18 / 222
VII 追憶-願い- -II
しおりを挟むそれから、約1時間と10分程かけてマリアの住む街へとやって来た。子供故に疲労はそれ程感じないが、喉はカラカラに乾いている。何処かで水を調達出来ないか、と思いながら街を歩いていると、マリアの姿を遠目に見つけた。
マリアは、昨日と同じベンチに座っていた。相変わらず頭からスカーフをかぶり、此処からでは顔が良く見えない。
「マリアちゃん」
彼女に近付き声を掛けると、彼女の肩がびくりと小さく震えた。何か物思いに耽っていた様だ。彼女が慌てた様子で、スカーフが頭から落ちない様押さえながら此方に顔を向けた。
「あら、マーシャ。来てくれたのね」
顔の痣は、昨日よりも少し増えている様に思える。顔色も、悪いままだ。
しかし私が居るからか、それとも今日は普段より天気が良いからか、彼女の心は昨日よりほんの少しだけ晴れている様に感じた。相変わらず彼女は心を病んでいる様だが、それでも昨日程では無く安堵に胸を撫で下ろした。
――私は天使なのだから、ちゃんと救わないと。
そう自身に言い聞かせ、彼女の隣に腰を掛けた。
「マーシャ、今日は少し私の話をしてもいいかしら?」
彼女の言葉に、昨日は私への質問攻めだった事を思い出す。
「いいよ。どんな話をしてくれるのか楽しみだな」
笑顔で頷き、彼女に話をする様促す。
するとマリアが嬉しそうにぱっと顔を輝かせ、えっと、あのね、等と言い淀みながらも話し始めた。
まるで、小さな子供の様だ。そう思うが、彼女はまだ20代前後で幼さの残る顔をしている。それ程の年齢であれば、子供っぽい一面があるのも当然か、と心の内で納得した。
「娘の腕と私の胸に、お揃いのタトゥーを彫って貰ったの。それが安定して、やっと見れる様になったのよ」
「タトゥー?」
タトゥーと言えば、王族や貴族の人間がファッションアイテムの1つとして身体の一部に思い思いの絵柄を彫っている印象がある。美しい絵柄を求めて、わざわざ国外へと足を運ぶ者も居るのだとか。
最近では中流階級の人間にも支持され始めていると聞いたが、思い返してみれば彼女は中流階級の人間の1人だ。まだこの目では見た事のない物に好奇心が沸き上がり、思わず「見て見たいな」と言葉を漏らした。
そんな私の言葉に、マリアがふふ、と嬉しそうに微笑み、頭から被っていたストールを肩にずらした。
「此処は人通りが少ないから、少しだけなら大丈夫かしら」
余程、そのタトゥーを気に入っているのだろう。誰かに見せたかったのかもしれない。
私の言葉に戸惑う事無く、胸元に結んでいたリボンを手早く解く。
そしてブラウスのボタンを3つ、4つと外していき、胸元を開けさせた。
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
淫らな蜜に狂わされ
歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。
全体的に性的表現・性行為あり。
他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。
全3話完結済みです。
隠れドS上司をうっかり襲ったら、独占愛で縛られました
加地アヤメ
恋愛
商品企画部で働く三十歳の春陽は、周囲の怒涛の結婚ラッシュに財布と心を痛める日々。結婚相手どころか何年も恋人すらいない自分は、このまま一生独り身かも――と盛大に凹んでいたある日、酔った勢いでクールな上司・千木良を押し倒してしまった!? 幸か不幸か何も覚えていない春陽に、全てなかったことにしてくれた千木良。だけど、不意打ちのように甘やかしてくる彼の思わせぶりな言動に、どうしようもなく心と体が疼いてしまい……。「どうやら私は、かなり独占欲が強い、嫉妬深い男のようだよ」クールな隠れドS上司をうっかりその気にさせてしまったアラサー女子の、甘すぎる受難!
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる