15 / 92
特大エビフライ、のち、発情
⑧
しおりを挟む
「ここ」
「ひやっ!」
突然パジャマの上衣をめくられ、右胸が晒される。
(え、なに、ナニ、何)
光也の顔と胸先を交互に見る。
すると、胸の薄桃色の周りには歯型があるばかりか、先は赤く、その付け根には裂傷がある。
(……見られた! もう治ったとばかり思っていたのにぶり返した?……だから右胸が痛むのか)
千尋は先週「CLUBマゾ」でプレイを受けてきた。
胸をかわいがってもらうのが大好きな千尋は、社畜プレイに「いぢめて乳首♡ハードコース」を追加したのだが、バイブ付きのニップルクリップで薄桃色ごと挟んでもらうだけじゃ物足りなくて、プレイ専用の紐で両方の先を結んで繋いでもらい、引っ張ってもらうのも続けてやった。
きっと、そのときの傷だ。
「あの、これは、虫が。そう! 虫に噛まれてそれで」
「そんなわけないでしょう」
さすが氷の貴公子!
光也は千尋が取り繕った返答をぴしゃりと跳ね返す。
そして言うことには。
「この傷を作ったのは私です」
「ひゃい……?」
「洗面室で、私は確かに君に手を貸しました。すると君が突然胸を開き、噛んでくれ、痛くしてくれと。……それで、つい嫉妬してしまい、私が噛んだら君はすぐに達して……気を失いました」
えっ! とか嘘っ! とか、月並な言葉が出そうだったが、光也の発言に不可解な部分があり、ふと冷静になって言葉を反芻した。
「ええと、嫉妬、とは」
「これ、この噛み跡は私がつけた痕ではありません」
光也は人指し指をとん、と歯型の下に置いた。
「それに、胸の先も……私が上書きする前に、明らかに先に他の誰かに傷つけられて、痂皮化している形跡があった。これは誰が?」
書類のミスを指摘するかのようだ。言葉の最後の方には苛立ちが感じられ、咎めるような視線が向けられる。
これが職場でなら最高においしいのだが、あいにく今は欲していない。
「誰って……。助けていただいて、胸まで噛ませてしまって、大変申しわけなく思っています。本当に失礼をいたしました。でも、この傷跡についてはプライベートなことです。専務のご質問とはいえ、そこまで報告する義務はないと存じます」
めくられたパジャマを下げ、早口で言う。この話題から早く逃げたかった。
専務に乳首を噛んでもらってイくなんて、それだけでも恥ずかしすぎるのにプレイの痕まで見られたのだ。最悪極まりない。
「いや、俺には言う権利がある」
「ひぇ。あ、あの……?」
そらした顔が向き合うように頬を包まれた。
どくどくどく……。
性懲りもなく動機がするのは気分が悪くなり始める兆候か、それとも「俺」と素顔を剥き出しにする光也の威圧感が強いからか。
「藤村君は、俺の運命の番だから」
「……は?」
予想もしなかった言葉に、頭が真っ白になった。
「ひやっ!」
突然パジャマの上衣をめくられ、右胸が晒される。
(え、なに、ナニ、何)
光也の顔と胸先を交互に見る。
すると、胸の薄桃色の周りには歯型があるばかりか、先は赤く、その付け根には裂傷がある。
(……見られた! もう治ったとばかり思っていたのにぶり返した?……だから右胸が痛むのか)
千尋は先週「CLUBマゾ」でプレイを受けてきた。
胸をかわいがってもらうのが大好きな千尋は、社畜プレイに「いぢめて乳首♡ハードコース」を追加したのだが、バイブ付きのニップルクリップで薄桃色ごと挟んでもらうだけじゃ物足りなくて、プレイ専用の紐で両方の先を結んで繋いでもらい、引っ張ってもらうのも続けてやった。
きっと、そのときの傷だ。
「あの、これは、虫が。そう! 虫に噛まれてそれで」
「そんなわけないでしょう」
さすが氷の貴公子!
光也は千尋が取り繕った返答をぴしゃりと跳ね返す。
そして言うことには。
「この傷を作ったのは私です」
「ひゃい……?」
「洗面室で、私は確かに君に手を貸しました。すると君が突然胸を開き、噛んでくれ、痛くしてくれと。……それで、つい嫉妬してしまい、私が噛んだら君はすぐに達して……気を失いました」
えっ! とか嘘っ! とか、月並な言葉が出そうだったが、光也の発言に不可解な部分があり、ふと冷静になって言葉を反芻した。
「ええと、嫉妬、とは」
「これ、この噛み跡は私がつけた痕ではありません」
光也は人指し指をとん、と歯型の下に置いた。
「それに、胸の先も……私が上書きする前に、明らかに先に他の誰かに傷つけられて、痂皮化している形跡があった。これは誰が?」
書類のミスを指摘するかのようだ。言葉の最後の方には苛立ちが感じられ、咎めるような視線が向けられる。
これが職場でなら最高においしいのだが、あいにく今は欲していない。
「誰って……。助けていただいて、胸まで噛ませてしまって、大変申しわけなく思っています。本当に失礼をいたしました。でも、この傷跡についてはプライベートなことです。専務のご質問とはいえ、そこまで報告する義務はないと存じます」
めくられたパジャマを下げ、早口で言う。この話題から早く逃げたかった。
専務に乳首を噛んでもらってイくなんて、それだけでも恥ずかしすぎるのにプレイの痕まで見られたのだ。最悪極まりない。
「いや、俺には言う権利がある」
「ひぇ。あ、あの……?」
そらした顔が向き合うように頬を包まれた。
どくどくどく……。
性懲りもなく動機がするのは気分が悪くなり始める兆候か、それとも「俺」と素顔を剥き出しにする光也の威圧感が強いからか。
「藤村君は、俺の運命の番だから」
「……は?」
予想もしなかった言葉に、頭が真っ白になった。
65
お気に入りに追加
1,161
あなたにおすすめの小説

【完結】ぎゅって抱っこして
かずえ
BL
幼児教育学科の短大に通う村瀬一太。訳あって普通の高校に通えなかったため、働いて貯めたお金で二年間だけでもと大学に入学してみたが、学費と生活費を稼ぎつつ学校に通うのは、考えていたよりも厳しい……。
でも、頼れる者は誰もいない。
自分で頑張らなきゃ。
本気なら何でもできるはず。
でも、ある日、金持ちの坊っちゃんと心の中で呼んでいた松島晃に苦手なピアノの課題で助けてもらってから、どうにも自分の心がコントロールできなくなって……。

初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

【完結・BL】俺をフッた初恋相手が、転勤して上司になったんだが?【先輩×後輩】
彩華
BL
『俺、そんな目でお前のこと見れない』
高校一年の冬。俺の初恋は、見事に玉砕した。
その後、俺は見事にDTのまま。あっという間に25になり。何の変化もないまま、ごくごくありふれたサラリーマンになった俺。
そんな俺の前に、運命の悪戯か。再び初恋相手は現れて────!?
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!

鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~
綾雅(ヤンデレ攻略対象、電子書籍化)
BL
「なんだ、お前。鎖で繋がれてるのかよ! ひでぇな」
洞窟の神殿に鎖で繋がれた子供は、愛情も温もりも知らずに育った。
子供が欲しかったのは、自分を抱き締めてくれる腕――誰も与えてくれない温もりをくれたのは、人間ではなくて邪神。人間に害をなすとされた破壊神は、純粋な子供に絆され、子供に名をつけて溺愛し始める。
人のフリを長く続けたが愛情を理解できなかった破壊神と、初めての愛情を貪欲に欲しがる物知らぬ子供。愛を知らぬ者同士が徐々に惹かれ合う、ひたすら甘くて切ない恋物語。
「僕ね、セティのこと大好きだよ」
【注意事項】BL、R15、性的描写あり(※印)
【重複投稿】アルファポリス、カクヨム、小説家になろう、エブリスタ
【完結】2021/9/13
※2020/11/01 エブリスタ BLカテゴリー6位
※2021/09/09 エブリスタ、BLカテゴリー2位

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる