DachuRa 4th story -冷刻という名の、稀有なる真実-

白城 由紀菜

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I プロローグ

I

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「――ルイ」

 自室のベッドで寛ぎながら本を開いていると、明朗めいろうで柔らかな、自身と瓜二つの妹――レイが私の名を呼んだ。顔を上げ、彼女を見遣る。

「何、読んでるの」

 甘える様に微笑わらったレイが、短くそう尋ねてきた。極めて穏やかで、愛おしさの溢れる声だ。
 その問いに答える様に、膝の上に乗せていた本を無言で持ち上げ、タイトルが書かれた表紙を見せる。

「あぁ、この前、貸本屋で借りたやつか」

 関心とも無関心とも取れない、曖昧な反応である。

「――ねえ、ルイ」

 彼女がベッドに上がり、ぴたりと私に寄り添う。
 その小さな頭が私の肩に乗せられ、さらさらとしていて柔らかく、糸の様に細い髪が頬を擽った。

「好きだよ」

 本の上に乗せていた手の上を、レイの手が滑る様に這う。そして優しく指を絡め、吐息交じりの、蠱惑こわく的な笑い声を漏らした。
 ――彼女の真の目的は、こっちだ。
 私が何を読んでいるかなんて問いは、ただの前置き程度のものでしか無く、彼女はこうして私の意識を本から自身に向けさせる為に敢えてタイトルを聞いた。
 レイは気が強く、ずぼらな性格をしていて、両親に叱られる事も呆れられる事も多い。しかしとても、頭が回る方だった。
 それはお勉強が出来るか否か、では無い。人の心に上手く、入り込む事が出来るのだ。
 姉の私でさえ、彼女のその才能には到底敵わない。

「ルイは? 私の事好き?」

 上目遣いで私を見つめる瞳は柔らかく、甘え上手の妹のそれではあるが、黙ったままの私を咎める様でもあった。

「――好きよ」

 隣の彼女にだけ聞こえる潜めた声で、そう囁く。すると、レイが心底可笑しそうにくすくすと笑った。
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