11 / 27
11.個性豊かな三人衆
しおりを挟む
女の花園前で、凄まじくピリピリとした空気がただよっていた。
じっとこちらを見てくる目線は俺に身動きを許さない。
あかん。何か、この場を切り抜けるいい方法はないか。この三人を納得させる事ができる何か。
「…どうした?何も言わぬのか。やはり、貴様、下心のみで入っていたのか?まあ、その場合は私の剣で貴様を切って捨てるのみだがな。」
そう言い、腰元にある剣の柄に手を据えるメラ。
こちらに向ける視線は獲物を仕留める瞳だ。
あかん‼︎本当にあかん!これ、発言を間違えたら割とここでお陀仏じゃん⁈
俺まだ転生して1日目よ⁈
「メラちゃん、メラちゃん、さすがに切り捨てはかわいそうだし、この敷地内で殺しは御法度でしょ?」
けれども、そんな俺の過度な危惧はフワフワした声音が打ち消してくれる。
こちらの様子を見守るルネルはメラのしでかそうとする行為に待ったをかけた。
あれ?この人、毒舌だと思ってたけどやっぱり見た目通り優しい人?
今、俺のこと庇ってくれたよね。
「むう。そうだったな。ならば敷地を出て、近くの茂みにこやつを持って行って処すというのはどうだ?」
こっちの人は見た目通り怖すぎる‼︎台詞がもう不良のそれだよ。
容赦のかけらもない!慈悲のかけらもない!
手元の剣、今にも抜こうとしてるよ!暗黒の目線は顕在だよ!
「まあまあ、メラちゃん、落ち着いて。私にいい考えがあるよ。」
「ほお?ルネル、いい考えか。して、それはどのような処罰なのだ?」
なんで、もう処罰確定なんですかね。いや、まあ俺の方にも非はあるけど、被告人の人権ももうちょっと考えてほしい。
すっくと立ち上がり、メラはルネルに詳細を求める。
ルネルはピンと指を立て笑顔を見せると、
「…尋問官の人に預ければいいんじゃないかな?」
「ちょっと、待てぇぇ‼︎」
あんまりな判決にさすがの俺も反発する。
いきなり大声を出したため、一番後ろのおどおどミリイがすこぶるびっくりしているのが見えた。目を瞑ったまま「ひゃう!」と驚く姿がなんとも俊敏な動きだったが、………今はそんなの関係ない。
てか、やっぱ毒舌かよ!めちゃめちゃいい笑顔でなんてこと言ってんの、このルネルって子⁈
声音と内容が全然マッチしてないよ!
「お、貴様、喋れたのか。ずっと黙っているから剣を抜いて貴様のはらわたをつついてやろうかと思っていたぞ。」
こちらに目をやり(というか見下ろし)俺に告げるメラ。
というか、言うことエグくない?
「それ、つついてって可愛く言ってってけど、絶対ザックリ行くやつだよね。はらわたって言ってるあたり絶対ツンツンじゃないよね。」
「それは貴様の想像次第だ。」
「あんたの加減次第だろ。」
「…フッ。みなまで言うな。」
なんでドヤ顔なんだよ。
誇った顔する理由が微塵もわかんねえよ。
「それでそれでぇ。なーんであなたはこちらのトイレから出てきたんですかぁ?あなたが使うべきはあちらでしょう?」
柔らかなトーンを挟みながら、しかし、直球でものを聞いてくるルネル。
ええと、それ聞いちゃう?ちょっとはこっちの心情察してよ…。
「いや、それは…。」
どう言えばいいのだろうか。単純に男女の文字の違いがわからなかったんですと言っても信じてもらえるのだろうか。いや、なんだか信じてもらえる気はしない。
よく知っているのだ。女性が男性に対して軽蔑の眼差しを向けるとき、そこに信頼性というものはいっさい存在しないものなのだと。
やばぁい!なんとかこの状況を切り抜けたいけど納得してもらえる言葉が見当たらない!
「やっぱり、下心ですかぁ?下心ですねえ。」
「やはり貴様は私が処す!案ずるな楽に逝かせてやる。」
「違っげぇよ‼︎勝手に話を進めるな!なんで、死罪確定なんだよ!」
「咎人は自分を省みなければならない。これは誰もが知り得る教訓だろう。故に貴様は己の罪を贖え。」
「死ぬイコール償いなんですか⁈それは大昔に廃れた風習じゃないんですか⁈」
「だから、メラちゃん、メラちゃん。ここでやっちゃうのは駄目だよ。尋問官だよ。尋問官。」
「あんたもあんたでとんでもないな⁈」
なんでウキウキワクワクした表情で苛烈な単語並べてるの。笑顔で腕ブンブン振り回しながら言う台詞じゃないよ。
「ミリイ、お前はどう思う?」
メラは後ろを向き、茶髪の女の子ミリイに質問する。ミリイは少しずつ口を開き、
「ルネルの言うこと…の方が…いい。メラちゃんが…法度にふれるのは…やだから。」
「おおー!そうだよねぇ。ルネルの言うこと聞いてありがとう!ミリイ。可愛いなぁもお。よしよしよし。」
喜びを表に出し、ミリイの頭を撫でまくるルネル。
おどおどミリイは顔をすくめながら少し赤面しているようであった。
一方、メラは少し嘆息すると、
「…ふむ、まあミリイがそう言うのならそれで良い。よし、貴様、斬れぬのは残念だがそういうことだ。とくと、尋問されてくるがよい。」
俺の言うこと為すことそっちのけで判決が下される。なんだか、この場はひと段落しているようであった。
俺の処罰が決まり、三人は一悶着している。
そう、だから、俺はこの場で唱えるのだ。
本日、二度目の反発の意志を、
「ちょっと、待てぇぇぇい!」
じっとこちらを見てくる目線は俺に身動きを許さない。
あかん。何か、この場を切り抜けるいい方法はないか。この三人を納得させる事ができる何か。
「…どうした?何も言わぬのか。やはり、貴様、下心のみで入っていたのか?まあ、その場合は私の剣で貴様を切って捨てるのみだがな。」
そう言い、腰元にある剣の柄に手を据えるメラ。
こちらに向ける視線は獲物を仕留める瞳だ。
あかん‼︎本当にあかん!これ、発言を間違えたら割とここでお陀仏じゃん⁈
俺まだ転生して1日目よ⁈
「メラちゃん、メラちゃん、さすがに切り捨てはかわいそうだし、この敷地内で殺しは御法度でしょ?」
けれども、そんな俺の過度な危惧はフワフワした声音が打ち消してくれる。
こちらの様子を見守るルネルはメラのしでかそうとする行為に待ったをかけた。
あれ?この人、毒舌だと思ってたけどやっぱり見た目通り優しい人?
今、俺のこと庇ってくれたよね。
「むう。そうだったな。ならば敷地を出て、近くの茂みにこやつを持って行って処すというのはどうだ?」
こっちの人は見た目通り怖すぎる‼︎台詞がもう不良のそれだよ。
容赦のかけらもない!慈悲のかけらもない!
手元の剣、今にも抜こうとしてるよ!暗黒の目線は顕在だよ!
「まあまあ、メラちゃん、落ち着いて。私にいい考えがあるよ。」
「ほお?ルネル、いい考えか。して、それはどのような処罰なのだ?」
なんで、もう処罰確定なんですかね。いや、まあ俺の方にも非はあるけど、被告人の人権ももうちょっと考えてほしい。
すっくと立ち上がり、メラはルネルに詳細を求める。
ルネルはピンと指を立て笑顔を見せると、
「…尋問官の人に預ければいいんじゃないかな?」
「ちょっと、待てぇぇ‼︎」
あんまりな判決にさすがの俺も反発する。
いきなり大声を出したため、一番後ろのおどおどミリイがすこぶるびっくりしているのが見えた。目を瞑ったまま「ひゃう!」と驚く姿がなんとも俊敏な動きだったが、………今はそんなの関係ない。
てか、やっぱ毒舌かよ!めちゃめちゃいい笑顔でなんてこと言ってんの、このルネルって子⁈
声音と内容が全然マッチしてないよ!
「お、貴様、喋れたのか。ずっと黙っているから剣を抜いて貴様のはらわたをつついてやろうかと思っていたぞ。」
こちらに目をやり(というか見下ろし)俺に告げるメラ。
というか、言うことエグくない?
「それ、つついてって可愛く言ってってけど、絶対ザックリ行くやつだよね。はらわたって言ってるあたり絶対ツンツンじゃないよね。」
「それは貴様の想像次第だ。」
「あんたの加減次第だろ。」
「…フッ。みなまで言うな。」
なんでドヤ顔なんだよ。
誇った顔する理由が微塵もわかんねえよ。
「それでそれでぇ。なーんであなたはこちらのトイレから出てきたんですかぁ?あなたが使うべきはあちらでしょう?」
柔らかなトーンを挟みながら、しかし、直球でものを聞いてくるルネル。
ええと、それ聞いちゃう?ちょっとはこっちの心情察してよ…。
「いや、それは…。」
どう言えばいいのだろうか。単純に男女の文字の違いがわからなかったんですと言っても信じてもらえるのだろうか。いや、なんだか信じてもらえる気はしない。
よく知っているのだ。女性が男性に対して軽蔑の眼差しを向けるとき、そこに信頼性というものはいっさい存在しないものなのだと。
やばぁい!なんとかこの状況を切り抜けたいけど納得してもらえる言葉が見当たらない!
「やっぱり、下心ですかぁ?下心ですねえ。」
「やはり貴様は私が処す!案ずるな楽に逝かせてやる。」
「違っげぇよ‼︎勝手に話を進めるな!なんで、死罪確定なんだよ!」
「咎人は自分を省みなければならない。これは誰もが知り得る教訓だろう。故に貴様は己の罪を贖え。」
「死ぬイコール償いなんですか⁈それは大昔に廃れた風習じゃないんですか⁈」
「だから、メラちゃん、メラちゃん。ここでやっちゃうのは駄目だよ。尋問官だよ。尋問官。」
「あんたもあんたでとんでもないな⁈」
なんでウキウキワクワクした表情で苛烈な単語並べてるの。笑顔で腕ブンブン振り回しながら言う台詞じゃないよ。
「ミリイ、お前はどう思う?」
メラは後ろを向き、茶髪の女の子ミリイに質問する。ミリイは少しずつ口を開き、
「ルネルの言うこと…の方が…いい。メラちゃんが…法度にふれるのは…やだから。」
「おおー!そうだよねぇ。ルネルの言うこと聞いてありがとう!ミリイ。可愛いなぁもお。よしよしよし。」
喜びを表に出し、ミリイの頭を撫でまくるルネル。
おどおどミリイは顔をすくめながら少し赤面しているようであった。
一方、メラは少し嘆息すると、
「…ふむ、まあミリイがそう言うのならそれで良い。よし、貴様、斬れぬのは残念だがそういうことだ。とくと、尋問されてくるがよい。」
俺の言うこと為すことそっちのけで判決が下される。なんだか、この場はひと段落しているようであった。
俺の処罰が決まり、三人は一悶着している。
そう、だから、俺はこの場で唱えるのだ。
本日、二度目の反発の意志を、
「ちょっと、待てぇぇぇい!」
0
お気に入りに追加
12
あなたにおすすめの小説
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。
けむし
ファンタジー
突然の異世界転移とともに魔法が使えるようになった青年の、ほぼ手に汗握らない物語。
日本と異世界を行き来する転移魔法、物を複製する魔法。
あらゆる魔法を使えるようになった主人公は異世界で、そして日本でチート能力を発揮・・・するの?
ゆる~くのんびり進む物語です。読者の皆様ものんびりお付き合いください。
感想などお待ちしております。
母親に家を追い出されたので、勝手に生きる!!(泣きついて来ても、助けてやらない)
いくみ
ファンタジー
実母に家を追い出された。
全く親父の奴!勝手に消えやがって!
親父が帰ってこなくなったから、実母が再婚したが……。その再婚相手は働きもせずに好き勝手する男だった。
俺は消えた親父から母と頼むと、言われて。
母を守ったつもりだったが……出て行けと言われた……。
なんだこれ!俺よりもその男とできた子供の味方なんだな?
なら、出ていくよ!
俺が居なくても食って行けるなら勝手にしろよ!
これは、のんびり気ままに冒険をする男の話です。
カクヨム様にて先行掲載中です。
不定期更新です。
ボッチな俺は自宅に出来たダンジョン攻略に励む
佐原
ファンタジー
ボッチの高校生佐藤颯太は庭の草刈りをしようと思い、倉庫に鎌を取りに行くと倉庫は洞窟みたいなっていた。
その洞窟にはファンタジーのようなゴブリンやスライムが居て主人公は自身が強くなって行くことでボッチを卒業する日が来る?
それから世界中でダンジョンが出現し主人公を取り巻く環境も変わっていく。
異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!
夢・風魔
ファンタジー
若くして死んだ男は、異世界に転生した。恵まれた環境とは程遠い、ダンジョンの上層部に作られた居住区画で孤児として暮らしていた。
ある日、ダンジョンモンスターが暴走するスタンピードが発生し、彼──リヴァは死の縁に立たされていた。
そこで前世の記憶を思い出し、同時に転生特典のスキルに目覚める。
視界に映る者全ての動きを停止させる『一時停止』。任意のステータスを一日に1だけ奪い取れる『ステータス強奪』。
二つのスキルを駆使し、リヴァは地上での暮らしを夢見て今日もダンジョンへと潜る。
*カクヨムでも先行更新しております。
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@書籍発売中
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
悪役令嬢に転生したので、ゲームを無視して自由に生きる。私にしか使えない植物を操る魔法で、食べ物の心配は無いのでスローライフを満喫します。
向原 行人
ファンタジー
死にかけた拍子に前世の記憶が蘇り……どハマりしていた恋愛ゲーム『ときめきメイト』の世界に居ると気付く。
それだけならまだしも、私の名前がルーシーって、思いっきり悪役令嬢じゃない!
しかもルーシーは魔法学園卒業後に、誰とも結ばれる事なく、辺境に飛ばされて孤独な上に苦労する事が分かっている。
……あ、だったら、辺境に飛ばされた後、苦労せずに生きていけるスキルを学園に居る内に習得しておけば良いじゃない。
魔法学園で起こる恋愛イベントを全て無視して、生きていく為のスキルを習得して……と思ったら、いきなりゲームに無かった魔法が使えるようになってしまった。
木から木へと瞬間移動出来るようになったので、学園に通いながら、辺境に飛ばされた後のスローライフの練習をしていたんだけど……自由なスローライフが楽し過ぎるっ!
※第○話:主人公視点
挿話○:タイトルに書かれたキャラの視点
となります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる