17 / 53
第一章
八方塞がり②
しおりを挟む
蘇芳が去った後も暫くその場から動けないでいると、
「琳門くーん待ってよ~」
「今日こそはこれ被ってもらうんだから!」
といつぞやの光景が飛び込んでくる。
ん? その手に持ってんのは……カツラ?
綺麗なブロンドのくるくるしたウィッグは間違いなく女物。
なるほど……それを被ってもらいたいが為に追いかけてんのか。
大学になんちゅーもん持ってきてんだ。ここは学問を学ぶ場だぞ。なんて正論を振りかざす気は毛頭ない。
だってそれ絶対似合うよ!! フランス人形ばりに美しい美少女の出来上がりだよ!!
何それ俺も見たい……女の子達頑張れ! と琳門にとっては裏切りでしかないことを思っていると。
「千秋……ッ助けてっ、」
あと少しで捕まりそうな琳門と視線が合い悲痛そうな声で助けを求められる。
思いっきりフランス人形の琳門を想像していた俺はそこで漸く我に返りニタニタ顔を打ち払った。
危ない危ない。琳門見てるといつの間にか理性が行方不明になるんだよな。
「ごめんちょっといい?」
琳門に向かって手を伸ばしていた女の子の前に立ち琳門を背中にしまう。
思わず掴んでしまった女の子の手をパッと離すと申し訳なさそうな顔を作った。
「ち、千秋く……!?」
「琳門にちょっと用があるんだ。少し借りてもいい?」
「え……!?」
「ごめんね、君達の気持ちもわかるけど今は、」
「告白するの!?」
「……は?」
いやアホ面になっちゃうのも無理ないだろ。今この子なんて言った?
「じゃあ千秋くんは琳門くんを選んだのね!!」
「え」
「きゃーー!! お似合いカップル~」
「いや」
「美人さんと美少女か~絵になるわぁ~」
「ちょ、」
聞けよ。なんださっきから。
フォンダンショコラくれた子もそうだったけど人の話聞かなさすぎだろ!
しかもなんで全部ソッチ方向に持ってくの!? やっぱりその『動画』とやらががっつり広まってんじゃねーか!!
ガン、と項垂れる俺に対して女の子達は止まらない。誰か止める方法を教えてくれ。
「そういうことならうちらお邪魔だよね!」
「今日は諦めるよ! それじゃあごゆっくり~」
ニヤニヤした笑みを残して嵐のように去っていく彼女達。走りざまに、
「ねえどっちが攻めだと思う!?」
「そりゃ千秋くんでしょ~」
「やっぱり!? でも琳門くんだったら萌え死ぬわ~」
「何それやばい」
なんて言っていたことは聞かなかったことにしよう。俺は断じて聞いてないからな!!
「千秋……ありがと」
ちょん、と服の裾を持って背後からひょっこり顔を出した琳門。
ギュン!! と普通だったら絶対鳴らないような音が心臓から聞こえた気がした。
「琳門も大変だね」
どうにか性犯罪者のような顔つきは隠せたようだ。これで俺まで警戒されたら意味ないからな。
――――と。
「ほんと女って怖すぎ……」
「それは琳門が可愛すぎるせいだよ。悪いこと言わないから一回あのカツラ被ってみようね?」
「……」
琳門のドン引いた顔を元に戻すのに苦労しました。
「ゴホン。……それで? バイトはどうすんの?」
「僕お前のこと信じていいんだよね? いいんだよね?」
「アタリマエジャナイカ」
「……」
あ、つい片言になってしまった。その猜疑心たっぷりの視線が痛い。
「……どうするも何も、僕こんなんだし」
「思ったんだけどさ、ずっとそのままって結構キツイんじゃないの?」
「っ、だからってどうしようも……!」
「うん、だからさ……」
「……?」
そこで一旦言葉を切った。
不思議そうな顔をする琳門に俺は努めて優しい表情をする。……断じて変態野郎の顔じゃないからな? そこら辺肝に命じておけよ?
「リハビリ、してみない?」
「……!!」
面食らったように目をパチパチさせる琳門は控えめに言っても鬼可愛くて、つい手を出しそうになるのを我慢するのが大変だった。
そして暫く考え込んだ末、小さな口が告げた言葉に。
「千秋がいるなら……頑張ってみる……」
「~~ッ!!」
悶絶して芋虫みたいに転がる俺を絶対零度の眼差しで琳門が見てきたが、それでさえもご褒美だったので全く気にならなかった。
「琳門くーん待ってよ~」
「今日こそはこれ被ってもらうんだから!」
といつぞやの光景が飛び込んでくる。
ん? その手に持ってんのは……カツラ?
綺麗なブロンドのくるくるしたウィッグは間違いなく女物。
なるほど……それを被ってもらいたいが為に追いかけてんのか。
大学になんちゅーもん持ってきてんだ。ここは学問を学ぶ場だぞ。なんて正論を振りかざす気は毛頭ない。
だってそれ絶対似合うよ!! フランス人形ばりに美しい美少女の出来上がりだよ!!
何それ俺も見たい……女の子達頑張れ! と琳門にとっては裏切りでしかないことを思っていると。
「千秋……ッ助けてっ、」
あと少しで捕まりそうな琳門と視線が合い悲痛そうな声で助けを求められる。
思いっきりフランス人形の琳門を想像していた俺はそこで漸く我に返りニタニタ顔を打ち払った。
危ない危ない。琳門見てるといつの間にか理性が行方不明になるんだよな。
「ごめんちょっといい?」
琳門に向かって手を伸ばしていた女の子の前に立ち琳門を背中にしまう。
思わず掴んでしまった女の子の手をパッと離すと申し訳なさそうな顔を作った。
「ち、千秋く……!?」
「琳門にちょっと用があるんだ。少し借りてもいい?」
「え……!?」
「ごめんね、君達の気持ちもわかるけど今は、」
「告白するの!?」
「……は?」
いやアホ面になっちゃうのも無理ないだろ。今この子なんて言った?
「じゃあ千秋くんは琳門くんを選んだのね!!」
「え」
「きゃーー!! お似合いカップル~」
「いや」
「美人さんと美少女か~絵になるわぁ~」
「ちょ、」
聞けよ。なんださっきから。
フォンダンショコラくれた子もそうだったけど人の話聞かなさすぎだろ!
しかもなんで全部ソッチ方向に持ってくの!? やっぱりその『動画』とやらががっつり広まってんじゃねーか!!
ガン、と項垂れる俺に対して女の子達は止まらない。誰か止める方法を教えてくれ。
「そういうことならうちらお邪魔だよね!」
「今日は諦めるよ! それじゃあごゆっくり~」
ニヤニヤした笑みを残して嵐のように去っていく彼女達。走りざまに、
「ねえどっちが攻めだと思う!?」
「そりゃ千秋くんでしょ~」
「やっぱり!? でも琳門くんだったら萌え死ぬわ~」
「何それやばい」
なんて言っていたことは聞かなかったことにしよう。俺は断じて聞いてないからな!!
「千秋……ありがと」
ちょん、と服の裾を持って背後からひょっこり顔を出した琳門。
ギュン!! と普通だったら絶対鳴らないような音が心臓から聞こえた気がした。
「琳門も大変だね」
どうにか性犯罪者のような顔つきは隠せたようだ。これで俺まで警戒されたら意味ないからな。
――――と。
「ほんと女って怖すぎ……」
「それは琳門が可愛すぎるせいだよ。悪いこと言わないから一回あのカツラ被ってみようね?」
「……」
琳門のドン引いた顔を元に戻すのに苦労しました。
「ゴホン。……それで? バイトはどうすんの?」
「僕お前のこと信じていいんだよね? いいんだよね?」
「アタリマエジャナイカ」
「……」
あ、つい片言になってしまった。その猜疑心たっぷりの視線が痛い。
「……どうするも何も、僕こんなんだし」
「思ったんだけどさ、ずっとそのままって結構キツイんじゃないの?」
「っ、だからってどうしようも……!」
「うん、だからさ……」
「……?」
そこで一旦言葉を切った。
不思議そうな顔をする琳門に俺は努めて優しい表情をする。……断じて変態野郎の顔じゃないからな? そこら辺肝に命じておけよ?
「リハビリ、してみない?」
「……!!」
面食らったように目をパチパチさせる琳門は控えめに言っても鬼可愛くて、つい手を出しそうになるのを我慢するのが大変だった。
そして暫く考え込んだ末、小さな口が告げた言葉に。
「千秋がいるなら……頑張ってみる……」
「~~ッ!!」
悶絶して芋虫みたいに転がる俺を絶対零度の眼差しで琳門が見てきたが、それでさえもご褒美だったので全く気にならなかった。
0
お気に入りに追加
115
あなたにおすすめの小説
明智さんちの旦那さんたちR
明智 颯茄
恋愛
あの小高い丘の上に建つ大きなお屋敷には、一風変わった夫婦が住んでいる。それは、妻一人に夫十人のいわゆる逆ハーレム婚だ。
奥さんは何かと大変かと思いきやそうではないらしい。旦那さんたちは全員神がかりな美しさを持つイケメンで、奥さんはニヤケ放題らしい。
ほのぼのとしながらも、複数婚が巻き起こすおかしな日常が満載。
*BL描写あり
毎週月曜日と隔週の日曜日お休みします。
【R18】黒髪メガネのサラリーマンに監禁された話。
猫足02
恋愛
ある日、大学の帰り道に誘拐された美琴は、そのまま犯人のマンションに監禁されてしまう。
『ずっと君を見てたんだ。君だけを愛してる』
一度コンビニで見かけただけの、端正な顔立ちの男。一見犯罪とは無縁そうな彼は、狂っていた。
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
異世界転生先で溺愛されてます!
目玉焼きはソース
恋愛
異世界転生した18歳のエマが転生先で色々なタイプのイケメンたちから溺愛される話。
・男性のみ美醜逆転した世界
・一妻多夫制
・一応R指定にしてます
⚠️一部、差別的表現・暴力的表現が入るかもしれません
タグは追加していきます。
可愛い幼馴染はヤンデレでした
下菊みこと
恋愛
幼馴染モノのかなりがっつりなヤンデレ。
いつもの御都合主義のSS。
ヤンデレ君とそのお兄さんが無駄にハイスペックなせいで気付かないうちに逃げ道を潰される主人公ちゃんが可哀想かもしれません。
一応両思いなのが救いでしょうか。
小説家になろう様でも投稿しています。
蛇神様の花わずらい~逆ハー溺愛新婚生活~
ここのえ
恋愛
※ベッドシーン多めで複数プレイなどありますのでご注意ください。
蛇神様の巫女になった美鎖(ミサ)は、同時に三人の蛇神様と結婚することに。
優しくて頼りになる雪影(ユキカゲ)。
ぶっきらぼうで照れ屋な暗夜(アンヤ)。
神様になりたてで好奇心旺盛な穂波(ホナミ)。
三人の花嫁として、美鎖の新しい暮らしが始まる。
※大人のケータイ官能小説さんに過去置いてあったものの修正版です
※ムーンライトノベルスさんでも公開しています
【ヤンデレ鬼ごっこ実況中】
階段
恋愛
ヤンデレ彼氏の鬼ごっこしながら、
屋敷(監禁場所)から脱出しようとする話
_________________________________
【登場人物】
・アオイ
昨日初彼氏ができた。
初デートの後、そのまま監禁される。
面食い。
・ヒナタ
アオイの彼氏。
お金持ちでイケメン。
アオイを自身の屋敷に監禁する。
・カイト
泥棒。
ヒナタの屋敷に盗みに入るが脱出できなくなる。
アオイに協力する。
_________________________________
【あらすじ】
彼氏との初デートを楽しんだアオイ。
彼氏に家まで送ってもらっていると急に眠気に襲われる。
目覚めると知らないベッドに横たわっており、手足を縛られていた。
色々あってヒタナに監禁された事を知り、隙を見て拘束を解いて部屋の外へ出ることに成功する。
だがそこは人里離れた大きな屋敷の最上階だった。
ヒタナから逃げ切るためには、まずこの屋敷から脱出しなければならない。
果たしてアオイはヤンデレから逃げ切ることができるのか!?
_________________________________
7話くらいで終わらせます。
短いです。
途中でR15くらいになるかもしれませんがわからないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる