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Ⅱ.入学編
33.禁断の質問
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「あ! いた! 姉様……と、アゼン殿下」
廊下の角を曲がったら、すぐにザックに見つかった。私の隣にいるアゼン様を見てあからさまに嫌そうな顔をする。対してアゼン様は口元は弧を描いているが目は笑っていない。顔の上部と下部で違う表情をするのは単純にすごいけど、怖いからやめてほしい。
「ザック、いくら弟だからっていつまでも姉にべったりは良くないと思うな。ルリだって迷惑だろうし」
「優しい姉様はそんなこと思いません。アゼン様こそまだ結婚していない女性に指輪なんて送って重すぎます。この調子ならすぐに愛想を尽かされるでしょうね」
あー今日は良い天気だなぁ。窓から見える景色はさすが貴族学校なだけあって綺麗だ。私の屋敷ほどではないけど庭園もあって、もう少し暖かくなれば外でランチをするのも良い。
と、このように最近は2人が顔を合わせるたび言い争うので、付き合うのも馬鹿らしくなって1人蚊帳の外にいる。お陰様で言い争いの内容は勝手に耳がシャットアウトしてくれるようになった。
何をそんなにピリピリする必要があるのかしら。もっと穏やかにいきましょうよ。逆ハーレムってみんな仲良くするもんでしょう?
「あれ、ローレンスは?」
「ここにいます」
そういえば姿が見えなくて呟くように言ったら、すぐに背後から声がしたので驚きに固まる。
「い、いつからいたの?」
「私はお嬢様の専属護衛騎士なのですから、いつ如何なる時もお側にいます」
答えているようで答えていない。つまりどういうこと? ついてこないでって言ったのにこっそりついてきたのかしら?
……だ、ダメよねストーカーとか思ったら。私の護衛騎士なのだから。ローレンスの気持ち悪さは随分拭えたのだけど、たまに疑わしい発言をするから余計な気を使う。
こんな風に常に周りがおかしいから一向に恋愛モードに入らないのよねぇ。最早私が悪いのか? 私に攻略しようとする気持ちが足りないのだろうか。なんでだ、やる気だけはあるのに。
──よし、こうなったら。
「ねえ皆様、質問があるのですが」
私が少し声を張ると、3人の視線が一気に集中した。
「どうしたの?」
「なに? 姉様」
「どうなさいましたか?」
すごい、見事なハモリだ。いつもこれくらい息がぴったりだといいのだけど…。
3人とも食い入るように私を見つめている。うん、ちょっとこんなに静かになると思わなかったから言いにくいのだけど、今更やめるわけにもいかない。ああ考えれば考えるほど恥ずかしくなってきた。
「──私のこと、好き?」
「「「…………」」」
沈黙が続くこと、数分。
ああああやっぱり言わなきゃ良かった!!
なんで誰も反応してくれないわけ!? 3人が3人とも宝くじが当たった時のような、信じられない目で私を見ている。
何をそんなに驚く必要がある!? 私のことなんて恋愛対象に入るわけないとでも思っているのだろうか。私はただ“好き”って単語を使うことで意識して欲しかっただけなのに!
もう! 馬鹿! みんななんて知らない!
──と、3人の脳内が爆発していることも知らずに、私は怒りながら教室に戻ったのだった。
廊下の角を曲がったら、すぐにザックに見つかった。私の隣にいるアゼン様を見てあからさまに嫌そうな顔をする。対してアゼン様は口元は弧を描いているが目は笑っていない。顔の上部と下部で違う表情をするのは単純にすごいけど、怖いからやめてほしい。
「ザック、いくら弟だからっていつまでも姉にべったりは良くないと思うな。ルリだって迷惑だろうし」
「優しい姉様はそんなこと思いません。アゼン様こそまだ結婚していない女性に指輪なんて送って重すぎます。この調子ならすぐに愛想を尽かされるでしょうね」
あー今日は良い天気だなぁ。窓から見える景色はさすが貴族学校なだけあって綺麗だ。私の屋敷ほどではないけど庭園もあって、もう少し暖かくなれば外でランチをするのも良い。
と、このように最近は2人が顔を合わせるたび言い争うので、付き合うのも馬鹿らしくなって1人蚊帳の外にいる。お陰様で言い争いの内容は勝手に耳がシャットアウトしてくれるようになった。
何をそんなにピリピリする必要があるのかしら。もっと穏やかにいきましょうよ。逆ハーレムってみんな仲良くするもんでしょう?
「あれ、ローレンスは?」
「ここにいます」
そういえば姿が見えなくて呟くように言ったら、すぐに背後から声がしたので驚きに固まる。
「い、いつからいたの?」
「私はお嬢様の専属護衛騎士なのですから、いつ如何なる時もお側にいます」
答えているようで答えていない。つまりどういうこと? ついてこないでって言ったのにこっそりついてきたのかしら?
……だ、ダメよねストーカーとか思ったら。私の護衛騎士なのだから。ローレンスの気持ち悪さは随分拭えたのだけど、たまに疑わしい発言をするから余計な気を使う。
こんな風に常に周りがおかしいから一向に恋愛モードに入らないのよねぇ。最早私が悪いのか? 私に攻略しようとする気持ちが足りないのだろうか。なんでだ、やる気だけはあるのに。
──よし、こうなったら。
「ねえ皆様、質問があるのですが」
私が少し声を張ると、3人の視線が一気に集中した。
「どうしたの?」
「なに? 姉様」
「どうなさいましたか?」
すごい、見事なハモリだ。いつもこれくらい息がぴったりだといいのだけど…。
3人とも食い入るように私を見つめている。うん、ちょっとこんなに静かになると思わなかったから言いにくいのだけど、今更やめるわけにもいかない。ああ考えれば考えるほど恥ずかしくなってきた。
「──私のこと、好き?」
「「「…………」」」
沈黙が続くこと、数分。
ああああやっぱり言わなきゃ良かった!!
なんで誰も反応してくれないわけ!? 3人が3人とも宝くじが当たった時のような、信じられない目で私を見ている。
何をそんなに驚く必要がある!? 私のことなんて恋愛対象に入るわけないとでも思っているのだろうか。私はただ“好き”って単語を使うことで意識して欲しかっただけなのに!
もう! 馬鹿! みんななんて知らない!
──と、3人の脳内が爆発していることも知らずに、私は怒りながら教室に戻ったのだった。
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