完全無欠なライバル令嬢に転生できたので男を手玉に取りたいと思います

藍原美音

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Ⅰ.出会い編

アゼンside≫婚約者の苦悩 後編

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 しかし折角自分の気持ちを自覚したというのに、ルリの周りには邪魔な存在がいすぎる。

 やはり一番厄介なのは義理の弟であるザック・アルランデ。
 血が繋がっていないのにも関わらず普通の姉弟以上に親密な彼女達。
 一度それを指摘したら義弟が泣いてしまってルリに怒られた。

 ──けれど僕にはわかる。義弟がルリに見せている表情は演技だ。腹ではドス黒いことを考えているくせに、ルリの前では天使のように愛くるしく笑う。この前だってルリの腕に抱かれながら僕へ勝ち誇った顔を見せつけていた。なんとも小賢しいやつだ。年下だからって侮れない。
 少しでも弱い素振りを見せれば、弟想いのルリのことだ、僕なんかほっぽって義弟を気遣うだろう。

 あの騎士だってそうだ。最初はあからさまに嫌がっていたくせに、ある時を境に文句を言わなくなった。なんでも、街へ出た時とても役に立ったとか。
 ……それなら僕を誘ってくれれば良かったのに。君に呼ばれればいつだって飛んでいくのに。

 段々と騎士に心を開くルリを見ていられなかった僕は、こうやってローレンス・ベイリーに代わる騎士を探すことにした。おそらく義弟も同じことをしているのだろう。領地内の優秀な剣士を集めていると情報が入った。

 だけど、見つからなかった。あの男より優れた剣士がいないのだ。
 既にあの男の実力は王宮騎士団長に匹敵するとも言われている。父上も最初にローレンス・ベイリーのことを知った時、目を輝かせて僕の騎士になるだろうと言ってきた。自分の騎士なんて正直誰でも良かったが、こんなことになるなら何がなんでも手元に置いておくべきだった。

 それに、ローレンスより優秀な剣士がいないなんて所詮言い訳だ。僕は実際のところ、どんな男でさえルリの近くに置きたくないのだ。
 ルリのそばにいるのは僕だけでいい。僕だけを頼ればいい。僕だけを見て、僕にだけ笑いかけてほしい。

 それなのにルリアーノは義弟を可愛がり、騎士の異常行動を許容する。


 ……気に食わない。婚約者は僕なのに。僕が一番ルリに構われるべきなのに、何故君は僕以外の男を相手にするのだろう。

 ──僕以外の男が、この世からいなくなればいいのに。


 そうすれば君が他の男を気にすることはない。ずっと僕だけ見ていてくれる。だけど……こんな醜い気持ちを彼女が知ったら、きっと嫌われてしまう。

 初めは婚約者なんてどうでもいいと思っていたのに、今は君に嫌われることを考えただけで胸が尋常じゃない痛みに襲われる。

 どうしたら君は僕のものになるのだろう。結婚の時期を早めてもらうことはできないのだろうか。父上には学園を卒業してからと言われているけど、とてもじゃないがそれまで待てそうにない。

 だからねえルリ、早く僕のものになって。

 ──そのためなら僕はなんだってできるよ。
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