異世界転生した俺はまったりスローライフを送りたいのだが案外修羅場だらけであり

D・D

文字の大きさ
上 下
13 / 27

13.新しい経験

しおりを挟む
その場に現れた見知らぬ登場人物。
俺と、レイネルとそしてやけにテンションが高い猫耳幼女。

あれ?ていうか?

「さっきのおばあさんは?え?どこ行ったの?」

キョロキョロと見回すが、窮地の俺に救いの手を差し伸べた老婆の姿が見当たらない。

なんで?さっきまでここにいたのに?

「にゃっははー。細けぇことは気にすんなー。若えの。記憶喪失はお前のことだな?」

俺の言葉に軽く応じるのは、むっフゥンと小さな胸を張り、威勢を張る猫耳幼女だ。

「若えのって、明らかに俺の方が年上だろ…。」

「それもそうだなー。にゃっははー。でもそうじゃないかもしれないぞー。」

嘆息しながら呟くと、幼女は白い歯を見せて笑いながら、俺に告げる。

「そうじゃないってなんだよ。」

「獣人族は長生きなんだぞー。人間の程度ではかられても違うこともあるんだなー。にゃっははー!」

そう説明しながら俺に笑いかける幼女。

人間程度ではかれないねぇ。つっても見た目通り幼女にしか見えな…

「…まさかっ!」

俺は思わず口を走らせる。
猫耳で幼女という部類。そして、ここは異世界だ。
それはつまり、俺の元の世界の常識は覆されることもあるということだ。
つまり、この目の前にいる幼女には猫耳幼女以外にまだ他の分類に属される可能性があると俺はみた。まだこの子にはキャラ要素が含まれていると、
そして、それは

ロリ、ババアなのか?

頭の中で結論を出しふと前の幼女を見る。

彼女は、こちらを見ながら首を傾げて笑っていた。
目をパチクリとさせた純粋な笑みだ。

そんな様子の幼女(仮)に俺は疑心を晴らすため恐る恐る問いを投げかける。

「なあ…、お、お嬢さん。君の年齢はいくつだい?」

なんだか、ある種の誘拐犯のセリフみたいじゃないかなって自分で思ってしまったが。

しかし、そんな俺の胸中などいざ知らず猫耳幼女は鼻をフフンと鳴らすと、

「にゃっはー。いやはや、察してしまわれたか。でも、仕方ないことなのだ。このわちの熟達したカリスマ性にあてられてはそう思うのも無理はない。」

「なあっ!やっぱ見てくれ通りの年齢じゃないってことか…」

「いかにも!にゃっははー。長生きはしてみるもんだなー。」

「その属性はこの世界に顕在か。しかし新鮮な感覚だ。」

「おお?若えの。わちのような者と会うのは初めてかい?それなら会った甲斐があるってもんだなー。」

「あぁ、初めてで驚きが隠せねぇよ。たくっ、転生してみるもんだぜ。」

「にゃっははー。わちとしても長生きしてみるもんだって耽ってるんだなー」

俺と幼女との談笑。
驚嘆と新鮮な感覚に俺は慄きを隠せない。
目の前の見た目幼女は腰に手を添えながら獣らしい声音で笑っている。そんな会話のひと時。

しかし、そこに、何気ない言葉が加えられて、

「…………、長生きってコラル先生はまだ9歳じゃないですか。」

「にぁうっ⁈」

ため息と共にそう告げるのはこの場を眺めていたレイネルだ。
その言葉を聞くと同時に獣らしい声音を上げる幼女。
おぉ、今のは近所の猫っぽい鳴き声だ。そうかそうか猫耳幼女コラル先生…………え?てか、9歳?

「レイネルぅ。何を言い出すかと思えば、なんでバラすんだにゃー。面白くない。」

不満気な表情を向けながら幼女はレイネルに対して文句を垂れる。
ふりふりしていた尻尾が今はたるんと床に落ちていた。

「あなたのそのやりとりが通じるわけないじゃないですか。」

「いやぁ、今回は惜しかったぞ。結構いいとこまで行ってた気がするぞ。にゃははー。」

「それが否定できないのが難点なんですけどね!ちょっと、あんた、なにちっさい女の子に言いくるめられようとされてんのよ。間抜け。」

「いやあ、お兄さん、面白い人だなー。久しぶりにわちは楽しかった気がしたぞー。にゃっははー。」

強目な声音で口弁を垂れるレイネルと高笑いする猫耳幼女。

え、てか9歳?

「何?実は見た目に反した年齢で100歳でした、とかそんなオチじゃないの?」

「長生きの獣人族でもさすがに100歳は聞かないなー。お兄さん、わちを100歳だと思ってたのは面白すぎるぞー。にゃっははー。」

「そんなことあるわけないでしょ。どうなってんのよあんたの中の常識は。」

いやいや、異世界転生もののアニメとかでは取り入れられた設定でしたよ?わりかし。

「てゆうか、なんで長く生きてるなんて意味わからんこと言ったんだよ。」

このコラルとかいう幼女の騙し言葉のせいで俺はあんなにも考察してしまったではないか。

さっきの俺の深い推察返してよ。

「にゃっはー。子供というものは大人に憧れるものなのだ。」

「だからって言いくるめるかよ、普通。」

「普通の人だったら、言いくるめられるわけないでしょ。あんたくらいよ、騙されかけたの。」

え、まじ、そうなの?
いや、でも俺の世界ではいたんだよ、そういう人が、二次元だけど。だから、仕方ないとこあるじゃん。

「まあ、いいやー。なんか楽しかったしなー。とりあえず、お兄さん、わちについてきてなー。にゃっははー。」

そう言うと、コラルという名の猫耳は颯爽と歩いていく。
歩く度に猫耳と尻尾が揺れているのが見てとれた。

その猫耳はその尻尾はふさふさして触り心地が良さそうだ。

あれ?そういや?

「そういや、俺を救ってくれたばあさんは?なんかあの子の年の差だかなんだかで忘れちゃってたけど、え?どこ行ったの?」

「どこってそこにいるじゃない。」

レイネルはそう言い、指を差す。しかし、その指先が差す対象は尻尾をふりふりとしながら歩くコラルであり、

「……?どういうこと?」

キョトン顔で俺は質問する。
それを聞くやレイネルは「あぁもう!」と言いながら少し頭を掻くと、

「あの子が魔法を使っていたのよ。あんたが見たおばあさんってのはあの子が使ってた魔法の効力ってこと。」

「え?……魔法?」

「そ。一定の範囲にいる相手の視覚を誤認させる幻影魔法の一種よ。最初っからおばあさんなんてここにはいないわ。」

レイネルの発言に対し、「そう、なのか」と俺は虚じみてと言葉を返す。

しかし、胸中は驚きと興奮で埋め尽くされていた。
それは、男子が胸を膨らませ、ワクワクが止まらなくなる事柄だから。

魔法。魔法か。やっぱ魔法ってこの世界にあるんだ。すげえ。初めて見た。え、てか幻影魔法ってやつ?よくわかんないけど、全然気づかなかった。
でも……やばい俺、魔法に出くわせたんだ。テンション上がる。

「ちなみに、あの子はもう一つ魔法を使っていたのよ。」

「え?」

興奮冷めやらぬ俺だったがレイネルの言葉に耳を傾けてしまう。

もう一つの、魔法?

「あの三人がやけに引き際が良いって思わなかった?」

レイネルは俺に質問を投げかける。
ここで言う三人とは、女子トイレ騒動のメラ、ルネル、ミリイの三人のことだろう。

「あ、ああ。それは思った。ちょっとうまくいきすぎだと思ってたんだ。」

「あの時もコラル先生が魔法を発動させていたのよ。あの三人に暗示をかけてあそこから去るように仕向けたのよ。それは思念魔法の一種。」

思念魔法?暗示?
よくわからないけど、確かにあの場面、言葉のやりとりに何か違和感を覚えたのは確かだ。
それはつまり、そこに魔法の影響が加わっていたということで、

「そう…だったのか。」

俺は自分の中で納得する。

あの時、三人が何も言い返さなかったのは、コラルという幼女が魔法を駆使していたから。

あのことの成り行きの違和感はそれか。

あれ?

しかし、俺は今の説明に思うところが少しあった。

待てよ。幻影魔法と思念魔法?

「魔法って二つ同時に使えるものなの?」

レイネルの説明を聞き、俺は疑問が芽生えてしまう。
なぜなら、なんとなく魔法というものは一回に一属性みたいに、重複して使えないと思っていたのだ。
例えば、炎魔法と水魔法を一緒に打てる気はしないというように。あくまでも、俺の知識だが。

しかし、レイネルはそんな俺の言葉にあまりに否定の意は示さなくて。

「…厳密には、使えない。一度の発動に使える魔法は一つだけ。」

「え、でも。さっきは……」

「でも、それは常人の話。世の中には熟練した魔法の使い手はいる。そのレベルの人ならば二つの魔法を同時発動なんてたやすいと聞くわ。」

レイネルの口にする言葉。
それを聞き、俺は驚愕を表に出してしまう。その驚きの対象は尻尾をふりふりしている、猫耳姿の幼女であり、

「え、ええと…その、前を歩いてる、コラル先生って、何者?」

「コラル先生は9歳にして、天才と呼ばれた女の子。この国の中でも群を抜いて治癒魔法の使い手なのよ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【改稿版】休憩スキルで異世界無双!チートを得た俺は異世界で無双し、王女と魔女を嫁にする。

ゆう
ファンタジー
剣と魔法の異世界に転生したクリス・レガード。 剣聖を輩出したことのあるレガード家において剣術スキルは必要不可欠だが12歳の儀式で手に入れたスキルは【休憩】だった。 しかしこのスキル、想像していた以上にチートだ。 休憩を使いスキルを強化、更に新しいスキルを獲得できてしまう… そして強敵と相対する中、クリスは伝説のスキルである覇王を取得する。 ルミナス初代国王が有したスキルである覇王。 その覇王発現は王国の長い歴史の中で悲願だった。 それ以降、クリスを取り巻く環境は目まぐるしく変化していく…… ※アルファポリスに投稿した作品の改稿版です。 ホットランキング最高位2位でした。 カクヨムにも別シナリオで掲載。

能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?

火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…? 24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

魔境へ追放された公爵令息のチート領地開拓 〜動く屋敷でもふもふ達とスローライフ!〜

西園寺わかば🌱
ファンタジー
公爵家に生まれたエリクは転生者である。 4歳の頃、前世の記憶が戻って以降、知識無双していた彼は気づいたら不自由極まりない生活を送るようになっていた。 そんな彼はある日、追放される。 「よっし。やっと追放だ。」 自由を手に入れたぶっ飛んび少年エリクが、ドラゴンやフェンリルたちと気ままに旅先を決めるという物語。 - この話はフィクションです。 - カクヨム様でも連載しています。

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~

雪月夜狐
ファンタジー
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。 辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。 しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。 他作品の詳細はこちら: 『転生特典:錬金術師スキルを習得しました!』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/906915890】 『テイマーのんびり生活!スライムと始めるVRMMOスローライフ』 【https://www.alphapolis.co.jp/novel/297545791/515916186】

攫われた転生王子は下町でスローライフを満喫中!?

伽羅
ファンタジー
 転生したのに、どうやら捨てられたらしい。しかも気がついたら籠に入れられ川に流されている。  このままじゃ死んじゃう!っと思ったら運良く拾われて下町でスローライフを満喫中。  自分が王子と知らないまま、色々ともの作りをしながら新しい人生を楽しく生きている…。 そんな主人公や王宮を取り巻く不穏な空気とは…。 このまま下町でスローライフを送れるのか?

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

処理中です...