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事故つがいの夫は僕を愛してる

初デート side天音②

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「理人、外では恥ずかしいよ……理人だって、外ではこんなのしない人だったでしょ?」

 火照りが収まらない顔がますます熱くなる。
 
「こんなのって、なに?」
「なにって、仲良くするっていうか」
「つがいが仲良くするのは当たり前でしょ?」
「そうじゃなくて、えっと、イ……イチャイチャっていうか」
「あ、イチャイチャしてるって、わかってるんだ」
「!」

 理人、僕をからかってる!

 またぎゅっと閉じてしまっていた目を開けると、理人は得意げに、ちょっと意地悪くも笑っている。
 それから、繋いだ手を自分の太ももの上に置き、長い指を動かして、器用に手の甲をさわさわと撫でてきた。

「……イチャイチャさせてよ。やっとできるようになったんだ。もう、隠すんじゃなくて見せびらかしたい。可愛い天音は俺のものなんだよって、知らない人にも見せつけたい」
「な、な、な……」
「でも……そうだね、そんな火照った顔、見たら他のアルファが惑わされるといけないから、これ、かぶっておこうか」

 理人は自分がかぶっていた帽子を僕にかぶせた。髪を綺麗に整えながらしてくれて、長い指が額や頬をツツッとかすめるたび、お腹の奥に甘い痺れが生まれる。

「つ、番がいるんだからフェロモンは理人以外には作用しないし、そうじゃなくても他のアルファが僕に興味を持つなんてないよ」
「はぁぁ~~」

 必死で答えると、理人が大きなため息をついた。
 やれやれ、という様子で、軽く頭も振っている。
 
「天音はわかってないよね、本当に。……真鍋がいい例だっていうのに」
「えっ? なに? なんて言ったの?」

 理人の声はとても小さくて、次の駅に到着したと知らせるアナウンスとかぶり、かき消されてしまった。
 でも「わかってない」とか聞こえたような気がする。表情もどこか不服そう。

 僕、何か理人が気に障ることを言ってしまったんだろうか。どうしよう……。

「あの、理人」
「いいのいいの。天音、降りよう。おいで」

 理人が立って、優しく手を引いてくれる。

 そうだ、ここで降りるんだった……理人、手も顔も優しい。怒ってないみたい。良かった。

 安心してホームと改札を抜ける。それから、駅から歩道橋で繋がった大きなビルへ向かって歩いた。

 ありきたりだけれど、本当なら中学や高校時代にやっていただろう映画デートやショッピングデートをやってみたいと僕が言ったんだ。
 人ごみに慣れてきたら、テーマパークにも行ってみたいと思ってる。

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