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壱 今を生きる
今の幸せ
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「…見放された?」
「うん」
「それって拒絶されたのと一緒じゃねぇの?」
「ちょっと違うかな。拒絶する場合って相手に直接伝えて、壁を作って、反対側にいるって表明するでしょ?。でも見放すのは完全につながりを断った様な感じかな」
「あぁ」
学校で友人たちからも距離を置いていて息苦しさを感じ始めてた。自分がこうだから、といつも自分を責めて。そんな日常が続いて、ある日、決心したんです。両親に話してみようと。その日、僕は学校から帰って、家にいた。妹はすでに部屋にいて、僕と両親だけが話せる様になりました。両親が仕事から戻り夕食を食べていた時でした。
あのね、聞いてくれる?
二人が優しい目で僕をしっかり見てくれた。でも、
僕、たぶんだけど、男性のほうが好きな気がするんだ。
その瞬間の両親の目はおそらく一生忘れないと思います。最初にそう言った時、二人は丸で信じられない物を見る様な目をしていました。ですが、落ち着いた後、僕にいったんです。
そうか。
そう、なの。ふ~ん。
二人がそういった後、まるで僕の日常が変わった。僕がまるでいないかのようにふるまったり、雑に扱ったり。後から妹に聞いたけど、両親はそれっきり自分だけを見て、僕は存在しないようにふるまうように言われてたらしい。妹も両親から言われたことが信じられなかったらしかった。その後は自分がゲイである事は隠して、誰とも深くかかわらない様に生きると決めてた。
「と言う感じかな。これが僕の道。両親との会話の後は普通に学校に励み、進学して、二年前にヴァン君と出会った、と言う感じですね」
ペロッ。ヴァンくんが僕の頬をなめる。
「どうしたんですか?」
「涙」
「え?」
頬に触れてみると、確かに濡れていた。気づかなかった。
「…無理すんなよ。まだそんなに立ってねぇのによ。トオルは平気そうにしゃべってるけどな、本当はまだ悲しいんだろ」
ヴァン君が僕の頭に大きな手をのせてくれる。
「自分だけ我慢して他人が得する様にお前は動きすぎだ。もうちょっと、わがままになったらどうだ?」
にやり、と笑う様に言う彼は微笑んだ。その顔を見て、心から安堵する。あぁ、この人ならきっと、僕を見放したりしないだろう、と。だからこそ、彼を選んだ。
「そう…だね。じゃぁ、ちょっとだけだきしめて?」
「あぁ」
彼が僕の肩をつかんで引き寄せた。彼の体温が伝わる。
人はこんなにも、温かい。
昼頃の公園のベンチで、彼は人に見られる事となっても、僕のお願いを聞いてくれた。優しくて、温かい人。
「すっかり日が暮れちまったな。そろそろ帰るか」
「本当だねぇ。もうすっかり日が落ちちゃった」
「トオルが寝ちまうからだろうが」
「まあ、いいじゃん。たった一日」
「そうだな」
二人で道を歩く。僕達の帰るべき場所へと。
「あ、そういや気になったんだが、トオルの妹はどうしたんだ?」
「妹?今でも仲はいいよ。今は女子高の寮住まいだけどね。たまに買い物に付き合ったりしてるよ」
「そうか。…よかったな」
「うん」
「うん」
「それって拒絶されたのと一緒じゃねぇの?」
「ちょっと違うかな。拒絶する場合って相手に直接伝えて、壁を作って、反対側にいるって表明するでしょ?。でも見放すのは完全につながりを断った様な感じかな」
「あぁ」
学校で友人たちからも距離を置いていて息苦しさを感じ始めてた。自分がこうだから、といつも自分を責めて。そんな日常が続いて、ある日、決心したんです。両親に話してみようと。その日、僕は学校から帰って、家にいた。妹はすでに部屋にいて、僕と両親だけが話せる様になりました。両親が仕事から戻り夕食を食べていた時でした。
あのね、聞いてくれる?
二人が優しい目で僕をしっかり見てくれた。でも、
僕、たぶんだけど、男性のほうが好きな気がするんだ。
その瞬間の両親の目はおそらく一生忘れないと思います。最初にそう言った時、二人は丸で信じられない物を見る様な目をしていました。ですが、落ち着いた後、僕にいったんです。
そうか。
そう、なの。ふ~ん。
二人がそういった後、まるで僕の日常が変わった。僕がまるでいないかのようにふるまったり、雑に扱ったり。後から妹に聞いたけど、両親はそれっきり自分だけを見て、僕は存在しないようにふるまうように言われてたらしい。妹も両親から言われたことが信じられなかったらしかった。その後は自分がゲイである事は隠して、誰とも深くかかわらない様に生きると決めてた。
「と言う感じかな。これが僕の道。両親との会話の後は普通に学校に励み、進学して、二年前にヴァン君と出会った、と言う感じですね」
ペロッ。ヴァンくんが僕の頬をなめる。
「どうしたんですか?」
「涙」
「え?」
頬に触れてみると、確かに濡れていた。気づかなかった。
「…無理すんなよ。まだそんなに立ってねぇのによ。トオルは平気そうにしゃべってるけどな、本当はまだ悲しいんだろ」
ヴァン君が僕の頭に大きな手をのせてくれる。
「自分だけ我慢して他人が得する様にお前は動きすぎだ。もうちょっと、わがままになったらどうだ?」
にやり、と笑う様に言う彼は微笑んだ。その顔を見て、心から安堵する。あぁ、この人ならきっと、僕を見放したりしないだろう、と。だからこそ、彼を選んだ。
「そう…だね。じゃぁ、ちょっとだけだきしめて?」
「あぁ」
彼が僕の肩をつかんで引き寄せた。彼の体温が伝わる。
人はこんなにも、温かい。
昼頃の公園のベンチで、彼は人に見られる事となっても、僕のお願いを聞いてくれた。優しくて、温かい人。
「すっかり日が暮れちまったな。そろそろ帰るか」
「本当だねぇ。もうすっかり日が落ちちゃった」
「トオルが寝ちまうからだろうが」
「まあ、いいじゃん。たった一日」
「そうだな」
二人で道を歩く。僕達の帰るべき場所へと。
「あ、そういや気になったんだが、トオルの妹はどうしたんだ?」
「妹?今でも仲はいいよ。今は女子高の寮住まいだけどね。たまに買い物に付き合ったりしてるよ」
「そうか。…よかったな」
「うん」
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