101 / 162
XXVI 彼女に向けた銃口-II
しおりを挟む
「……悪ふざけも大概にしろ」
目一杯弾を込めた銃は重い。
だが、その重みを全て忘れてしまう程にこの状況は不可解だ。
「別にふざけてないよ。練習台、必要でしょ?」
「笑えない冗談だな」
「だから、冗談じゃないってば」
無邪気な子供の様に、彼女が笑う。
「だって、エルちゃんと2人で遠い場所に逃げようって思ってんでしょ? なら、私ともここでお別れになっちゃうじゃない」
「!」
1歩、2歩、と彼女が後ろに下がり、俺から距離を取った。
「なら、別に此処で私を殺してもいいんじゃないの?」
思考が止まってしまって、今は何も考えられない。
過ぎ行く時間にただ焦りを感じながら、銃を持つ手に力を籠める。
「エルちゃんが起きる前に、全部終わらせて帰らなきゃね。早くしないと、時間無いんじゃない? それとも、セディには無理かなぁ?」
腕を上げ、いつもと変わらない顔で笑うマーシャに銃口を向けた。
ただ、危害を加えようとする人間をエルから遠ざけたいだけだ。決して、人を殺したい訳では無い。
なのに、この理解しがたい状況の中彼女に銃口を向けているのは何故なのか。
狙いを定めるは、彼女の心臓。トリガーを引いたら、どうなるか位分かってる。
「セディはエルちゃんの王子様でしょ? ならちゃんと、守ってあげなきゃ」
ハンマーを起こし、トリガーに指を掛ける。
「早くしないと、大事なお姫様が狼に食べられちゃうよ?」
彼女の口車に乗せられてはいけない。頭の中でそう何度も繰り返しながら、目を伏せた。
「――あぁでも、もう食べられちゃってるかもね」
屋敷中に鳴り響いた、耳を劈く銃声。振動が、手首に伝わる。
銃を持った手を下し、瞳を開いた。
ソファに散った赤い鮮血。色の薄い生地を使っている為、特にシミが目立って見える。早急に張り替えなければ、依頼者に誤解をされてしまう。
この際、張り替えるよりも家具一式買い替えてしまった方が安上がりだろうか。余計な所で出費の増える事をしてしまったと、肩を落とす。
目一杯弾を込めた銃は重い。
だが、その重みを全て忘れてしまう程にこの状況は不可解だ。
「別にふざけてないよ。練習台、必要でしょ?」
「笑えない冗談だな」
「だから、冗談じゃないってば」
無邪気な子供の様に、彼女が笑う。
「だって、エルちゃんと2人で遠い場所に逃げようって思ってんでしょ? なら、私ともここでお別れになっちゃうじゃない」
「!」
1歩、2歩、と彼女が後ろに下がり、俺から距離を取った。
「なら、別に此処で私を殺してもいいんじゃないの?」
思考が止まってしまって、今は何も考えられない。
過ぎ行く時間にただ焦りを感じながら、銃を持つ手に力を籠める。
「エルちゃんが起きる前に、全部終わらせて帰らなきゃね。早くしないと、時間無いんじゃない? それとも、セディには無理かなぁ?」
腕を上げ、いつもと変わらない顔で笑うマーシャに銃口を向けた。
ただ、危害を加えようとする人間をエルから遠ざけたいだけだ。決して、人を殺したい訳では無い。
なのに、この理解しがたい状況の中彼女に銃口を向けているのは何故なのか。
狙いを定めるは、彼女の心臓。トリガーを引いたら、どうなるか位分かってる。
「セディはエルちゃんの王子様でしょ? ならちゃんと、守ってあげなきゃ」
ハンマーを起こし、トリガーに指を掛ける。
「早くしないと、大事なお姫様が狼に食べられちゃうよ?」
彼女の口車に乗せられてはいけない。頭の中でそう何度も繰り返しながら、目を伏せた。
「――あぁでも、もう食べられちゃってるかもね」
屋敷中に鳴り響いた、耳を劈く銃声。振動が、手首に伝わる。
銃を持った手を下し、瞳を開いた。
ソファに散った赤い鮮血。色の薄い生地を使っている為、特にシミが目立って見える。早急に張り替えなければ、依頼者に誤解をされてしまう。
この際、張り替えるよりも家具一式買い替えてしまった方が安上がりだろうか。余計な所で出費の増える事をしてしまったと、肩を落とす。
0
お気に入りに追加
15
あなたにおすすめの小説
婚約者から婚約破棄をされて喜んだのに、どうも様子がおかしい
棗
恋愛
婚約者には初恋の人がいる。
王太子リエトの婚約者ベルティーナ=アンナローロ公爵令嬢は、呼び出された先で婚約破棄を告げられた。婚約者の隣には、家族や婚約者が常に可愛いと口にする従妹がいて。次の婚約者は従妹になると。
待ちに待った婚約破棄を喜んでいると思われる訳にもいかず、冷静に、でも笑顔は忘れずに二人の幸せを願ってあっさりと従者と部屋を出た。
婚約破棄をされた件で父に勘当されるか、何処かの貴族の後妻にされるか待っていても一向に婚約破棄の話をされない。また、婚約破棄をしたのに何故か王太子から呼び出しの声が掛かる。
従者を連れてさっさと家を出たいべルティーナと従者のせいで拗らせまくったリエトの話。
※なろうさんにも公開しています。
※短編→長編に変更しました(2023.7.19)
美しい公爵様の、凄まじい独占欲と溺れるほどの愛
らがまふぃん
恋愛
こちらは以前投稿いたしました、 美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛 の続編となっております。前作よりマイルドな作品に仕上がっておりますが、内面のダークさが前作よりはあるのではなかろうかと。こちらのみでも楽しめるとは思いますが、わかりづらいかもしれません。よろしかったら前作をお読みいただいた方が、より楽しんでいただけるかと思いますので、お時間の都合のつく方は、是非。時々予告なく残酷な表現が入りますので、苦手な方はお控えください。 *早速のお気に入り登録、しおり、エールをありがとうございます。とても励みになります。前作もお読みくださっている方々にも、多大なる感謝を! ※R5.7/23本編完結いたしました。たくさんの方々に支えられ、ここまで続けることが出来ました。本当にありがとうございます。ばんがいへんを数話投稿いたしますので、引き続きお付き合いくださるとありがたいです。この作品の前作が、お気に入り登録をしてくださった方が、ありがたいことに200を超えておりました。感謝を込めて、前作の方に一話、近日中にお届けいたします。よろしかったらお付き合いください。 ※R5.8/6ばんがいへん終了いたしました。長い間お付き合いくださり、また、たくさんのお気に入り登録、しおり、エールを、本当にありがとうございました。 ※R5.9/3お気に入り登録200になっていました。本当にありがとうございます(泣)。嬉しかったので、一話書いてみました。 ※R5.10/30らがまふぃん活動一周年記念として、一話お届けいたします。 ※R6.1/27美しく残酷な公爵令息様の、一途で不器用な愛(前作) と、こちらの作品の間のお話し 美しく冷酷な公爵令息様の、狂おしい熱情に彩られた愛 始めました。お時間の都合のつく方は、是非ご一読くださると嬉しいです。
*らがまふぃん活動二周年記念として、R6.11/4に一話お届けいたします。少しでも楽しんでいただけますように。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
愛する殿下の為に身を引いたのに…なぜかヤンデレ化した殿下に囚われてしまいました
Karamimi
恋愛
公爵令嬢のレティシアは、愛する婚約者で王太子のリアムとの結婚を約1年後に控え、毎日幸せな生活を送っていた。
そんな幸せ絶頂の中、両親が馬車の事故で命を落としてしまう。大好きな両親を失い、悲しみに暮れるレティシアを心配したリアムによって、王宮で生活する事になる。
相変わらず自分を大切にしてくれるリアムによって、少しずつ元気を取り戻していくレティシア。そんな中、たまたま王宮で貴族たちが話をしているのを聞いてしまう。その内容と言うのが、そもそもリアムはレティシアの父からの結婚の申し出を断る事が出来ず、仕方なくレティシアと婚約したという事。
トンプソン公爵がいなくなった今、本来婚約する予定だったガルシア侯爵家の、ミランダとの婚約を考えていると言う事。でも心優しいリアムは、その事をレティシアに言い出せずに悩んでいると言う、レティシアにとって衝撃的な内容だった。
あまりのショックに、フラフラと歩くレティシアの目に飛び込んできたのは、楽しそうにお茶をする、リアムとミランダの姿だった。ミランダの髪を優しく撫でるリアムを見た瞬間、先ほど貴族が話していた事が本当だったと理解する。
ずっと自分を支えてくれたリアム。大好きなリアムの為、身を引く事を決意。それと同時に、国を出る準備を始めるレティシア。
そして1ヶ月後、大好きなリアムの為、自ら王宮を後にしたレティシアだったが…
追記:ヒーローが物凄く気持ち悪いです。
今更ですが、閲覧の際はご注意ください。
自信家CEOは花嫁を略奪する
朝陽ゆりね
恋愛
「あなたとは、一夜限りの関係です」
そのはずだったのに、
そう言ったはずなのに――
私には婚約者がいて、あなたと交際することはできない。
それにあなたは特定の女とはつきあわないのでしょ?
だったら、なぜ?
お願いだからもうかまわないで――
松坂和眞は特定の相手とは交際しないと宣言し、言い寄る女と一時を愉しむ男だ。
だが、経営者としての手腕は世間に広く知られている。
璃桜はそんな和眞に憧れて入社したが、親からもらった自由な時間は3年だった。
そしてその期間が来てしまった。
半年後、親が決めた相手と結婚する。
退職する前日、和眞を誘惑する決意をし、成功するが――
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
愛してほしかった
こな
恋愛
「側室でもいいか」最愛の人にそう問われ、頷くしかなかった。
心はすり減り、期待を持つことを止めた。
──なのに、今更どういうおつもりですか?
※設定ふんわり
※何でも大丈夫な方向け
※合わない方は即ブラウザバックしてください
※指示、暴言を含むコメント、読後の苦情などはお控えください
ヤンデレ幼馴染が帰ってきたので大人しく溺愛されます
下菊みこと
恋愛
私はブーゼ・ターフェルルンデ。侯爵令嬢。公爵令息で幼馴染、婚約者のベゼッセンハイト・ザンクトゥアーリウムにうっとおしいほど溺愛されています。ここ数年はハイトが留学に行ってくれていたのでやっと離れられて落ち着いていたのですが、とうとうハイトが帰ってきてしまいました。まあ、仕方がないので大人しく溺愛されておきます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる