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LII 堕落-IV
しおりを挟む「僕は、その悩みというものを貴女から聞いていませんが」
「え」
「僕に話すよりも先に、その方へ相談したんですか?」
ゆっくりと椅子から腰を上げ、彼が此方に歩み寄ってくる。そしてそっと私の肩に触れ、優しく私の身体を背後から包み込んだ。
「貴女が物思いにふけている事には気付いていました。夜だって、貴女は快楽を得ながらも何か別の事を考えていた」
「そんな事――」
「否定するんですか? 間違ってはいないと思いますが」
彼の言葉に、口を閉ざす。
何も、間違っていない。私はライリーと話をするまで、この歪んだ関係が正しい物なのかと思い悩んでいた。
まさか彼に気付かれていたなんて思いもしなかったが、自身のその悩みは大きかった為やはり何処かで顔に出てしまっていたのだろう。
「貴女の事で、僕に知らない事がある……と考えるだけで気が触れそうです。それに、その悩みを僕では無く他人に明かした事も、ですね。何故僕に話してくれなかったんですか?」
「……相手は女性だよ? それも、長年の付き合いの」
素直に、自分達の愛について不安を抱いていた、と告げる事も出来た。いや、寧ろこの状況であれば、素直に話す以外の選択をする方が無謀だと言えるだろう。
しかし、私達の愛は決して間違っていないと分かった今、彼が私の為にどれ程気を狂わせてくれるのかを見てみたいと思った。
どうやって私に“悩み事”を吐かせるのか、どんなきついお仕置きが待っているのか、彼の行動1つ1つ考えるだけで心が満たされていく。そしてそれと同時に、性的欲求が嵩じるのを感じた。
やはり、私の愛は狂っている。それでも、この愛は間違っていない。ただ少し、特殊なだけだ。
それに、彼も言っていたではないか。この首輪を嵌めた時に、マゾヒストやサディスト用の店があると。表立って経営はされていない様だが、少なからず私達と同じ嗜好を持つ人間がこの世には存在しているのだ。
今度、その店に連れて行って貰ってもいいかもしれない。そんな事をぼんやり思いながら、彼の様子を伺う。
「……相手が女性だろうと、長年の付き合いだろうと、関係ありませんね。僕は貴女の全てが知りたい。それこそ、月経の周期や愛液の味まで、全てです」
「随分と執着するんだね」
「執着、なんて言葉で括って欲しくはありませんね。僕はそれ程貴女を愛しているんですよ。“これ”を着けていてもまだ分かりませんか?」
彼の指が、首輪をするりとなぞる。
「僕の許可無しに他者へ貴女の情報を渡したという時点できついお仕置きは確定なのですが……、どうしましょうか。快楽漬けにするのも1つの手ですが、それではご褒美になってしまいますね。一週間僕が貴女に触れない、というのは如何でしょう。夜の営みも無ければ口付けも無し、指一本たりとも触れない、というのは効果的な気がします」
彼がゆったりとした動きで、少々わざとらしく私を抱いていた腕を解く。
その瞬間寂しさの様な、虚しさの様な嫌な感覚に取り憑かれ、思わず腕を背後に伸ばし彼のネクタイを掴んだ。そして強く引き寄せ、「それは嫌」と囁く様に告げる。
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