全てを無くした転生者は、スキルの力で成り上がる

蒼田 遼

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17話 全裸の少女が配下についた

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 ゴブリンの集落は焼け落ち、黒焦げになった残骸が地面に散らばっている。
 地面は所々が抉られていて凹凸が激しく、まるで戦争が起きたかのような光景が、目の前に広がっていた。

 あの魔法は、やはり恐ろしい。
 しばらく使うのを控えよう。

 そんな事を心に決めながら、先ほど見た、こんな地獄のような光景に相応しくない、にっこりと笑っていた全裸の少女を思い出す。

 あれはきっとこの地で亡くなった孤児の幽霊かなにかだろう。
 うん、そういう事にしておこう。

 俺が視線を変えるたびに、俺の目に入るところに移動してニコッと笑うだけの全裸の少女なんて、この世にはいない。

 うん、やっぱり無理があるか。
 俺は、諦めながら、少女の裸を見ないように、目だけを見て話しかけてみる。

 「君はだれ?敵?味方?」

 「………………?……!」

 俺は彼女から敵意のようなものを微塵も感じないのだが、念のため聞いてみる。

 しかし、彼女は一瞬キョトンとした表情をしたものの、再度にっこりと笑い俺の前に立つだけだった。

 うん、やっぱり幽霊なのかもしれない。
 俺が彼女の居場所をめちゃくちゃにしたから、俺を呪うために出てきたんだ、きっと。

 「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏。」

 俺は両目を閉じて、手を合わせ、この言葉が何なのかは分からないが、何故か安心する魔法の言葉を唱えながら深くお辞儀する。

 きっと目を開ければそこにはもう--

 いや、いるやんっ!

 しかもめっちゃ笑顔やんっ!?
 よく見たら顔めっちゃ可愛いやんっ!?

 はっ!だめだだめだ。こんな反応では、俺はこの霊に気に入られてしまう。いや、俺が好きになってしまうの間違えか?

 いや、今は、そんな事はどうでもいい。
 とりあえず、俺はもう一度見えないフリをして、一旦その場を過ごす事にする。

 気になっているのは、弱っているもう一つの反応の方だ。

 少女が俺についてきているが、俺には見えていないし、全く問題はない。うん、全く問題はない。大事な事だから2度言った。

 恐る恐る、弱っている反応の方に行くと、そこはクレーターのようになっていて、中央部分にゴブリンの死骸が山積みになっていた。

 それを見て俺は確信する。

 きっとまだあのゴブリン達の死骸の下で守られるようにキングゴブリンは生きているのだろう。
 あの雷を受けてまだ生きてるなんて、さすがはキングと呼ばれるだけはある。

 反応を見る限りかなり弱っていると思うが……。
 俺は、ゴブリンの死骸を退けて、トドメを刺すかどうか迷う。

-グチャグチャグチャバキッ

 俺の魔力は残り1。周りを見ても、武器となる様なものが、全て消し炭となっていて無い。

-グチャグチャグチャバキッ

 そんな状況でゴブリンの死骸を退けて、万が一、キングゴブリンが最後の力を振り絞って襲ってきたら、俺に勝ち目は無いかもしれない。

-ボリボリッバキッボリッ

 ただこのまま放置して、もしキングゴブリンが回復してしまったとしたら、またいつの日か、ここにゴブリンの集落が出来てしまうかもしれない。

-グチャグチャグチャグチャッ

 うーん、迷うな。

-グチャグチャッバキッボリボリ

 ってか何ださっきから。
 このまるで骨付き肉を丸ごと食っているような、この音は。
 うるさいなぁ。

 俺は音がした方に目を向ける。
 そして衝撃的な光景を目にした。

 そこにいたのは、まるで犬のように四つん這いになり、ゴブリンの死骸に顔から突っ込み、骨ごとムシャムシャと齧り付いている全裸の少女だった。

 ゴブリンの死骸を食ってる!?って、骨ごと!?
 ってか、全裸で四つん這いっ!?後ろから大事なところが見えちゃってるよ!?

 色々と焦りながらも、俺はなんとか心を落ち着かせようとするが、衝撃的すぎる光景に、いっこうに頭がついていかず、ただ呆然とするしかできない。

 そんな俺の気配を感じたのか、少女が口にゴブリンの腕と思われるものを咥えながら振り返る。

 少女と目が合うと、少女はゴブリンの腕を咥えながらにこりと微笑み、二足歩行となり俺の方へと歩いてくる。

 なぜ笑う?怖すぎるんだが……

 少女は、俺に近づいてくるにつれてどどんどんと、これ以上ないくらいの満面の笑みになっていく。

 そして、俺の前まで来ると、口に咥えていたゴブリンの腕をそのまま手で持ち、俺に差し出してきた。

 「コレ……ウマイ……ワケル。」

 なにこの娘!?カタコト?野蛮人?
 怖っ!

 俺は、恐怖心に煽られながらも、彼女からゴブリンの腕を受け取る。

 決して食べるためではない。
 この場をやり過ごすために仕方なくだ。

 「あ、ありがとう……。でも、俺は今お腹がいっぱいだから……」

 そう言いかけると、彼女の表情がみるみると悲しそうになっていく。
 
 やばいやばい。

 俺は内心焦りながらも、何か話題が変えられないか、頭をフル回転させる。
 そしてさすがは俺の頭。一つの解決策を見つけ出す。

 ただ、これは賭けだ。


 「そ、そうだっ!鑑定させてくれる?」

 「カン……テイッ?……イタイ……?

 「ううん、痛くないよ。君を知りたいだけだよ。」


 この娘は、鑑定を知らないようだ。助かった。
 俺は出来るだけ彼女を安心させるように且つ、警戒されないように笑顔を浮かべながら提案した。

 「ウン、イイ。ゴシュジンサマ、ヤサシクスル、イイ。」

 ん?ゴシュジンサマ……ご主人様??

 俺は疑問が残るが、許可をもらえたことにホッとしてとりあえず鑑定をする事にした。

【ステータス】
名前:未定
年齢:3歳
性別:女
種族:獣魔族
主人:ロディ・アレクシス
レベル:14

▼能力
体力:120
攻撃:180
防御:140
魔力:2010
速度:140
素質:+5

▼スキル
身体強化(小)
隠密(小)
夜目(中)
爪術(小)
雷獣化(小)
消化(小)
剛力(小)
咆哮(小)

▼称号
進化に至る者

▼説明
シャドウウルフが、進化師の力を借り狼の獣人族へ至る最中に強い魔力を受け、獣魔族へと進化した。ロディ・アレクシスに忠誠を誓っている。
獣魔族の存在はかなり希少。獣人族特有の腕力と高い身体能力はもちろんのこと、魔族には劣るが高い魔力を持っており、中近距離での戦闘が可能となっている。


 俺は、彼女のステータスを見て唖然としてしまう。

 進化師?主人?俺が?
 あの傷だらけで倒れていたシャドウウルフの子供が、俺の出した雷の龍に当たって魔力を受け取った?いつの間に?
 獣魔族?なにそれ?

 結局鑑定をしたものの、謎は深まるばかり、俺の頭の中も混乱するばかりだった。

 立て続けに混乱が続いたからなのか、俺の頭もパンクしたんだろうか。
 俺は、なにを思ったか彼女に命令した。

 「あれ、倒せる?」

 「……?……キャンッ!」

 彼女は可愛い声で吠えた後、そのままキングゴブリンがいるであろうゴブリンの死体の山に突っ込んだ。

 そして、その中で激しい雷魔法を使ったのか、ゴブリンの死体の山には、雷が迸り、そのまま限界を越えたのか、大きく爆発した。

 辺りの土煙が消えたころ、キングゴブリンの弱々しい反応は消え、そこには顔に泥がついた元気な笑顔全開の全裸の少女が立っていた。

 俺は、何故だか知らないが、いつの間にか大きな爆弾を抱えてしまったようだ。
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