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XXIII 運命が変わる時-I
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セドリックが此処を出ていって、1時間程が経過しただろうか。
残された私はというと、先程の会話を静かに反芻しながら、窓枠に肘を突いて1人秋風に当たっていた。
流れ込む風が、髪とピアスを揺らす。もう10月だと言うのに、随分と温かい風だ。しかし、こんな気候も長くは続かないだろう。あと1週間、2週間程すれば急激に気温が下がり、服装も考えなくてはいけなくなってくる。
――冬は、あまり好きでは無い。
孤児だった頃私は、クリスマスプレゼントを抱え家路を急ぐ幸せそうな人達を尻目に、路地裏で寒さに震えていた。その時の、諦観を含んだ羨望。それを、今でも思い出してしまうからである。
寒さは、体だけでなく心までをも冷やしてしまう。未だに冬を感じると、そういった嫌な過去ばかりを思い出してしまうのだ。故に、今ぐらいの気候が最も丁度良いと言える。
しかし、幾ら温かいと言っても所詮は秋風である。長く当たっていれば肌寒く感じてしまうもので、冷たくなった腕を摩りながら窓を閉めた。
「――まだそこに居たのか」
唐突に背後から聞こえた声に喫驚し、びくりと肩が跳ね上がる。慌てて振り向くと、玄関扉の前にセドリックが立っていた。
一体いつからそこにいたのかと疑問を抱くが、玄関扉を施錠する姿を見て、窓を閉めた音で玄関扉が開かれる音が聞こえなかったのだと解する。早まる鼓動をなんとか抑えながら、「セディこそどこ行ってたの?」と問いを投げかけた。
「……」
彼は、私の問いに答えない。そして何処か気まずそうに、私から顔を背けた。
じわりと滲む様に伝わってくる、不安と羞恥。
先程、彼は街へ出ると言っていた筈だ。街で、何かあったのだろうか。
「なんか様子変だけど、どうしたの?」
再び、彼に問い掛ける。
珍しくソファに座らず、玄関扉の前で立ち尽くしているセドリックが、ああまぁ色々、等と言い淀む。
これは、何かあったに違いない。より彼の心情を探る為にと、大股で彼に近付いた。
そして彼の顔を覗き込み、じっとその瞳を見つめる。
「……な、なんだよ」
「なんだよ、は私の台詞なんだけど」
彼は目一杯私から顔を逸らすだけで、何も言おうとはしない。
しかし、そんな中で唯一彼の心中に浮かび上がったのは、1人の女性の存在。
「……姐さんと、なんかあった?」
「……」
ライリーの存在を口にした瞬間、彼の肩がぴくりと揺れる。図星の様だ。
ライリーは私とセドリックの、昔からの共通の知人である。幼少期には、お互いライリーに色々と世話を掛けた。故に、ライリーの事ではあまり隠し事をして欲しくは無い。
彼と彼女の会話を詮索するのはあまり良い事だとは言えないが、それでもライリーに至っては話が別だ。
――ダン、と大きな音を立て、彼の背後に位置する玄関扉に両手を突く。いや、叩き付けた、の方が正しいだろうか。
私と彼は、サイズだけで測れば身長差はそれなりにあるのだが、こうして近づく分には然程差を感じない。故に、顔を近付けるのは容易い。
「姐さんと、なんかあった?」
目一杯の笑顔を浮かべて、再び同じ問いを口にする。
すると、観念したのか彼が小さく溜息を吐いた。
残された私はというと、先程の会話を静かに反芻しながら、窓枠に肘を突いて1人秋風に当たっていた。
流れ込む風が、髪とピアスを揺らす。もう10月だと言うのに、随分と温かい風だ。しかし、こんな気候も長くは続かないだろう。あと1週間、2週間程すれば急激に気温が下がり、服装も考えなくてはいけなくなってくる。
――冬は、あまり好きでは無い。
孤児だった頃私は、クリスマスプレゼントを抱え家路を急ぐ幸せそうな人達を尻目に、路地裏で寒さに震えていた。その時の、諦観を含んだ羨望。それを、今でも思い出してしまうからである。
寒さは、体だけでなく心までをも冷やしてしまう。未だに冬を感じると、そういった嫌な過去ばかりを思い出してしまうのだ。故に、今ぐらいの気候が最も丁度良いと言える。
しかし、幾ら温かいと言っても所詮は秋風である。長く当たっていれば肌寒く感じてしまうもので、冷たくなった腕を摩りながら窓を閉めた。
「――まだそこに居たのか」
唐突に背後から聞こえた声に喫驚し、びくりと肩が跳ね上がる。慌てて振り向くと、玄関扉の前にセドリックが立っていた。
一体いつからそこにいたのかと疑問を抱くが、玄関扉を施錠する姿を見て、窓を閉めた音で玄関扉が開かれる音が聞こえなかったのだと解する。早まる鼓動をなんとか抑えながら、「セディこそどこ行ってたの?」と問いを投げかけた。
「……」
彼は、私の問いに答えない。そして何処か気まずそうに、私から顔を背けた。
じわりと滲む様に伝わってくる、不安と羞恥。
先程、彼は街へ出ると言っていた筈だ。街で、何かあったのだろうか。
「なんか様子変だけど、どうしたの?」
再び、彼に問い掛ける。
珍しくソファに座らず、玄関扉の前で立ち尽くしているセドリックが、ああまぁ色々、等と言い淀む。
これは、何かあったに違いない。より彼の心情を探る為にと、大股で彼に近付いた。
そして彼の顔を覗き込み、じっとその瞳を見つめる。
「……な、なんだよ」
「なんだよ、は私の台詞なんだけど」
彼は目一杯私から顔を逸らすだけで、何も言おうとはしない。
しかし、そんな中で唯一彼の心中に浮かび上がったのは、1人の女性の存在。
「……姐さんと、なんかあった?」
「……」
ライリーの存在を口にした瞬間、彼の肩がぴくりと揺れる。図星の様だ。
ライリーは私とセドリックの、昔からの共通の知人である。幼少期には、お互いライリーに色々と世話を掛けた。故に、ライリーの事ではあまり隠し事をして欲しくは無い。
彼と彼女の会話を詮索するのはあまり良い事だとは言えないが、それでもライリーに至っては話が別だ。
――ダン、と大きな音を立て、彼の背後に位置する玄関扉に両手を突く。いや、叩き付けた、の方が正しいだろうか。
私と彼は、サイズだけで測れば身長差はそれなりにあるのだが、こうして近づく分には然程差を感じない。故に、顔を近付けるのは容易い。
「姐さんと、なんかあった?」
目一杯の笑顔を浮かべて、再び同じ問いを口にする。
すると、観念したのか彼が小さく溜息を吐いた。
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