37 / 71
俺が恋するオメガには事故つがいの夫がいる
羊は熊の皮をかぶらない②
しおりを挟む
高梨君の話を聞いていると、彼はゴリラに思われている自信が持てないようだった。
「いや、あれはどう見ても高梨君を大事にしてるだろう」
大事というか、通り越して執着しているというか。
あれがわからないってのもずいぶんな鈍感だ、とは思いつつ、そこが高梨君の可愛いところでもあるし、オメガは大抵自己肯定感が低いと聞くから相手から向けられる気持ちを感じにくいのか……いや、つがいで、結婚までしているんだぞ?
普通に考えて、愛されてるって思えるんじゃないのか?
「いえ……責任感の強い人だからそう見えるだけで……」
内容を濁しながら、寂しそうにつぶらな瞳を揺らす。
そうやって切ない気持ちを相談されるたびに、抱きしめてやりたいな、と切実に思った。細い肩を包んで、頬を撫でてやりたいと何度も。
だがその直後、決まって初めて会った日のゴリラの威嚇を思い出すのだ。だから高梨くんに触れるのは頭だけにしていた俺だが、俺はゴリラを許せなかった。
大事にしていようが執着していようが、高梨君本人が幸せを感じていなかったら意味がないだろうが。
こんなに可愛い子と若いうちにつがいになっておいて、寂しい思いをさせながら縛り付けているなんて、最低野郎だ。
――俺なら絶対に悲しい顔をさせないのに。
だが、そう思うこと自体をやめないと、と思った。
このままじゃ高梨君に本気になってしまう。
高梨君は俺の下心には気づかないから、こうやって頼ってくれて俺の筋肉に触れてくれるんだ。
——うん。今日の帰りもジムに寄ろう。高梨くんにとって頼りがいのある胸と腕造りを……違う違う。そうじゃなくて。
そんなふうに、不毛な思いにため息が多くなってきた頃だった。
「運命のつがい? ゴ……ダンナに?」
ゴリラに運命のつがいが現れたなんて、思いもよらないことを高梨くんが言った。
高梨くんは寝不足なのか真っ青な顔をして、泣き腫らした目から次々に涙を零していた。
俺は運命のつがいなんて信じていないが、高梨君にそう思わせたゴリラに怒りを感じて、胸がムカムカ、カッカと滾った。
それでも俺は、怒りを抑えて高梨君を慰めるのに徹したが──高梨君が好きな相手を貶めたくなかった。
高梨君本人がきっと、どんな裏切りにあっても好きな人を悪く言わない……言いたくない子だと思ったから。
どんな状況であれゴリラが誰かに責められたら、自分のこと以上に傷つく。そんな繊細な子だって思ったから。
だからゴリラに怒りが湧いても、高梨君の気持ちに寄り添ってやりたかった。
「そんなことあるわけ……そもそも運命のつがいなんて、出逢う確率は低いって言うじゃないか。思い違いじゃないのか?」
それなのに「でも、その人と抱き合ってキスをしていたんです」と言うじゃないか。
——あいつ、マジで許せねえ。運命のつがいが本当か嘘かは知らねえけど、結婚もしてるつがいなんだぞ? 絶対にできねえだろ、そんな不誠実なこと。アウトだアウト!
俺は怒りに震える拳の力をなんとか抜いて、高梨君の背を撫でながら家まで送ることにした。
今まで人の夫だと自制して、友達同士のふれ合いでもごくわずかにしてきたのに、こうして細い背に手を添えるのがこんなときだなんて……。
やるせない気持ちだ。
高梨君の家のアパートに着いたときも、失意で鍵を探せない彼に変わって服のポケットを確かめていると、切なさがこみ上げた。今にも倒れそうな高梨君を抱き上げて、浮気ゴリラ野郎から攫ってやりたい。
だがそのときだった。
「なにしてるんだ!」
昼間なのにゴリラが帰ってきて、俺を殺しそうな勢いで睨み、高梨君を抱き込んだ。
だが、俺だって殺意が芽生えそうだったよ。
こいつ、違うオメガの匂いをつけてやがる。よくも平然と高梨君に触れられるな。
やはり浮気をしているのだろうか。とっちめてやりたい。
とはいえ俺は完全に部外者だし、ゴリラの執着心と威嚇のオーラが激しい。
俺もアルファの性質が強い方だから十分やりあえるが、俺が変にゴリラと対峙して、高梨君が責められるのは避けたかった。
俺の苛立ちをぶつけるよりも、高梨君の心を守る方が大事だ。
高梨君がお前を好きな気持ちに感謝しろよ? それで、納得する理由をちゃんと話せよ? この浮気ゲス野郎。
「高梨さん、彼のいうとおり、俺は送ってきただけです。もう帰りますから、彼が体調を崩した理由をちゃんと聞いてあげてください」
その日はそれだけを告げて店に戻った。
ただし夜の部の料理は少し焦げたし、家に帰ってからはゴリラへの怒りと、初めて触れた高梨君の身体の線を思い出して、ぐちゃぐちゃな気分。
だが俺は好きな子を絶対に汚したりしない。腹の奥の疼きはアルコールで流して、夜をやり過ごした。
そして翌日。
高梨君はゴリラとのことを勘違いだったと笑って報告してくれたが、どう見てもやつれていて、今にも倒れそうな姿に胸が痛んだ。
それでつい、涙をふいてやっていたらキスしそうになってしまったんだ。
「? 真鍋さん?」
「っあっ! わ、悪い。大福みたいでうまそうなほっぺただな、って思って!」
なんとか誤魔化したものの、俺はその日罪悪感をかかえながら仕事をする羽目になった。
だがさらにそのあと、高梨君が心労で倒れてしまい、目を覚ましたときに言ったのだ。
「真鍋さんお願い、僕を連れ出して! 今日は真鍋さんの家に泊まらせてもらえませんか? 理人とはもう一緒にいられない!」
高梨君は俺の胸にすがってくる。瞬間で彼の香りが俺の鼻腔に充満し、体中の血が沸き立つ感覚に陥った。
ヒートのフェロモンじゃない。俺が人よりフェロモンに敏感だから感じるだけで、高梨君は誘惑しようとしてフェロモンを出しているわけじゃない。
悲しみが強すぎて神経が昂ぶり、フェロモンとなって漏れ出ているんだろう。
それにたとえヒートだとしても、俺が彼の乾きや苦しみを癒やせることもない。
俺が彼に劣情を持ってしまえば、激しい拒否反応を示されるとわかっている……俺は、彼のつがいじゃないから……。
わかっているのに、アルファの性が抑えられない。
俺は無意識に彼の華奢な身体に腕を回し、包み込んでいた。
「好きだ、高梨君……」
その直後だ。荒々しくドアが開いてゴリラが飛び込んできたのは。
おかげで俺の小さな囁き声は、ドアの開く音にかき消されてしまい、高梨くんには届かなかった。
「なにやってるんだ。天音に触るな!」
ゴリラはズカズカと部屋に入ってくると、俺の胸元を掴んだ。
出しやがったな、涼しい顔の下の本性を。
俺はゴリラを突き飛ばした。
軟弱にもゴリラはすぐに床に倒れ、思いのほか痛そうに左腕を押さえた。
高梨君はすぐにゴリラに駆け寄り支える。
「ほっとけ、そんな奴」
「でも……!」
「聞こえてたんだろう? 俺たちの会話。運命だかなんだか知らねーけど、結婚してるつがいがいるのに、フラフラしてんじゃねぇよ!」
お前ががそんなんなら、高梨君は俺がもらう。つがいだからって関係ねえ。俺は彼を好きなんだ!
そう続けてやろうと、高梨君の腕を引いて俺に惹き寄せたときだった。
「血……! 理人、血が出てる!」
ゴリラの左腕からポタポタと血が滴っていて、俺と高梨君は慌てて手当をすることになった。
────そして知った。二人の、複雑に絡み合い、すれ違ってしまった夫婦関係を。
「いや、あれはどう見ても高梨君を大事にしてるだろう」
大事というか、通り越して執着しているというか。
あれがわからないってのもずいぶんな鈍感だ、とは思いつつ、そこが高梨君の可愛いところでもあるし、オメガは大抵自己肯定感が低いと聞くから相手から向けられる気持ちを感じにくいのか……いや、つがいで、結婚までしているんだぞ?
普通に考えて、愛されてるって思えるんじゃないのか?
「いえ……責任感の強い人だからそう見えるだけで……」
内容を濁しながら、寂しそうにつぶらな瞳を揺らす。
そうやって切ない気持ちを相談されるたびに、抱きしめてやりたいな、と切実に思った。細い肩を包んで、頬を撫でてやりたいと何度も。
だがその直後、決まって初めて会った日のゴリラの威嚇を思い出すのだ。だから高梨くんに触れるのは頭だけにしていた俺だが、俺はゴリラを許せなかった。
大事にしていようが執着していようが、高梨君本人が幸せを感じていなかったら意味がないだろうが。
こんなに可愛い子と若いうちにつがいになっておいて、寂しい思いをさせながら縛り付けているなんて、最低野郎だ。
――俺なら絶対に悲しい顔をさせないのに。
だが、そう思うこと自体をやめないと、と思った。
このままじゃ高梨君に本気になってしまう。
高梨君は俺の下心には気づかないから、こうやって頼ってくれて俺の筋肉に触れてくれるんだ。
——うん。今日の帰りもジムに寄ろう。高梨くんにとって頼りがいのある胸と腕造りを……違う違う。そうじゃなくて。
そんなふうに、不毛な思いにため息が多くなってきた頃だった。
「運命のつがい? ゴ……ダンナに?」
ゴリラに運命のつがいが現れたなんて、思いもよらないことを高梨くんが言った。
高梨くんは寝不足なのか真っ青な顔をして、泣き腫らした目から次々に涙を零していた。
俺は運命のつがいなんて信じていないが、高梨君にそう思わせたゴリラに怒りを感じて、胸がムカムカ、カッカと滾った。
それでも俺は、怒りを抑えて高梨君を慰めるのに徹したが──高梨君が好きな相手を貶めたくなかった。
高梨君本人がきっと、どんな裏切りにあっても好きな人を悪く言わない……言いたくない子だと思ったから。
どんな状況であれゴリラが誰かに責められたら、自分のこと以上に傷つく。そんな繊細な子だって思ったから。
だからゴリラに怒りが湧いても、高梨君の気持ちに寄り添ってやりたかった。
「そんなことあるわけ……そもそも運命のつがいなんて、出逢う確率は低いって言うじゃないか。思い違いじゃないのか?」
それなのに「でも、その人と抱き合ってキスをしていたんです」と言うじゃないか。
——あいつ、マジで許せねえ。運命のつがいが本当か嘘かは知らねえけど、結婚もしてるつがいなんだぞ? 絶対にできねえだろ、そんな不誠実なこと。アウトだアウト!
俺は怒りに震える拳の力をなんとか抜いて、高梨君の背を撫でながら家まで送ることにした。
今まで人の夫だと自制して、友達同士のふれ合いでもごくわずかにしてきたのに、こうして細い背に手を添えるのがこんなときだなんて……。
やるせない気持ちだ。
高梨君の家のアパートに着いたときも、失意で鍵を探せない彼に変わって服のポケットを確かめていると、切なさがこみ上げた。今にも倒れそうな高梨君を抱き上げて、浮気ゴリラ野郎から攫ってやりたい。
だがそのときだった。
「なにしてるんだ!」
昼間なのにゴリラが帰ってきて、俺を殺しそうな勢いで睨み、高梨君を抱き込んだ。
だが、俺だって殺意が芽生えそうだったよ。
こいつ、違うオメガの匂いをつけてやがる。よくも平然と高梨君に触れられるな。
やはり浮気をしているのだろうか。とっちめてやりたい。
とはいえ俺は完全に部外者だし、ゴリラの執着心と威嚇のオーラが激しい。
俺もアルファの性質が強い方だから十分やりあえるが、俺が変にゴリラと対峙して、高梨君が責められるのは避けたかった。
俺の苛立ちをぶつけるよりも、高梨君の心を守る方が大事だ。
高梨君がお前を好きな気持ちに感謝しろよ? それで、納得する理由をちゃんと話せよ? この浮気ゲス野郎。
「高梨さん、彼のいうとおり、俺は送ってきただけです。もう帰りますから、彼が体調を崩した理由をちゃんと聞いてあげてください」
その日はそれだけを告げて店に戻った。
ただし夜の部の料理は少し焦げたし、家に帰ってからはゴリラへの怒りと、初めて触れた高梨君の身体の線を思い出して、ぐちゃぐちゃな気分。
だが俺は好きな子を絶対に汚したりしない。腹の奥の疼きはアルコールで流して、夜をやり過ごした。
そして翌日。
高梨君はゴリラとのことを勘違いだったと笑って報告してくれたが、どう見てもやつれていて、今にも倒れそうな姿に胸が痛んだ。
それでつい、涙をふいてやっていたらキスしそうになってしまったんだ。
「? 真鍋さん?」
「っあっ! わ、悪い。大福みたいでうまそうなほっぺただな、って思って!」
なんとか誤魔化したものの、俺はその日罪悪感をかかえながら仕事をする羽目になった。
だがさらにそのあと、高梨君が心労で倒れてしまい、目を覚ましたときに言ったのだ。
「真鍋さんお願い、僕を連れ出して! 今日は真鍋さんの家に泊まらせてもらえませんか? 理人とはもう一緒にいられない!」
高梨君は俺の胸にすがってくる。瞬間で彼の香りが俺の鼻腔に充満し、体中の血が沸き立つ感覚に陥った。
ヒートのフェロモンじゃない。俺が人よりフェロモンに敏感だから感じるだけで、高梨君は誘惑しようとしてフェロモンを出しているわけじゃない。
悲しみが強すぎて神経が昂ぶり、フェロモンとなって漏れ出ているんだろう。
それにたとえヒートだとしても、俺が彼の乾きや苦しみを癒やせることもない。
俺が彼に劣情を持ってしまえば、激しい拒否反応を示されるとわかっている……俺は、彼のつがいじゃないから……。
わかっているのに、アルファの性が抑えられない。
俺は無意識に彼の華奢な身体に腕を回し、包み込んでいた。
「好きだ、高梨君……」
その直後だ。荒々しくドアが開いてゴリラが飛び込んできたのは。
おかげで俺の小さな囁き声は、ドアの開く音にかき消されてしまい、高梨くんには届かなかった。
「なにやってるんだ。天音に触るな!」
ゴリラはズカズカと部屋に入ってくると、俺の胸元を掴んだ。
出しやがったな、涼しい顔の下の本性を。
俺はゴリラを突き飛ばした。
軟弱にもゴリラはすぐに床に倒れ、思いのほか痛そうに左腕を押さえた。
高梨君はすぐにゴリラに駆け寄り支える。
「ほっとけ、そんな奴」
「でも……!」
「聞こえてたんだろう? 俺たちの会話。運命だかなんだか知らねーけど、結婚してるつがいがいるのに、フラフラしてんじゃねぇよ!」
お前ががそんなんなら、高梨君は俺がもらう。つがいだからって関係ねえ。俺は彼を好きなんだ!
そう続けてやろうと、高梨君の腕を引いて俺に惹き寄せたときだった。
「血……! 理人、血が出てる!」
ゴリラの左腕からポタポタと血が滴っていて、俺と高梨君は慌てて手当をすることになった。
────そして知った。二人の、複雑に絡み合い、すれ違ってしまった夫婦関係を。
312
お気に入りに追加
3,778
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
【書籍化確定、完結】私だけが知らない
綾雅(要らない悪役令嬢1/7発売)
ファンタジー
書籍化確定です。詳細はしばらくお待ちください(o´-ω-)o)ペコッ
目が覚めたら何も覚えていなかった。父と兄を名乗る二人は泣きながら謝る。痩せ細った体、痣が残る肌、誰もが過保護に私を気遣う。けれど、誰もが何が起きたのかを語らなかった。
優しい家族、ぬるま湯のような生活、穏やかに過ぎていく日常……その陰で、人々は己の犯した罪を隠しつつ微笑む。私を守るため、そう言いながら真実から遠ざけた。
やがて、すべてを知った私は――ひとつの決断をする。
記憶喪失から始まる物語。冤罪で殺されかけた私は蘇り、陥れようとした者は断罪される。優しい嘘に隠された真実が徐々に明らかになっていく。
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2024/12/26……書籍化確定、公表
2023/12/20……小説家になろう 日間、ファンタジー 27位
2023/12/19……番外編完結
2023/12/11……本編完結(番外編、12/12)
2023/08/27……エブリスタ ファンタジートレンド 1位
2023/08/26……カテゴリー変更「恋愛」⇒「ファンタジー」
2023/08/25……アルファポリス HOT女性向け 13位
2023/08/22……小説家になろう 異世界恋愛、日間 22位
2023/08/21……カクヨム 恋愛週間 17位
2023/08/16……カクヨム 恋愛日間 12位
2023/08/14……連載開始
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
もう人気者とは付き合っていられません
花果唯
BL
僕の恋人は頭も良くて、顔も良くておまけに優しい。
モテるのは当然だ。でも――。
『たまには二人だけで過ごしたい』
そう願うのは、贅沢なのだろうか。
いや、そんな人を好きになった僕の方が間違っていたのだ。
「好きなのは君だ」なんて言葉に縋って耐えてきたけど、それが間違いだったってことに、ようやく気がついた。さようなら。
ちょうど生徒会の補佐をしないかと誘われたし、そっちの方に専念します。
生徒会長が格好いいから見ていて癒やされるし、一石二鳥です。
※ライトBL学園モノ ※2024再公開・改稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる