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Ⅰ.出会い編
3.ターゲット1:ザック
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そういうわけでヒロインより一足先にイケメン達を攻略することにした。
まず第一歩としてルリアーノの義弟であるザック・アルランデから。
ザックについて簡単におさらいしておこう。年齢は私の一つ年下で、性格は冷淡でミステリアス。常に無表情故に何を考えているかわからないキャラだ。
ヒロインに恋してからはちょいちょい笑顔を見せてくれるようになるけれど……本当に稀だ。猿が木から落ちるくらい確率は低い。
好き嫌いはないようだったけど辛い食べ物を好んで食べていた。唐辛子を平気で齧っていたから相当な辛党だろう。当初は唐辛子の食べ過ぎで髪が赤くなったのでは、と思ったくらいだ。
剣よりは魔法が得意で、特に炎の扱いに長けていた。炎魔法が得意なキャラは暑苦しいイメージがあったから、真逆なザックは良いギャップといえる。
さて、そんなクール男子代表を攻略しなきゃならないわけだけど……。
「ザック、ごきげんよう」
「……」
「あら、挨拶ができないのかしら? お姉様に挨拶してみなさい」
「……」
ザックが家族になってからというもの一言も言葉を交わしていない。
いじめが原因でコミュ障になったらしいけど……厄介だなあ。仲良くなるためには会話が必要なのに、それができないならどうやって距離を縮めればいいのよ。
「ルリアーノお嬢様、そろそろお勉強の時間ですが……」
ピクリとも動かずただ下を向き続けるザックの前で考えあぐねていると、次の授業担当の先生が私に話しかけてきた。
前までは授業時間の5分前には必ず着席していたから、初めての行動をする私を先生が信じられないような目で見ている。
が、そんなことはどうだっていい。
「次の授業はお休みします。私にはそれより弟と仲良くなる方が大事なので」
なんせザックという攻略難度S男を虜にさせなきゃいけないからね!
勉強なんてしてる暇ないのよ。ていうか、もう向こう3年分くらいの知識は蓄えてしまったし今更やることがない。わかりきった内容の授業を聞くのも無意味だ。
しかし簡単に私の言い分が通るとも思っていない。先生だって雇われの身だし、私が勉強したくないなんて言ったら反抗的な態度に怒るのも当たり前だろう。もしかしたらお父様に言いつけられるかもしれない。
それでも私は戦ってみせる。ザックを攻略するために!!
「なんと……! あのお嬢様に勉強より大切なものができたとは! これは直ちに旦那様に報告しなければ!!」
思った通り家庭教師の先生は反抗した私に驚きそのままどこかへ駆けていってしまった。
何故か感動したように涙ぐんでいたけれど……気のせいかしら。
するとその時私の掌がピクリと動いた。
……いや、正確には掌の中身か。どうやら知らず知らずのうちにザックの手を握っていたらしい。先生に言ったセリフに説得力を持たすため無意識にやっていたのね。
私ってばナイス! 前世でもコミュニケーションの一環としてスキンシップは重要視されていた。これでザックと仲良く──
「は、なして……もらっても、いいです……か」
うん、まあそんな上手くはいかないわよね。大して仲良くない相手にいきなり手を握られたら嫌に決まっている。
お姉様反省。
「ごめんなさい、いきなり触ってしまって」
「……いえ」
ていうか、私ちょっと気付いたのだけども。
初めてまともにザックと会話している!! すごい! 今日は記念すべき日だわ!!
話し方はまだまだよそよそしいし何故か片言だけど、とりあえず第一関門突破ね。
このまま何とか会話を繋げたいところだけど……。
「ザック、お屋敷を案内してあげるわ」
「……」
「お腹空いてない? キッチンに行ってみましょうか」
「……」
はい、見事なまでのスルー。私の声聞こえてないんじゃってくらい反応がない。ただずっと私の手を見つめているだけ……ってどうしたの?
「私の手がどうかしたの?」
「……いえ」
「さっきあなたに触っちゃったから? 心配しなくても清潔にしてるわよ?」
まさかのザック潔癖症だろうか。それはまた厄介な性質をお持ちで……。
「そうでは、なくて。僕の手が、汚いのでは……と」
自分の手をぎゅっと握ったザック。てっきり私に触られたのが嫌なのだと思ったけれど、違った。自分の手を気にしていたのか……。
もしかしたら孤児院でずっと『汚い』とか『不潔だ』って罵声を浴びせられてたのかもしれない。
私の目を見ているわけではないけど、俯くザックの顔は何処か不安げに見える。
おっと……? ひょっとしてこの状況はチャンスなんじゃない!?
明らかに隙のあるザックをロックオン。ここで信頼を得れるようなセリフを言えば心を開いてくれるかも……!
まず第一歩としてルリアーノの義弟であるザック・アルランデから。
ザックについて簡単におさらいしておこう。年齢は私の一つ年下で、性格は冷淡でミステリアス。常に無表情故に何を考えているかわからないキャラだ。
ヒロインに恋してからはちょいちょい笑顔を見せてくれるようになるけれど……本当に稀だ。猿が木から落ちるくらい確率は低い。
好き嫌いはないようだったけど辛い食べ物を好んで食べていた。唐辛子を平気で齧っていたから相当な辛党だろう。当初は唐辛子の食べ過ぎで髪が赤くなったのでは、と思ったくらいだ。
剣よりは魔法が得意で、特に炎の扱いに長けていた。炎魔法が得意なキャラは暑苦しいイメージがあったから、真逆なザックは良いギャップといえる。
さて、そんなクール男子代表を攻略しなきゃならないわけだけど……。
「ザック、ごきげんよう」
「……」
「あら、挨拶ができないのかしら? お姉様に挨拶してみなさい」
「……」
ザックが家族になってからというもの一言も言葉を交わしていない。
いじめが原因でコミュ障になったらしいけど……厄介だなあ。仲良くなるためには会話が必要なのに、それができないならどうやって距離を縮めればいいのよ。
「ルリアーノお嬢様、そろそろお勉強の時間ですが……」
ピクリとも動かずただ下を向き続けるザックの前で考えあぐねていると、次の授業担当の先生が私に話しかけてきた。
前までは授業時間の5分前には必ず着席していたから、初めての行動をする私を先生が信じられないような目で見ている。
が、そんなことはどうだっていい。
「次の授業はお休みします。私にはそれより弟と仲良くなる方が大事なので」
なんせザックという攻略難度S男を虜にさせなきゃいけないからね!
勉強なんてしてる暇ないのよ。ていうか、もう向こう3年分くらいの知識は蓄えてしまったし今更やることがない。わかりきった内容の授業を聞くのも無意味だ。
しかし簡単に私の言い分が通るとも思っていない。先生だって雇われの身だし、私が勉強したくないなんて言ったら反抗的な態度に怒るのも当たり前だろう。もしかしたらお父様に言いつけられるかもしれない。
それでも私は戦ってみせる。ザックを攻略するために!!
「なんと……! あのお嬢様に勉強より大切なものができたとは! これは直ちに旦那様に報告しなければ!!」
思った通り家庭教師の先生は反抗した私に驚きそのままどこかへ駆けていってしまった。
何故か感動したように涙ぐんでいたけれど……気のせいかしら。
するとその時私の掌がピクリと動いた。
……いや、正確には掌の中身か。どうやら知らず知らずのうちにザックの手を握っていたらしい。先生に言ったセリフに説得力を持たすため無意識にやっていたのね。
私ってばナイス! 前世でもコミュニケーションの一環としてスキンシップは重要視されていた。これでザックと仲良く──
「は、なして……もらっても、いいです……か」
うん、まあそんな上手くはいかないわよね。大して仲良くない相手にいきなり手を握られたら嫌に決まっている。
お姉様反省。
「ごめんなさい、いきなり触ってしまって」
「……いえ」
ていうか、私ちょっと気付いたのだけども。
初めてまともにザックと会話している!! すごい! 今日は記念すべき日だわ!!
話し方はまだまだよそよそしいし何故か片言だけど、とりあえず第一関門突破ね。
このまま何とか会話を繋げたいところだけど……。
「ザック、お屋敷を案内してあげるわ」
「……」
「お腹空いてない? キッチンに行ってみましょうか」
「……」
はい、見事なまでのスルー。私の声聞こえてないんじゃってくらい反応がない。ただずっと私の手を見つめているだけ……ってどうしたの?
「私の手がどうかしたの?」
「……いえ」
「さっきあなたに触っちゃったから? 心配しなくても清潔にしてるわよ?」
まさかのザック潔癖症だろうか。それはまた厄介な性質をお持ちで……。
「そうでは、なくて。僕の手が、汚いのでは……と」
自分の手をぎゅっと握ったザック。てっきり私に触られたのが嫌なのだと思ったけれど、違った。自分の手を気にしていたのか……。
もしかしたら孤児院でずっと『汚い』とか『不潔だ』って罵声を浴びせられてたのかもしれない。
私の目を見ているわけではないけど、俯くザックの顔は何処か不安げに見える。
おっと……? ひょっとしてこの状況はチャンスなんじゃない!?
明らかに隙のあるザックをロックオン。ここで信頼を得れるようなセリフを言えば心を開いてくれるかも……!
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