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事故つがいの夫は僕を愛してる
初デート side天音③
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「映画面白かったね」
「そうだね。天音は動物ものが好きだもんね」
「うん、うさぎの口がぴよぴよ動いて話す映像が、特に可愛かった」
「照れたときの天音みたいだよね、あのうさぎの目と口。すごく可愛い」
「へっ??」
目をくりくりさせて、口元がY字に割れてあのるうさぎが僕みたい!?
僕って理人の目にどう映ってるの?? だけど可愛いって言ってくれるから、変には思われてないんだよね?
「さ、次行こうか。家具や雑貨のお店、あっちみたいだよ」
「あ、う、うん」
僕と理人の空いたドリンクボトルを持っていた理人は、映画館のゴミ箱にそれを捨てると、また僕の手を取った。
あっという間に指を絡ませて、しっかりと繋いでくれる。
すごく嬉しいことだけれど、やっぱり恥ずかしい。
電車の中では、初デートの始まりに気持ちが浮足立っていたのがあるけれど、今は「これって本当にデートなんだ」と実感して、変に緊張してきてしまった。
それに、家の中だとこんなにずっと手を繋いではいないもの。
理人は仕事と予備試験予備校に通っているから、日曜日以外は朝早くから二十三時前くらいまで家にいない。
日曜も、一刻も早く予備試験に合格して弁護士になるために一生懸命勉強しているし、就職を希望している弁護士事務所のセミナーに出かけたりもするから。
だけど……。
──天音、俺から離れないで。ぴったりくっついていよう?
──天音の肌、いい匂い。それれにすべすべしてて、とっても気持ちいいね。
そんな言葉をこまめにかけてくれながら歩くものだから、きゅぅんとお腹が疼いてしまった。
思い出してしまったのだ。繋いだ手の温かさから、夜、僕をずっと抱きしめて離さない理人の体温を。
今、僕たちは前と違って同じベッドでふたりで眠っている。
理人は勉強があるときは理人の部屋にいることが多いけれど、初めて顔を見て抱いてくれた次の日以降は、僕の部屋で眠るようになった。
なぜ僕の部屋かと言うと、仲直りのセックスが激しすぎて、理人のパイプベッドがギシギシと響くようになってしまったからだ。
僕たちが結婚したのは高校を卒業してすぐだったから、アパートを決めるのも家具を揃えるのも、お互いの両親が全部してくれた。
それで、成人を過ぎたら改めて自分たちで話して決めなさい、と言われていて、どちらもわざと安価で、引っ越しや買い替えがしやすいものにしてくれている。
だから、ぎしぎし鳴るベッドでは下や横の部屋に響いて良くないね、と理人が言って、僕が実家から持ってきたベッドは木枠で造りがしっかりしていたから、そっちに移ったというわけだ。
理人は入浴を終えると僕の部屋にきて、すぐに腰に手を回してうなじにキスをする。
それからちゅと軽く吸って、舌を出して番の刻印をぺろ、ぺろと舐めてくる。
その間も手は僕のパジャマの中に入ってきて、乳暈ごと僕の乳首を揉みしだいて、それだけで芯を持った僕のものも柔らかく包みこんで……。
……わわ! 思い出しちゃ駄目だ。
顔だけでなく、身体まで熱くなってくるのを感じて、僕は我にかえった。けれどもう、手にはたくさんの汗が滲んでいる。
こんな手、理人に気持ち悪いと思われてしまう。
「あの、あのね、理人。僕、手に汗をかいてるみたい。拭きたいから一度手を離してもらってもいい?」
前までみたいに緊張で手を振りほどくことはしない。
誤解されて距離ができるのは嫌だったから、手を繋いだまま、ちゃんと言葉にして伝えてみた。
だけどどうしたんだろう。理人は表情を失くし、虚ろな目で僕を見て黙ってしまった。
「……」
「理人……?」
どうしよう。どうしよう。きっと理人は、僕が嫌がって手を離したがっていると誤解してるんだ。
理人も手は離さないけれど、まだなにも言ってくれない。ショッピングモールの往来なのに、真ん中で呆然と突っ立ってしまった。
──もう、前みたいにすれ違いたくない!
「映画面白かったね」
「そうだね。天音は動物ものが好きだもんね」
「うん、うさぎの口がぴよぴよ動いて話す映像が、特に可愛かった」
「照れたときの天音みたいだよね、あのうさぎの目と口。すごく可愛い」
「へっ??」
目をくりくりさせて、口元がY字に割れてあのるうさぎが僕みたい!?
僕って理人の目にどう映ってるの?? だけど可愛いって言ってくれるから、変には思われてないんだよね?
「さ、次行こうか。家具や雑貨のお店、あっちみたいだよ」
「あ、う、うん」
僕と理人の空いたドリンクボトルを持っていた理人は、映画館のゴミ箱にそれを捨てると、また僕の手を取った。
あっという間に指を絡ませて、しっかりと繋いでくれる。
すごく嬉しいことだけれど、やっぱり恥ずかしい。
電車の中では、初デートの始まりに気持ちが浮足立っていたのがあるけれど、今は「これって本当にデートなんだ」と実感して、変に緊張してきてしまった。
それに、家の中だとこんなにずっと手を繋いではいないもの。
理人は仕事と予備試験予備校に通っているから、日曜日以外は朝早くから二十三時前くらいまで家にいない。
日曜も、一刻も早く予備試験に合格して弁護士になるために一生懸命勉強しているし、就職を希望している弁護士事務所のセミナーに出かけたりもするから。
だけど……。
──天音、俺から離れないで。ぴったりくっついていよう?
──天音の肌、いい匂い。それれにすべすべしてて、とっても気持ちいいね。
そんな言葉をこまめにかけてくれながら歩くものだから、きゅぅんとお腹が疼いてしまった。
思い出してしまったのだ。繋いだ手の温かさから、夜、僕をずっと抱きしめて離さない理人の体温を。
今、僕たちは前と違って同じベッドでふたりで眠っている。
理人は勉強があるときは理人の部屋にいることが多いけれど、初めて顔を見て抱いてくれた次の日以降は、僕の部屋で眠るようになった。
なぜ僕の部屋かと言うと、仲直りのセックスが激しすぎて、理人のパイプベッドがギシギシと響くようになってしまったからだ。
僕たちが結婚したのは高校を卒業してすぐだったから、アパートを決めるのも家具を揃えるのも、お互いの両親が全部してくれた。
それで、成人を過ぎたら改めて自分たちで話して決めなさい、と言われていて、どちらもわざと安価で、引っ越しや買い替えがしやすいものにしてくれている。
だから、ぎしぎし鳴るベッドでは下や横の部屋に響いて良くないね、と理人が言って、僕が実家から持ってきたベッドは木枠で造りがしっかりしていたから、そっちに移ったというわけだ。
理人は入浴を終えると僕の部屋にきて、すぐに腰に手を回してうなじにキスをする。
それからちゅと軽く吸って、舌を出して番の刻印をぺろ、ぺろと舐めてくる。
その間も手は僕のパジャマの中に入ってきて、乳暈ごと僕の乳首を揉みしだいて、それだけで芯を持った僕のものも柔らかく包みこんで……。
……わわ! 思い出しちゃ駄目だ。
顔だけでなく、身体まで熱くなってくるのを感じて、僕は我にかえった。けれどもう、手にはたくさんの汗が滲んでいる。
こんな手、理人に気持ち悪いと思われてしまう。
「あの、あのね、理人。僕、手に汗をかいてるみたい。拭きたいから一度手を離してもらってもいい?」
前までみたいに緊張で手を振りほどくことはしない。
誤解されて距離ができるのは嫌だったから、手を繋いだまま、ちゃんと言葉にして伝えてみた。
だけどどうしたんだろう。理人は表情を失くし、虚ろな目で僕を見て黙ってしまった。
「……」
「理人……?」
どうしよう。どうしよう。きっと理人は、僕が嫌がって手を離したがっていると誤解してるんだ。
理人も手は離さないけれど、まだなにも言ってくれない。ショッピングモールの往来なのに、真ん中で呆然と突っ立ってしまった。
──もう、前みたいにすれ違いたくない!
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