

 いい男の誘惑に勝てなかっただけ。

 俺の言葉を遮る怒号にスマホを耳から離す
 自分で選んで男と寝た。それだけのこと、なのに青輝丸ご乱心。まぁ確かに俺らには絶対を誇る親がいて、他所で寂しさを紛らわすなんて以ての外。貞操の概念?てゆーのは人生を捧げている連中の話であって、青嵐が死ねばいいと本気で思ってる。
 え?青嵐と連絡が取れないって…
 死んだらそれは世界平和が訪れたってことだろ。

 「一緒じゃないのか?」
 「知るかよ。生きてるか情報が必要なら国際警察に要請しろ」
 「まるで他人事だな」
 「とにかく今から帰るから、恩人には何もしないでくれよ」
 「わかった、迎えを行かせたから動くな」

 窓の外に影…最新型のドローンで見張られていた。
 一夜限りのアバンチュールを覗かれたお詫びに、晃汰の頬にキスすると青輝丸の声は地獄の底から吹きあがる業火の如し「堂々たる申し開き、受けて立つ」急ブレーキの音と共にマンションの下に黒塗りのベンツが何台も込み合いご存知スキンヘッドの厳つい男達が御出まし。 
 眼下に見る晃汰は、顔面蒼白。
 騒ぎながら上がってくるのはいいが、晃汰も一緒に拉致る気だな。
 いい度胸だ。昨晩キッチンからくすねたペティナイフを親指の付け根の上でひと回し、持ち返ると同時に一歩前に出ると黒服の首を刃先が掠める。
 「恩人だと言った筈だ、貴様ら如きが気安く触れるな」
 「申し訳ございません」頭の高さに足を振り上げ、一撃。
 吹っ飛ぶ黒服を避ける晃汰を背中で守り、ナイフを握り返し臨戦態勢。まぁこのくらいは出来るとしても青輝丸の隷属チャームが、もし入ってたら、窓から飛び降りでもしないと晃汰が潰される。
 長鞭でもあれば別だが…


 殺傷能力の高い丞の青い瞳が、訴える。


 ナイフを投げて両手をあげる俺は拳ひとつ顔に受けて敢無く連れ出されることで事態を治めた。

 「宇賀っちー!」リビングで梶さんと晃汰が抱き合うのを見届け、鋭い視線を突き付ける渚に会釈して青輝丸の目の前で膝を折る俺は、周囲の視線を集める。
 俺にスマホを差し出す
 青輝丸は一言だけ餞別をくれた。

 「嘘でもいいから、愛してると言ってくれ」

 俺に、死ねと…
 ちょっと男と寝たくらいで大惨事。
 被災を避けたい一心で厳しい視線に撃たれながら、青嵐の声を待つ。


 「愛しい私のご主人様、おはようございます」


 躊躇いながら声を微かに、俺の名を呼ぶ。

 迫真の演技に青輝丸が手を指さす。
 そこから衛生から信号を飛ばして現在地を確認。それほど遠くには行っておらず現地から派遣、程なくして確保の報告を受け一同、肩を撫でおろす。
 青嵐の耳の軟骨部には特殊な加工が施されたGPSが内臓されており、振動を信号とするため最低でも動くか喋らないと衛生はみつけることが出来ない。最先端の技術だが精密故の難点を解消すべく俺は「天の声」と呼ばれ、青嵐が行方不明になる度、駆り出される。

 青輝丸は安堵と同時に、倒れた。

 ◇

 「さすが、1億円の男…」

 バーカウンターに並ぶ
 渚、隼翔、そして晃汰の4人でグラスを傾ける。

 「宇賀神ってどっかで聞いたことあるんだけどなぁ」
 「そんなことより今度帰って来なかったら、お前…」
 「もーやめよーその話。コタのお手柄やん、な?」
 笑いながらグラスから口を離す晃汰と目が合わない。
 ここに同席する全員、晃汰と杯を交わした義兄弟。
 3人の共通点は同業者で俺は新参者。偶然の居り合わせで肩を並べる事になったのだが、晃汰にあんな(殺しの現場)見せてドン引き…だよな。
 何なら開き直って調教するか?
 
 「今からホテル行ってスワップしたいひと」

 渚、無視
 俺、挙動不審
 晃汰…挙手。えええええっ?!
 
 今年は春から縁起がいいぞ。
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