24 / 76
事故つがいの夫は僕を愛してる
初デート side天音②
しおりを挟む「理人、外では恥ずかしいよ……理人だって、外ではこんなのしない人だったでしょ?」
火照りが収まらない顔がますます熱くなる。
「こんなのって、なに?」
「なにって、仲良くするっていうか」
「つがいが仲良くするのは当たり前でしょ?」
「そうじゃなくて、えっと、イ……イチャイチャっていうか」
「あ、イチャイチャしてるって、わかってるんだ」
「!」
理人、僕をからかってる!
またぎゅっと閉じてしまっていた目を開けると、理人は得意げに、ちょっと意地悪くも笑っている。
それから、繋いだ手を自分の太ももの上に置き、長い指を動かして、器用に手の甲をさわさわと撫でてきた。
「……イチャイチャさせてよ。やっとできるようになったんだ。もう、隠すんじゃなくて見せびらかしたい。可愛い天音は俺のものなんだよって、知らない人にも見せつけたい」
「な、な、な……」
「でも……そうだね、そんな火照った顔、見たら他のアルファが惑わされるといけないから、これ、かぶっておこうか」
理人は自分がかぶっていた帽子を僕にかぶせた。髪を綺麗に整えながらしてくれて、長い指が額や頬をツツッとかすめるたび、お腹の奥に甘い痺れが生まれる。
「つ、番がいるんだからフェロモンは理人以外には作用しないし、そうじゃなくても他のアルファが僕に興味を持つなんてないよ」
「はぁぁ~~」
必死で答えると、理人が大きなため息をついた。
やれやれ、という様子で、軽く頭も振っている。
「天音はわかってないよね、本当に。……真鍋がいい例だっていうのに」
「えっ? なに? なんて言ったの?」
理人の声はとても小さくて、次の駅に到着したと知らせるアナウンスとかぶり、かき消されてしまった。
でも「わかってない」とか聞こえたような気がする。表情もどこか不服そう。
僕、何か理人が気に障ることを言ってしまったんだろうか。どうしよう……。
「あの、理人」
「いいのいいの。天音、降りよう。おいで」
理人が立って、優しく手を引いてくれる。
そうだ、ここで降りるんだった……理人、手も顔も優しい。怒ってないみたい。良かった。
安心してホームと改札を抜ける。それから、駅から歩道橋で繋がった大きなビルへ向かって歩いた。
ありきたりだけれど、本当なら中学や高校時代にやっていただろう映画デートやショッピングデートをやってみたいと僕が言ったんだ。
人ごみに慣れてきたら、テーマパークにも行ってみたいと思ってる。
365
お気に入りに追加
3,824
あなたにおすすめの小説
初心者オメガは執着アルファの腕のなか
深嶋
BL
自分がベータであることを信じて疑わずに生きてきた圭人は、見知らぬアルファに声をかけられたことがきっかけとなり、二次性の再検査をすることに。その結果、自身が本当はオメガであったと知り、愕然とする。
オメガだと判明したことで否応なく変化していく日常に圭人は戸惑い、悩み、葛藤する日々。そんな圭人の前に、「運命の番」を自称するアルファの男が再び現れて……。
オメガとして未成熟な大学生の圭人と、圭人を番にしたい社会人アルファの男が、ゆっくりと愛を深めていきます。
穏やかさに滲む執着愛。望まぬ幸運に恵まれた主人公が、悩みながらも運命の出会いに向き合っていくお話です。本編、攻め編ともに完結済。
【完結】幼馴染から離れたい。
June
BL
隣に立つのは運命の番なんだ。
βの谷口優希にはαである幼馴染の伊賀崎朔がいる。だが、ある日の出来事をきっかけに、幼馴染以上に大切な存在だったのだと気づいてしまう。
番外編 伊賀崎朔視点もあります。
(12月:改正版)
読んでくださった読者の皆様、たくさんの❤️ありがとうございます😭
彼の理想に
いちみやりょう
BL
あの人が見つめる先はいつも、優しそうに、幸せそうに笑う人だった。
人は違ってもそれだけは変わらなかった。
だから俺は、幸せそうに笑う努力をした。
優しくする努力をした。
本当はそんな人間なんかじゃないのに。
俺はあの人の恋人になりたい。
だけど、そんなことノンケのあの人に頼めないから。
心は冗談の中に隠して、少しでもあの人に近づけるようにって笑った。ずっとずっと。そうしてきた。
愛することをやめたら、怒る必要もなくなりました。今さら私を愛する振りなんて、していただかなくても大丈夫です。
石河 翠
恋愛
貴族令嬢でありながら、家族に虐げられて育ったアイビー。彼女は社交界でも人気者の恋多き侯爵エリックに望まれて、彼の妻となった。
ひとなみに愛される生活を夢見たものの、彼が欲していたのは、夫に従順で、家の中を取り仕切る女主人のみ。先妻の子どもと仲良くできない彼女をエリックは疎み、なじる。
それでもエリックを愛し、結婚生活にしがみついていたアイビーだが、彼の子どもに言われたたった一言で心が折れてしまう。ところが、愛することを止めてしまえばその生活は以前よりも穏やかで心地いいものになっていて……。
愛することをやめた途端に愛を囁くようになったヒーローと、その愛をやんわりと拒むヒロインのお話。
この作品は他サイトにも投稿しております。
扉絵は、写真ACよりチョコラテさまの作品(写真ID 179331)をお借りしております。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信中
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
初夜の翌朝失踪する受けの話
春野ひより
BL
家の事情で8歳年上の男と結婚することになった直巳。婚約者の恵はカッコいいうえに優しくて直巳は彼に恋をしている。けれど彼には別に好きな人がいて…?
タイトル通り初夜の翌朝攻めの前から姿を消して、案の定攻めに連れ戻される話。
歳上穏やか執着攻め×頑固な健気受け
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる