26 / 138
調教師
怨掬び
しおりを挟む
初夜を夢見る宵闇の、産寝に想い熱く堕ちる。
◇
晴れた神社の境内
幸せの象徴が飛び立つ、午後。
靴底に砂利を擦らせ階段の先に在る「神頼み」の場所を避けて、顔を伏せる。
たくさんの願いが結ばれた縄の間に、いつかの自分を見た気がした。
裏切りの果てに宛を無くした
俺は悔しさと孤独から逃れるために、一枚の絵馬に何も書かず想いを晴らす。
息が一瞬で氷の粒に変わる…
凍てついた表情の俺は、俺と目が遭う。
ゆっくりと視線を外す
残像の俺と今ここに居る俺は同じ、言の葉を紡ぐ。
どんなに心を巡らせて
命を懸けて死ぬ時が来ても
最後まで、お前を胸に抱いていられるように。俺は俺と、約束した。
消えゆく俺を隔てるのは、雪にも似た早咲きの白い桜。
一片、裏返りながら流れるようにして今の俺に辿り着く。
目覚めるようにして顔を上げる、俺は…笑っていた。
「天満宮の大神に挨拶の賽銭ひとつ投げない愛想無し。
お前はここでも招かれざる流浪人だな。とめき」
「変な名前で呼ぶな、変態」
俺の言葉に誰かを探し始める勘違いは何も書かれてない絵馬に愁い笑み首に掛けている白くて長いマフラーを翻しながら、舞い散る雪桜に彩られ耽美一貫。歩く姿はなんとやら。
歌舞伎青嵐。俺のご主人様はため息が出るほど、憎らしい。
忘れもしない
あの日から、俺の世界は一変した。
花形を失い、荒ぶる俺は口を閉ざすことで生意気を身に付けて
新造から隷属に出世。
その証拠に本当の名前では呼ばれなくなった。
――――― 留吉(とめきち)
これが俺の通り名だ。
操と引き替えに手に入れた名前の由来も含め
俺が生きていくために必要な選択を語るとしよう。
◇
晴れた神社の境内
幸せの象徴が飛び立つ、午後。
靴底に砂利を擦らせ階段の先に在る「神頼み」の場所を避けて、顔を伏せる。
たくさんの願いが結ばれた縄の間に、いつかの自分を見た気がした。
裏切りの果てに宛を無くした
俺は悔しさと孤独から逃れるために、一枚の絵馬に何も書かず想いを晴らす。
息が一瞬で氷の粒に変わる…
凍てついた表情の俺は、俺と目が遭う。
ゆっくりと視線を外す
残像の俺と今ここに居る俺は同じ、言の葉を紡ぐ。
どんなに心を巡らせて
命を懸けて死ぬ時が来ても
最後まで、お前を胸に抱いていられるように。俺は俺と、約束した。
消えゆく俺を隔てるのは、雪にも似た早咲きの白い桜。
一片、裏返りながら流れるようにして今の俺に辿り着く。
目覚めるようにして顔を上げる、俺は…笑っていた。
「天満宮の大神に挨拶の賽銭ひとつ投げない愛想無し。
お前はここでも招かれざる流浪人だな。とめき」
「変な名前で呼ぶな、変態」
俺の言葉に誰かを探し始める勘違いは何も書かれてない絵馬に愁い笑み首に掛けている白くて長いマフラーを翻しながら、舞い散る雪桜に彩られ耽美一貫。歩く姿はなんとやら。
歌舞伎青嵐。俺のご主人様はため息が出るほど、憎らしい。
忘れもしない
あの日から、俺の世界は一変した。
花形を失い、荒ぶる俺は口を閉ざすことで生意気を身に付けて
新造から隷属に出世。
その証拠に本当の名前では呼ばれなくなった。
――――― 留吉(とめきち)
これが俺の通り名だ。
操と引き替えに手に入れた名前の由来も含め
俺が生きていくために必要な選択を語るとしよう。
0
お気に入りに追加
117
あなたにおすすめの小説



どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ある少年の体調不良について
雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。
BLもしくはブロマンス小説。
体調不良描写があります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる