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運命と出逢った俺は、運命とつがえない
デート?①
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すばる君との次の約束は、盆の次の週の土曜日に決まった。
俺は盆も店に出ていたので、ちょうど遅い夏休みとして土曜から四日間の休みをもらっている。
ただ電車で一時間内の実家にはたびたび顔出しをしているし、なんといっても我が家はまだ学生の弟が三人もいる大所帯だから、宿泊するつもりはない。すばる君と出かける以外は部屋の掃除をしたり、見逃してきた映画を動画配信サービスで見るだけになるだろう。
「よし、天気はばっちりだな」
窓から見える青空と、テレビの天気予報を見比べる。時間ごと予報も明日の朝まで降水確率ゼロ%だ。
今日の天気をいつも以上に気にするのは、すばる君がリクエストしてくれていたのが、夏祭りと花火大会だから。
"お母さんはオメガだから人が多い場所は避けてたし、仕事で疲れてるから、特に夜のイベントは連れて行ってもらったことがないんです。だから、行ってみたい。岳人さんとなら安心です"
中学生になってからママ呼びをやめ、オメガだから変声もそう目立たないものの、子どもの声質から変わりつつある声をはずませてリクエストしてきたすばる君。
父親がいないために、物分かりよく諦めてきたさまざまなことを俺が楽しませてやりたいし、すばる君の笑顔を想像すると、俺もとても楽しみだ。
うーん。結局会っていないこの一ヶ月間、すばる君のことをよく頭に浮かべていたな……。
メッセージや通話が多いのが一因とはいえ、やり取りした内容を思い返すと気持ちが柔らかくなり、頭ン中で「なんかわからん音楽」がホロンホロンと奏でられて心地がいい。
今も口角が上がっていることに気づけないでいると、スマホにメッセージの着信があり、口を「お」の形にしたことでそれに気づく。
侑子さんのスマホから、”電話してもいいですか?”のメッセージ。
まだスマホを持たせてもらっていないすばる君は、休日は九時になったらスマホを借りられることになっている。
「はは、時間ぴったりだ」
戻した口角が再び自然に上がり、通話アイコンをタップした。
「岳人さん! お天気、大丈夫でしたね!」
「うん、おはよ」
「あっ、僕ってばあいさつ……おはようございます!」
焦ってんの、可愛いな。
「晴れたな。時間通り迎えに行くから」
「はい! 待ってます!」
はは。語尾に全部感嘆符が付いてる話し方だ。すごく嬉しそう。
「ん。侑子さんに変わって」
「はーい」
その後、十一時から夜の九時まですばる君を預かることと、すばる君はスマホを持っていないので、侑子さんからの連絡が入る場合はいつも通り俺のスマホであることを確認して、通話を切った。
「お……」
すばる君の家を訪問し、扉が開いた途端に飛び込んできた可憐な姿に釘付けになる。
「へえ、浴衣、着たんだ」
「はい! 初めてだからって、お母さんが用意してくれました。どうですか?」
「うん、かわい……」
自然に言いかけてためらう。
オメガだが、男の子に対して「可愛い」って言っていいものか。
というかすばる君、また成長したよな。可愛いと綺麗、その狭間にいる気がする。
「可愛いですか? 嬉しい! 岳人さんに可愛いって思ってもらえた!」
すばる君は素直に喜び、藍地に朱と白で麻の葉模様がプリントされた浴衣で、くるっと身体を一廻りさせた。
もちろん男物だがどこか中性的な浴衣は、黒髪で白肌のすばる君の容姿にぴったりだ。
少し伸びた前髪を、小さな星の石が付いたヘアピンで留めているのも可愛い。
「うん、すごく可愛い」
思わず満面の笑みで頭に触れ、さらさらの髪を撫でてしまう。
は、と気づいて手をひこうとすれば、すばる君の方が身体を引いた。顔を真っ赤にしている。
「あ、ごめん!」
キモかったかもと思いすぐに謝ると、すばる君は侑子さんの方へと走り「ねえ、岳人さんが可愛いって!」と興奮気味に報告した。
侑子さんはクスクス笑って「良かったわね、お母さんの言ったとおりでしょ」と、少し乱れた浴衣の裾を直してやる。
う~。まじで恥ずい。同じ場所にいなかったとしても、俺の行動はすばる君がもう少し大きくなるまでは侑子さんに筒抜けだよな。自重しなければ。
だがしかし。祭りに出かければ出かけたで、いちいちすばる君が可愛い。
いや、俺の願いをなかなか聞き入れてくれそうにない神様に言っておくが、これはど真ん中の容姿の子が嬉しそうにはしゃぐ姿を見ての純粋な可愛いであり、決して偏愛的な意味では……。
「岳人さん、見て! あそこのステージにお笑いの人が来てるみたい!」
「うんうん」
「あっ、でもあっちはテレビで見たことがある出店がたくさん……!」
「うんうん、どっちに行ってももいいよ」
はー、可愛い。……っと、だからこれは変な意味ではないのだ。
締まりが無くなりそうだった顔を引き締め、すばる君の横に付く。
これだけ可愛いと不埒なアルファの男が言い寄ってくるだろう。しっかり威嚇をしておかなくては。
「岳人さん、あれ、取れないです」
「んっ?」
射的を選んで始めたすばる君の後ろで守りに徹していると(さっき高校生くらいの男ふたりがすばる君をチラチラ見ていたから牽制しておいた)、泣きそうな表情で俺を振り返ってくる。
「熊のぬいぐるみのキーホルダー。あれが欲しいんです。熊、大好きだから」
「ああ……熊、ね……」
別に自分のことを言われたわけではないのに、なぜか背中がくすぐったい。
「打つ人が変わるのって、大丈夫ですか?」
店の人に聞くと、変わるのはNGだが、一緒に鉄砲を持つのはOKとのことだ。
……一緒に……それは身体に触れると言うことでは……。
俺は盆も店に出ていたので、ちょうど遅い夏休みとして土曜から四日間の休みをもらっている。
ただ電車で一時間内の実家にはたびたび顔出しをしているし、なんといっても我が家はまだ学生の弟が三人もいる大所帯だから、宿泊するつもりはない。すばる君と出かける以外は部屋の掃除をしたり、見逃してきた映画を動画配信サービスで見るだけになるだろう。
「よし、天気はばっちりだな」
窓から見える青空と、テレビの天気予報を見比べる。時間ごと予報も明日の朝まで降水確率ゼロ%だ。
今日の天気をいつも以上に気にするのは、すばる君がリクエストしてくれていたのが、夏祭りと花火大会だから。
"お母さんはオメガだから人が多い場所は避けてたし、仕事で疲れてるから、特に夜のイベントは連れて行ってもらったことがないんです。だから、行ってみたい。岳人さんとなら安心です"
中学生になってからママ呼びをやめ、オメガだから変声もそう目立たないものの、子どもの声質から変わりつつある声をはずませてリクエストしてきたすばる君。
父親がいないために、物分かりよく諦めてきたさまざまなことを俺が楽しませてやりたいし、すばる君の笑顔を想像すると、俺もとても楽しみだ。
うーん。結局会っていないこの一ヶ月間、すばる君のことをよく頭に浮かべていたな……。
メッセージや通話が多いのが一因とはいえ、やり取りした内容を思い返すと気持ちが柔らかくなり、頭ン中で「なんかわからん音楽」がホロンホロンと奏でられて心地がいい。
今も口角が上がっていることに気づけないでいると、スマホにメッセージの着信があり、口を「お」の形にしたことでそれに気づく。
侑子さんのスマホから、”電話してもいいですか?”のメッセージ。
まだスマホを持たせてもらっていないすばる君は、休日は九時になったらスマホを借りられることになっている。
「はは、時間ぴったりだ」
戻した口角が再び自然に上がり、通話アイコンをタップした。
「岳人さん! お天気、大丈夫でしたね!」
「うん、おはよ」
「あっ、僕ってばあいさつ……おはようございます!」
焦ってんの、可愛いな。
「晴れたな。時間通り迎えに行くから」
「はい! 待ってます!」
はは。語尾に全部感嘆符が付いてる話し方だ。すごく嬉しそう。
「ん。侑子さんに変わって」
「はーい」
その後、十一時から夜の九時まですばる君を預かることと、すばる君はスマホを持っていないので、侑子さんからの連絡が入る場合はいつも通り俺のスマホであることを確認して、通話を切った。
「お……」
すばる君の家を訪問し、扉が開いた途端に飛び込んできた可憐な姿に釘付けになる。
「へえ、浴衣、着たんだ」
「はい! 初めてだからって、お母さんが用意してくれました。どうですか?」
「うん、かわい……」
自然に言いかけてためらう。
オメガだが、男の子に対して「可愛い」って言っていいものか。
というかすばる君、また成長したよな。可愛いと綺麗、その狭間にいる気がする。
「可愛いですか? 嬉しい! 岳人さんに可愛いって思ってもらえた!」
すばる君は素直に喜び、藍地に朱と白で麻の葉模様がプリントされた浴衣で、くるっと身体を一廻りさせた。
もちろん男物だがどこか中性的な浴衣は、黒髪で白肌のすばる君の容姿にぴったりだ。
少し伸びた前髪を、小さな星の石が付いたヘアピンで留めているのも可愛い。
「うん、すごく可愛い」
思わず満面の笑みで頭に触れ、さらさらの髪を撫でてしまう。
は、と気づいて手をひこうとすれば、すばる君の方が身体を引いた。顔を真っ赤にしている。
「あ、ごめん!」
キモかったかもと思いすぐに謝ると、すばる君は侑子さんの方へと走り「ねえ、岳人さんが可愛いって!」と興奮気味に報告した。
侑子さんはクスクス笑って「良かったわね、お母さんの言ったとおりでしょ」と、少し乱れた浴衣の裾を直してやる。
う~。まじで恥ずい。同じ場所にいなかったとしても、俺の行動はすばる君がもう少し大きくなるまでは侑子さんに筒抜けだよな。自重しなければ。
だがしかし。祭りに出かければ出かけたで、いちいちすばる君が可愛い。
いや、俺の願いをなかなか聞き入れてくれそうにない神様に言っておくが、これはど真ん中の容姿の子が嬉しそうにはしゃぐ姿を見ての純粋な可愛いであり、決して偏愛的な意味では……。
「岳人さん、見て! あそこのステージにお笑いの人が来てるみたい!」
「うんうん」
「あっ、でもあっちはテレビで見たことがある出店がたくさん……!」
「うんうん、どっちに行ってももいいよ」
はー、可愛い。……っと、だからこれは変な意味ではないのだ。
締まりが無くなりそうだった顔を引き締め、すばる君の横に付く。
これだけ可愛いと不埒なアルファの男が言い寄ってくるだろう。しっかり威嚇をしておかなくては。
「岳人さん、あれ、取れないです」
「んっ?」
射的を選んで始めたすばる君の後ろで守りに徹していると(さっき高校生くらいの男ふたりがすばる君をチラチラ見ていたから牽制しておいた)、泣きそうな表情で俺を振り返ってくる。
「熊のぬいぐるみのキーホルダー。あれが欲しいんです。熊、大好きだから」
「ああ……熊、ね……」
別に自分のことを言われたわけではないのに、なぜか背中がくすぐったい。
「打つ人が変わるのって、大丈夫ですか?」
店の人に聞くと、変わるのはNGだが、一緒に鉄砲を持つのはOKとのことだ。
……一緒に……それは身体に触れると言うことでは……。
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