完全無欠なライバル令嬢に転生できたので男を手玉に取りたいと思います

藍原美音

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Ⅱ.入学編

51.ライバル令嬢の悩み 後編

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 な、なんということなの……。
 今までただ楽しいことをしているつもりが、まさか自分の破滅エンドを回避するような行動だったなんて……。
 え、だから一向に攻略対象達がシナリオ通りに動かなかったというの…?
 ヒロインに一切興味を持たず私から離れようとしないのはそのせい…?

 なのに私はずっと攻略対象達がヒロインに恋する時を思い浮かべてライバル令嬢っぽく振る舞ってたってこと? それって私がまるでマヌケみたいじゃ──いや、いやいやいや。

 そんなことないわよね。うん、ヒロインが転生者じゃなかったら私の計画は上手くいくはずだったんだもの。あの乙女ゲーム本来のヒロインパワーがあれば私なんて目じゃなかったんだから。

「ええっと、つまり……」

 私が自分に謎の言い訳をしている間も、ナタリーは必死に考えてくれていたようで。この状況を理解するため首を捻っている。

「運命を覆すという目的を掲げたとしても、」
「結局今としていることは変わらないってわけ」
「それじゃ…意味ないですね…」
「そうね…」

 はあ…と、二人して大きな溜息を吐く。
 一生懸命考えてくれたのになんだか申し訳ないわ…。
 やはり楽しいことを探すのって難しいのね…。

 これ以上私のくだらない悩みにナタリーを付き合わせるのは悪いと思って、諦めてその場を立ち去ろうとしたその時。

「で、では…今までやってきたことと逆のことをしてみるというのは?」
「え?」
「同じ環境下に居続けたら飽きが来るのも必然だと思いますし、環境を変えてみるのです。そうですね…すぐに実行出来そうなものは…交友関係でしょうか?」

 ナタリーの言った内容は、ぶっちゃけとても興味深かった。
 思わずナタリーへ勢いよく向き直り両手を握る。

「そうね…!! その手があったわ!!」

 なるほど、環境を変える──か。
 確かに前世で何年も同じ教育機関に通っていた時、変化のない顔触れに最後の方は退屈さを感じていたかもしれない。

 考えてみれば簡単なことだった。ヒロインという刺激物に期待できないのならば、自分で刺激を与えればいいだけだ。

「納得していただけたようで良かったです」
「天才よナタリー! 相談して良かったわ……でもそうね、交友関係を変えるならば……」
「今まで仲の良くなかった方と仲良くなってみるのは? そういえば、そのライバルさんとは仲良いのですか?」
「いえミシェ──ゴホン、ライバルの方とは特に仲が良いわけではないわね。でも最近共通点も見つけたし、頑張れば仲良くなれるかも」
「まあ! それは良いですね。是非ミシェ──いえ、そのライバルさんとお近付きになってください」

 危ない、興奮のあまりライバルの名前を口に出すところだったわ。何故だかナタリーの口からもそれっぽい名前が出かかった気がするけど…おそらく気のせいね。

「あ、そうだ。交友関係を変えるのであれば、今仲の良い人とも距離を置いた方がいいかしら?」
「え?」
「そうよね、彼女と仲良くなったところで環境が劇的に変わるとは思えないわ。やはり今まで一緒にいたアゼン様やザックとは距離を置かないと──」
「いや、あの、ルリアーノ様? 何言って……」
「まあナタリーは良き相談相手として今後も仲良くさせてもらうけど! 良いかしら?」
「それは勿論大歓迎ですけれど…ってそれは置いといて、」

 なんだろうこのワクワクとした気持ち。とても久しぶりに感じる気がする。
 ライバル令嬢の立場上ミシェルと仲良くなろうだなんて全く頭になかったけれど、攻略対象が増えたみたいでなんだか楽しい。

「ルリアーノ様! 聞いてます? さすがに殿下達と距離を置くのは無理では──」
「ナタリーありがとう! おかげでスッキリしたわ。ではまた午後の授業で会いましょう」
「ルリアーノ様! 待っ──」

 私はどうやら猪突猛進なところがあるらしい。
 ナタリーが何やら引き止めようとしていたのに、全く耳に入ってこなかった。


 そして後に、私はこの無鉄砲な性格を後悔することとなる──。
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