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名のない星は暁から出流る
第6話 佐々木 豊晴
しおりを挟む「なに見も知らずの男に調教されてるの、あなた」
目に見える落胆。勢いそのまま私に抱きつく男はあまい香水を漂わせ下から私の頬を爪先でなぞる。
「まゆ……俺が今までどれだけ我慢してきたか、知ってる?」
「知らない。僕はしたいよ?」
「未成年に手を出す勇気なんかありません」
古株の愛人・佐々木豊晴は姉の友人で、初めて出会ったのは豊が中学生、私は幼児。
中学に進学した姉は体育の授業で柔道が始まり男子に負けたくないという鋭く勝気な理由から木曜の夜、体育館で稽古をつけていた。
おさがりの黄色い雨合羽を母に着せられ、暗い公園をひた走り、姉に傘を届けた事が一度だけあり、体育館の東玄関で傘を両手に寒くて震える私を誰よりも早く豊がみつけてくれた。
名前を呼ばれた私は、顎をまっすぐ上にあげるほど背の高い豊に怯えながら母に教えられた通り、お辞儀をして挨拶をした。
「お、おねいちゃん……いますか」
母からの伝言を伝えると豊は微笑みながら長靴を脱がせ、私を抱き上げ
「まゆ、よくやった。いい子」と褒めてポテトチップのり味をロビーで食べさせてくれた、遠い日の記憶。
それから木曜日は体育館に行くのが楽しみで、よく抱っこされて階段を登りトイレの仕方も豊が教えてくれた。大好きなオレンジジュースも買ってくれた。
小学生の時に思いで深い記憶
伸びた髪を姉に編み込みされて大泣きしたあの日、豊は爪の形が整った長い指で絡まる髪を痛くないように解いてくれた。その年の花火大会、姉は浴衣を買って貰えたのに、私はおさがりの……それも白地にピンクの花染め着せられたのが、嫌で、嫌で、ずっと機嫌が悪かった私の面倒を見てくれた。
──まっ紅なりんご飴に唇よせて、
──射的の弾ける音が怖くてしがみつき、
水面を跳ねる黒い尾の金魚ポイで追いかける。
私の小さな手に手を添えて、白い紙は水に濡れると破れてしまうことを教えてくれた。
紅緋鱗の小さな金魚を袋に閉じ込める宵闇に、微笑む。
豊は私にとって特別な存在。
でも、優しい男には秘密があった。
豊は、ペド(小児性愛、また性的嗜好者)
制服を着るようになったら賞味期限切れで、態度が急変。
嫌われてる?
豊は遊びたい年頃なのに私がいつまでも付きまとうから「慕うのは良いが豊は姉の友達で私の友達ではない」と親から換言され、徐々に距離を置かざるを得なかった。
豊に会えない日は、寂しい。
中学生になると体格差はあっても、私の身長は170cm超え。顔が近くなる分だけ膝に抱かれた温もりは遠ざかる。
思春期の難しい年頃
だけど、この年だからこそ豊と話したい、一緒に居たいのに……
汗の匂いにも気を使ったし、声変わりを指摘されたので裏返らない程度に心掛けて可愛い声の出し方も試してみたけど、豊は目を合わせてくれない。私がいると気まずくて帰ってしまう。友達も気に掛けるほど態度は明確だった。
そういえば、幼い私を膝において抱く時、豊の股間にはいつも「何か」が入ってて私がお尻を左右に動かすとそれは反対側に曲がって、ずっとお尻の下にあった。
「なぁに、これ」
豊に聞いても教えてくれない。
あまり動くと危ないようで、私を抱きなおして自分の胸に寄せるとお尻の横を手でリズミカルに優しく宛がう。
それが合図で反射的に豊の胸に頭を預けて腕に摑まる、豊のいい匂い。
小さな頃はわからなかったけど中学に上がる頃には、自分も同じように勃起を意識する事が増えて来た。でも、私は男の人の裸や性的な刺激で、胸が高鳴ると体が反応するのに対して、安らかな時に興奮していたとは俄かに信じがたかった。
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