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第2章

罪人には罰を sideディズ

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ーー暗殺者と対峙したとき
         ディズは何を思っていたのかーー


異変にはすぐに気づいた。

今日は、何度も同じような服装の者を見る。だから僕は警戒していた。

そいつらは、アルを監禁する理由でもあり、ここ最近ずっと警戒していた奴らでもあった。

アルとデートをした日、僕はそいつらを何度も見かけた。

暗い色の服を着た、どっから見ても怪しい奴ら。
基本的に一般開放している城には誰でも入れるが、もう少し警戒というものをしても良いと思うんだ、僕は。

中庭に煙が蔓延したことは僕の部屋からでも見えて、アルがいたことはもっと前から知っていた。

あえて行かなかったんだ。

奴らの出方を窺いたかったのもある。
だけどそれ以上に、その行為によってアルが危険な目にあったらという不安もあった。

ジェイドがしっかりと働いてくれれば何の心配もないのだが。

煙が蔓延した瞬間に、僕は部屋を出た。
もう少し早く行動していればと後悔すらした。

だが、城の中を駆け回っている中でアルを見かけることが出来た。

本当に嬉しかった。
無事でいてくれたことに安心した。

不安が消えた。

それと同時に、アルを危険にさらした奴らに対してとても怒りを覚えた。
僕のこの手で罰を下してやろうと思った。

とりあえず、アルのあとを追ってみる。
アルは人気の少ないところで止まり、転移魔法を使った。

きっと魔王城に帰ったのだろう。

これで一安心だ。魔王城にいれば危険が迫ることは無いに等しい。
なんたって、あの魔王がいるのだ。

正直言って、僕でもあの魔王は怖いと思う。だから、魔王の前で僕は下手なことが出来ない。僕だって死ぬのは嫌だよ、流石に。

アルをくださいって言いに行く時はちゃんと死を覚悟して行かなくちゃ。

あぁ、話がそれた。

今はそれどころじゃないね。
奴らを---暗殺者達を見つけないと。

僕は、また城の中を探す。
探索サーチ」の魔法をかけ、対象物を確認する。

この魔法をかけた時点での場所の確認なので、移動されては意味がないが・・・まぁ、無いよりはあったほうがいいだろう。

対象物の位置へと走っていく。
息切れ?そんなもの、してる暇があると思う?

角を曲がると、奴らがいた。
なんて絶好のタイミングだろう、と思った。

なるほど、僕には幸運の女神がついているようだね。

「見つけた。僕から逃げられるなんて思わないでね?」

僕は、腰の剣を抜いて言う。

「ふん、逃げる?姿を見られて逃げ切れるなんて俺は思ってねぇよ。」

2人のうちの1人の男が言う。

顔は黒い包帯がぐるぐると巻かれていてわからないが、目元からしてそれなりに美形だろう。

包帯からは銀色の髪の毛が見える。
体も黒の衣装で暗い印象しか残らない。

もう一人はローブをしていて顔は出ている。そこまでの美形ではないが、別にブサイクでもないという感じ。

だが、銀髪の男と並ぶとやはり見栄えがなく地味だ。

まぁ、そういうやつは世界にたくさんいるだろうけどね。

「そっか、なら逆に好都合かな?」
「ははっ、俺は本職だぜ?良くそんな自身満々に言えるな。」

この男、結構むかつくなぁ。
僕、こいつ大嫌いかもしれない。

まぁ、いいや。
僕はこの男のことを調べあげてるわけだから、知ってることは多いし、聞くだけ聞いてポイしちゃえばいい。

「僕は君のこと知ってる。」
「ふん、そりゃどーも。俺って人気者?」

銀髪の男はククッと笑う。

ローブの男は、全く動かない。
動かない、それがまた怪しく感じる。

「ロジェ・グレイネス。北の国ログローブ出身。幼い頃から暗殺をしてきて、その道ではとても有名。
 少し探ればすぐ君のことなんか出るんだよ。今までの功績が仇になったね?」

ロジェは、一瞬真顔になったが
すぐに笑い始める。

おなかを抱え、爆笑。

「あっははははは、おっかしぃー!
 別にそんなこと知られたって全ッ然痛くも痒くも無いんだけど!?
 そんなに知りたいんだったら俺の強みから弱み、隅から隅まで教えてあげるけど?」

どこまで自信過剰なんだ、こいつ。
ホントにイライラする。ここで今すぐ斬ってしまいたい。

だが、ダメだ。
ちゃんと理性を保て。

「ま、そんなの意味ないけど?
 だって、あんたは今すぐ死んじゃうしッ!!!」

その声とともにローブの男が強力な魔法を放ってくる。
避けきれない。

並みのものじゃ打てないような魔法。

どうにかして、最悪なシナリオだけは避けなければ。

どうしたら・・・。

「そのあとは、あの娘!
 あんたと同じように、ぐちゃぐちゃにしてあげる。形も残らないくらいにね?」

ぶちっ。

僕の中の何かが切れる音がした。
避けきれない、なら壊せばいい。

僕は魔法に突っ込んでいき、そして剣を振るう。
それは大きな渦となって魔法を飲み込んだ。

「おい!話が違うぞ!」

ローブの男が声をあげる。
けっ、接近戦じゃ全く使えないタイプ。

「あぁ、もう。めんどくせぇ、な!」

ロジェが短剣を手にして俺に向かってくる。

がつん!

剣と剣がぶつかりあう。
でも、僕は負けない。

だって・・・

「アルを傷つけるなんて、僕は許さないよ。」

僕の中の魔力が増幅していくのがわかる。
大きくなって、力に変わる。

「は?何。意味ワカンナイ?」

急な変化にロジェは混乱する。
こんなハズじゃなかった、そう言っているようだ。

本職だか何だかわかんないけど、僕だってキミと同じくらい・・・いや、それ以上に人を殺してきた。

キミに劣るなんてこと、無いんだよ。

僕は、ブンッと剣を振る。

ギンッと音がしてロジェの手にあった短剣が飛んだ。
ソレは、ロジェの後方の地面に突き刺さる。

僕は間髪入れずに更に剣を振り、ロジェの腕を斬った。

「へ?」

ありえない、そんな表情だった。

片腕も飛ぶ。
ロジェはそのままよろけて壁に背をつきズルッと座り込んだ。

片腕がなくなったのだ。
出血量も多いし、動くことなど出来ないだろう。

しかし、悲鳴もあげず痛がる素振りもない。
ただ、自分が押し負けたことに対しての驚きだけがあるようだ。

「ひぃっ!」

ローブの男がロジェを見て、尻もちをつく。根性の無い奴だ。

良く暗殺者なんて出来たな。

俺は、ローブの男に近づいていく。
そういえば、こいつの名前ってなんだったんだろうな。

「お願いだ、やめてくれ!」

ローブの男が僕から後ずさる。
あぁ、イライラする。

一人くらい、まぁいっか?

僕は、剣を男へと真っ直ぐに振る。

「ぐぁあああああっ!」

悲鳴をあげて、腹のあたりから多量の血を流す。必死に息をしているのが息遣いで分かった。

視界の隅にジェイドが見える。
・・・まぁ、いいや。

ローブの男は、がくんと首の力を無くす。

僕はソレを確認してロジェの方を見た。

「君もこうなりたくないなら、さっさと言いなよ。」

ロジェは、正気を取り戻していた。
僕の言葉に、彼は笑みを浮かべる。

「はは、俺は残念ながら秘密は守る主義でね。他の奴に聞いたって一緒だよ?」

ロジェは、ふんっと笑った。

その笑いは何なのか、僕にはわからない。

「ロジェ君?言った方が楽になれると思うんだ。」
「言ったらすぐ殺すんだろ?だったら、言い損だっつの。」

ああ言えば、こう言う。
ホントにむかつく奴だな。

別にこいつの他にもいるんだから、そいつらに聞けばいいや。

「じゃあ、今すぐ死んじゃえば?」

僕は、スッと静かに剣を振り上げる。

そうすると、ジェイドが走ってきて僕の腕を掴んだ。

「ディズ!こいつには聞くべきことがたくさんある!殺したい気持ちを抑えるんだ!」

ジェイドが声をあげる。

「くっ、止めないでよ、ジェイド。
 こいつは、僕のアルを傷つけようとした、殺そうとしたんだよ?」

僕は、ギッとジェイドを見る。
ジェイドは一瞬ビクッとするが、すぐに表情を戻した。

「良いか?ディズ。こいつらは、誰かに雇われたんだぞ!こいつらじゃない、雇った奴が殺したいと思ったんだ。
 そいつも見つけないといけないと思わないか?話を聞いた後に殺せばいいと思わないか?」

・・・確かにそうだ。
でも、そんなことずっとずっと思っていた。

そうだ、僕がすべきなのは首謀者を殺すこと。聞き出す相手は多いほうが都合が良い。

僕は、剣を持った手を静かに下ろす。

「そーだね・・・君のご主人様を殺すべきかもね。僕の、この、手で。
 覚悟しててね?僕の尋問は、きっついからね?」

僕は、ロジェにニコッと笑いかける。
そして、剣を腰の鞘におさめる。

僕は、歩き出した。
その場を離れるためだ。

アルを傷つける人は誰だって許さない。
僕の大事な人は、何としてでも守る。

さて、明日の尋問の為に良い魔導士を見つけて来なくちゃ。
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