上 下
60 / 81
Ⅱ.入学編

49.もう一人の転生者

しおりを挟む
 あれから──ミシェルが転生者とわかってから、私なりに状況を考えた。

 ずっとゲームとは違い私に敵対心を向けてくるヒロインに違和感を感じていたけれど、ようやく納得いく理由が判明した気がする。
 転生者であるミシェルはおそらくこのゲームについても知っていたのだ。だからシナリオ通りにならない攻略対象達に歯噛みしていたのだろう。

 そして彼等を狂わせているのは紛れもないこの私。
 通りで地位に関係なく私に対し生意気な口をきいていたわけだ。思い通りにならない現状に焦って周囲が見えてなかったんだろうな……。

「ふう……」

 さて、これからどうするか。
 まさかミシェルが転生者だとは思いもしなかったため、未だに動揺が収まらない。
 私の当初の計画である“悪女となって華麗に散る”というのは上手くいくのだろうか。

 私はずっと来年になりストーリーが始まりさえすれば攻略対象達はミシェルに恋をするのだと思っていた。
 だから今は全く興味を示さなくても問題はないのだと……。

 しかし、ここへ来て本当にシナリオ通りになるのだろうか? という疑問が浮上した。

 ヒロイン特有の愛されスキルがあるからこそ今までその疑問はなかったのだが……この短期間見ていて、どうにもその素質が彼女にあるとは思えない。

 ミシェルのことはある意味張り合い甲斐のあるライバルだと思っていた。
 私が築き上げた逆ハーレムを、どのようにして奪っていくのか楽しみだったのである。

 だけど彼女が転生者──すなわち“自分と同じ土俵にいる人間”とわかってから、そのワクワク感がごっそり消えてしまった。
 彼女にヒロインスキルがないのならば、幼い頃から時間を共にした私の方が必然的に有利になるのは明白だ。

「うーん……」

 正直、そんな分かりきった勝負をしても何も楽しくない。
 というか、このまま続けていたらミシェルが哀れに思えてきそうだ。

「なんなのよこの虚無感は……」
「どうしたんです? さっきからうんうん唸って」
「ナタリー……」
「悩み事ですか? 珍しいですね、ルリアーノ様ともあろう方が」

 お昼休み、一人になりたいからと教室を出たのだがナタリーに偶然出くわしてしまった。
 何の遠慮もなく私の座るベンチに腰掛けるナタリー。いや、別にいいんだけど。

「ちょっとね…」
「良ければお話ください」

 そう言って私を覗き込むナタリーの瞳は何処かキラキラしていた。
 まるで“ルリアーノ様のような完璧な方でも悩み事があるのか”と好奇心を抱いているよう。
 まあ……特に隠すようなことでもないし掻い摘んで言えばいいか。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

異世界転生したら悪役令嬢じゃなくイケメン達に囲まれちゃいましたっ!!

杏仁豆腐
恋愛
17歳の女子高生が交通事故で即死。その後女神に天国か地獄か、それとも異世界に転生するかの選択肢を与えられたので、異世界を選択したら……イケメンだらけの世界に来ちゃいました。それも私って悪役令嬢!? いやそれはバッドエンドになるから勘弁してほしいわっ! 逆ハーレム生活をエンジョイしたいのっ!! ※不定期更新で申し訳ないです。順調に進めばアップしていく予定です。設定めちゃめちゃかもしれません……本当に御免なさい。とにかく考え付いたお話を書いていくつもりです。宜しくお願い致します。 ※タイトル変更しました。3/31

【完結】悪役令嬢に転生しちゃったけど、婚約者様とヒロイン(仮)に溺愛されちゃいそうです!?

雪入凛子
恋愛
悪役令嬢に転生した私。だけどそこにヒロインの姿はなくて...。「えっ、これってどういうこと!? 私の立ち位置って、普通の令嬢でいいんじゃない?」現代の世界から、乙女ゲームの世界へと転生した主人公、ルーナ。友人の誕生日パーティにて婚約者に話を切り出されるも、もしや、婚約破棄の話かと疑って脱兎の如く逃げ出すと、そこにいたのはヒロインでした。

モブはモブらしく生きたいのですっ!

このの
恋愛
公爵令嬢のローゼリアはある日前世の記憶を思い出す そして自分は友人が好きだった乙女ゲームのたった一文しか出てこないモブだと知る! 「私は死にたくない!そして、ヒロインちゃんの恋愛を影から見ていたい!」 死亡フラグを無事折って、身分、容姿を隠し、学園に行こう! そんなモブライフをするはずが…? 「あれ?攻略対象者の皆様、ナゼ私の所に?」 ご都合主義です。初めての投稿なので、修正バンバンします! 感想めっちゃ募集中です! 他の作品も是非見てね!

生前はライバル令嬢の中の人でしたが、乙女ゲームは詳しくない。

秋月乃衣
恋愛
公爵令嬢セレスティアは、高熱を出して数日寝込んだ後に目覚めると、この世界が乙女ゲームであるという事を思い出す。 セレスティアの声を担当していた、彼氏いない歴=年齢の売れない声優こそが前世の自分だった。 ゲームでは王太子の婚約者になる事が決まっているセレスティアだが、恋愛経験もなければ乙女ゲームの知識すらない自分がヒロインに勝てる訳がないと絶望する。 「王太子妃になれなくて良いから、とにかく平穏無事に生き延びたい……!」

執着系逆ハー乙女ゲームに転生したみたいだけど強ヒロインなら問題ない、よね?

陽海
恋愛
乙女ゲームのヒロインに転生したと気が付いたローズ・アメリア。 この乙女ゲームは攻略対象たちの執着がすごい逆ハーレムものの乙女ゲームだったはず。だけど肝心の執着の度合いが分からない。 執着逆ハーから身を守るために剣術や魔法を学ぶことにしたローズだったが、乙女ゲーム開始前からどんどん攻略対象たちに会ってしまう。最初こそ普通だけど少しずつ執着の兆しが見え始め...... 剣術や魔法も最強、筋トレもする、そんな強ヒロインなら逆ハーにはならないと思っているローズは自分の行動がシナリオを変えてますます執着の度合いを釣り上げていることに気がつかない。 本編完結。マルチエンディング、おまけ話更新中です。 小説家になろう様でも掲載中です。

異世界細腕奮闘記〜貧乏伯爵家を立て直してみせます!〜

くろねこ
恋愛
気付いたら赤ん坊だった。 いや、ちょっと待て。ここはどこ? 私の顔をニコニコと覗き込んでいるのは、薄い翠の瞳に美しい金髪のご婦人。 マジか、、、てかついに異世界デビューきた!とワクワクしていたのもつかの間。 私の生まれた伯爵家は超貧乏とか、、、こうなったら前世の無駄知識をフル活用して、我が家を成り上げてみせますわ! だって、このままじゃロクなところに嫁にいけないじゃないの! 前世で独身アラフォーだったミコトが、なんとか頑張って幸せを掴む、、、まで。

悪役令嬢がでれでれに溺愛されるまでの話

ててて
恋愛
悪役令嬢に転生して、その世界でフラグを折っていたら、ヒロインよりも世界に愛されてしまった感じの話。

長女は悪役、三女はヒロイン、次女の私はただのモブ

藤白
恋愛
前世は吉原美琴。普通の女子大生で日本人。 そんな私が転生したのは三人姉妹の侯爵家次女…なんと『Cage~あなたの腕の中で~』って言うヤンデレ系乙女ゲームの世界でした! どうにかしてこの目で乙女ゲームを見届け…って、このゲーム確か悪役令嬢とヒロインは異母姉妹で…私のお姉様と妹では!? えっ、ちょっと待った!それって、私が死んだ確執から姉妹仲が悪くなるんだよね…? 死にたくない!けど乙女ゲームは見たい! どうしよう! ◯閑話はちょいちょい挟みます ◯書きながらストーリーを考えているのでおかしいところがあれば教えてください! ◯11/20 名前の表記を少し変更 ◯11/24 [13] 罵りの言葉を少し変更

処理中です...