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XLVIII 飼いならされた猫-III

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「――ッ!」

 ぬるりとした感覚と共に与えられる激しい快楽。脳が痺れる程のそれに恥じらう事も忘れ嬌声を上げた。
 虐める様に、愛でる様に、時々動きを変えながら刺激される。果てた後だからか敏感になったそこは、指で弄られるだけで強烈な快楽を生み、ものの1、2分で果ててしまった。

「貴女がこんなにも素直に言う事を聞くとは思いませんでした。気持ちよかったですか?」

 彼の問いに否定も肯定も出来ず、乱れた呼吸を整えながらもふいと顔を逸らす。

「ちゃんと言う事が聞けたので、約束通りお教えしましょう」

 彼が事前に用意していた大きなタオルを私の身体に掛け、冷えた肩を温める様に優しく撫でた。

「貴女は気が強くて、素直じゃありませんね。可愛げ、というものは無いかもしれません。でも僕はそんな貴女が好きですよ。自分好みに調教して、可愛い可愛い猫に育てたくなる」

「……」

「野良猫を拾って育てた事はありますか? 僕は幼少期にあるんですが、最初は警戒心が強く引っ掻いたり噛んだり威嚇したりと、近づく事もままならなかった。ですが、愛情を注いで育てているうちにその猫は僕だけに懐き、僕だけの猫になった。何処へ行くにも僕について回り、まるで僕に依存しているかの様なその姿に酷く興奮したのを覚えています」

「……何、私も野良猫だって言いたいの」

「いえ、そう言う訳では無いんですがね。でも近しい何かがあるとは思っています。貴女は猫では無く人間です。“教育”をするのに時間がかかる上、決して簡単ではない。それでもいつか僕だけに心を開き、僕だけの猫になって僕に従順になる貴女を想像すると、苦しくなる程にそそられる」

 彼の手が優しく、私の髪を撫でた。

「前にも、似た事を言いましたね。僕は貴女を、僕だけのものにしたい。身も心も、僕だけのものに。貴女の身体に、心に、貴女にとっての“先生”は僕だけだと刻み付けたい」

「……!」

 ――先生。
 その言葉に、長らく存在を頭の隅に追い遣っていたエリオット先生の事を思い出した。心臓が早鐘を打つのを感じながらも、言葉が出てくる事は無く、大人しく口を噤む。

「僕はエリオット先生の様になりたかった。その気持ちは今でも変わりません。でも、貴女に対してはどうだと考えてみた時、先生の様になりたい、というのとは少し違っていた。貴女の居場所になりたい、その気持ちに嘘は無い。しかし、それと同じ位貴女を飼い慣らしたい。僕に依存させる事が、貴女への最大の拘束になると僕は思ってる。そんな僕は異常でしょうか?」

 彼の言葉に、眉を顰める。異常か、異常では無いかの二択であれば、異常であろう。
 しかし何故だか、今の彼を“異常”なんて言葉で括ってしまいたくはなかった。
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