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事故つがいの夫が僕を離さない!

軌跡 Side理人①

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 長かった夏が終わり、秋めいてきた十月。街を歩く人々の服装も長袖になっている。
 俺と天音は新しいシーツを買うためと、俺のある目的のために外出をしていた。

「あ、理人見て。僕たちの中学の子だ」
「本当だ。そういえば十月って、合唱コンクールの時期だね。日程が変更になっていなきゃだけど」

 駅の近くまでくると、通っていた中学の制服を着た生徒数人とすれ違った。
 今日は土曜なので、昼時に帰宅しているのだろう。

「そうだね! 懐かしいな……」

 微笑んでそう言うと、天音の癖ではあるが、歩きながらも俺の腕にコテンと頭をくっつけて体を寄せてくる。
 さらに、指を絡めて繋いだ手をきゅっと握ってきて、もう可愛いのなんのって。このままもう、家に連れ帰って致したい気分になってしまう。

 でも我慢だ。天音はネットショッピングより現物を見て買いたがるから、今日シーツを買っておかないと、後日ひとりで買い物に出かける可能性が大きい。この危なっかしい俺のつがいをひとりで出歩かせるのは、極力避けたい。

 俺たちは二十三歳になったが、今でも純粋無垢な天音は騙されやすい。
 ナンパをしてくる輩の声かけにバカ正直に答えて相手をしてしまうし、パート先に天音目当てて通う客の長話に付き合いそうになるらしい。

 バイト先の客に関しては真鍋さんがいるからうまくあしらってはくれるが、俺はいつも気が気でない。
 純粋無垢なだけではなく、外見が大人になってきた天音は色気が増しているのだ……まぁ、ね? 俺がたっぷりと愛情を注いでいるからだ、という自負もあるけれど。

「ねぇ、理人。僕、合唱コンクールがあって良かったな」

 天音を愛しく見つめていると、薄桃に染まった頬を俺に向けて、ふにゃっと微笑んだ。

 ――とにかく可愛い。言うこともいちいち可愛い。なんだろうこの生き物は。自然界の至宝だな。

「俺もだよ。天音と出会ったきっかけだもんね。でも、もっと早く天音の存在に気づいていたら良かったな。そしたら、中学での思い出もたくさんできたのに」

 登下校デートとか、教室でカーテンに隠れてキスとか。家で勉強に誘ったらいい雰囲気になって、制服のシャツの裾から手を入れるとか……。

 そうやって楽しい妄想をしていると、にわかに天音の表情が翳った。

「天音?」
「……でも……理人は中学のとき、彼女が……いた、よね」

 あー、なるほど。
 それでそんな悲しい顔をしてくれるんだ。やっぱり天音は可愛いね。

 でも俺は、彼女のことなんてすっかり忘れていた。
 なぜなら彼女は、本当は「彼女」なんかじゃなかったのだから。
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