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LI 雷鳴の轟く夜-IV
しおりを挟む「――んっ、ん、ぁ」
彼が強引に私の脚を開かせ、脚の間に顔を埋める。そして愛液に塗れた秘部に這わされるのは、彼の熱い舌。
無意識的に伸ばした手は宙を彷徨い、彼の艶やかな髪に触れた。こんな状況でも、触り心地が良いと感じてしまう程の髪質だ。羨ましいとすら思ってしまう。しかし、ずっと触っていたい、という意思半面、自身を襲うのは気が触れそうな快楽。それに僅かな恐怖を感じ、彼の舌から逃れようと腰を引いた。
だが彼の手が逃すまいと私の腰を強く掴み、逃れる事は出来ずただ与えられる快楽に嬌声をあげる。
「だ、め……セドリック……っ」
彼が噛み付いた先は、性感帯の中でも特に感度の強いしこり。弄ぶ様に舌の上で転がした後、じゅる、と音を立てしこりに吸い付いた。
沸き立つ快楽に、思わず背を反らす。
このままでは口淫だけで果ててしまいそうだ。再び腰を引き、彼の額を押す。しかし彼は、そんな私を嘲り笑う様に更に強くしこりに吸い付き、舌先で激しく刺激した。
「あ、あっ、もう、だめっ……」
その快楽に限界を超え、シーツを蹴り一際高い声を上げながら絶頂を迎える。
身体を震わせ、息を切らせながらくたりとベッドに身を預けると、漸く彼が顔を上げた。
「感じやすいのは久々だからか?それとも、この天候の所為か?」
まるで悪戯をする子供の様な顔で、彼が唇や指に付着した愛液を舐め取りながら問う。
「――……」
その問いに答えられず、顔に熱が溜まるのを感じながらきつく睨みつけると、彼が珍しく声を漏らし笑った。
彼の言う通り、こうして触れ合うのは大分久々だ。
眠る前にベッドの中で口付けを交わし、見つめ合う時間はあったが、娘が出来てからというものこうして交わる事は殆ど無かった。それ故か、今迄より深く快楽を感じている様に思える。
しかし、この天候の所為とも言えるだろう。
当時の私は、情交は疎か男性との交際がどの様な物かもはっきりと分かっていなかった。言葉や存在こそ知っているものの、何をもって交際、何をすれば情交、というのは知らなかったと思う。そんな私が、彼に触れたい、彼が欲しいと明確に感じたのが“あの夜”だ。
その所為で、“嵐”というだけで何処か淫靡に感じていた。
そして時間は掛かれど彼と結ばれ、心も身体も無垢だった私がいつの間にか愛欲に溺れ彼と何度も身体を重ねるようになった。その末に子供を授かり幸せな家庭を築いているのだが、それでも彼への愛情が変わる事は無い。
よく、子を授かった事がきっかけで夫への愛情の形が変わる、なんて言うだろう。中には、夫との情交を受け付けなくなってしまう女性もいる位なのだとか。
しかし私は、今でも彼に触れたい、触れて欲しいと思う上に、飽きる程繰り返した情交にもまるで恋人を相手にしている様に鼓動を高鳴らせていた。
勿論彼を、娘の父親として、家族としても愛している。それは事実だ。だがそれでも、私にとって彼はかけがえのない1人の男性であった。
娘を持つ母親だと言うのに、いつまでもこんな事ばかり考えているだなんて愚かだろうか。淫奔な女だろうか。
果てた後というのは、色々と余計な事を考えやすい。愛欲に溺れているのか、不安に苛まれているのか分からなくなり、溜息を漏らし手で顔を覆った。
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