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Ⅰ.出会い編

21.躾

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 そうと決まれば早急に対処すべし。
 抗議するザックとアゼン様を強引に追い出しローレンスに向き直る。

「ローレンス、話があるからそこに座りなさい」
「はい仰せのままに」

 すると直ぐにその場で跪いたローレンス。
 本当は向かいのソファに座ってほしかったのだけど…まあいいわ。私はずっと立ちっぱなしで疲れたので遠慮なく座らせてもらうけど。
 まだご飯食べてないからお腹空いたな…さっさと終わらせて侍女に持ってきてもらおう。

「さっきみたいな勝手な発言はやめてください」
「申し訳ありません。お嬢様が困ってらっしゃると思いまして…」
「そうですね。けれどあれくらい私1人で対処できます。あなたはただ黙って見ているだけでいいの」

 そうキッパリ目を見て言う。正直対処に困っていたのは事実だけど、ローレンスが介入するよりは私が治めた方がまだマシだっただろう。

 するとローレンスはやけにしんみりとした顔つきで口を開いた。よしよし漸く言葉が通じたのね──

「…お嬢様、まだ私のことが信用できないのですね」
「──はい?」

 いや、わかった風な口調で何を言ってるのこの人?
 そういう問題じゃないから! 邪魔だから大人しくしてなさいって言ってるの!

「お気持ちはわかります。まだ今日会ったばかりですし、私に全てを託すことに抵抗があるのも無理はないでしょう」
「いやそうではなく、」
「けれど信じてください! 私はお嬢様唯一の騎士。どんなことがあっても守り抜きます! 例えドラゴンに襲われようと火山が噴火しようとお嬢様には傷一つ付けさせません!」

 話を聞け。
 ていうかそんな大災害あったら間違いなく全滅よ。私を守ろうとしたローレンスごと死ぬに決まってる。
 しかも全てを託すってなに? 誰がいつあなたなんかに全てを捧げるって?
 全く、舐めるのも大概にしてほしい。

「黙って聞いていれば……」

 この際はっきり言ってやる。私はかの完璧令嬢ルリアーノ・アルランデよ? 誰かに守ってもらうほど柔じゃないの。

「あなたには私がそんなに弱い女に見えてるの? さっきから守る守るって…見縊みくびるにも程があるわ。私を誰だと思ってるの?」

 斎藤さんだぞ。
 ……なんてね。このセリフ一回言ってみたかったのよね。

「そんなに誰かを守りたいなら違う人の騎士になりなさい。私を守ろうだなんて100年早いわ」

 ふう、言ってやった。
 やっぱり悪役令嬢たるものしっかりと主導権を握っていないとね。さっきから及び腰だったからこれくらい強く言ってやった方が悪役感は出ると思う。
 これでローレンスも少しは大人しくなるでしょう。

「お嬢様……わたくし、わたくし! 感動いたしました!! 一生ついていきます!!」

 ……大人しくなるよね?
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