専務、その溺愛はハラスメントです ~アルファのエリート専務が溺愛してくるけど、僕はマゾだからいじめられたい~

カミヤルイ

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昏迷と混迷の間で

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 空港まで光也に付き添う成沢に光也を頼み、二人を見送ると仕事部屋に入った。

 千尋のデスクと千尋用のパソコンがあり、ここでヒアリングを受け、仕事に関する操作を行える。

 今思えば、「軟禁された」として屋敷にいた期間、プロジェクトの資料はこのパソコンで、会社とは違うIDで操作していたし、現下のデジタル時代において、作成した資料を印刷して紙で提出・共有するように光也に言われていた。

 おそらくだが、プロジェクトを光也に奪われた常務が姑息な手段で介入してくるのを考慮してのことだったのだろう。

 功を奏してブラジルプロジェクトはここまで常務の手には還らなかったし、チームの情報もチーム外には一切流出しなかった。光也の用意周到さには感心するばかりだ。
 だが光也に救われる以前の、マゾ気質を理由にして言われるがままされるがまま、すべてに受動的だった頃の不始末は自分自身で片をつけるのだ。

 千尋はパソコンを開き、まずはマップシステムに仮想数値を入力してチェックをかけた。



「やっぱり自然に是正する……」

 マップシステムはコストカットとマンパワーのバランスが崩れないようにプログラムを組んでいる。適正を大きく超える数値では実行確認の通知が出て数値を変えるよう指示が出るから、これで適正外(不当)の数値を確定をしようとするなら一時的にでもマップシステムを解除して、手入力でひとつひとつ数値を入力するしかない。膨大な時間を要するはずだ。
 
「僕がチームから外された以降に不正入力があったとして、誰が……課長? いや、チームの誰か?……どっちにしても、データ入れ替え時のIDと使用時刻履歴を見てもらえらればすぐにわかるはずだ」

 正規の勤務時間内はそれぞれに与えられたIDでパソコンを開いているから、千尋が通常業務をしながら外された案件のデータを操作することは不可能だ。定刻時間外に操作され、不正に千尋のIDで入力されたとしても、千尋は課長から残業を許されなかったから会社にいない。操作の立ち会いさえも不可能なのだ。

 千尋は十時からのオンラインヒアリングで、その確認を申請した。だが申請はあっさりと却下された。
 すでに最終データが適正値に是正されたものが通ってプロジェクトが動いているため、茂部には不正としての告発を取り下げるよう伝えるから、千尋にはマップシステムのエラーチェックミスとして始末書を上げるように、というのだ。

「やってもいないミスで始末書は書けません!」  
「藤村さん、データの最終確認を怠ったことはシステムのエラーチェックを怠ったのと同等です。この件を長引かせることは、今後マップシステムを使えないと判断する材料になり、叶専務が手がけるブラジルプロジェクトにも差し障ります」
「……っつ!」

 足元を見られていると感じる。反論できない。
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