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第2章

ある一つの提案

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「は、早く包帯を返しやがれ!」

ロジェが私に怒鳴りつける。
顔を真っ赤にする彼は、何だか可愛くて更にいじめたくなってしまう。

別にSというわけでも無いのだが。

「嫌です。そんなことよりも、ちゃんと反省してください。」

ロジェが怒りの表情を露わにする。
そして、隠していた綺麗な顔を完璧に出した。

「か、えせ!」

グワッと手を伸ばし、彼は包帯を奪おうとする。

「ダメです。」

私は、「完璧な盾パーフェクト・ガード」で防御する。
ロジェは悔しそうな、そして怒りに満ちた顔で私を見る。

「病人は静かに寝ていてください。」

私は「完璧な盾」を解き、魔力弾をロジェに向かって打つ。

魔力弾は、驚かせるなど小さな威力しかないので戦闘には使えない。
しかし、病人には十分な威力でロジェはグラッと後ろに倒れる。

「ぐ、うぅ、俺の怪我が治ったらてめぇなんかすぐ殺してやるからな。」
「すぐに殺されるほど、魔王の娘の名は安くはありませんよ。」

ロジェと視線が交差する。
その眼差しはとても鋭い、しかしそれに屈服するほど私は弱くない。

「あー、もういいよ。
 別にこんな良くもない顔見られたって・・・ちッ」

自分の顔を良くないと思っているとは。
むしろ逆だ、美形だと伝えてやりたい。

伝えてやりたいけれど、凄くめんどくさそうなのでやめとく。

「あーあ、超お腹空いたんだけどー。あんた何か持ってないわけー?」

ぐーっとロジェは大きく伸びをする。

リュリエスが治療して良くなったとは言えど、傷が癒えたわけではない。

死にかけていたわけだし、今だって相当痛みがあるハズだ。
しかし、彼の顔に苦痛の表情は全くない。

彼は強い。
しかしそれ以上にディズが尋常に強かった、それだけの話。

だから、なぜだろうか?
なぜー・・・

「なぜ、人のためにその力を使わないの?」
「はぁ?」

彼は中途半端な半笑いを浮かべ、呆けた顔になる。
そして、口を開く。

「暗殺だって、依頼した人のためになってる。」

確かに、確かに依頼した人のためにはなっている。

しかし、暗殺は決して良いものではない。騎士のようなものが良いなんて思っていない。

騎士だって人を殺す。

しかし、騎士には暗殺者とは決定的に違うモノがある。
暗殺は人をシアワセにしない。

依頼した人だって、シアワセにならない。

そうだ。

「暗殺は、人をシアワセにしない。」

気づいたら言葉が口から出ていた。
これは初めてではない、何度もある。

言おうと思っていないことがつい出てしまうのだ。
私の悪い癖かもしれない。

「じゃあ、何?騎士は人をシアワセにするって?俺たちとやってることは何も変わらないじゃねぇか!命令されて、殺して、報酬もらって・・・『暗殺』は悪くて『戦争』は良いって?」

ロジェは床をガンッとたたく。

不意を突かれたことや、音が大きかったため不覚にも一瞬ビクッとしてしまう。

「ふざけんじゃねぇよ!そんなん、ただの差別じゃねぇか!」
「同じことをしていても、あなた達と騎士たちじゃ背負ってるモノが全く違うわ。騎士達には、守るモノがある。
 国の民を守るために、自分の大切なものを守るために戦っている。それは悪いこと?」

ロジェは、うつむいて自分の服をぎゅっと掴み口を噤む。
私はロジェの前に歩み寄り、同じ目線にするためにしゃがみこんだ。

「騎士達が戦っているから、今、国の民はシアワセに暮らしています。今も生きています。この世界で生きているんです。依頼をした人はどうですか?
 確かにその時に恨んでいた人は死にますが、その後は?また誰かを恨みます、誰かに恨まれます。誰かを、殺します。
そこにシアワセなんて生まれません。」

「人を呪わば穴二つ、ですよ。」

ロジェはバッと顔をあげる。

「じゃあ、なんだよ、俺が恨まれてるって言いたいのかよ!」
「別にそんなこと言ってません。例え話ってやつですよ。」
「なんだよ、それ。」

ロジェは立ちあがりベットにドサッと座る。
そして、はぁーと大きくため息をつく。

「最悪、ちょー厄日。」

そして、一言そう呟いた。

私はあることを一つ思いつき、バッと立ち上がる。

「一つ、提案があります。」
「・・・なに?」
「守る者を作れば良いんですよ。良いことをすれば悪いことが消えます。」

ロジェは頭に『?』マークを浮かべる。
私はニッコリと笑いかけ『提案』を口にする。

「そこで、私の専属騎士になってみてはいかがですか?」
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