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1話 一筋の希望

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 本作品をお読みいただきありがとうございます。
 一部表現に修正を加えましたが、内容は変わっておりません。
 初めて各作品のため、表現が幼稚であったり間違いがある部分があるかと思いますが、随時修正して参りますので、今後とも宜しくお願い致します。

                アオイ
************

 「聞こえてますか?」


 俺は、涙を拭いながら、突然の声に驚き固まっていた。


 「すみません、時間がないんです、聞こえてたら手をあげてください。」


 なんとも図々しい声なんだろうか。
 俺は心の中で悪態をつきながら、でも話し相手がいるかもしれないという事に少し期待しながら手を挙げる。


 「なんだ、聞こえてるじゃないですかっ!時間もないので、手短に。私の名前は■■■■■。私はある事情があって力が使えない女神。そして貴方は私がこの世に呼び出した転生者です。」


 名前がうまく聞き取れないが、女神!?そして転生者!?
 そんな俺の驚きを無視して自称女神は話を続ける。


 「ただ、私が呼び出したのには理由があって……どうか私の力が解放される様に手伝ってくださいっ!お願いします!タダとは言いません!貴方は、全てのスキルと魔法に対して適正をつけていますので努力次第でいくらでも強くなれます。まだ私の力が弱くて初期能力と能力の上昇幅はかなり低いですが……」


 俺の頭は、さらに混乱した。
 この怪しい自称女神の解放?全スキルと魔法に適性?ん?そういえばなんか俺の鑑定結果にそんなのが……でもあれは……


 「あの~……すみません……ちょっとよくわからないので、いくつか質問してもいいで……」

 「いや、時間がないので質問は今度でお願いします。まずは、魔獣討伐数100体くらい?を目指してくださいっ!話はそれからです!あっ力が……では……」

 
 俺の質問は敢えなく却下され、慌ただしく女神の声は聞こえなくなった。

 そして俺もそろそろ夢の世界から抜け出す時間の様だ。
 俺の頭は混乱しつつも、夢から醒めるのだった--

◆◇

 目を開けるといつもの見慣れた部屋だった。

 最初に比べると随分と小さい部屋に移動させられ最低限の家具しか置いてない倉庫のような自分の部屋。

 弟の鑑定結果が出てからは、全員が弟に期待し俺が使っていた部屋は弟に充てがわれ、俺は押し出されるようにここに移動してきた。

 この家では1歳になると、鑑定が行われる。

 俺も受けたのだが、弟の方が圧倒的に優れているとのことで、その場で跡取りは弟のディープ・アレクシスと決まった。

 俺はというと出来損ない、アレクシス家の汚点というレッテルが貼られ、汚点を露見させないように、別館の倉庫のような部屋で軟禁されている。

 ちなみに、以下が俺と弟の1歳の頃のステータスだ。

 比較すると、その差は歴然であることがわかる。


【ステータス】
名前:ロディ・アレクシス
年齢:1歳
性別:男
種族:人
レベル:1

▼能力
体力:15
攻撃:10
防御:5
魔力:20
速度:3
素質:+1

▼スキル
なし

▼称号
適性(小)

【ステータス】
名前:ディープ・アレクシス
年齢:1歳
性別:男
種族:人
レベル:1

▼能力
体力:120
攻撃:70
防御:150
魔力:180
速度:30
素質:+20

▼スキル
擬態(Lv3)

▼称号
勇者の卵
王家の盾


 何故俺が弟の鑑定結果を知っているかというと、弟が鑑定を受けた後、俺の心を折るために俺の専属メイドを通して、父から渡されたのだ。

 これを受け取った時は、かなり精神的に参った。

 以後、部屋でできる限り筋トレをしたり魔力の練習をしたりしているがなかなか上がった様な気がしない。

 やはり、先天的な才能には勝てないのだろうか。

 俺はそんな事を思いながら、ぼーっと床に座る。
 そして、先程の夢の事に思考を移す。

 あれはなんだったのだろうか。
 俺は、立ち上がりベット上に移動し、寝転びながら考えてみる。

 今の俺には時間は腐るほどある。焦らずに考えてみよう。
 まず初めに、自称女神の正体については、一旦置いておく。

 次に、俺が転生者?

 だから、産まれてから自我が?
 でも、前世の記憶はない……よな?けど、忘れているだけだとしたら?

 次に全スキルと魔法に適性を持つ?
 確かに称号欄に「適性(小)」がある……
 みんなに鑑定結果を見られた時には、なんだこれ?って感じで笑われたけど……

 そして今は女神の力が弱いから能力が低い?
 もし本当だったら「適性」が小になっている理由にもなるし、片親が違うとしても、半分は同じ血が流れているのに、弟とここまでステータスに差がある理由はつく。

 万が一、あの自称女神の話が本当であれば、俺にも希望が持てるな。ってかこれを信じなきゃ俺には縋るものは何もないな。

 うん、一旦信じてみよう。
 俺は、不確定要素がかなり多い事に一抹の不安を抱えながらも一旦そう決断した。

 って言っても、魔獣討伐数100体?今の俺には到底できない目標だな……って事は、まず俺は魔獣と戦う技や能力を身につけなきゃだな……

 そう決心したところで、ちょうどいいタイミングで扉がガチャリと開いた。


◆◇


 「失礼します。本日の朝ごはんです。ロディ坊ちゃん。」


 俺の部屋に来る人となれば一人しかいない。

 専属メイドのベルさんだ。
 俺の唯一の話し相手で、俺の存在を認めてくれる人。

 そして、俺が今一番会いたかった人だ。

 
 「待ってたんだっ!ベルさん!実は相談があって!」

 「……!?はぁ……なんでしょうか。」


 突然の俺の勢いに少しビックリしたようなベルさん。
 でも今の俺は止まらない。


 「実は、先生ももうかなり前から来なくなっちゃったでしょ?だから独学で勉強したくて。魔法の本と剣術の本、後、出来ればスキルの本とかがあれば読みたくって、借りれたりしないかな?」

 「んー……その本でしたら、当主様のご許可がないと……難しいかと思いますが……ちょっと聞いてみますね……」

 「そっかー。魔法の本だけでもいいんだ。何か持ってきてくれるかな?頼むよ。」

 「承知しました。では、貸してもらえるようでしたら、朝食の片付けの時にお持ちしますね。」

 
 そう言い残し、ベルさんは出て行ってしまった。

 すごく驚いた様子だったけど、なんだったんだろうか。
 まぁいいか。

 とりあえず、後は何か持ってきてくれる事を願うしかないな。
 あの父親が貸してくれるだろうか?

 俺は、朝食と言われて出された、ミルクのスープと硬い黒パンを齧りながら今後の予定で頭がいっぱいになった。
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