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12.助太刀してくれた?
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「なんだ?貴様。まだ何か申すことがあるのか?いやはや、しかし、今さらそれは無意味な行為かと思うぞ。貴様の処罰は確定した。」
冷たい目つきを浮かべながらメラは俺を見下す。
その瞳で睨めつけられて身震いしそうになるが俺はすんでのところで耐える。
どうこう言ってられないのだ。
反撃しなければ未来はない!
「無意味なわけあるかぁ!俺の言うこと全部聞く耳持たずに決めやがって。こんな判決納得できるわけあるかぁ!」
タンッと立ち上がり猛反発。
怯んじゃだめだ。強気でいけ!
臆するな、俺。怖気づくな、俺。
自分の意見を貫き通すんだ。
さもなければ尋問官の餌にされのは目に見えている。
それだけはいやだ。絶対に嫌だ。
「聞く耳持たないなどと言われても、貴様はそもそも語らないではないか。罪を犯したかと問われ、黙り込む。それはつまり、自分に非があると認めているようなものではないか?」
「メラちゃん、メラちゃん。やましいことをして暴かれるってのは男の子にとって一生の恥みたいなものだよ。喋らないのも仕方ないよ。」
メラの言葉に対しアシストのように告げ口をするルネル。
俺はジト目でルネルに対し警戒を強める。
確定だ。一番厄介なのこの人だ。
このルネルって人の口出しで俺の状況が不利になっていっている気がする。
「なるほどルネルの言う通りだな。そして貴様には罪があるのは確か。やはり、私がここで斬ってしまおうか。」
「メラちゃん、…斬るの…駄目。」
「ふむ、そうだな。ミリイ。自制しておるよ。」
「斬るなぁ!そして、俺を処罰対象から外せ!俺は自分からこっちのトイレに入ったわけじゃねぇ!」
まあ、入った瞬間「女子トイレってこんななんだ」って感じに興味心がそそられて、鼻がちょっぴりピクついたってのはあるが、
…………………ちがぁう!今はそんなの関係ねぇ!
叫び声で反抗の意思を示し、無実を主張。
しかし、メラという女性は呆れたように嘆息すると、
「この期に及んで何を言い出すのだ貴様は。見苦しいぞ。」
「言っただろうが!間違えたって!俺が間違えたことも事実だし、下心がないってのも事実だ。」
「貴様…、さすがにそれはありえないだろう。」
一瞬、目を見開いたかと思うと肩をすくめてこちらに狐疑の瞳を向けるメラ。
ありえないってなんですか。その、もうちょっと、少しは考えてもいいじゃないですか。なにか、その、ね?どうしようもない理由があるとかなんとか…
「間違えたってどういう事なんですかあ?私、それが知りたいですねえ。」
すると、メラの鋭い声音とは打って変わって高らかな声音が投げかけられる。
唇に指を添えながら、ニコニコ笑顔で聞いてくるルネルだ。
微笑みながら情け無用で弱みの根幹である部分を聞いてくる。その直球の物言いはこちらとしてはやりづらい。
くっそお。この人、俺の立場が危うくなっていくのを楽しんでねえか?
めっちゃ笑ってるけど聞いてくることが弱みの核心をつくことばっかだ。こっちはそのせいで口籠ってるっていうのによ。
いい性格してやがる。このルネルって野郎。
「いや、…間違えたもんは間違えたんだから、それは仕方ないだろう。」
「いまだに、そんなことを申すのか貴様は。見苦しい。見苦しさ極まりないぞ。」
「女の子はそれで納得しないですよう。」
俺の不十分な物言いに圧をかけて言い返すメラとルネル。
俺を問い詰める、はたまた追い詰める衛兵女性二人組。
一人は思いっきり怒り顔で、一人はとびっきりの笑顔で俺を見下してくる。(俺の方が背は少し高いはずなのに二人は俺を見下しているという表現がここではとても適切だった。なんで?)
やばぁい。なんとかこの場を切り抜ける案がないのか試行錯誤するけど、なんだか脳が空回りしてまともな考えが浮かばない。
まずい。なんとか言わないと。このままじゃ、尋問官の餌食にっ。
「なっにっ、やってんのよ!」
ふと、俺が胸中で悶絶していると後ろから声がかけられた。
パッと振り向くとそこには金髪を後ろで結いつけた女性が腰に手を当てて突っ立っていて。
あ、えっと、レイ、レイ…、レイなんとかさんじゃん。あれ?名前なんだっけ?
「おっ、レイネル。」
「あぁ~、レイネルちゃあん。」
「レイ…ネル…ちゃん。」
あぁ、そうそう。レイネルだ、レイネル。思い出した。思い出した。三人のおかげで思い出せた。
「何やってんのよ。なんなのよ、この状況は。」
それぞれ三人の呼び声に軽く会釈で応じると、レイネルは同じ疑問を投げかける。
いやぁ、もう大変だったんよ。レイネルさん。この三人とのやりとりは。
「私たちが…トイレに…入ろうとして、」
「扉を開けようとしたんですよぉ。」
「そしたら、此奴が素知らぬ顔で扉を開けて出てきてな。たった今、罪を認めさせようとしておるところだ。」
状況の転換にひとまず安堵した俺。
しかし、三人はそんな俺などそっちのけでレイネルの問いに答える。それはもう、息ぴったりかとでも言うように。
「ちょっとぉ⁈待ってぇ⁈何、言っちゃってんの⁈」
「何って、ここであったことそのまんまだが?何か違うことでもあるのか?」
目をパチクリ開けながら、俺に向かって言うメラ。
その言葉に、捏造しただとか虚言だとかはないという風に。
いや、違わないんでしょうよ。あんたたちにとっては違わないんだろうけど、その言い方は駄目よ!
「………あんた」
低い声音が俺に告げられる。声音をした方を向くと、レイネルがゴミを見るような目でこちらを見ていた。
「おおい!ちょっと待て、レイネル。これにはちゃんと理由があるんだ!」
「うるさいわよ。社会の底辺。」
蔑むような目つきで俺を黙らせるレイネル。
なにあなた、前世、ライオンか何かなの?
その目線、百獣の王みたいだよ。
「ん?なんだレイネル。そやつの知り合いか?」
「やめてよ、メラ。知り合いだなんて甚だしい。ちょっと、そこの道で拾っただけよ。」
俺とレイネルが見知った中だということを意外だと言うメラの発言。
それをレイネルはスパッと否定。
うん、ちょっと今のは心に来たな。てか、拾ったってなんだよ、俺は犬じゃねぇぞ?
「レイネルちゃあん。聞いてよぉ~。そこの人、なあ~んも言わないんだよぉ。でも、自分は間違えたぁって、下心はなぁいの一点張りなんだぁ。」
「うっわ、…なによ、あんた、どんな性格してんのよ」
ルネルの発言とともにレイネルのゴミを見る目がさらに険しくなる。向ける瞳はまさしく汚物を見るそれだ。
ルネルさん⁈ちょっと、今あなたは、なにも言わないで⁈俺、お外見れなくなる生活になりそう!
レイネルと衛兵女性三人の板挟みで蔑まれる。
浴びられる視線がものすごく痛い。
ん?てか、待ってレイネルさん?
「つか、お前!なんで立場的に俺の敵になってんだ。だいたいこの状況のお前は中立的な視点をとるとこだろうが。」
「あら?私は愚か者なんかの味方はする気はないわ。私は女の味方で、正当な意を持つものの味方よ?」
「物事を公平に見る気はねぇのか!俺の立場も考慮しろよ!」
「はんっ。どこに、変態の考えに耳を向ける裁判官がいるのやら。口を慎みなさい。社会の底辺。」
俺の口弁を華麗なバッティングで打ち返すレイネルの言葉。その声音は、余計な反論を許さないと言わんばかりの鋭さだ。
四人対一人のこの状況。やばいな。勝ち筋が毛程も見当たらない。
もう~、どおじたらいいんだああ。
「レイネルや。一方通行はあかんえ。」
「…へ?」
すると、唐突にこの万事休すかと思われた状況に知らない声がかけられる。
その声主はレイネルの後ろについてきた人物。
口調からも察することができる通り、
「おばあさん…?」
そこには、俺の腰辺りまで身長あるか?ってくらいの老婆がこちらを見据えていた。白いローブに身を包み、顔まで隠している老婆だった。
思わず呆けた面でこぼしてしまう俺。
しかし、この老婆は俺の方を見て「ヒョホホ」と笑うと、
「そうじゃよ、若い子や。ワシはただの婆さんやよ。」
「…はあ。」
柔らかな口調でそう告げられ、俺は思わず、から返事をしてしまう。
いきなりのおばあさんの登場に割とついていけてない。
ん?
「…………」
ふと、レイネルを見ると老婆からよそ見をして黙り込んでいる様子が見て取れた。
何やってんの?この女。
「そこの三人とももや。一方通行はあかんやで」
老婆はそう言うと衛兵女性三人組へと目を向ける。
その口調にも無理強いといったものは少しもない。
とても柔らかな声音だ。
「ふむ、しかし、ご老体。どこの誰なのか存ぜぬが私たちはそれに一矢報いてやらねば気が済まぬのだ。」
それってなんだよ、人に向かって代名詞を使うんじゃねぇ。
一矢報いるってなんだよ、俺はお前らの親の仇かなんかか?
俺に向かって視線と指を突き刺しながら物申すメラ。
それに対し、老婆は「ヒョホホ」と笑うと、
「なあに、此奴の任はワシが引き受けるのでな。あとはワシに任せれば良い。」
「いや、しかし、私たちにも…」
「ワシに任せれば良い。」
メラの返す言葉に同じセリフを使い柔らかく言いくるめる老婆。
でも、ちょっと、おばあさん、それじゃあ、
「ふむ、あい分かった。私はそれで良い。二人も良いか?」
「いいよぉ~。」
「メラちゃんが…いいなら…私も。」
へ?
「ありがとなあ。三人とも。ほな、またなぁ」
老婆が手を振りながらそう言うと、衛兵三人はこの場から歩き去っていき。
この場には老婆と俺とレイネルと三人だけが残される。
ええと。どゆこと?なんか引き際良くない?良くないって言うか良すぎない⁈さっきまでの緊迫感なんだったの?
動揺を隠せない俺の横で、老婆は平然とした様子を見せる。
そして、俺に目を向けると、
「若い子や、レイネルが言うとったんはあんたやね?」
「………?」
話の筋が見えてこない。
なので、レイネルに目を向ける。
のだが、未だよそ見をしたままだった。
何やってんの?この女。
「……はあ」
お?
よそ見をしているかと思ったが、少し溜息を吐くと、レイネルはくるりとこちらを向いた。
そして、老婆に細目を向けると倦怠感を漂わせるような声音で告げる。
「もう、いいんじゃないですか?おばあさん。」
「………?」
俺にはよく分からない発言だった。
だが、横の老婆には伝わったようであり、「ヒョホホ」と笑いをこぼす。
すると、
「にゃっははー!やーっぱたまんないねぇ。こういうのはー」
いきなりの甲高い声音がし、ビクついてしまう俺。
横を見ると、見知らぬ幼女が満面の笑みで突っ立っていた。
俺はその姿を見るや驚きの面持ちをしてしまう。そして、ここが異世界だと再認識させられた。
なぜなら、その幼女は白いローブから猫耳を生やして尻尾をふりふりさせている幼女だったから。
ちなみに尿意は止まっていた。
おしっこが止まる時ってあるよね!
冷たい目つきを浮かべながらメラは俺を見下す。
その瞳で睨めつけられて身震いしそうになるが俺はすんでのところで耐える。
どうこう言ってられないのだ。
反撃しなければ未来はない!
「無意味なわけあるかぁ!俺の言うこと全部聞く耳持たずに決めやがって。こんな判決納得できるわけあるかぁ!」
タンッと立ち上がり猛反発。
怯んじゃだめだ。強気でいけ!
臆するな、俺。怖気づくな、俺。
自分の意見を貫き通すんだ。
さもなければ尋問官の餌にされのは目に見えている。
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「聞く耳持たないなどと言われても、貴様はそもそも語らないではないか。罪を犯したかと問われ、黙り込む。それはつまり、自分に非があると認めているようなものではないか?」
「メラちゃん、メラちゃん。やましいことをして暴かれるってのは男の子にとって一生の恥みたいなものだよ。喋らないのも仕方ないよ。」
メラの言葉に対しアシストのように告げ口をするルネル。
俺はジト目でルネルに対し警戒を強める。
確定だ。一番厄介なのこの人だ。
このルネルって人の口出しで俺の状況が不利になっていっている気がする。
「なるほどルネルの言う通りだな。そして貴様には罪があるのは確か。やはり、私がここで斬ってしまおうか。」
「メラちゃん、…斬るの…駄目。」
「ふむ、そうだな。ミリイ。自制しておるよ。」
「斬るなぁ!そして、俺を処罰対象から外せ!俺は自分からこっちのトイレに入ったわけじゃねぇ!」
まあ、入った瞬間「女子トイレってこんななんだ」って感じに興味心がそそられて、鼻がちょっぴりピクついたってのはあるが、
…………………ちがぁう!今はそんなの関係ねぇ!
叫び声で反抗の意思を示し、無実を主張。
しかし、メラという女性は呆れたように嘆息すると、
「この期に及んで何を言い出すのだ貴様は。見苦しいぞ。」
「言っただろうが!間違えたって!俺が間違えたことも事実だし、下心がないってのも事実だ。」
「貴様…、さすがにそれはありえないだろう。」
一瞬、目を見開いたかと思うと肩をすくめてこちらに狐疑の瞳を向けるメラ。
ありえないってなんですか。その、もうちょっと、少しは考えてもいいじゃないですか。なにか、その、ね?どうしようもない理由があるとかなんとか…
「間違えたってどういう事なんですかあ?私、それが知りたいですねえ。」
すると、メラの鋭い声音とは打って変わって高らかな声音が投げかけられる。
唇に指を添えながら、ニコニコ笑顔で聞いてくるルネルだ。
微笑みながら情け無用で弱みの根幹である部分を聞いてくる。その直球の物言いはこちらとしてはやりづらい。
くっそお。この人、俺の立場が危うくなっていくのを楽しんでねえか?
めっちゃ笑ってるけど聞いてくることが弱みの核心をつくことばっかだ。こっちはそのせいで口籠ってるっていうのによ。
いい性格してやがる。このルネルって野郎。
「いや、…間違えたもんは間違えたんだから、それは仕方ないだろう。」
「いまだに、そんなことを申すのか貴様は。見苦しい。見苦しさ極まりないぞ。」
「女の子はそれで納得しないですよう。」
俺の不十分な物言いに圧をかけて言い返すメラとルネル。
俺を問い詰める、はたまた追い詰める衛兵女性二人組。
一人は思いっきり怒り顔で、一人はとびっきりの笑顔で俺を見下してくる。(俺の方が背は少し高いはずなのに二人は俺を見下しているという表現がここではとても適切だった。なんで?)
やばぁい。なんとかこの場を切り抜ける案がないのか試行錯誤するけど、なんだか脳が空回りしてまともな考えが浮かばない。
まずい。なんとか言わないと。このままじゃ、尋問官の餌食にっ。
「なっにっ、やってんのよ!」
ふと、俺が胸中で悶絶していると後ろから声がかけられた。
パッと振り向くとそこには金髪を後ろで結いつけた女性が腰に手を当てて突っ立っていて。
あ、えっと、レイ、レイ…、レイなんとかさんじゃん。あれ?名前なんだっけ?
「おっ、レイネル。」
「あぁ~、レイネルちゃあん。」
「レイ…ネル…ちゃん。」
あぁ、そうそう。レイネルだ、レイネル。思い出した。思い出した。三人のおかげで思い出せた。
「何やってんのよ。なんなのよ、この状況は。」
それぞれ三人の呼び声に軽く会釈で応じると、レイネルは同じ疑問を投げかける。
いやぁ、もう大変だったんよ。レイネルさん。この三人とのやりとりは。
「私たちが…トイレに…入ろうとして、」
「扉を開けようとしたんですよぉ。」
「そしたら、此奴が素知らぬ顔で扉を開けて出てきてな。たった今、罪を認めさせようとしておるところだ。」
状況の転換にひとまず安堵した俺。
しかし、三人はそんな俺などそっちのけでレイネルの問いに答える。それはもう、息ぴったりかとでも言うように。
「ちょっとぉ⁈待ってぇ⁈何、言っちゃってんの⁈」
「何って、ここであったことそのまんまだが?何か違うことでもあるのか?」
目をパチクリ開けながら、俺に向かって言うメラ。
その言葉に、捏造しただとか虚言だとかはないという風に。
いや、違わないんでしょうよ。あんたたちにとっては違わないんだろうけど、その言い方は駄目よ!
「………あんた」
低い声音が俺に告げられる。声音をした方を向くと、レイネルがゴミを見るような目でこちらを見ていた。
「おおい!ちょっと待て、レイネル。これにはちゃんと理由があるんだ!」
「うるさいわよ。社会の底辺。」
蔑むような目つきで俺を黙らせるレイネル。
なにあなた、前世、ライオンか何かなの?
その目線、百獣の王みたいだよ。
「ん?なんだレイネル。そやつの知り合いか?」
「やめてよ、メラ。知り合いだなんて甚だしい。ちょっと、そこの道で拾っただけよ。」
俺とレイネルが見知った中だということを意外だと言うメラの発言。
それをレイネルはスパッと否定。
うん、ちょっと今のは心に来たな。てか、拾ったってなんだよ、俺は犬じゃねぇぞ?
「レイネルちゃあん。聞いてよぉ~。そこの人、なあ~んも言わないんだよぉ。でも、自分は間違えたぁって、下心はなぁいの一点張りなんだぁ。」
「うっわ、…なによ、あんた、どんな性格してんのよ」
ルネルの発言とともにレイネルのゴミを見る目がさらに険しくなる。向ける瞳はまさしく汚物を見るそれだ。
ルネルさん⁈ちょっと、今あなたは、なにも言わないで⁈俺、お外見れなくなる生活になりそう!
レイネルと衛兵女性三人の板挟みで蔑まれる。
浴びられる視線がものすごく痛い。
ん?てか、待ってレイネルさん?
「つか、お前!なんで立場的に俺の敵になってんだ。だいたいこの状況のお前は中立的な視点をとるとこだろうが。」
「あら?私は愚か者なんかの味方はする気はないわ。私は女の味方で、正当な意を持つものの味方よ?」
「物事を公平に見る気はねぇのか!俺の立場も考慮しろよ!」
「はんっ。どこに、変態の考えに耳を向ける裁判官がいるのやら。口を慎みなさい。社会の底辺。」
俺の口弁を華麗なバッティングで打ち返すレイネルの言葉。その声音は、余計な反論を許さないと言わんばかりの鋭さだ。
四人対一人のこの状況。やばいな。勝ち筋が毛程も見当たらない。
もう~、どおじたらいいんだああ。
「レイネルや。一方通行はあかんえ。」
「…へ?」
すると、唐突にこの万事休すかと思われた状況に知らない声がかけられる。
その声主はレイネルの後ろについてきた人物。
口調からも察することができる通り、
「おばあさん…?」
そこには、俺の腰辺りまで身長あるか?ってくらいの老婆がこちらを見据えていた。白いローブに身を包み、顔まで隠している老婆だった。
思わず呆けた面でこぼしてしまう俺。
しかし、この老婆は俺の方を見て「ヒョホホ」と笑うと、
「そうじゃよ、若い子や。ワシはただの婆さんやよ。」
「…はあ。」
柔らかな口調でそう告げられ、俺は思わず、から返事をしてしまう。
いきなりのおばあさんの登場に割とついていけてない。
ん?
「…………」
ふと、レイネルを見ると老婆からよそ見をして黙り込んでいる様子が見て取れた。
何やってんの?この女。
「そこの三人とももや。一方通行はあかんやで」
老婆はそう言うと衛兵女性三人組へと目を向ける。
その口調にも無理強いといったものは少しもない。
とても柔らかな声音だ。
「ふむ、しかし、ご老体。どこの誰なのか存ぜぬが私たちはそれに一矢報いてやらねば気が済まぬのだ。」
それってなんだよ、人に向かって代名詞を使うんじゃねぇ。
一矢報いるってなんだよ、俺はお前らの親の仇かなんかか?
俺に向かって視線と指を突き刺しながら物申すメラ。
それに対し、老婆は「ヒョホホ」と笑うと、
「なあに、此奴の任はワシが引き受けるのでな。あとはワシに任せれば良い。」
「いや、しかし、私たちにも…」
「ワシに任せれば良い。」
メラの返す言葉に同じセリフを使い柔らかく言いくるめる老婆。
でも、ちょっと、おばあさん、それじゃあ、
「ふむ、あい分かった。私はそれで良い。二人も良いか?」
「いいよぉ~。」
「メラちゃんが…いいなら…私も。」
へ?
「ありがとなあ。三人とも。ほな、またなぁ」
老婆が手を振りながらそう言うと、衛兵三人はこの場から歩き去っていき。
この場には老婆と俺とレイネルと三人だけが残される。
ええと。どゆこと?なんか引き際良くない?良くないって言うか良すぎない⁈さっきまでの緊迫感なんだったの?
動揺を隠せない俺の横で、老婆は平然とした様子を見せる。
そして、俺に目を向けると、
「若い子や、レイネルが言うとったんはあんたやね?」
「………?」
話の筋が見えてこない。
なので、レイネルに目を向ける。
のだが、未だよそ見をしたままだった。
何やってんの?この女。
「……はあ」
お?
よそ見をしているかと思ったが、少し溜息を吐くと、レイネルはくるりとこちらを向いた。
そして、老婆に細目を向けると倦怠感を漂わせるような声音で告げる。
「もう、いいんじゃないですか?おばあさん。」
「………?」
俺にはよく分からない発言だった。
だが、横の老婆には伝わったようであり、「ヒョホホ」と笑いをこぼす。
すると、
「にゃっははー!やーっぱたまんないねぇ。こういうのはー」
いきなりの甲高い声音がし、ビクついてしまう俺。
横を見ると、見知らぬ幼女が満面の笑みで突っ立っていた。
俺はその姿を見るや驚きの面持ちをしてしまう。そして、ここが異世界だと再認識させられた。
なぜなら、その幼女は白いローブから猫耳を生やして尻尾をふりふりさせている幼女だったから。
ちなみに尿意は止まっていた。
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