俺のご主人様がこんなに優しいわけがない

及川まゆら

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八漢地獄

怪奇、血の滴る地獄の七丁目/3,独房

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 暴動になった一連の責任は俺に課され、現行犯逮捕と約12時間に及ぶ非道なる破壊的な取り調べの末、三日三晩の古風な折檻へと進展。
 ここで問題視されているのは、社長に暴言を吐き手を挙げたこと。
 理不尽を認めて詫びを入れろと傲岸な態度で強制してくる、社長の爪先に口付けるくらいなら舌を噛み切ってやる。

 内蔵が破裂して頭の中身が飛び散っても
 絶対に志を曲げない覚悟で睨み返す。

 端切れとなった服を引きちぎられた上から白い拘束着のベルトを重ね重ねに締められた格好で錆び付いた車椅子に縛られ、最後の引導となる玲音を正面に向かえた。
 手を焼き尽くした男達が道具を投げ捨て、引き上げていく。
 「酷いものだね」
 俺の前に膝をつく玲音はため息を滲ませ、頭を横に振った。
 「強情を張っても折られるんだよ」
 「お前もこうやって親に遣り込まれて来たのか」
 「そうだよ。これが絶対服従の威とする処…顔を上げて、もう一度」
 玲音が握る単鞭シングルウィップの平たい先があごの下に差し込まれる。
 鞭の先がループ状に振り抜かれる度
 真空を切り裂く残酷な音と、肉がちぎれる痛みに貫かれ血が飛沫となり、床に赤い点と線が直線上に繋がる。
 よくある安全なプレイは脂肪がある胴体に切っ先を向けられるが、頭部をめがけて飛んでくる鞭を受ける場合、舌を噛んで喉に詰まらせないよう鉄棒をくわえる。
 衝撃で金具が外れて、歯が落ちた。
 自由も、権利も…命さえ奪われようとしている。
 今、これが愛情からかけ離れた行為だとしても、玲音が相手なら構わない。
 抜け殻になっても最後まで悦んで、犯されてやるよ。

 「お取り込み中、失礼」

 そう言って玲音の後ろから鞭を取り上げる、ひとりの男。
 俺は、この男を知ってる。
 折檻を見張っていた男。名は『青輝丸あおきまる』歌舞伎一座のひとりで青嵐から一字を与えられた直属の隷属れいぞく。幹部の人間がなぜここに来るのか?
 俺の胸に一抹の不安が過ぎる。
 「青嵐からの命令だ、悪く思うなよ」
 男は玲音を後ろから抱きしめて肩に頭を乗せる。
 「どんな風にされるのが好きなんだ?言ってみろ」
 「青輝丸様が愛してくださるなら…悦んで、捧げます」
 玲音の首筋をついばむ唇がゆっくりと割れて舌が伸びる。
 それを嫌がりもせず、伏し目がちに受け止める行為を促進させる玲音に怒髪天。
 激しく床を足の裏で踏みつけながら、潰された声をしきり荒げたが抵抗も虚しく行為は止まらず、二匹の雄は立ったまま絡み合う。

 粘り着きながら離れては繰り返される肉音
 喘ぎ声に変わる熱い吐息

 地獄の拷問と
 天が与えたもう、ご馳走の荒波に揉まれる。

 俺の代わりに玲音に下される罰
 涙ぐましい悲惨な行為がA5ランクの国産熟成肉みたいに見えて来る、美徳をみた…い…否それは正しい判断ではない!礼音を助けなければ…このままでは欲望に塗り潰される。ああ!腰の浅いスリムなカーゴパンツの前が開かれ到達点からブルーの薄絹を突き破るが如く反り勃つ原形を小指から順に撫で上げられる礼音は心の奥底で拒みつつも啼き濡れてしまう性に抗えず、遂には…目を閉じた。
 先端を滲ませ、こよりの様に捻れながら整った肢体を男に預けて爪先立ち…
 今にも、つい遣る精神をあおられ嘆きさらす。

 暴かれる下半身に釘付け(初めて見たけどデカい!)

 このままじっくりと最後まで眺めたい。
 誰か、撮影してないの?一生おかずにしたい永久保存版の衝撃映像を身の内に反転させ頭の中で玲音を犯す、俺。
 「あれ?アイツ…」頬を蒸気させる玲音を床に投げる男が鎖を跨ぎ俺の目の前にしゃがんで、こう言った。


 「一丁前に視姦なんぞするな」バレた!


 「バーカ!お前を油断させる作戦だ」
 「俺の目を見て言え」じゃあ、はっきり言わせて貰おう。
 一度手ぇ付けたら終いまで犯れ。
 もう一押しだ。俺が待ちわびた絶頂まであと僅かのところで……終了……
 なんだそれ?
 絵に描いたようにガッカリして床の上で息絶える。
 「青輝丸様…これでは折檻になりません」
 「如何せん潰しの効かんガキだな。これでは万策尽きる、なぁ?」
 「私に言われても」
 再び薄絹の中へと収容される御神体の膨らみに合掌(あざーッス) 
 「惜しい、あと少しだったのに。玲音の…」
 最後は声を潜めたつもりだったが聞こえたようで玲音が素早く振り返る。
 「私が辱めを受けているのに薄情な…貴方という人は」
 「冥土の土産にお前の最後を貰えるなら、何回でも死んでやる」
 助けて欲しそうな目で訴えてくる玲音は唇を真一文字に結び、俺を見つめた。
 拘束着を解かれ事なきを得た俺は、ここぞとばかりに玲音の胸に倒れ込む。
 お前の胸板ってどうしてこういいんだろうな。
 安堵により、血の気と痛みが引いて…そのまま意識を失った。
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