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XXVII 護るべき者と、壊すべき者-V
しおりを挟む肉を、内臓を、血管を、全て引き裂く様にナイフを下腹部の方へ勢い良く押し下す。
その瞬間、傷口から零れる様に顔を出したのは赤黒い臓器。
部屋に響く断末魔の声。傷口から溢れた血液が、ローブに飛び散る。
腹をこんなに無残に裂かれても尚、彼の呼吸は途切れる事は無い。その苦しみは計り知れないだろう。痛みを想像するだけで、吐き気がする。
「エルに目を付けたりなんてしなければ、俺はお前を殺す事は無かったし、お前も死ぬ事は無かったのにな」
手遊びでもする様に、腹に刺さったナイフをゆらゆらと動かす。その度に、ぐちゃりと臓器が掻き乱される汚い音が響いた。
最早痛覚すら麻痺してしまったのか、彼は何も反応を示さない。ただ、声とも言い難い声が喉奥から流れ続けているだけだ。
「最期に1つだけ、良い事を教えといてやる」
彼の腹から、血肉に塗れたナイフを引き抜く。それと同時に、どの臓器かも判別出来ない肉片が傷口から溢れ出た。
「お前を助ける奴なんて、何処にも居ないぞ」
目にかかる程の長さの彼の髪を、乱暴に掴み引き上げた。彼の顔に自身の顔を寄せ、宥める様に囁き掛ける。
「お前の取り巻きだって、武器商人の彼奴だって、お前の家族だってそうだ。お前がどういう経緯で家を出たかは知らねぇが、家を出た人間を態々助ける程、貴族サマは情に厚くねぇんだ」
落とす様に、彼の頭を強く床に叩き付けた。
ナイフの刃先で狙うのは彼の心臓。
本当はもっと残虐な方法で彼を嬲り殺してやりたかったが、遊びの時間はもう終わりの様だ。壁時計は“約束の時間”の10分前を指している。
残念だが、計画を“完璧”に遂行する為には此処で終わるしかない。
「御愁傷様」
絶望を滲ませた彼に微笑みかけ、ナイフを持った手を高く振り翳した。
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