専務、その溺愛はハラスメントです ~アルファのエリート専務が溺愛してくるけど、僕はマゾだからいじめられたい~

カミヤルイ

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お願い、僕をいじめて

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 祖父がいとったように、アルファにフェロモントラップを仕掛けて既成事実を作ろうとするオメガは多数いる。発情期に入るとわざと抑制剤を飲まずにアルファに近づき、フェロモンを暴発させてアルファを誘うのだ。

 光也のように社会的地位が高ければ高いアルファほど、その番の座を狙うオメガは多く、それこそ家同士の結びつきを目的とした策略トラップまである。
 だから光也が社会的義務として即効性注射型抑制剤の頓用処方を受け、携帯していることに不思議はないが、この三か月間、光也に定期的にまとまった量の抑制剤処方をしている、と医師は言っていた。

「採精室での様子が普段と違ったから、みっくんがお会計に行ってくれている間に先生に尋ねたんだ。そうしたら……。ねぇ、みっくん、僕に無茶なことをしないように薬を使っているんだよね?」

 知られたくなかったのだろう。医師への不満を小さく漏らしてから、光也は優しいため息をつき、千尋の髪を撫でた。

「……そうだよ。この間の不完全なラット状態でもああなるんだ。俺は獣のようになって千尋を傷つけたくない。俺は優勢だから、抑制剤一本くらいじゃ機能を損なわずに冷静になれる。でも、それでも千尋相手だとギリギリ理性を保てるくらいで、つい無茶したくなるから困ってる」

 最後にはおどけるように笑って、千尋の肩をカプリと甘噛みする。
 秋の夜でもリビングルームは半袖のTシャツだけで十分で、光也の歯の感触を布越しに感じて、千尋は背筋を震わせた。

「……してほしい」
「ん?」
「みっくんに無茶苦茶にしてほしい」

 恥ずかしいことを言っているのはわかっている。でも、千尋は知ってしまった。光也の大きくて熱いもので口を侵されたときの、今までにない昂揚感と、言い表せない快感を。

 加虐されたときの、底があって時間とともに収まりを見せる快感ではなく、限りなく上へ下へと奔流する、あの大きな波みたいな本物の快感を。

「みっくんはお父さんがオメガでお互いが辛い思いをしてきたから、会社のオメガに優しいよね。でも、僕はもう一社員のオメガじゃないよ。僕はみっくんだけのオメガだよ? 他の人と同じにしないで。お願い。僕にはみっくんの本能、見せて……」 

 優しくされて甘やかされる。それもたくさんたくさん幸せだけれど、まどろんで眠ってしまいたくなる暖かさだけではもう足りない。
 ほしいのは、千尋に喪神する隙を与えない、激しく強く打ちつける光也の劣情ほんのうだ。

 千尋は頬も目の縁も赤くして、光也にしなだれかかりながら訴えた。
 光也はしばらく無言でいたが「はあぁぁぁぁ」と大きなため息を吐きながら、天井を仰いだ。

「……だめだ。抑制剤一本じゃ、千尋に勝てる気がしない」
「え? どいうこ」

 最後まで言えなかった。
 いつも壊れものみたいに千尋を扱う光也が、全体重をかけてソファに千尋を押し倒し、荒々しく唇を重ねた。
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