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第一章
可愛い系①
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はあ……、マジでこの前は散々だった。私の人生であそこまで焦ったことない。
まだ浮気がバレた時の方が心中落ち着いてたわ。浮気っつーか、勝手に彼氏が勘違いしただけだしな。全く、男友達くらい自由に作らせろっての。
まあ今は男友達なんて腐るほどいるし勘違いもされないけどね! なんってったって“同性”だから!
―――と、その時。
「あれ、佐伯先輩どうしたんすか?」
「千秋探してんだけど」
……っあぶな! 今まさに教室入ろうとしてたよ。すんでのところで足を止めてすぐさま柱の陰に隠れる。
「多分あいつもう少しで来ますよ?」
「んー俺もこの後授業だしまた後で来るわ」
すると遠ざかっていく足音。
いや来なくていいわ! この前のことが気まずすぎて顔会わせられねーわ!
絶対俺のこと変に思っただろ……天然に見えて妙に鋭い時あるし……。
「ちょっと、」
ああもうマジで憂鬱……。
「ちょっとってば!」
「……え!?」
「足踏んでる! なんで気付かないわけ!?」
突如横から聞こえた声にびっくりして思わず飛び跳ねる。
「ちょ、あんま目立った動きしないでよ!」
さっきから何故か怒った様子の(自分のせいとは思わない)彼は……いや彼女……?え、どっち?
否、どっちでもいい。どっちだって可愛い!!
「はああ!? なんでいきなり抱きっ!? ……ちょ、苦しっ、から離せよバカ!」
ダーン! とそれはもう清々しいほどに突き飛ばされたのでそんなに頑丈ではない俺はスッテーンと尻餅をついてしまう。
「え、僕別にそんな力込めてなっ、」
「あ! この声琳門くんじゃない!?こっちから聞こえたよ!」
「……ッ!」
倒れ込んだ俺に慌てて手を貸そうとしたかわい子ちゃん。
しかし遠くの方から女の子の声がしたら一気に顔面蒼白になった。……え、もしかして逃げてる? それで俺みたいに柱の陰に隠れてたのか?
「りーもんくん見ーつけた!」
そうと分かればするべきことは一つだ。
暫く経たないうちにひょこっと出てきた女の子二人を視界に入れ、緩やかに微笑む。
「って、あれ!? 千秋くん!?」
「うわ、こんな近くで初めて見た……! やば綺麗すぎ!」
ふぅ、今日帽子被ってて良かったぁ。
理由はわからないけどかわいこちゃんがこの子達から逃げてる風なのを察した直後、咄嗟に帽子を被せて頭ごと抱き抱えていた。幸いにも身長が俺よりちょっと下くらいなのですっぽりと収まってくれている。
ここまでしたらそう簡単に気付かれまい。
「……って、ごめん。もしかしてお取込中だった?」
男女(?)が抱き合ってるんだからどう見てもお取込み中だろ、とは思っても言わないよ? 俺、フェミニストだから。
「ちょっとこの子に辛いことがあって泣いちゃってね……今慰めてるとこなんだ」
「そ、そうなんだ! ごめんね!」
「やっぱり千秋くんって噂通り優しいんだね……!」
ふっふっふ。同時に俺のイメージアップにも繋がるという寸法よ。これぞまさしく一石二鳥。
彼女達は全く疑問に思ってないようだし可愛こちゃんも大人しく腕の中に収まっている。
心なしかぷるっぷる震えているような? ……え、どうしようクソ可愛いんだけど。
「じゃ、じゃあ私達はそろそろ……」
「そうだ千秋くん、琳門くん見てない?」
琳門、というのはこの子の名前なんだろうな。今俺の前でウサギみたいにちっちゃくなってるのが本人だが、当然それは言えないので笑みを作る。
「追いかけっこでもしてるの?」
「そういうわけじゃないんだけど……」
「いっつも声かけると逃げちゃうんだよね……」
逃げたくて逃げてんだからわざわざ追いかけるのは違うのでは? え、人間なのに狩猟本能があるのか? 逃げるものは追いかけたくなっちゃう的な?
この子達の先祖はさぞかし勇敢なハンターだったんだろうな……って、そんなこと考えている場合じゃないな。
そろそろ可愛こちゃんの震えが震えってレベルじゃなくなってる。震度幾つだよってくらい揺れてらっしゃる。
「あ、そういえばさっきあっちの校舎に入ってくの見たかも」
「ほんと!? ありがとう!」
「今度私達ともゆっくりお話してね!」
窓の外から見えるでっかい建物を指すと、目を輝かせる彼女達。
ちゃっかり俺にアピールするという積極性は感心するけどこの子には些か荷が重そうだ。
まだ浮気がバレた時の方が心中落ち着いてたわ。浮気っつーか、勝手に彼氏が勘違いしただけだしな。全く、男友達くらい自由に作らせろっての。
まあ今は男友達なんて腐るほどいるし勘違いもされないけどね! なんってったって“同性”だから!
―――と、その時。
「あれ、佐伯先輩どうしたんすか?」
「千秋探してんだけど」
……っあぶな! 今まさに教室入ろうとしてたよ。すんでのところで足を止めてすぐさま柱の陰に隠れる。
「多分あいつもう少しで来ますよ?」
「んー俺もこの後授業だしまた後で来るわ」
すると遠ざかっていく足音。
いや来なくていいわ! この前のことが気まずすぎて顔会わせられねーわ!
絶対俺のこと変に思っただろ……天然に見えて妙に鋭い時あるし……。
「ちょっと、」
ああもうマジで憂鬱……。
「ちょっとってば!」
「……え!?」
「足踏んでる! なんで気付かないわけ!?」
突如横から聞こえた声にびっくりして思わず飛び跳ねる。
「ちょ、あんま目立った動きしないでよ!」
さっきから何故か怒った様子の(自分のせいとは思わない)彼は……いや彼女……?え、どっち?
否、どっちでもいい。どっちだって可愛い!!
「はああ!? なんでいきなり抱きっ!? ……ちょ、苦しっ、から離せよバカ!」
ダーン! とそれはもう清々しいほどに突き飛ばされたのでそんなに頑丈ではない俺はスッテーンと尻餅をついてしまう。
「え、僕別にそんな力込めてなっ、」
「あ! この声琳門くんじゃない!?こっちから聞こえたよ!」
「……ッ!」
倒れ込んだ俺に慌てて手を貸そうとしたかわい子ちゃん。
しかし遠くの方から女の子の声がしたら一気に顔面蒼白になった。……え、もしかして逃げてる? それで俺みたいに柱の陰に隠れてたのか?
「りーもんくん見ーつけた!」
そうと分かればするべきことは一つだ。
暫く経たないうちにひょこっと出てきた女の子二人を視界に入れ、緩やかに微笑む。
「って、あれ!? 千秋くん!?」
「うわ、こんな近くで初めて見た……! やば綺麗すぎ!」
ふぅ、今日帽子被ってて良かったぁ。
理由はわからないけどかわいこちゃんがこの子達から逃げてる風なのを察した直後、咄嗟に帽子を被せて頭ごと抱き抱えていた。幸いにも身長が俺よりちょっと下くらいなのですっぽりと収まってくれている。
ここまでしたらそう簡単に気付かれまい。
「……って、ごめん。もしかしてお取込中だった?」
男女(?)が抱き合ってるんだからどう見てもお取込み中だろ、とは思っても言わないよ? 俺、フェミニストだから。
「ちょっとこの子に辛いことがあって泣いちゃってね……今慰めてるとこなんだ」
「そ、そうなんだ! ごめんね!」
「やっぱり千秋くんって噂通り優しいんだね……!」
ふっふっふ。同時に俺のイメージアップにも繋がるという寸法よ。これぞまさしく一石二鳥。
彼女達は全く疑問に思ってないようだし可愛こちゃんも大人しく腕の中に収まっている。
心なしかぷるっぷる震えているような? ……え、どうしようクソ可愛いんだけど。
「じゃ、じゃあ私達はそろそろ……」
「そうだ千秋くん、琳門くん見てない?」
琳門、というのはこの子の名前なんだろうな。今俺の前でウサギみたいにちっちゃくなってるのが本人だが、当然それは言えないので笑みを作る。
「追いかけっこでもしてるの?」
「そういうわけじゃないんだけど……」
「いっつも声かけると逃げちゃうんだよね……」
逃げたくて逃げてんだからわざわざ追いかけるのは違うのでは? え、人間なのに狩猟本能があるのか? 逃げるものは追いかけたくなっちゃう的な?
この子達の先祖はさぞかし勇敢なハンターだったんだろうな……って、そんなこと考えている場合じゃないな。
そろそろ可愛こちゃんの震えが震えってレベルじゃなくなってる。震度幾つだよってくらい揺れてらっしゃる。
「あ、そういえばさっきあっちの校舎に入ってくの見たかも」
「ほんと!? ありがとう!」
「今度私達ともゆっくりお話してね!」
窓の外から見えるでっかい建物を指すと、目を輝かせる彼女達。
ちゃっかり俺にアピールするという積極性は感心するけどこの子には些か荷が重そうだ。
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