公爵様、地味で気弱な私ですが愛してくれますか?

みるくコーヒー

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gninetsiL 話4第

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 ティミリアと食事をした日から、ジェラルはずっと怒ったままだ。
 仕事はしっかりとこなすが俺と最低限の会話以外しない。

 ティミリアとも、あれ以来一度も会っていない。何度か見かけはしたが、俺の姿を一瞬でも見ると彼女はピュンッと逃げていった。声をかける暇すらなかった。

 一体何が悪かったのか、首を捻るが解決はしなかった。
 とにかく時間が解決するだろうと特にアクションは起こさずにそのままにしている。

 やっと仕事がひと通り終わり、書類から目を離す。
 何となく執務室の窓から外を見てみると、中庭でティミリアとジェラルが仲睦まじい様子で話しながら園芸を楽しんでいた。

 もしも彼女がジェラルを恋人に選んだとしても、俺は何も言う資格はない。俺がそれを認めたのだから。

 ただその場合、あの輪に俺は入れないのだと思うと少しだけ寂しかった。

 それはジェラルが従者でありながらも数少ない友人だからか、ティミリアがたった一人の俺の家族となったからか、それともそのどちらもか。

 コンコン、執務室の扉がノックされた。

「入れ。」

 俺が入室を許可すると入って来たのはレミーエだった。

「旦那さま、紅茶でもどうぞ。」
「……ジェラルに言われたか。」

 レミーエはティミリアに付いている使用人だ。それが今ここにいてジェラルがティミリアに付いているということは……。

「ええ、奥さまのガーデニングを手伝うから代わりに紅茶をお持ちしてくれ、と。」
「そうか。」

 俺はレミーエの淹れてくれた紅茶を一口飲み、それから再び外へ目を向ける。

「奥さまのことが気にかかりますか?」
「……そういうわけではないが。」

 ただ、食事の時に向けられた笑顔が、また見れる日は来るのだろうかと不安になる。

 俺の両親はあまり仲が良くはなかった。いつも不機嫌そうな母と、温和で怒らない父。ただ、一度父がとても怒った時があったっけ。それはいつだっただろう。

 俺は、ティミリアと結婚する時、両親のようにはならないように気をつけようと思っていた。
 しかし、結局今はどうだ? 彼女には避けられ、怖がられている。

 夕食の時に、明確なコミュニケーション不足を感じた。だから、コミュニケーションを取ろうとしているが、それすらも避けられていてはどうしようもない。

「彼女は日頃何をしているのだ。」

 俺はレミーエに問いかける。

「奥さまは、ガーデニングが大好きで毎日花をやり美しい花が咲くことを楽しみにしておられます。そのほかには、シェフと共にお菓子を作ったり、本を読んだりしながら過ごしておられます。」

 花に料理、本。
 淑女らしいような、そうではないような。世の貴族女性はガーデニングや菓子作りをするものなのだろうか。

 よく分からないが、彼女がそれを好きだというのなら自由にやれば良いと思う。

「何かプレゼントでもされたら如何ですか? 奥さま、喜ばれると思いますよ。」
「プレゼント、か。」

 レミーエの提案に俺はうーんと考え込む。プレゼントといっても一体何をあげれば良いのか。

 高価な宝石やドレス、アクセサリーを贈れば喜ぶだろうか。そうしたらまた、怖がらずに話してくれるようになるのだろうか。

「考えておく。」

 俺は一言そう告げて、再び紅茶を飲みながら窓の外を眺めた。
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