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LVII 身体の変化-II
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ティーカップに口を付け、徒にカップの淵を齧ってはソーサーに戻す。カップの中に入っているのは、大好きな紅茶だ。しかし、その紅茶を口に含む気には中々なれない。
その理由は言わずもがな、砂糖とミルクを入れていない、完全なストレートティーだからだ。
ストレートティーが飲めない訳では決して無い。水よりかはマシであり、新しい茶葉を買った時には必ず1度は試飲と称してストレートで飲む。
しかしどうしても、甘くしていない紅茶を好きになる事だけは出来なかった。
紅茶の香りと味に甘みが混じり、そして少々の渋みがミルクによって中和される。それでこそ、私の好きな紅茶だ。それを飲んでいる時が、唯一心が安らぐ時である。
しかし、砂糖だけでなくミルクも入っていない紅茶は、心が安らぐどころか寧ろストレスだった。
「あぁ、もう、やだ」
ガチャン、と音を立ててカップとソーサーをテーブルに置き、ソファの背凭れに身体を預ける。その音に、近くのソファで依頼者からの手紙を開封していたセドリックが此方を一瞥した。
「――珍しいな、お前が紅茶飲んでて苛付くなんて」
「砂糖とミルク入れてないの。美味しくない、楽しめない」
「……入れればいいだけなんじゃないのか」
「それが出来たら最初っからそうしてるっての」
背とソファの隙間に入れていたクッションを引き抜き、苛立ちに任せ彼にそれを投げつけた。しかし彼はいとも簡単にそのクッションを躱し、涼しい顔をして手紙の開封作業に戻る。
「むかつく! なんで避けんの!」
「……なんで、と言われても」
彼の視線は手紙に落ちたままだ。大して相手にされていない事にも腹立たしさを感じ、子供の様に足をバタつかせた。
「甘い物食べたい! ケーキ! サンドイッチ! スコーン! ビスケット! 甘い紅茶!」
「食えばいいだろ」
「だからぁ! それが出来たら苦労してないんだってば! 私此処二週間で太ったの! だから痩せる為に食事制限してんの!」
彼の視線が、再び此方に向く。私の身体をまじまじと見つめた後、少々困った様に無言で私の顔を見た。黙っていたって分かる。“何処も変わっていないだろ”とでも言いたいのだろう。
確かに、太ったと言っても見た目に大きな変化は無く、今まで通り着ていた服も難なく着用できる。太ったという自覚が無かった位だ。セドリックが理解出来なくとも無理はない。
しかし、最愛の人に“太った”と言われてしまえば減量しなければいけないと思うのが女心というもの。一日二食の食事すら、控えた方が良いのだろうか。そんな事を思いながら再びティーカップを手に取り、無理矢理紅茶を喉奥へ流し込んだ。
その理由は言わずもがな、砂糖とミルクを入れていない、完全なストレートティーだからだ。
ストレートティーが飲めない訳では決して無い。水よりかはマシであり、新しい茶葉を買った時には必ず1度は試飲と称してストレートで飲む。
しかしどうしても、甘くしていない紅茶を好きになる事だけは出来なかった。
紅茶の香りと味に甘みが混じり、そして少々の渋みがミルクによって中和される。それでこそ、私の好きな紅茶だ。それを飲んでいる時が、唯一心が安らぐ時である。
しかし、砂糖だけでなくミルクも入っていない紅茶は、心が安らぐどころか寧ろストレスだった。
「あぁ、もう、やだ」
ガチャン、と音を立ててカップとソーサーをテーブルに置き、ソファの背凭れに身体を預ける。その音に、近くのソファで依頼者からの手紙を開封していたセドリックが此方を一瞥した。
「――珍しいな、お前が紅茶飲んでて苛付くなんて」
「砂糖とミルク入れてないの。美味しくない、楽しめない」
「……入れればいいだけなんじゃないのか」
「それが出来たら最初っからそうしてるっての」
背とソファの隙間に入れていたクッションを引き抜き、苛立ちに任せ彼にそれを投げつけた。しかし彼はいとも簡単にそのクッションを躱し、涼しい顔をして手紙の開封作業に戻る。
「むかつく! なんで避けんの!」
「……なんで、と言われても」
彼の視線は手紙に落ちたままだ。大して相手にされていない事にも腹立たしさを感じ、子供の様に足をバタつかせた。
「甘い物食べたい! ケーキ! サンドイッチ! スコーン! ビスケット! 甘い紅茶!」
「食えばいいだろ」
「だからぁ! それが出来たら苦労してないんだってば! 私此処二週間で太ったの! だから痩せる為に食事制限してんの!」
彼の視線が、再び此方に向く。私の身体をまじまじと見つめた後、少々困った様に無言で私の顔を見た。黙っていたって分かる。“何処も変わっていないだろ”とでも言いたいのだろう。
確かに、太ったと言っても見た目に大きな変化は無く、今まで通り着ていた服も難なく着用できる。太ったという自覚が無かった位だ。セドリックが理解出来なくとも無理はない。
しかし、最愛の人に“太った”と言われてしまえば減量しなければいけないと思うのが女心というもの。一日二食の食事すら、控えた方が良いのだろうか。そんな事を思いながら再びティーカップを手に取り、無理矢理紅茶を喉奥へ流し込んだ。
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